あとコレから執筆の方針を変えることにします。
といっても難しいことでもなく、
こちらが一巻分終わったらもうひとつの方を。
もう一つの方が一巻分終わればこちら、
という方針にします。
12時をまわり、人の生活音が全くしない深夜の屋上。
フェンスにせもたりかかりながら、空を見上げながら目を閉じる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
頭の中で声が聞こえる。ソレは一つの歌声、優しく穏やかで安心できるそんな不思議な歌声。
忘れるはずもない。俺が今よりずっと子供の時、アリスが歌ってくれていたものだから。
あの頃の俺は千冬姉さんや皆、日常という平和から恐怖に震えていた。一人じゃなかったたとしても、最初の方は赤の他人、言葉すら通じることができず、精神的に一人ぼっちだった。
どうにかほかの皆は助け合うようになっても、俺は出来ずにいた。震えていたのが大きいのだろう。
そんな時励ましてくれるようにアリスはその歌を歌ってくれていた。
いつの間にか心の支えになっていた。皆も、多分俺と同じようなことを思っていたんだろう。
不安に押しつぶされそうになった時も、人じゃなくなっていく感覚に恐怖するときも、その歌を聞くと不思議と安心できた。
だが、もうその歌は二度と聞くことは出来ない。
イヤ、歌だけならいつでも聞くことはできる。でも、ソレはアリスが歌うのではない。
言い方は悪いけれども、アリスの歌を真似する紛い物だ。
「・・・懐かしい」
聞きたいのに聞けない。
会いたいのに、二度と会えないというのと同じくらいに辛い。
そう思うとため息が出る。
無理なことを何望んでいるんだろうか。4、5歳の子供でもあるまいというのに。
目を開けると視界全体に星空が映る。そして歌が聞こえなくなる。
それが酷く悲しい。
「・・・・・・ハァ」
ため息を一つ着くと立ち上がる。
このままじゃ千冬姉さんに出くわしてしまう。丁度今日が巡回だ。山田先生ならいくらでもごまかせるが、千冬姉さんは別。
それに俺が今みたいに夜出歩いていることも何故だかバレているっぽい。
「・・・・・・・・・・・・・?」
不意に校舎の方に視線を向けると、未だに明かりが付いた部屋が視界に映った。
(こんな時間まで何をしているんだ?)
今はもう0時を回ろうとしている。位置からして整備室。となれば生徒なのは間違いないだろう。あの部屋は教師はあまり利用しない。
もし、千冬姉さんに見つかればタダじゃすまないはずだ。その部屋まで行くことはなくても、光に気づかれたらおしまいだ。
千冬姉さんの説教はかなりキツいらしい。
・・・・・・仕方ない。行ってやるか。
研究所にとらわれていた頃に鍛えられた、気配察知をフル活用して千冬姉さんに気づかれる前に、気づきどうにか移動していく。無駄な事に使っているのは自分でも分かっている。
そして移動することしばらく、明かりが漏れている部屋へとたどり着く。
ノックをして中へと入る。
中には机のパソコンに向かっていたであろう、こちらを見て驚き少女。
「な、何・・・・?」
「こんな時間まで何をしてい・・・・・る?」
その少女だけでなく、俺も固まる。
(嘘、だろ・・・・・・?)
その水色の髪を持つ少女はあまりにもアリスに似ていた。
瓜二つと言っていいほどに。
_________________________
「もう、怖くないよ。おやすみ一夏」
「・・・うん」
恐怖に震えていたとき、いつもアリスがそばにいてくれた。
_________________________
目の前のことがあまりにも衝撃的で信じられない。
あまりにもアリスに似ている。アリス本人と見間違えてしまうほどに。
アリスはもういないと言うのにもかかわらず、目の前の少女がアリスに見えてしまう。
身長も体型も髪型も違う。だけど顔だけは似ている。
たったそれだけで、錯覚してしまった。
「な、なんなの・・・・?」
そう言われ、我を取り戻す。
「あ、いや。こんな時間に明かりが付いていたのに気づいてな。規則違反だろ・・・・・?」
「・・・・・・貴方に言われたくない」
「まぁそうなんだけどな・・・・・・」
苦し紛れに言った事も、正論で返されて言い返す言葉もない。
やっぱり似ていた。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
空気が重いし話が続かない。
「な、何してるんだ?こんな時間まで。体に悪いんじゃないか」
「・・・・・・ISを作ってた」
「・・・・・・・本気か?」
「(こくり)」
ISと言うのはアレか。束のやつが作り上げたあの機械しかないよな。
・・・・・・1機作るのに国が動くのを一人で作ろうとしているのか。何がしたいんだ、こいつは。
授業で習った限りだとすれば、ISを作るのに国で動いても数ヶ月はかかる。どこまで完成しているかは知らないが、一人でやるならば年単位かかるはずだ。
そもそも、何故生徒一人がISを作る必要があるのか全く見当もつかない。何か大きな理由があるのか。
「・・・とりあえず、帰ったほうがいい。千冬姉さんに見つかったら後々面倒だ」
「大丈夫。許可は取ってある」
「そうか」
思いっきり出鼻をくじかれた。心配したのは杞憂という訳か。なんだか複雑な気分だ。
とりあえず、そばにあった椅子に座り時間を潰していた。
しばらく机にむかっていた少女だったが、いつまでも帰らない俺を不思議に思ったのか質問してきた。
「・・・なんでいるの」
「今日はたまたま千冬姉さんが巡回の日なんだ。今帰るとばったり出くわす可能性があるんだよ。だからこうして暇してる」
「どれくらい?」
「知らん。千冬姉さんの気分による。しばらくはかかるんじゃないか?」
「そう」
「あぁ」
そうして少女は机に向かいキーボードを叩き始める。
そんな姿を一瞬眺めてから、目を閉じる。
さっきは内心慌ててしまったが、今落ち着いて考えてみれば冷静に対処できることばかりだ。
3年前確かにアリスは死んだ。ソレは俺が冷たくなったアリス自身を確認している。その後に来た
IS部隊との戦闘や千冬姉さんと再開したというのもあってその後どうなっているのかは見当もつかないし、あの研究所は封鎖され入ることもままならない。
放置されたままなのだろう。3年も、ロクに埋葬もしてもらえずに。
せめて俺がしてあげればいいが、今頃は悲惨な状態なのは違いない。アリスのそんな姿は怖くて見ることが出来ず、結局の所あのままにされるしかない。
そんな自分の不甲斐なさにため息をついた時だった。
「少し、いい?」
「どうした」
不意に少女の方から声をかけてきた。
「・・・なんであそこまで強いの?数ヶ月程度でできるような操縦技量には見えなかった」
この少女が言いたいのは多分セシリアとの試合の事だろう。あれは試合というよりは一方的なワンサイドゲームのようなものだったが。
見方によっては、強く見えるのかもしれない。
「俺は直々にあの機体のテストパイロットに選ばれたからな。いくらテストとしても完璧主義のアイツが中途半端な技量で許してくれるはずもない。ただそれだけの事だ」
正直なところこのことは半分嘘で、半分本当といったところだ。
詳しく言えば前半は嘘で後半が本当の事。
ホワイトグリントは俺がアイツに頼んで作ってもらったワンオフ機。IS操縦者として未熟な俺を弱いままにしてくれるはずも無く、専用のシュミレーターで鍛えられたということだ。
「・・・そう。すごいなぁ、そこまで強くなれるなんて」
「たまたま出来ただけさ」
「でも、それはすごい」
強いというのには少なからず否定したいところも多々ある。
力や操縦技能は確かに持っているのかもしれないが、果たしてそれが強さに直結するのかは疑問な所。
難しすぎて俺には到底理解できないが、力=強さというわけじゃないとは俺自身では思っている。
「ねぇ。貴方はどうしてISに乗るの?」
「は?どうゆうことだ?」
いきなりの、しかも斜め上を行くような質問に理解が追いついていけない。
だが、少女の目は真剣そのものだった。
「死んだパパが本当に強い人には強くなる理由があるって言ってたから・・・」
死んだ父親か・・・・
「さぁな。ISに乗る理由なんて考えたこともなかったよ」
「ならどうして・・・・?」
「そうだなぁ。あえて言うならその理由を見つけるためにISに乗るっていう事かもかもな」
「・・・訳が分からない」
「俺もだ。自分でもなに言っているのか分からない」
「なにそれ」
くすっと微かに少女が笑った。理由は全くわからないがなんとなくそれが嬉しい。
「貴方は―-――」
「少し待て。その貴方ってやめよう。何かおかしくないか?」
「なら織斑君と呼ぶ?」
「・・・・・・知ってるのか」
「うん。有名だから。それに代表候補性を簡単に倒したから」
「知らない生徒はいないってか」
「そうなる」
やっぱり名前は知れ渡ることになるか。まぁ、まず男でISを動かせるのだから仕方ない上、一時期は殺すか殺さないかで議論されたほどだがから無理もないのだろう。
今考えれば、とんでもないこと議論されていたな。
「なら、お前は?」
「簪」
即答だった。コンマ一秒も経っていないかもしれない。
「苗字は?ソレは名前じゃないのか?」
「苗字で呼ばれるの嫌いだから」
「・・・・・そうなのか」
「そうなの」
苗字で呼ばれるのが嫌いとここまで言うのか。初めてだよこんな奴。
何気なく時計を見てみるも、まだ千冬姉さんが巡回していそうな時間帯だった。
まだ余裕があるために疑問に思っていたことを聞く。
「なぁなんで一人でIS作っている?大変じゃないのか?」
「心配してくれるの?」
「まぁな。IS作るのはかなり大変らしいからな」
「・・・ねぇ」
「ン?」
織斑一夏。
すごい、不思議な人。
生い立ちからすごい人生なのにも関わらず、堂々としていた。ISのおかげで変わったこの世界でも女性にも媚びるような感じには見えなかった。
3年前には一時期話題にのぼるくらいだったけど、そのときはそんな程度の認識しかなくてそれだけ。
だけどちょっとだけ興味が湧いたのはISを動かせるっていう事が始まりだったような気がする。
動かせるとテレビで報道された時にはもう専用機持ちだったのは羨ましかったし、篠ノ之博士のお手製ならなおさらだった。
でも、本当に興味を持ったのはあの試合。
気分転換程度に見に行ったのがよかったのかなと思う。どっちが勝つとかそんなのは気にしていなかったけど、何処か負けるのかなと思っていたかも。
だけど、結果はソレの反対。
圧倒的大差の圧勝。代表候補性がまるで初心者のように振り回されてしまうほどにすごい技量。
そこまでの強さにすごく憧れた。私はすごい弱いから。
初めて出会ったのは深夜だったけど、逆に二人だけで話すことは出来た。
そしてまた驚いた。
自分が強いと思っていないということには。普通、あそこまで強いなら威張るかも知れないのに、彼にはそれが全くない。
ISに乗る理由も乗る理由を見つけるためという難しい回答。
まるでヒーローのようだ。
強いのに決して威張らない。でも、いざっていう時にはとても強い。
しかも優しかった。何だか素っ気ないんだけども、心配してくれる。何だか嬉しい。
頑張れと言わずに、体の心配をしてくれたことが。
ISを作ることも忘れてつい話し込んでしまったけど、無駄にはならなかったと思う。
いろんなことを話した。気がつけば2、3時間はたっていたくらいに。
そして何だか惹かれた。ほかの人とは何だか違うような気がした。
だから頼んでみることにした。
何だか、彼の言葉が、「人に頼るのは恥ずかしいことじゃない」って言葉が背中を押してくれたから。彼も人に頼って生きているって言っていたから。
――-―IS作るの手伝ってって。
最後の回想は、軽く(?)簪さんによる美化が入っております。