IS あの空もきっと蒼い   作:AK74

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 第六話

「・・・・・・最近整備室によくでは入りしているらしいわね」

 

「だからどうした?お前に話すような事でもないだろうが」

 

 6月の半ばを過ぎようとして来て、幾らか夏に近づいてきた頃。

 久々に生徒会長命令で昼休みに呼び出されたかと思えば、何故だか更識にガチで睨まれてた。

 

 ・・・・・・・何だよ一体。

 

「簪ちゃんとやけに仲がいいみたいね?」

 

「・・・・・それがどうかしたのか?」

 

 確かに最近は整備室でISを作るのを手伝っているし、簪の方から昼食を一緒に食べようと言われることもあるから、仲が良いというのだろうがこいつにケチ付けられる理由はない。

 

 ・・・・・帰っていいかな。

 

「私の妹に手ェ出すとはいい度胸だなぁ!!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 いきなり胸ぐら掴まれたために払おうとして止まる。

 今コイツはなんて言った?妹?

 

「は?じゃねぇよ!!!私に許可なく仲良くして!!!」

 

 ・・・・・・・コイツはアレか。弾のが発症している治ることのないあの病気に似た種類のたぐいか。

 

「お前シスコンか」

 

「シスコンでどこが悪いって言うの!?」

 

「言い切るのかよ・・・・・・・・」

 

 こうしている間にも更識は胸ぐら掴んでグラグラ揺らしてくる。正直それがかなりうざい。そのため近くにあった書類を丸めてコイツの頭をぶっ叩いて止める。

 あいにく、この部屋にはコイツの他に誰もおらず、俺がどうにかするしかなかった。

 逃げたな布仏姉。

 

 

 そして2、3回スパーンとぶっ叩いてから強引に話を進める。

 と言うか、こうでもしないと話が進んでくれない。今まで呼び出された時全部そうだった。

 

「で?俺を呼び出した理由は?」

 

「あイタタた・・・・・。本当なら簪ちゃんと仲良くしていることを問い詰めてやりたいんだけど!!」

 

「・・・・・・姉妹なのに何か似てないな。お前ら」

 

「ぐはっ!?」

 

 オーバーリアクションを取る更識は無視する。

 何だかこの姉妹は真逆といっていいほど性格が違うし、容姿もそこはかとなく違う。

 更識は音量調節ができない壊れたスピーカーに例えられる。簪は子猫といった類か。

 簪の方が可愛げがある。更識はやはり喧しいだけ。

 

「さっさと話を進めてくれ。時間が惜しい」

 

「・・・・・・・慰めてくれるとかないわけ?」

 

「お前には必要ない」

 

「・・・チッ。まぁいいわ。今回呼び出したのは二つ。まずは中国からの転入生よ」

 

 舌打ちしたことは気にしないでおいた。

 だけれどもその切り替わりはやはり伊達に暗部の当主をしていない。

 

「中国か。やっぱり候補生か?」

 

「その通りよ。この時期に転入するくらいだから候補生じゃなかったらおかしいからね」

 

「とりあえず、その転校生には気をつけろと言いたいんだな?」

 

「もっちろん。話の理解が早くて助かるわ」

 

 伊達に裏の世界を生きては来ていない。当時は12の子供だったとしても教え込まれていたからな。

 この中途半端な時期に転校してくることすら怪しい。データか、引き入れることが目的だろう。

 

「ちなみに名前は鳳鈴音って娘よ」

 

「・・・・随分と懐かしい名前だ」

 

「あら、知ってるの?」

 

「まぁな。昔の知り合いだ」

 

 鈴とは中学からの付き合いで悪友と言うのがしっくりくるだろう。かなりちっこかったのは記憶している。

 中3のはじめころに帰っていったが、たった一年で候補生になっているなんてな。何があるのかたまったもんじゃないな。

 

「へぇ、なら仲良くできるんじゃない?所属は2組になるから隣のクラスだけど」

 

「・・・・・分かってる。一応気をつけろ、だろ?」

 

「えぇ。目的を達成するなら手段は請わないはず。仲が良かったと言う繋がりも利用するはずよ」

 

「あぁ。ま、ハニトラみたいなもんには死んでもお断りだ」

 

「なら安心ね」

 

 一区切りついたのか、更識はティーカップの紅茶に口をつけた。

 俺もそれに習う。悔しいがコイツの紅茶は何故か上美味い。言えば調子に乗るため絶対に言わないのだが。

 

「で、もうひとつの方なんだけど、心して聞いてね?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

 更識の雰囲気からかなり真剣な話ということがわかる。鈴のことが笑い話になるくらいには。

 

「今度のクラス代表トーナメントに”英雄”クレア=インヒューマニティが来賓として来るらしいわ」

 

 ギリッと歯が軋む音が聞こえる。手が痛むのを感じて見てみると強く握りすぎたらしい。血がにじんでいた。

 ソレを心配そうに更識が見つめてくる。

 

「大丈夫だ。続けてくれ」

 

「えぇ。来週辺りには学園に来るはずよ。候補生と同日に。多分、実技の臨時教師として働くかも知れない。それに」

 

「確実に俺に接触してくる、だな?」

 

「多分ね。もしかしたらISの試合を挑んでくるかも知れないし、嫌がらせも受けるかも知れない。気をつけてね」

 

「あぁ」

 

 そう返事したのはいいものの、正直この気持ちを抑えるので手一杯だった。

 

 ”英雄”ソレは疎まれる存在の”異能者”の対極に位置する存在だ。

 理由は簡単だ。一人で数多くの”異能者”を殺したのだから。

 今この世界には二人”英雄”がいる。

 更識が今言った奴とロシアに一人いる。

 そして今回来る奴は一人で30人の異能者を殺したと言われていれる、ブリュンヒルデについで世界で名前が知れ渡っている操縦者だ。 

 単機での戦闘能力が高く、千冬姉さんの次に最強とも言われる。

 だが俺からすればただの人殺しにしか見えない。

 殺してその金で生きているのが果てしなく気に食わない。前にも言ったと思うが、殺された”異能者”は皆俺の家族だったのだから。

 なのにもかかわらず、世界中の人間はソイツをまるで女神のように崇める。

 ”異能者”狩りの真実を何も知らず、”異能者”たちの過去のことも知らずに、与えられた情報が真実と信じて止まない。

”英雄”という称号は、殺して殺しまくった上に与えられている、汚れた汚名。

 俺にはそうとしか取れない。

 

 だからこそだった。”英雄”を崇めて止まない奴らも、”英雄”も嫌いだ。

 

 

 

 

 そしてその日は来た。

 

「やぁ、初めましてIS学園の生徒の皆さん。私がクレア=インヒューマニティよ」

 

 女にしては高い分類に入る身長。いかにもできる女を演じているかのようにきっちり着込んだスーツ姿。そしてスラリと伸びた四肢にセミロングの髪型。

 弾あたりがみれば、ひと目で美人だというのだろう。

 だが、結局の所、殺しを楽しむやつなのにはまちがいないだろう。

 口では几帳面に言っているものの、目はどこまでも俺たちを見下げたように見える。

 おそらく、次元が違う存在だと、目で語っているようだ。

 

 どこまでも人を見下げる、傲慢なクズ。

 

 それが”英雄”クレア=インヒューマニティに対する第一印象だった。

 しかし、他の生徒はそんなことに気づくはずも無く、ただ、目の前に現れた有名人に見とれている。

 

「・・・・なんか、嫌な感じ。あの人・・・・」

 

 ただ、隣にいる簪は別だった。クレア=インヒューマニティの本質を見抜けたのか、少し怯えていた。ソレを表すかのように、ちょっとだけ俺の後ろに隠れている。

 簪は性格ゆえなのか、そういった類にはかなり敏感だ。だから、性格を偽ってる奴でもすぐに見破る。

 今もソレで感じ取ったのだろう。

 

「あぁ。俺も同じこと考えていた。俺たちを全否定するような目だ」

 

 そういう間にも話はどんどん進んでいく。IS学園の生徒には期待しているだの、なんだのと言う、嘘っぱちも大概にしろと言いたいということすらある。

 その中には更識が言っていたように、しばらく臨時の実技教論として働くということも含まれていた。

 正直、いらないんだがな。

 あんな奴に教わるよりも、千冬姉さんに教わるのが何百倍もマシなのは確かだ。レベルが低いのだのケチつけまくるだけに違いない。

 はっきり言うと、ああいうタイプの人間は教師には向かない。

 

 しばらくの後クレア=インヒューマニティの話が終わり会は終わる。

 そう思っていたんだが、そこまで簡単じゃないらしい。

 帰ろうとした矢先に止められたからだ。”英雄”を名乗る奴に。

 

 

「ふぅん?アンタが織斑一夏ねぇ」

 

 舐めまわすように見られる。まるで品定めをされているかのようだ。

 当然、そんな事をされていい気分になるはずも無く、

 

「なんのつもりだ。用がないならどけ。邪魔だ」

 

 そしてコイツにいい感情も抱くこともないためにこういったことを言う。

 本当に気に食わない。

 

「あらぁ~?天下の”英雄”様にそんな事を言っていいのかしら?見ないうちに偉くなったわね?」

 

「貴様みたいな奴は知り合いに居ないんでな。失せろ」

 

「ほんっとアンタみたいなのは気に食わないわ。男のくせに調子づいてんじゃないわよ」

 

「フン。そんなマイナーな事しか言えないのか?天下の”英雄”殿?」

 

「・・・・・・貴様。潰すぞ」

 

「やってみろよ」

 

 売り言葉に買い言葉と言うのはこのことを言うのかもしれない。

 近くにいた生徒が皆ざわめきたつ。

 当たり前だろう。簡潔に言うならコイツの挑戦状を俺が受諾したというのと同定義だ。

 信じられないという生徒もいれば、”英雄”に喧嘩売るなんて信じられないという生徒もいた。

 千冬姉さんにつぐ実力の持ち主だからだろう。世界で2番目に強いとみられているのだから当然。

 対する俺は候補生をワンサイドゲームで倒せるがどこまで実力があるかなど誰も知らない。実際あれ以来本格的な試合はしていない。せいぜい軽い手合わせくらいだ。

 コレだけの情報だ。

 グンパイは向こうにほとんど上がるだろう。誰も俺が勝つとは予想だにもしない。

 流石にそこまでの実力だと勝てるか不安になる。だが負けてなどいられない。そのプライドをへし折ってやる。

 

「へぇ?気合 だ け は あるみたいね。笑わせないでくれる?たかが候補生圧倒した程度で強者の気分?」

 

「・・・・・織斑君」

 

 簪も、わずかにいる良心的に考えている生徒も流石に俺の行動を止めようとするが、コレだけは譲らない。

 

「お前みたいな2位で満足してるような奴には言われたくないな。万年二位が」

 

「・・・・・・少しくらい手加減してやろうと思ったけどやめ。覚悟してなさい。徹底的に潰してやる」

 

「そりゃよかったな。手加減してやったから負けたんだと言い訳されたらどうしようかと思ったよ」

 

「ふん!一週間後、楽しみにしておきなさい」

 

 ソレを言い残すとクレア=インヒューマニティはこの場からさっさと歩いていなくなる。

 そんな後ろ姿に中指を立てるのは忘れないでおいた。

 

「ね、ねぇ織斑君・・・大丈夫なの?」

 

「さぁな。勝てるかなんてその時にならないと分からない。やれるだけのことはやる」

 

「・・・・・・そう」

 

 簪には心配させないようにそう言っておく。今のままで行けば勝率は一割あればいい方だ。

 いざという時にはホワイトグリントの”アレ”を使えばいいだけの話だろう。あの諸刃の剣ともとれるのを使えば。

 

「よっ。一夏」

 

「・・・・・・鈴か」

 

 いつの間にやら鈴がそばにいた。さっき再開したばかりだが、やっぱりさっきの件だろう。

 

「とりあえずとんでもないことになったわねとだけ言っとくわ」

 

「そうか」

 

「ま、アンタが負けたらなにか奢りなさいよ」

 

 ・・・・・・・・そんな無茶な。

 

「そんな顔するんじゃないわよ。アンタが勝つ方にかけてるってこと」

 

「・・・・そうかよ」

 

 それだけ鈴は言いたかったのか、ニィッと笑ってスタスタと歩いて行った。回りくどくしないで簡潔に言えばいいというのは、多分あいつには無理だろうと思う。

 

「誰?」

 

「なんの変哲もない中学からの悪友だ。整備室に行くぞ。簪のIS完成させるぞ」

 

「・・・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”やぁやぁいっくん。今回はどんな要件だい?ぶいぶい”

 

 電話に出た人物はいつも通りというのかかなりハイテンションだった。

 逆にそうでなかったら怖いのだけれども。

 

「前に頼んでおいた近接戦闘用武装パッケージが必要になった」

 

”んん~それなら安心安心。もう完成してるからね。いつ届けようか?なんなら今でもいいけど”

 

「いいや。一週間以内に届くようにしてくれれば問題ない」

 

”りょーかい!明日届けるからまっててねー!!”

 

 確かに一週間以内ではあるのだが、全く話を聞いていないんじゃないか?と思える即答具合だった。

 

”あ、そうそう。前に束さんが言ってた超長距離高速背部追加ブースタなんだけど、あれはまだ完成してないからまだ渡せないから”

 

「あぁ、あのヴァンガードオーバードブースタ(通称VOB)か。まだあれはいい。高速機動戦には向かないだろう?」

 

 あまり詳しくは知らないが、オーバードブースタをはるかに超えるスピードと距離を飛行可能な超大型ブースタらしい。

 完成すれば時速6000キロメートルを超えるスピードで約一万キロメートルを飛行可能らしいが、正直なところパイロットがその圧倒的なGに耐え切れるはずもない。

 デメリットはそれだけでなく、圧倒的スピードのために急旋回が不可能ということも挙げられるらしい。

 

”まーね。それじゃあまた明日!”

 

「また明日」

 

 通話を切るとひとつため息をつき、窓越しに夜空を見上げる。

 

 少し、熱くなりすぎたかもしれない。

 

 やっぱり、アイツが家族を奪っていったというのがかなりデカいのだろう。アイツの顔を思い出すだけで、殺気を覚える。

 殺してやりたいと思うところも少なからずあるが、それじゃアイツと同類になってしまう。

 死んでも同類はごめんだ。あんな殺しを楽しむ快楽主義者と同等にされるのは。

 

「やるしかないな」

 

 だからこそISで決着を付ける。

 

 ホワイトグリントのあの機能を使ってでも、叩きのめす。

 アイツだけは。絶対に。

 

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