サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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今回は戦闘シーンが過去の執筆で一番長かったので、苦戦しました。それでは、どうぞ。


第12話 悪魔との戦い Battle of Heroes

ライ達は総じて構えを取った状態のまま動きが無い。この場にいる面々はディガルドの実力を知らないため、全員が警戒しているようだ。

 

「おっと、そういや忘れてたな」

 

いきなり、何かを思い出したかのようなそぶりを見せるディガルド。槍を地面に突き刺して、右手をポケットに突っ込んだと思ったら、サモナイト石を取り出した。

召喚術の適性は、リィンバウムの住人ならランダムで一つ、それ以外の世界は出身世界の召喚術の属性、という具合に一人一人で決まっている。例外として、エルゴの王を始めとした伝説の召喚師や、名もなき世界(シンクが住んでいた地球)は全ての属性の召喚術が使える。

ディガルドはサプレスの悪魔であるため、適性のある属性は霊となっている。

 

「俺の傷を癒せ、聖母プラーマ」

 

ディガルドが召喚したのは、慈愛の笑みを浮かべた細目の金髪美女だった。この召喚獣、聖母プラーマは癒しの魔力を持っており、回復系召喚獣の代名詞ともいうべき存在である。

プラーマは自身を召喚したディガルドの左腕に両手をかざし、そこに癒しの魔力を集中して当てる。

 

「召喚術まで使いやがるのか」

「まあ、色々あって使える術が限られてるんだがな」

 

ディガルドも流石に二度も同じ説明をする気は起きなかったようで、ライ達への説明は省略している。

骨を折られて力なく垂れ下がっていた左腕は、プラーマによって全開状態となり、いつでも戦える状態となった。

 

「さて、こっちは準備万端だ。いつでも来な」

 

ディガルドは再び槍を手に取り、ライ達を誘う。だが、皆が警戒して全く動かなかった。

 

 

「来ないのなら、こっちから行かせてもらうぜ!!」

 

痺れを切らせたディガルドが仕掛けてくる。

 

「な!?」

「喰らえ!」

 

ディガルドは凄まじい勢いでシンクとの間合いを詰めて刺突を放つが、シンクは咄嗟にパラディオンを構えてそれを防ぐ。だが、ディガルドの放った刺突は予想以上の力であったため、再びパラディオンが折れてしまう。

その瞬間をチャンスとばかりにディガルドは槍を引き、更に思いっきり振りかぶって、そのまま槍を振り下ろしてきた。だが、シンクは咄嗟に折れたパラディオンを再び短槍へと変えて、それを交差させてディガルドの一撃を防ぐ。

 

「裂空十文字!!」

 

エクレールがその隙に紋章剣で攻撃を仕掛ける。紋章剣は真っ直ぐにディガルドへ向かって飛んでいく。

 

「そんなもんぶっ放していいのかなっと!!」

 

直後、ディガルドは槍を引いてその場で大ジャンプし、その先にはシンクが無防備な状態で立っているのみ。

 

「うわぁあ!?」

「しまった!!」

 

エクレールの紋章剣はシンクに直撃、爆発が生じる。爆炎が晴れるとシンクが立っており、マントと上着が弾け飛んでいる。幸い、フロニャ力のおかげで防具破壊以外の被害は出ていなかったようだ。

 

「隙だらけだぜ、小娘!!」

 

エクレールが真上からの声に気付いて空を見上げると、ディガルドが槍を向けながら彼女を目がけて、落下の勢いによる攻撃を仕掛けようとする。

 

「どらぁあ!!」

「うぉ!?」

 

丁度その時、ガウルが現れて飛び蹴りを放つ。咄嗟の事態に反応でき無かったディガルドは、そのまま蹴りを喰らって吹っ飛ばされる。

 

「喰らえ!」

 

その吹っ飛んでいるディガルドを見たノワールは、チャンスとばかりに何本ものナイフを投げる。

 

「やべぇ!?」

 

ディガルドは空中で器用に体勢を整え直し、左腕で払いのける仕草で魔力を放ち、それで跳んできたナイフを全て防ぐ。ちょうど防御が終わったところで地面に着地した。

 

「お返しだぁ!!」

 

もう一度左腕に魔力を込め、それを放ってノワールに反撃するディガルド。だが、いきなり彼女の姿が消えて、攻撃はそのまま塀にあたって爆発する。

すると、ディガルドの背後にノワールが現れ、ナイフで斬りかかろうとする。

 

「そこか!」

 

だが、ディガルドはすぐに気付き、振り向くと同時にバッティングの様に槍をおもいっきり振りかぶる。距離が近かったこともあり、槍の刃ではなく柄があたったが、悪魔の身体能力もあり、ノワールは吹っ飛んで壁に激突。

 

「ノワ!」

「ガウ様、ごめん。リタイア」

 

ノワールはディガルドの攻撃によるダメージを負い、ぶつかった時の衝撃で着ていた服も破けて下着姿になってしまい、戦闘不能状態となる。

ガウルも、羞恥心など無視してノワールの快方に向かって一時離脱する。

 

「服が破けただけか? もっと血とか流してもおかしくはない筈…」

 

その一方、ディガルドはノワールの様子を見て思案している。隠れてフロニャルドの観察をしていた&本人がその恩恵を受けないこともあって、フロニャ力の存在やその効果を知らないようだ。

 

「隙あり!」

「うげ!?」

 

思案中だったディガルドを見て、ライは飛び掛かって剣を振り下ろす。咄嗟のことで驚きこそしたものの、どうにか回避するのに成功する。

しかしライの攻撃がそれで終わるはずもなく、そのまま縦、横、斜め、と斬撃を放ちまくる。だが、その後持ち直したディガルドも、槍の柄で攻撃を防ぎつつも突きを放つ、薙ぎ払う、といった攻撃で反撃する。

一対一だとこのまま苦戦を強いられるだろうが、ライ以外にも戦力はまだいる。

 

「さっきはよくも!」

「行くぞ勇者!」

 

更にシンクがこのタイミングで復活し、エクレールと二人で飛び掛かる。

 

「オララララララララララ!!」

「ハアアアアアアアアアア!!」

「でやあああああああああ!!」

 

ライは剣を高速で振っての連続斬り、シンクは二本の短槍による連続突き、そしてエクレールの二刀流による連続斬り、三人による猛攻でディガルドは一気に防戦一方へと追い込まれる。

 

「クソ。勿体ねえが、仕方ねえ!」

 

ライ達から距離を置いたディガルドは、数個のサモナイト石を取り出して、何かを始める。

 

「誓約の下に現れよ、タケシーども!」

「「「「「ゲレレーー!!」」」」」

 

ディガルドが行ったのは誓約の儀式だったようで、サモナイト石と同じ数のタケシーが召喚された。

タケシーは下級の雷精で、サプレスの召喚銃としてはメジャーな種族である。その分、野生化したはぐれ召喚獣としてもよく見かけるのだが。

今回は数の差を埋めるために、緊急で複数体召喚したようだ。

 

「タケシー軍団、こいつらの相手をしろ!」

「「「「「ゲレレレーー!!!」」」」」

 

タケシーはディガルドの命令を受けると、何体かがライ達の方に突撃していく。

 

「な、なんだコイt「ゲレー」ヒッ!?」

 

突然接近してきたタケシーに動揺するエクレールだったが、直後にタケシーが舌で舐めてきて思わず固まる。

だが、それだけでは終わらなかった。

 

「ぐあああああ!?」

 

後ろに待機していたタケシーが雷を落とし、それがエクレールの直撃したのだ。それによってエクレールは感電し、服も破れてインナー姿になってしまう。

 

「エクレール!」

「シンク、よそ見するな! エクレールの二の舞になるぞ!!」

 

ライの言う通りだ。実際、このタケシー達は連携が取れており、近距離のタケシーに気を取られていると雷撃を受けてしまうが、後方のタケシーには近距離の方が近づけさせてはくれない。マズイ状況である。

 

「おらー!」

「いけー!」

 

すると、ガウルが獅子王爪牙で雷撃担当のタケシーに攻撃、ミルリーフも召喚したメイトルパの召喚獣ポックルの攻撃でタケシーを落とす。

 

「ミルリーフ、ナイスタイミング!」

「王子もありがとう!」

 

ライとシンクは二人に礼を言いつつ目の前のタケシーに攻撃を放って撃破する。倒されたタケシーはそのまま目を回して気絶し、いきなり消滅した。おそらく、送還されたのだろう。残る敵はディガルドだけになった。

だが……

 

「残念。お前らがタケシーどもに気を取られている間に準備は終わったぜ」

 

ディガルドは余裕の笑みを浮かべながらそう言っており、彼の体のある一か所に魔力が集まっている。

 

(口? なんでそんなところに?)

 

ライの疑問だが、その答えはすぐに出た。

 

「ハァアアア!」

 

ディガルドが大きく息を吐き出したかと思うと、黒い煙のようなものが口から噴き出した。すると、その煙が辺り一帯を覆い尽くす。

 

「な、なんだ?」

「目くらましのつも、り、か…」

 

煙を浴びたガウルとエクレールがいきなりふらついて、膝をついてしまう。

 

「パパ、なんか頭が…」

「ああ、オレも立ち眩みが…」

 

ライとミルリーフも、エクレール達ほどではないが煙による異常を訴える。すると、ディガルドが律儀に説明を入れてきた。

 

「こいつは触れた相手の生命力を徐々に削り取る瘴気で、俺が独自に作った技だ。まあ、まだ未完成だから動くのに支障が出る程度しか効果は無いんだがな」

 

それを説明しながら、翼を広げて宙に上がるディガルド。

 

「しかし、お前等の場合は進行が遅いみたいだな。まあ、逃げる分には問題ねえが」

「てめぇ、逃げんのか!」

「野望のためにも捕まるわけにいかないんでな! じゃあ、次は確実に殺すからな」

 

そのまま捨て台詞を吐きながら、塀を超えるために高度を上げようとするディガルド。

 

 

「裂空一文字!」

「ぬおお!?」

 

いきなりディガルドを目がけて攻撃が飛んできたため上昇を阻止されてしまう。技名から察して、使った人物は当然…

 

「待たせたでござるよ」

「ダルキアン卿!」

 

ブリオッシュが刀を片手に佇んでいる。

それを見て、拘束した本人であるディガルドは驚いている。

 

「何!? あいつは俺が拘束したはず、一体どうやって?」

「拙者が解除したでござるよ。初めて見た術だったから時間は掛かったでござるが」

 

ユキカゼが自信満々にそう言う。何故彼女がそのようなことに詳しいのかは解らないが、今はそれどころではなかった。

 

「チ、これ以上魔力を消費したくなかったが…」

 

ディガルドは悪態をついた後、槍に魔力を纏わせて塀に向けて投げつける。

すると、塀の上半分がそのまま崩壊、ディガルドはそのまま若干高度を上げただけで塀を飛び越えていった。

 

「クソ、上手く立てれば撃ち落とせたのに…」

 

妖精の血を引くライや、至竜であるミルリーフは魔力耐性によってエクレール達ほど酷くはないが、立ち眩みのせいで上手く戦えない状態である。

そんな中、一人だけまったく効果のない人物がいた。

 

「勇者、貴様は何で平気なんだ?」

「それが僕にもさっぱりで…」

 

何故かシンクはディガルドの瘴気が全く効果が無く、シンク本人にもその原因がわかっていないらしい。

響界種であるライにも少なからず影響を与えた技がただの人間であるシンクに全く効果がない、これにはライもミルリーフも驚かされているようだ。

 

「まさか…」

 

そんな中、ガウルがその原因について気が付いたようである。

 

「ガウル殿下、何か解ったんですか?」

「もしかしたら、パラディオンが所有者である勇者を守ったのかもしれない」

「え? 宝剣って要は武器だろ。なんでそれが?」

 

ライの疑問は尤もだが、ガウルにも根拠はあるらしい。

 

「姉上から聞いたことがあるんだが、フロニャルド諸国に伝わる宝剣には固有の意思があるらしい。たぶん、それが勇者を守ろうと力を発して、あいつの技が効かなかったんじゃないのか?」

「ありえない話ではないでござるな」

 

ガウルの立てた仮説にブリオッシュが同意し、一応の原因解明が終わった。その直後、ライが皆に向き合ってあることを指摘する。

 

「ところで、アイツをこのまま放っておいたらまた何か事件を起こすのは確実だ。まだそんな遠くに行ってなはずだから、追っかけて仕留めた方がいいと思うんだが」

「ライ殿の言う通りでござるな。何かいい手はないでござるか?」

 

皆が思案している中、シンクは先程のガウルとの戦いを思い出し、それをもとに何かを思いつく。

 

「ライさん、あいつを追いかけるいい方法を思いつきました!」

「お、良い手があったか」

「勇者、どうやって追いかける気だ?」

「俺も興味あるな」

 

シンクのアイデアに、エクレールやガウルも興味津々である。

 

「じゃあ、こんな感じで」

「え!? シンク?」

 

早速その方法を実践するシンク。まず彼が取った行動は、なんとライをおぶるというものだった。

 

「その名も、勇者超特急!!」

 

安直すぎるネーミングに、呆然としてしまう一同。その一方、ライはシンクがたぶん自分と同じくらいの体重であろうと思い、そんな自分をおぶって立てるところに感心していた。

 

「え~っと、王子……ゴメン、名前なんだっけ?」

「覚えておけよ! ガウルだよ!!」

 

シンクは戦を終わらせるのに躍起になっていたのか、ガウルの名をいまいち覚えていなかったようだ。

 

「ガウルの輝力武装を参考にした技だから、大丈夫!」

 

そう言いながら自分の両足に輝力をため込むシンク。準備は万端のようだ。

 

「じゃあ、僕が追いかけるのに専念するので、ライさんは攻撃をお願いします」

「ああ。けど、この状態じゃ銃撃以外の攻撃が使えねえぞ。それだけじゃ決定打が喰らわせられねえと思うんだが」

 

ライの心配は尤もだったが、その心配は無用だった。

 

「大丈夫ですよ。他にもとっておきがあるのでその時に出します」

「なるほど。じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」

「うん。パパ、行ってらっしゃい!」

 

ライが皆に言うと、代表としてミルリーフが口を開く。

そして挨拶が済むと、シンクが足に溜め込んだ輝力を爆発させて、大ジャンプする。

 

「行ってきまーーーーーーーーーーーす!」

 

ライをおぶった状態でシンクは叫びながら跳んでいき、そのまま砦の塀を超えていく。本来の高さなら届かなかったが、ディガルドが上部分を砕いていたおかげで、シンクもそこを飛び越えることが出来た。

 

「そういえば、ミルリーフはどうする気でござるか?」

 

ユキカゼが残っていたミルリーフに対して尋ねる。

 

「あとでパパたちを回収するために魔力の回復。ついでにみんなをコンサートに連れて行けるから、後でリコを呼んでくれるかな?」

「わかったでござる。ところで、さっきの竜を呼ぶのでござるか?」

「ううん、流石にもう一回呼ぶのは気が引けるから別の方法で」

 

リコッタとの会話を終えたミルリーフは、ポケットからキャンディーを取り出して口に含む。何故かリィンバウムのキャンディーには魔力を回復する力があり、召喚師達の必需品となっている。

 

「食べる? ちなみにメロン味だよ」

「いただくでござる」

「イヤ、私はいい」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方、ブリオッシュはレオが休んでいるところにやって来た。

 

「少しいいでござるか、レオ姫」

「じゃから今は領主だと言ったであろうか」

 

相変わらずレオは姫と呼ばれるのは嫌らしい。なので、ブリオッシュもいい加減呼び方を変えることにした。

 

「時にレオ様、我が国に侵略を繰り返されているそうでござるが?」

「それがどうした。平時通りの儂らガレットの戦興業じゃ」

 

ブリオッシュは話に聞いていたガレットの異常な侵略行為について聞いてみるが、あまりいい答えは返ってこなかった。

 

「レオ様の侵攻に、我が国の真面目な騎士団長が頭を悩ませております。姫様のコンサートを始めとした一般イベントを行えないとのことで…」

「それがどうした!!」

 

すると、いきなりレオが声を荒げる。

 

「貴様らの国の犬姫が開催する、秋の芋掘りバトルだの、海水浴もどき水上戦で若者の英気を養えるか!」

「……イヤ、中々楽しそうでござるが」

 

レオの不満に対するブリオッシュの答えは、間違ってはいない筈だ。

 

「誰も楽しくないと言うとらん。それだけではいかんと言っておるのじゃ」

 

声を荒げて告げるレオに対して、ブリオッシュは冷静に対応する。

 

「まあ、ウチの姫様にも至らぬ点はありましょうが、年と経験を重ねればもっと立派な領主になられる筈です。ですから、いましがたお待ちを…」

 

その時、ブリオッシュはレオの表情の変化に気付く。

 

「それが出来たら、どれだけいいものか…」

 

その時のレオの表情は、とても辛そうだった。それを見てブリオッシュは、何かを感じ取る。

 

「ともかく、おしゃべりはここまでじゃ。何があろうとも、儂は儂の道を行く」

 

そのままレオは立ち上がって、ドーマに跨って砦を後にした。




次回でようやくミオン砦編完結です。
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