二度目の転生は廃墟から……?   作:やっぱりイオは最高だよね俺っ娘最高っ!!

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呆気ない幕切れと――貴方への親愛を

 意気揚々と戦闘を開始して――――戦闘が終了したのはたった十分後だった。黒化状態だったからか、たった一回木端微塵にしただけで復活することなく霧散してしまったのだ。

 それが余りにも呆気なさ過ぎて、ウォーミングアップにもなりはしなかった。

 

「……この、程度か……? ハッ、かの大英雄が黒化した程度でこの程度にまで落ちるというのか? ふ、ふふ……巫山戯るなよ下郎……ッ!!! 昔殺りあったヘラクレスはこの程度ではなかった! 知恵を尽くし、技を凝らさなければ一度も殺せないほどの強敵だった!! それがこれだと言うのか……っ!!」

 

 かなり昔、二度ほど来た冬木で一回のみ()()()ヘラクレスと、今()()したヘラクレスが同じものだとは思えなくて――――あの、狂ってまでも誇り高い戦士がここまで落ちるということが我慢ならなくて。力任せに()()を殴りつける。それと同時に何かに罅が入るような音とソニックブームとは比較にならない程の衝撃音があたりに響く。だが、それでも今感じている苛立ちは抑えることが出来なかった。

 ……少しだけ、もしかしたら期待しすぎていたのかもしれない――――なんて、ヘラクレスを卑下してしまいそうになる自分にも、ただ暴れることしかできなくなったヘラクレスにも苛立ちが募る。

 

「この、馬鹿者が……ッ! 貴様の、その誇り高い在り方に、私は尊敬さえしていたというのに……」

 

 ついさっき黒化したヘラクレスが居た場所を眺めながら、小さく呟く。実際、俺という存在が誰かを守りたい、救ってみたい……そう思ったキッカケはfateのヘラクレスという存在が原点だからだ。狂わされて召喚されても、たった一人の少女を守ろうとギルガメッシュに立ち向かったその様に俺/私は憧れていたんだ。だからこそ身勝手ではあるがこの終わりが気に食わなかった。

 

「……クソ……ッ!! いや、落ち着け、俺/私。これは、所詮、影でありなりそこない……そうだ。これは、ヘラクレスであって、ヘラクレスではない。そう考えれば、いい」

 

 自分自身に言い聞かせるように呟いて、大きく深呼吸する。

 そうして、一時間ほど深呼吸を繰り返してから意識を切り替えた。戦闘用の人格から何時もの俺へと。

 

 ……さて。予想以上に早く終わってしまった訳だが、これからどうしようか。気配を探れば今はアサシンとランサーを倒して大空洞――つまり、聖杯目前まで迫っているようだ。そして、記憶が正しければその先にはエミヤとアルトリア・オルタがいるはず。

 ゲーム的には序章終了間際まで進んでいるらしい。キャスニキに加え傲慢金髪もいるわけだから妥当なスピードだろう。

 ……ここから急げば十秒とかからず立香達には追い付くだろう。だが……あぁ、どうしたものか。落ち着いたとは思ったがどうやら意外と先ほどの件が尾を引いているらしい。

 動くのも億劫で、このまま寝転んで眠ってしまいたい気分だ。……とはいえ、俺という存在が居る以上正史とは違っている可能性もある。現に傲慢金髪が召喚されたのが良い例だ。

 なら、いくら動くのが億劫とは言え何もしないわけにも行かない。

 

 本音を言ってしまえばこのまま寝たいが……しょうがない。少しだけ先行してエミヤにアタックしに行くとしようか。

 欲求不満なんだ。エミヤなら理性も保っているし、他の下郎……いや、雑魚どもと違って多少は歯ごたえがあるだろう。

 

「そうと決まれば早速行動するか。位置的に立香たちがどれだけ急いでもエミヤのいる大空洞までは一五分程かかるだろうし、そのくらいの時間があれば殺り合うくらいは出来るだろ」

 

 ヘラクレスがいた場所から視線を切って、足に力と入れてフォトンを凝縮する。なるべく音を出さないように細心の注意を払って駆け出して……今度はソニックブームも出さず数秒も立たずして大空洞の中に侵入した。

 大空洞に入ると大空洞全体から発される黒化サーヴァントのキモチワルイ感じを凝縮したような空気と気配がして、思わず顔を顰める。

 とはいえちょっと苛々する程度でそこまで気になる程ではない。

 

「……さて、いるんだろう優男。貴様にアサシンの真似事は向かぬよ。潔く顔を出せ」

 

 少しだけ歩いて、最奥と入口のちょうど中間辺りで立ち止まり、岩陰に隠れている気配に向かって声をかける。

 するとエミヤは臆すことなく自然体で岩陰から姿を現した。その顔には不敵な笑みが浮かんでいる。

 

「おや、まさか気付かれていたとは。アサシンに向かないとは言え、気配を殺すのは自信があったのだがね」

「戯け。貴様程度のそれに気付かないわけがないだろう」

「……ふむ。流石は黒化したとは言えかの大英雄を――――」

「――――御託はいい。私は気が立っているんだ。あぁ、今すぐにでも貴様に斬りかかりたいほどに。故に、構えろアーチャー。いや、エミヤシロウ」

 

 俺が名前を口にすると同時に、エミヤの顔は訝しげに歪んだ。まぁ、当然か。サーヴァント、しかも未来のものの名前を知っているのだ。訝しまない訳が無い。

 だが、今の俺にはそれに付き合っているほど余裕がない。正直本当に今すぐ斬りかかりたくてウズウズしているんだ。

 それでも斬りかからないのは俺なりの矜持と今回はしっかりとした戦いにしたいという思いからだ。

 

「全く、せっかちな女性は嫌われるぞ?」

「そっちこそ、遅すぎる男は嫌われるぞ。……あと、私は女じゃない」

 

 俺の女じゃない発言にまたもう一度訝しげに顔を歪めたあと、考えることを止めたのか呆れたように首を横に振った。

 そして、その仕草にとうとう焦れてきた俺がカタナを仕舞い――――白と黒一対の(ツルギ)を取り出す。その剣を見て、エミヤの顔は盛大に歪んだ。

 

「何故……君がその武器を?」

「さぁ……? 気になるのならこの身体に聞いてみなさい」

「……ふっ。そうか。では――――私も行くとしようか」

 

 不敵な笑みを浮かべながらエミヤは詠唱すらせずに私が持っているものと()()()()()一対の剣を創る。

 構えるのは同時だった。そして――――合図もなく互が同時に駆け出す。

 

「ハァッ!!」

「甘い!」

 

 初手はエミヤ。右手に持った白く歪に反った剣――干将――で左から殴りつけるように斬りつける。それを俺は左に持っている莫耶で受け止め()()()()()()()()左の脇腹を斬りつける。

 剣は吸い込まれるようにエミヤの脇腹に傷を付ける――――ことはなく、エミヤは摺足で右に少し移動して紙一重で交わす。と同時に左の莫耶でしたから斬り上げるように凪いだ。

 俺/私はそれをバク転しながら避け、序とばかりに顎へケリを放つ。しかしそれもエミヤは予測していたのか、顔を上に向けて顎へのクリーンヒットを交わし一度距離を取った。

 

「……なるほど。名前を言われたときもしやと思ったが、まさか私の戦闘方法も把握していたとは」

「当たり前であろう? 貴様ほどの男はそうはいない。それに、貴様の攻撃は一度全て見ているのでな。この程度は余裕、というやつだ」

「では無駄な小細工は無意味ということか。……それにどうやら、君が望んでいるのは正真正銘命をかけた真剣勝負のようだ」

「あぁ、そうだよ。でも正直、真剣勝負じゃなくても別にいいんだよ。貴様の――エミヤの戦闘方法で、全力で向かってきてさえくれれば。それだけで私は満ち足りる気がする」

「そうか……いや何、私も今のたった数回の攻防で柄にもなく少々身体が熱くなってしまってな。故に――全力で行かせて貰うぞ!」

「そうだよその闘気だよその気迫だよ!! 私が今欲しかったものは! 戦いの中で感じたかったものは!! あぁ、故に――全力で迎え撃つぞエミヤッ!!」

 

 今までの簡単なウォーミングアップから今度は全力での殺し合いへ。()はそれが嬉しくて――何より楽しくて、口が自然と笑みの形を創る。

 深淵の闇との闘争でも感じた、殺し殺されるようなそれが、()よりも()が欲した、好きになってしまったもの。英雄に憧れて、守ることを夢見た俺と私の行き着いてしまった地獄の釜度。

 あぁ、だから全力で迎え撃たせてもらう。瞬時に干将・莫耶をフォトンの粒子に変換してしまい、同時に籠手と鞘が一体化した不思議な形をしたカタナ――カザミノタチ――を取り出す。

 これが()()出せる最高の武器。強度、威力共に六坊均衡が持っている創世武器にも引けを取らない……否、上回ってるとすら思っている程信頼している武器。

 

 ――――さぁ、俺/私にコイツまで出させたんだ! もっと、もっともっと楽しませろ……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 地力の差か、武器の強度、威力の差か。エミヤと雪歌の武器が交わる度にエミヤの使っている干将・莫耶は砕かれては新しく作り出されていた。だというのに意図的に作っている隙以外は全く生まれない。

 逆に雪歌の持っているカザミノタチは刃こぼれすることも切れ味が落ちることもなく最高の状態を保ち続けている。エミヤの体格に比べ小柄なため動き回っているがその動き全てに隙がなく、下手に攻撃すれば反撃される。

 一秒毎に凡そ百以上の干将・莫耶が破壊されては作り出されてを繰り返している。そんな戦場の中で、エミヤの顔に浮かんでいるのは苦々しいが、柄にもない楽しげな笑み。そして雪歌の顔に浮かんでいるのは満面の笑み。

 

 お互いが全力を出し合い、技を競い、知略を巡らせる。始まってからたった数分しか経っていないというのに戦場は余波でボロボロになっており、元の形は見る影もない。

 それでも二人は手を、足を、身体を一瞬でも止める事なく切り結んでいる。エミヤの作った隙を突いて攻撃すると同時にエミヤが紙一重で避けカウンターを食らわせようとする。それを籠手で防ぎ、足払いをしてカウンターを返す。そのカウンターをエミヤは雪歌の身体を飛び越えながら干将・莫耶を投げ追撃を阻止し、新たに作り出した干将・莫耶で攻撃を再開する。

 そんな攻防が何度も続いていた。

 

 ――――しかし、物事には始まりがあれば終わりがある――――

 

 雪歌が今まで使っていなかったPA(フォトンアーツ)、その中でも特にスピードに優れているグレンテッセンを使用してエミヤを斬りつけながら背後に回る。辛うじて干将・莫耶を盾にし衝撃を軽減し、即座に作り出した干将・莫耶で防ごうとして――――。

 

「私の、勝利だ」

「あぁ……そして、私の敗北だ」

 

 グレンテッセンは斬り付けながら背後に回り、神速の居合を放つ技だ。そしてカタナとは切断に重きを置いており、居合はそのカタナの味を生かす単純でありながら最高難易度の技。故に、防御を優先してしまったエミヤは干将・莫耶ごと身体を斬られ、勝敗は決した。

 

「全く……こんなにも戦うことが楽しいと感じたのは、久しぶりだよ」

 

 懐かしむように優しい声で呟きながら笑みを浮かべる。思い浮かべていたのは薄れてしまった聖杯戦争でのこと。エミヤシロウがまだ衛宮士郎だった頃の、酷く懐かしい日々の名残。

 それを聞いて雪歌は嬉しそうに、しかし少しだけ恥ずかしそうにしながら。

 

「そっか。それなら良かった。俺も……こんなに戦うのが楽しいと思ったのは本当に久しぶりだよ」

 

 雪歌が思い出すのは【深遠なる闇】とサシで渡り合った時の、殺し殺されるような闘争の記憶。ある程度年が経って、平和になってしまったPSO2の世界での楽しかった想い出。たった一つの失敗が死へと繋がる殺伐としていながらも満ち足りた、日々の名残

 

「……そういえば、君の名前を聞いていなかったな」

「ん……そういえば、そうだったな。ごめん、あの時はちょっと欲求不満で余裕が無かったんだ」

 

 恥ずかしそうに目を逸らしながら頬を一度掻いて、咳払いをする。

 

「改めて、俺の名前は雪歌。雪に歌と書いて雪歌だ」

「そうか……あぁ、この名前は君に良く似合っている」

「ははっ、出たよエミヤのタラシ発言。でも残念、俺は男だから効かないんだ」

「いやまて、私はタラシなどでは断じてないぞ……!」

「……えーっと、桜、凛、アルトリア、美綴……あぁあとは――――」

「まっ待て! わかった認める! だからそれ以上名前を列挙しないでくれ……!」

 

 先ほどまで殺伐とした戦場だったとは思えない程和気藹々とした空気の中で二人は束の間の談笑を楽しむ。

 それは二人が素を出し合った心からの談笑で――戦いを通じて繋がれた絆の結晶だった。

 

「む……そろそろ、時間切れか」

 

 そういうが否や、実態を保っていたエミヤの身体は徐々に薄くなり、末端から魔力へと変換されて空中に溶けていく。

 

「……そうだな、最後ついでに、君の()()を少し、見せてくれないか?」

「えっ?」

 

 名残惜しそうに雪歌が消えていくエミヤを眺めていると、エミヤは徐ろに呟いた。

 

「いつから、気付いてた……?」

「気付いたのは……そうだな。最後の瞬間だ。あの時の君の動きは明らかにどこか抑えているような雰囲気だった。だからだよ」

 

 怒られる寸前の子供のように弱々しく聞く雪歌の姿にエミヤは苦笑する。戦闘している時の獰猛な姿とは似ても似つかなかったからだ。

 そしてそれが雪歌の素であり、()()なのだろうと結論づける。

 

「……そっか。うん、エミヤならいいよ。エミヤは俺を満たしてくれる存在だから、特別に見せてしんぜよう」

 

 バツが悪そうに頬を掻きながら、それを隠すように尊大な態度で答える。そしてエミヤから少し離れ、誰もいない場所に向け居合の体制を取った。

 

「これは、さっき使ったフォトンアーツでもなく、俺が作り上げた俺だけの技。名前は――――

 

 ――――『常絶(トコダチ)』ッ!!」

 

 技名を宣言すると同時に雪歌はカタナを抜刀し、目の前を一閃する。

 瞬間、目の前の空間は突然歪み――――その先にあった全てのモノがこの世から()()した。文字どおり跡形もなく。

 

「これは……凄いな」

「でしょう……? これが俺の本気で、全力全開の一撃。原理とかは……そうだなぁ、次にあった時に教えるよ」

「むっ……いいのか?」

「んー……アレだ、友情……いや、親愛? の証ということで」

「たった一度戦っただけで家族か……」

「当たり前だよ。俺の本気は誰もが無理だとしても、全力は数少ない希少な存在なんだ。だから、俺の全力と渡り合えて、信頼出来る奴はみんな家族だ!」

「そうか……」

 

 胸を張り、威張るように言った雪歌の姿に思わず笑みが溢れる。だが、家族と言われてまんざらでもないエミヤもまた、相当だ。

 たったこの短時間でそこまでの信頼を雪歌に抱いているのだから。

 

「さて……もうお別れだ」

「――――あっ……」

 

 エミヤの身体が後ろの景色まで透けてきた時に、エミヤは別れを告げるよういう。そしてエミヤの身体が完全に透けていることに漸く気が付いた雪歌は、名残惜しむように小さく声を出す。

 その姿に、エミヤは今日何度目かの笑みを浮かべた。

 

「なに、私は英霊だ。君が望めばまた会えるさ」

「……。うん、そうだね! 俺は執念深いから、何が何でも呼んでやるからな!」

「そうか。期待して待っている。――――またな」

「――――うん、またな」

 

 別れを告げ、エミヤの身体は完全に消え失せる。そしてエミヤが完全に消え失せたことを確認した雪歌は、結構近くまで来ていた立香達と合流するために歩き出した。

 

 

 ――――後に残ったのは、雪歌が常絶で作った光景と、戦場の余波で出来た元の形も分からない戦場だった場所だけだった。




約半年ぶりの更新。お待たせ。
ちょっと親族関係でドタバタしてて気が付けばこの月に……(´・ω・`)
にしても戦闘描写キツイ……。
ちなみにこの二人、結果的にとは言え抱き合ったような状態で話しています。描写しようと思ったんだけどね、空気ぶち壊しそうで出来なかったorz

あ、久々の更新ついでに全体的に加筆修正等を致しました。大体各千~二千文字程度だけど……。

PS.
エミヤ魔改造してしまいました。こんなのエミヤじゃねぇ! って思った方には心よりお詫び申し上げます(平身低頭)(五体投地)

2017/06/12 19:50
誤字報告ありがとうございますぅっ!!(土下座)
深遠なる闇を深淵なる闇ってかくっていうね。よくある間違いだとは言え致命的なミス。本当に申し訳ない……(´・ω・`)
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