二度目の転生は廃墟から……? 作:やっぱりイオは最高だよね俺っ娘最高っ!!
一日目・裏
初めてその人を見た時は、その立ち位置と持っている武器。そして所長が怯えている姿を見て敵だと、そう認識した。……その、はずなのに。どうしてか私は凄く綺麗だと思った。陶磁器のように白く綺麗な肌。そしてそれよりも白く長い髪は周りの炎に照らされてまるでキラキラと光ってるように見えて……私の稚拙な語彙力では表せられないくらいに綺麗で、神々しい
多分、マシュの声がなければ私は立ち尽くしたまま見惚れ続けていただろうと思うくらい、私は彼女にどことなく惹かれていた。
でも、その感情は次の瞬間には吹き飛んでいて。彼女がコチラを振り向いて私達を見る目が余りにも無機質で、その瞳の奥に飲み込むような深淵を感じて、先程の幻想的な雰囲気が嘘だったかのようなそれに私は恐怖を抱いてしまった。
さらに驚くべきことに、彼女はデミ・サーヴァントとなり人間を超越したマシュの攻撃を容易く避け、剰え知覚されることなく近付き、たったの一撃で沈めてしまったのだ。それを見て、理解が出来なくて、尚更恐怖感は高まった。
――――今思えば、そんな恐怖は杞憂だったというのに。いや、それどころかその恐怖心すら私を惹かせていたのかもしれない。
そして、恐怖から動けない私を救い出してくれたのも、また彼女だった。とはいえ、正直その行動に驚かされて恐怖なんて吹き飛んでしまったという方が正しいかも知れない。
私を怖がらせないため、というのは考えすぎだろうか。彼女はゆっくりと膝をつき、なんと土下座をしたのだ。そして、大きく響く声で謝罪してきたものだから困惑はピークに達した。……恥ずかしいことに、自分の中だけでは抑えきれず私も大きな声を出してしまった。
そこからは早とちりしたと気付いた私と、土下座している彼女との日本人らしい謝罪の繰り返しだった。
何分かくらいその攻防が続き、渋々といった感じで上半身だけ起こして正座した彼女には先程のような無機質で、深淵のように暗い感じはせず、最初に見た時のように儚く綺麗なものとも違う温かみのある、澄んだ目になっていた。……そして不覚にもまた見惚れてしまった。
恐らく今度は彼女が口を開かなければ私はずっと彼女の顔を見つめ続けていたことだろう。その位、彼女に私はどうしようもなく惹かれてしまっていた。
彼女はまた私に謝り、本当に心の底から悔いているように目を閉じる。……お恥ずかしい事に、そんな目を閉じて悔いたような表情をしている彼女も綺麗だと思ってしまった私は、正直彼女にどう返答をしたのかさえ覚えていなかったりする。
でも、その後は驚きの連続だった。急に先程の無機質な雰囲気になったと思ったらいつの間にか私の後ろに居て、黒いモヤのようなサーヴァントに限りなく近い敵性エネミーを瞬殺していたのだから。全てを捉えることは出来なかったけど、彼女がカタナのようなものを抜刀した瞬間には敵性エネミーはあらゆる箇所を切り刻まれていて見るも無残な状態で霧散していった。
あの綺麗な容姿から生み出されるその光景はまさに幻想といっても過言ではないと思えるほど綺麗で、凄まじいとしか言えない光景は私の心を鷲掴みにして……まるで小さな子供がヒーローやアイドルを見る時のように興奮しながら彼女の姿を見つめていた。
あぁ、因みにだけどその敵性エネミーを消滅指せる前に彼女が言っていた口上は全て一言一句違えず覚えている。
なぜ覚えているのかと言われると……正直、私自身もわからない。多分本能か何かが頭に刻み込んだんだと思う。
それにしても、何度も言うが本当にすごかった。一瞬で敵性エネミーの目の前に移動していたかと思えば、これまた一瞬で敵を切り刻んていたのだから。
恐らく私が見えなかっただけでその一瞬の間に何度か左手に持っている鞘に入っている武器のようなもので敵を斬ったのだろう、とは思うのだけど、その全てが全くと言っていいほど見えなかったのだから。マシュを攻撃した時も、まったく本気ではなかったのだと分かってしまうくらい。
――――あぁ、でも、惜しいことをしてしまったかもしれない。私の眼がもっとよければ、彼女の一挙手一投足を余すことなく視れたというのに――――
戦闘が終わって、自然と私と彼女は自己紹介をする流れになった。その時に彼女の名前が雪歌だということを知った。……雪の歌。名は体を表すとも言われているが、彼女を見ると確かにその通りだと思う。雪のように白い肌に髪。そしてそれが炎によって照らされているさまは、まるで雪が歌っているようにも見えたから。中々に意味不明なことを考えてるなと自分でも自覚しているが、その時は……いや、今でさえその感想は変わらない。
詳しい話はマシュと、オルガマリー所長が起きてから――オルガマリー所長の場合現実に戻ってきてから、というのが正しいだろうか――ということになったので、申し訳ないことに今の今まで忘れてしまっていたマシュの方に向かい、目が覚めるまで近くで待機する。その間、私達の周りにいる骸骨型の敵性エネミーを殲滅している彼女をチラチラと、たまにじっくり見ていたことは余談である。
暫くしてマシュが起きたあと、気絶する前の事を思い出したのか飛び起きて雪歌を警戒し始めたので、それを宥める事にした。
マシュはどうしてか私の言うことをよく聞いてくれる。しかも私を先輩、と呼び親しんでくれて、私も妹のように今までの道中で可愛がっていた。その為か、私が少し宥めるだけでマシュはその警戒を最小限に抑えてくれる。
……まぁ、気絶させられたし、その前の状況が状況だったから警戒するなという方がおかしな話だが、どうにもこうにもそれが少し癪に障る。うん、なんでかわからないんだけれども。
マシュも起きて、所長も戻ってきそうにないし、さぁ始めるのかな? と思っていたら、雪歌は徐ろに所長の方に歩き出した。何をするのだろう? と不思議な感じで見ていると……腕を振り上げたかと思えば、突然ズドンッ、という音が響き渡った。それと同時に衝撃によって出来たであろう風が吹いてきたことに、振り下ろされた力の大きさを理解させられる。
……短い時間だが接して、分かったことがあった。雪歌はどうやら少し天然が入ってるかもしれない。空気が読めない、というわけではなさそうだけどたまに頓珍漢な行動をするタイプかな、なんて思う。そういう所がどうしようもなく可愛いと思うけど。
雪歌の事だから、恐らく何かしらの対処はしている……と思うけれど、正直これは心臓に悪い。
っということで、説教という名の口実を元に少しだけ怒ったふりをしてみることにした。マシュにはすぐにバレたようだが、会ってからそんな時間が経っていない雪歌は分からなかったらしく、可愛くしゅんと縮こまって反省していた。可愛い。
その様を存分に堪能して、説教を終了させると、雪歌は気を取り直すかのように可愛く咳払いを一つした。可愛い。
そして当初の目的どおり可愛い声で自己紹介を始める。私が聞くのは二度目だが、何度聞いても飽きない綺麗な声での自己紹介だ。可愛い。
マシュは何かに対抗するかのように雪歌に敵意を向けていて、それに少しだけむっとしたがまぁ思春期の女の子の多感な時期だからということで大目に見ることにした。
所長は……ぶっちゃけどうでもいいかも知れない。あまり接点ないし、叩かれたし。アレは痛かったから正直所長のことはあまり好きにはなれないのだ。
……なんて、そんなことを考えていたら天啓のようにある事を思いついた。それは……雪歌を困らせてみたい、という純粋なもの。天然入っていてちょっと抜けてるっぽい雪歌を困らせたらどうなるのだろうか。涙目になるのか、不貞腐れるのか。そのどちらでもいいけどどうしても見てみたくて、私はその思いつきに従ってちょっとだけ巫山戯ながら二度目の自己紹介をする。雪歌はまるでブルータス、お前もか……! という感じで困惑したような表情をしたあと、徐々に涙目になっていくさまは興奮してしまうくらい可愛かった。
その後は雪歌のここはどこか、という質問に対するものの話になった。
……ぶっちゃけ、最初に聞かれた時は雪歌に見惚れていた所為であまり考えず答えていたが、少し考えるとこの特異点の場所に来た時にロマンが言っていたような気がした。たしか、冬木という場所だったはずだ。
それを素直に雪歌に伝えると、何故だか雪歌は明後日の方向を見て遠い目をしていた。どうしたのだろうか、と思ったが、そんな雪歌も可愛かったのでどうでもいいかという結論を下し、暫く雪歌が現実に戻ってくるまで観察し続けるのだった。
初めに感じたのは、身体を突き刺すような熱と、理不尽な状況に関しての怒りだった。
何故、アニムスフィア家当主であるこの私がこんな場所で無様にも這い蹲って燃え盛る熱と、骸骨の形をした敵性エネミーから逃げているのかという怒り。
これは夢だ、現実じゃない。疲れがたまって居たせいで気絶してしまっただけだと心は現実逃避をして、しかし現実だと確信している身体は必死に廃墟の中を右往左往して逃げ惑う。
魔術で反撃しようにも心は乱され、魔術は全く形にならずに不発で終わる――――そんなことがかれこれ5回以上は起こったとき……私は、囲まれていることに漸く気が付いた。
前後左右を敵性エネミーが逃げ場をなくすように埋め尽くし、今にも殺そうと徐々に近付いて来ている。
そんな状況になって、漸く心はこれが現実なんだと認めた。でも、認めた時にはもう何もかもが手遅れだったことにまた絶望する。必死に魔術を展開しようとするが錯乱した状態で打ち出せるほど魔術は簡単ではない。
そして骸骨が私の目の前まで迫ってきて、もうダメだと全てを諦めかけた瞬間――――それは、飛来した。
「そこにいるなんか頭のネジ吹っ飛んでるような骸骨さんクッションになれやコラァッ!!!」
そう、何とも個性的な登場の仕方をした彼女の姿に思考が停止する。まるで巫女服をモチーフにしたような服にフリルのついたパーカーを羽織り、露出しないようにだろうか。白い肌と対になるような黒いハイソックスを履いた全体的に白い少女は、私の方をチラリと無機質な瞳で見た後興味を失ったように視線を敵性エネミーの方に戻す。同時に獰猛な笑みを浮かべて少女が着地と同時に粉々にした骸骨があったであろう場所に向かって感情の篭ってない言葉を紡ぐ。
その後もう一度私の方を見て、感情の伺わせない機械的な表情で首を傾げたあと、どこか緊張感のない、しかし感情の篭っていない声で骸骨の唸り声に驚いている
そして――――彼女の一言に、私の心臓は縮み上がった。
「んー、正直、そこの不気味な女性のことを調べてみたいんだけど……まっ、それは貴様らを殺してからでもできることか」
今までで一番感情が篭っているように聞こえるその声は、前半は興味深そうに、後半は楽しそうに。
私の何が彼女の興味になるようなことがあったのか……見当もつかないが、その一言は骸骨以上に恐ろしく、厄介な存在に目をつけられたと私に思わせるには十分だった。
それが私の恐怖心をどうしようもなく刺激する。足の先から徐々に身体が冷たくなっていくようなその感覚は、骸骨に囲まれたことなどとは比較にならない程私を絶望で締め付ける。
骸骨の行動は、ある程度予想できる。殺されるんだろうな、と。その程度の予想は容易い。が、目の前の少女が私に目を付け、一体何をするのか。そのことに関しては全くわからなくて、そもそも少女の存在自体が良く分からなくて……未知が、怖い。
だが、少女はそんな私の感情などどうでもいいように行動する。そして、その行動がまた私の恐怖心を一層煽る。
武器のような物を抜き、一周させただけ。それで私は死んだとさえ思ったのに、身体は五体満足で、傷等骸骨から逃げてる時出来たものから全く増えていない。
あぁ……未知が、こんなにも怖いだなんて思わなかった。
「……そんなにジロジロ見られても困るのだが……取り敢えず、ちょっとお話でもしようぜ?」
「ひっ……!?」
見ていることに気付かれていた……!
言葉と共に彼女は優しげな声と共に笑みを浮かべる。だが、それは最早私には悪魔の笑みにしか見えなかった。情けない悲鳴を上げて、涙が溢れそうになるのを今となってはなけなしの、簡単に脆く崩れ去ってしまいそうなプライドで堪える。
その私の態度が癪に触ったのだろうか。彼女は笑みを引き攣らせて、私をジッと見つめてくる。たったそれだけのことで私のプライドは崩れ去りそうになる。
だが……彼女の後ろから聞こえた凛とした、聞き覚えのある声に少しだけ、安心した。
――――それが呆気なく覆されてしまう希望だなんて知りもせずに――――
……一瞬の、出来事だった。マシュの姿と内包魔力からデミ・サーヴァント化していることに気が付いて、これなら助かると思ったのに……たった一瞬で、デミ・サーヴァント化したマシュを倒してしまった。
つまりそれは、デミとはいえサーヴァント以上の戦闘能力があるということで――――絶望がピークに達した私は、自分でも気付かぬうちに意識を手放していた。
ぐだ娘サイドのお話。主人公サイドでは絶対に話されないだろうこれ、ぶっちゃけすごい難産だった。
あとごめん、ぐだ娘が百合で変態になった。反省はしている。でも後悔はしてない。
PS.(2016/12/25/14:10)
誤字報告感謝ァッ!!
敵性エネミーを適正エネミーって書くとか、私は馬鹿か? 馬鹿か(諦め
あ、あと。もしかしたら明日、明後日に一話投稿してから今年の投稿はないかもしれない。大掃除とか、やること山積みなんだよなぁ……。
2017/06/12
加筆修正&試験的にオアルガマリーの視点を挿入。とはいえ、試験なので短い。
……うん、言いたいことは、分かるよ。でもまぁビビリということで納得してくれ(´・ω・`)