サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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第11話 暴虐の悪魔 The Tyrant

突如、レオの体から這い出してきた、悪魔ディガルド。悪魔という聞いたこともない種族の出現に皆の動揺が走る。

 

「ユッキー、あれ何でありますか!?」

「魔物だとも思ったのでござるが、人型で喋る個体は聞いたことがないから違うかもしれないでござる」

 

魔物、エクレールがライ達にフロニャルドの基礎知識をレクチャーした時に名が出てきた。フロニャルドで死者が出た戦いは、主にこの魔物との戦いによるものであることから、邪悪(もしくは危険)な存在であることが推測される。

ユキカゼは最初、ディガルドの体から漂う禍々しい雰囲気から彼を魔物だと推測したらしい。

 

「貴様、儂に憑りついて感情を喰らったと聞いたが、悪魔とは何じゃ? 何故儂を選んだ? そして、目的は何じゃ?」

「おいおい、いきなり質問攻めか? まあ、言っても減るもんじゃねえし、構わねえか」

 

立ち上がってレオがディガルドに対していきなり質問攻めをする。ディガルドの方は特に問題なさそうに質問に答えることにするが…

 

「お前等、ここと違う世界が存在しているって聞いて信じるか?」

 

いきなり別の質問を繰り出してきた。

 

「いきなり何を…」

「とりあえずこの問いに答えろ。説明するためにも必要なことだ」

「…まあ、異世界から勇者を召喚する手段があるから信じるも何も常識じゃ」

「へ、なら話は早い」

 

レオはフロニャルドでの異世界の見方について話すと、ディガルドは早速質問に答え始める。

 

「俺の元いた世界の名は、さっき言った通り霊界サプレス。実体を持たない精神生命体の住む世界で、人の魂の輝きを育て慈しむ天使と、人の感情を喰らって力の糧にする悪魔の二種族が代表的だ。そして、俺は後者の悪魔に該当するってわけだ」

 

自身の出身世界と種族の特性を答え、二つ目の質問に移る。

 

「お前を選んだ理由だが、適当に空飛んでた時にお前を見かけた。そん時に糧になりそうな感情を強く感じたのが理由だ」

 

ディガルドはレオを指差しながら話す。そして更に説明を続けた。

 

「大体の悪魔は憎しみとか妬みの感情を好んで喰らうんだが、俺は偏食家でな。怒りとか恐れ、あとそれ以上に不安の感情が好きなんだよ。で、さっきも言った通りお前には怒りとデカイ不安を感じ取ったから憑りつかせて貰った」

 

そして、最後の質問の答えを語り出す。その時、先程名乗った時のような邪悪な笑みを再び浮かべる。

 

「最後に俺の目的だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺戮と侵略だ」

 

その時、ディガルドの纏っていた狂気じみたオーラが場にいた強まり、場にいた全員の背筋が凍るような感触がした。

 

「もともと、俺はリィンバウムって世界の侵略を企んでいたんだが、リィンバウムは結界が張られているから外部から任意に入ることが出来ない。どうするかと思ったその矢先に召喚獣として呼ばれたんだが、その時の召喚師がいわゆる初心者でな、初めての召喚に成功したらしくて浮かれてやがった」

 

その後、ディガルドの口から出た言葉はフロニャルドの住人たちにとっては恐ろしいものだった。

 

「その隙を窺って、そいつをぶっ殺して(・・・・・)召喚術の知識を奪ったのさ」

 

殺す。ディガルドははっきりとそう言った。

 

「殺した……じゃと?」

「知識を奪った? どうやってだ?」

 

レオもゴドウィンも、口には出していないがユキカゼ達もディガルドの言葉に動揺を隠せなかった。そして同時に、知識を奪ったと言うことに疑問を感じる。

 

「一部の悪魔の間では、知識は血液に溶け込んでいるとされていてな。その血を一滴残らず飲み尽くせばその知識を得られて、血の知識で血識っていうらしい。俺もそれに肖ってその召喚師の血識を根こそぎ奪って召喚術を得たって訳だ」

 

人を殺して、その相手の血を飲み尽くす。フロニャルドではフロニャ力の特性によって故意に人の命を奪うということは皆無、それによって住民達も温厚な種族となっているため、ディガルドの発言に皆はかつてない戦慄を覚えるのだった。

 

「で、早速召喚術を試そうと思ったら、間違った知識が混ざっていた所為で術が暴発しちまって、気が付いたらこの世界に居たって訳だ。多分、俺が召喚の門に飲まれちまったんだろ」

 

召喚術の暴発、ディガルドはそれによってフロニャルドに来たらしい。

 

「それから今日までの三日間、適当な森に隠れながらこの世界の観察をした。いきなり出てきたら騒がれて捕まっちまうから集落には行けなかったが、付近を通る住人や土地にあるマナってエネルギーを調べた結果、ここに飛ばされたのは嬉しい誤算だと解ったのさ」

 

そこからディガルドは、話し方が嬉々としたものへと変わっていく。

 

「住人は負の感情が少ないから俺の力の糧にはなりそうにないが、それはこれから徐々に増やしていけばいい。マナは多ければ多いほどその世界の大地を豊かにするんだが調べた結果、この世界はリィンバウム以上にマナが多いことが分かったのさ。なんか、マナの塊がそのまま生物になったみたいなのがいるらしいから、それが主な原因と見た」

「マナ? 大地が豊かというと、土地神でござるか?」

 

降りてきたユキカゼが自身の推測を口にする。土地神は土地を豊かにする生物であるが、ディガルドはそれをマナの塊が生物化した物だと思ったらしい。

そして、再びディガルドが口を開く。

 

「だから、俺は急遽この世界の侵略を考えた。ここで暴れて、住人どもの不安や恐怖を煽って力を高め、悪魔王クラスの大悪魔になって俺は世界の支配者になる! 殺しと支配、それが俺がこの世界でやるべき目的だ!!」

 

興奮気味でディガルドは己の目的を語った。フロニャルドでは考えられない野蛮な野望であった。

すると、先程まで壁に打ち付けられていた状態のまま話を聞いていたブリオッシュが立ち上がろうとしている。

 

「そのような輩、ビスコッティの隠密対頭領として…」

「やらせるか!!」

 

ディガルドはいきなり黒い魔力を左腕に出現させ、それをブリオッシュに向けて放つ。

 

「ぐぁああ!」

「お前は一番危険そうだからな、しばらくは動けなくなってもらうぜ」

「親方様!!」

 

ブリオッシュに放たれた魔力は彼女にダメージを与えた後、ロープの様になって彼女を拘束する。ディガルドは彼女がこの場で一番の実力者だと見抜いたようで、先に無力化してしまう。

それを目の当たりにしたユキカゼがブリオッシュに駆け寄ろうとしたら、いきなりレオがそれを止めてきた。

 

「レオ様、何をする気でござるか!?」

「こやつは儂自らが倒す。結果的に儂がこの物を強くしてしまったのだから、その尻拭い位自分でやらんでどうする?」

 

レオは口ではこう言っているが、内心ではあることを考えていた。

 

(目的が殺戮と侵略、まさかこいつが?)

 

そして、一瞬何かを心配するかのような顔をするが、それを振り切ってディガルドに名乗りを上げる。

 

「儂の名はレオンミシェリ・ガレット・デ・ロワ、ガレット獅子団領国の領主じゃ。儂を利用した罰、儂自ら与えてやろう!!」

「領主? 国ってことはお前王族か。王族自ら侵略者の撃退とは面白れぇ!!

 

ディガルドは自分に立ち向かってこようとするレオを前にして、自らも臨戦態勢に入る。

どこに仕舞っていたのか、黒い三又の槍を取り出して構えてきた。

 

「どおりゃああああああああ!!」

 

レオは斧を振りかざしてディガルドに向かって駆け出す。

すると、ディガルドはブリオッシュを拘束した時と同様に黒い魔力を放出し、それを槍に纏わせる。そして、その槍で一閃を放つ。

 

「な…」

「何だ、その攻撃は? 目を瞑ってても防げるぞ?」

 

ディガルドは槍の一線でレオの斧を破壊してしまった。

 

「そらよ!」

「がはぁ!?」

 

レオが動揺している間に彼女の腹に蹴りを入れるディガルド。

 

「もういっちょ!!」

 

更に魔力を左手に込めて掌底を放つ。

 

「これで最後!!」

「ぐぁああ!?」

 

止めに回し蹴りを叩き込んでレオを吹っ飛ばす。もはや戦いではなく一方的な暴力であった。

吹っ飛ばされたレオは先程のブリオッシュ同様壁に激突、インナーだけを残して装備の全てがはじけ飛んだ。

 

「そんな、レオ様が一方的に…」

「イヤ、違うでござる」

 

驚愕しているリコッタを尻目に、ユキカゼはそれを否定している。

 

「ユッキー、どういうことでありますか?」

「レオ様は焦っている様子が見えたのでござる。それで本気の実力が出せなかったようでござるよ」

 

ユキカゼの分析から、レオがディガルドに一方的に倒された理由がわかった。

リコッタは、そのユキカゼの言葉に一を疑った。

 

「レオ様が戦いの場で焦る。一体どういうことでありますか?」

「あの男はレオ様に大きな不安があると言っていたでござるが、何か関係が…」

 

 

 

「大見得切った割に呆気なかったな。まあ、見せしめ程度には…」

「待てぇ!!」

 

すると、今度はゴドウィンがディガルドを呼び止める。その時の彼の目には、ブリオッシュと戦った時以上の闘志が見えた。

 

(もしもこいつがこの場を離れて殿下に目を付けたら……その前に倒さねば!!)

 

ゴドウィンはガウルまでがディガルドの凶刃に晒されるのを防ぐために、彼をこの場で止めようとしていたようだ。

この様子から、ゴドウィンがいかにガウルを慕っているのかがよくわかる。

 

「(殿下の存在を知られぬように…)貴様ぁ、よくも閣下を!!」

「将軍、待つでござる!!」

 

ゴドウィンはガウルの存在を悟られないようにレオの敵討ちという建前で戦いを挑む。念のために言っておくが、レオにも忠誠は誓っているがガウルに対しての忠誠心の方が強い、それがゴドウィン・ドリュールという男だ。ユキカゼの制止も聞かず、ゴドウィンは鉄球を構えだす。

紋章を発動したかと思うと、鉄球を勢いよく振り回しだした。回転が続くに連れて、鉄球に輝力が充填されていく。

 

「へぇ、おっさんもやる気か」

 

ディガルドは両腕に魔力を込め、それを前に突き出してゴドウィンの攻撃を真正面から止めようとする。

 

「鉄球・剛速球!!」

 

ゴドウィンが技名を叫ぶと、振り回していた鉄球をディガルド目がけてブン投げる。

 

「ふん!!」

 

だが、ディガルドはそれを受け止めてしまった。両腕をコーティングしている魔力はよほどの硬度があったのか、鉄球と衝突したら爆発音のような轟音を立てていた。

 

「すげぇ威力だな。腕にジンジンときやがる」

 

しかし、ノーダメージという訳でもないようで、表情にはわずかな曇りがある。

 

「だが、こんな隙だらけの攻げ…」

「ぶるぅうあああああああああああああ!!」

 

ディガルドの言葉を遮り、ゴドウィンが雄たけびを上げながら斧を振り上げて飛び掛かる。

 

「何!?」

「くたばれえええええぇぁああああああああああああああ!!」

 

大技を繰り出してきた直後に仕掛けてくる余裕があったゴドウィンに対して驚いたディガルドは、反撃や防御が出来なかったので回避に回る。

ディガルドがその場から離れた直後にゴドウィンの斧が振り降ろされたが、それによって地面の石畳が吹き飛び、更に攻撃の余波でその辺り一帯に地響きまで生じた。

 

「まだまだあああああああああ!!」

 

攻撃はそれだけでは終わらず、ゴドウィンはすかさず地面に放置されていた鉄球を手に取る。そしてディガルドを目がけて投げつけた。

ディガルドは跳んできた鉄球を避けようとするが…

 

「ぬぅああ!?」

 

反応したタイミングが遅く、避け切れずに左腕に鉄球の一撃を喰らう。

その時、辺りにいた面々の視線がその左腕に集中した。

 

「な!?」

「え!?」

「な、なんじゃと…」

 

皆が驚愕に満ちた表情でディガルドの左腕を見ていたが、それもそのはずだ。

腕の関節が逆方向に曲がり、手首の関節が無い個所まで曲がっている。

フロニャ力が働いているはずなのに、ディガルドは大きな傷を負ったのである。

 

「やりやがったな、てめぇ!!!」

 

だが、ディガルドはそんな周りの状況を気にも留めず、怒りに満ちた形相で右腕に魔力を集める。

魔力はシンク達が紋章に輝力を収束させるよりもはるかに速いスピードで収束され、黒い塊に変化した。

 

「ゴドウィン、離れろ!!」

 

レオが我に返って叫ぶが、既に遅かった。

 

「消し飛べ!!」

 

ディガルドが魔力の塊を目の前のゴドウィンに向けて射出、それをもろに食らったゴドウィンは凄まじい勢いで吹き飛ばされ、壁に激突。しかもその壁を突き破ってライ達がいるエリア、更にはそれすらも突き抜けて砦内のシンクとガウルが一騎打ちをしているエリアまで吹き飛んで行ったのだった。

 

「な、何だ今のは…」

 

突然何かが壁を突き抜けて飛んできたため、エクレールとノワールも思わず戦闘を中断する。

 

「あの野郎ぉ…ん? まだ他にもいたのか」

 

突き破られた壁の先からディガルドが現れる。

その姿を見て真っ先に反応したのは、ライとミルリーフだった。

 

「な、何でこんな所に悪魔がいるんだ?」

「今の攻撃も、この人が…」

「…そこの人間、悪魔を知ってるっつうことは、リィンバウムの人間か」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方、シンクとガウルの一騎打ちはいまだに続いていた。単槍二本で攻めてきたシンクに対して、ガウルは壁に掛けてあった剣で対抗している。

 

「勇者、さっきコンサートがあるって言ってたけど、マジなのか?」

「そうだよ、未遂に終わったけどあのまま姫様が誘拐されてたら台無しになったじゃないか…」

「畜生、ジェノワーズのアホどもめ。適当な仕事を…」

「何をゴチャゴチャと!」

 

応戦しながらシンクにコンサートについての質問をしてきたガウル。この様子から、彼はコンサートのことを知らなかったらしい。

だが、シンクは急いでいたのでその様子に気付いてはいないようだった。

すると、その時…

 

―ドカーンッ―

「「!?」」

 

いきなり壁が爆発して、何かが飛んできた。二人が飛んできた物を見ると、やたらと大きいけものだまだった。

 

「ゴドウィン!! なんでだま化してんだ!?」

 

突き飛ばされてきたのがだま化したゴドウィンだと解り、驚愕するガウル。自分の臣下で実力者の男がそのような目に遭っているのだから、当然の反応だろう。

突然の事態に驚いた二人は一騎打ちをやめて、ゴドウィンが飛んできた方向へと駆け寄る。

 

「ライさん、一体何があったんですか!?」

「ああ、シンクか。ちょっとマズイ状況になっちまってな」

 

苦虫を噛み潰したような表情でシンクに話すライ。

 

「お前が姉上を倒した乱入者か?」

「姉上? じゃあ、お前がガウルって王子か」

「まあな。で、話は変わるがアイツは何だ? 多分、ゴドウィンをやったのもアイツだろうが…」

 

ガウルはライに対して、目の前にいるディガルドについての説明を求める。

すると、ディガルドの方がシンク達に反応する。

 

「へぇ、まだいたか。お前等には名乗ってなかったから名乗ってやろう。俺はサプレスの悪魔ディガルドだ」

 

ディガルドの名乗りを聞いて驚くシンク。

 

「悪魔!? あの、願いを叶える代わりに魂寄越せっていう…」

「…シンクの世界で悪魔がどういうのかは知らねえけど、少なくとも違いそうだな」

 

ライはシンク達に悪魔の簡単な説明をする。

 

「悪魔は負の感情を食って力を高める種族で、人間に協力的な奴もいるけど大多数が他の種族を敵視している」

「なるほど」

 

それを聞いていたガウルとエクレールも臨戦態勢に入りながらライの話の結論を出す。

 

「あそこにいる男は」

「その大多数の内一人ってことか」

「まあ、そうだな」

 

そこに、ノワールも加わり、シンクもパラディオンを棒に戻して構えなおす。

 

「…ガウ様、私も戦う」

「あの人が危険なら、僕もやります」

 

実質五対一となっているが、ディガルドは余裕そうな表情でいる。

 

「さて、ここは纏めてぶちのめして見せしめになってもらおうか」

 

ディガルドは再び槍を取り出し、更に魔力を纏って完全戦闘態勢になっている。

ミオン砦戦、決戦の時だ。




今回は将軍に活躍させました(結局負けましたが…)
作中の描写でもはっきりしましたが、悪魔はフロニャ力の効果がありません。ちなみに、ポムニットさんだと半魔なので効果半減で済みます。

そういえば、まだ勇者召喚初日でしたね。
ストーリー進行が遅い(T_T)…
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