サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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やっとミオン砦編完結です。
長かった……

コンサートの終りまで一気に進めさせてもらいました。
そして、ライの単独での必殺技を出させてもらいました。


第13話 決着と一日の終り Go to the Concert

ミオン砦を脱出したディガルドは、そこから離れたところの平原を飛んでいた。

 

「しかし、この世界は本当によくわからんな。メイトルパの亜人に似た種族がリィンバウムの人間みたいな生活様式で暮らしているうえ、あの黒猫女に重傷とみられる傷はなかった…」

 

飛行中も考え事をしているディガルド。フロニャルドという世界そのものを不可解に感じているらしい。リィンバウムとそれらを囲む四界はそれぞれが独自の文化を持っているが、フロニャルドは種族と文化の組み合わせがそれらに比べると異質なようだ。

 

「まあ、それはどっかの町の襲撃でもして無理やり聞き出せばいいか。最悪、血識でもぶんどりゃ問題ねえだろ」

 

かなり物騒なことを口に出しながら自己完結するディガルド。

 

「? なんだ、この音?」

 

ディガルドは、背後からドドドドッという音が聞こえるのに気付く。しかも、だんだんと音も大きくなっているようだ。

気になって振り返ってみると…

 

 

「待てええええええええ!!」

「何!?」

 

背後から追ってきたのは、ライをおぶった状態で全力疾走しているシンクの姿だった。シンクの新技、勇者超特急は想像以上のスピードを出していたのである。

 

「シンク! もう視界にあいつが入ったけど速すぎねえか!?」

「だからこその超特急ですよ!」

 

ライもクロックラビィという召喚獣を憑依させてスピードアップをしたことは何度もあるが、生身の人間でこのスピードを出すのは流石にすごかったようだ。

 

「まあ、これで攻撃が入るな」

 

ライはおぶられた状態で銃を構える。モードは単発、威力は反動を考えて標準、スコープは残念ながらついていないので片目を瞑ってディガルドに狙いを定める。

 

「クソ、追ってくんじゃねえ!!」

 

ディガルドがこちらに振り返って、両手に魔力を集めて、それを交互に発射してくる。

だが、攻撃が直線的だったので、シンクはそれをいともたやすく避ける。

 

「シンク、上手いこと避けたな」

「今日一日戦ったんですから、体が覚えますよ!」

 

しかも余裕そうにライと会話までしている。彼の言うこともあながち間違いではないようだ。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

ライは叫んだ直後、二、三発ほど続けて発砲する。だが、ディガルドも槍を手に取る。剣と違って面積が小さいので銃撃などの防御には向かない筈だが、弾丸が飛んでくるのに合わせて槍を振るい、弾いて行く。ディガルドは悪魔であることが関係しているのか、身体能力と同様に動体視力が高く、夜目も効いているようで、このような芸当が出来たようだ。

 

「やっぱこの状態じゃ、決定打に欠けるな」

「だったら、もっとあいつに近づくだけです!」

 

ライの悪態を聞いたシンクは、足に更に輝力を込め、またも加速した。

 

「何! まだ加速するのか!?」

 

シンクの急な加速に驚愕するディガルド。

そんな中、シンクにおぶられているライはあることを思い出す。

 

「シンク、確か輝力は使い過ぎると疲労がたまるらしいけど、大丈夫なのか?」

 

昼間の戦でエクレールから紋章砲の使い方を教わった際、シンク自らが実感したことである。

ライの心配に対するシンクの答えは…

 

「今は大丈夫です。それに、そうなる前に勝てばいいだけです!」

「…オーケー。それでいく!!」

 

そのまま一気に走っていき、ディガルドとの間合いを詰めていく。

 

「このままじゃヤベェ……ってなんで俺は相手に合わせてんだ!?」

 

ディガルドが何かに気付いて叫んだと思うと、翼をはばたかせて高度を上げ始めた。

 

「え、高!?」

「マジかよ!」

「お前らが追ってきたのに驚いて忘れてただけだ! 見くびんじゃねえ!」

 

そのまま一気に上空へと飛び上がってしまい、こちらの攻撃が届かない範囲に逃げられてしまう。

 

「おい、シンク! あいつを何とか追えねえか!?」

「例のとっておきで追えないこともないんですけど、条件が揃わないと…」

 

すると、シンクの視界にあるものが入った。それは、形が傾斜状になっている大きな岩だった。

 

「ライさん、早速揃いました!」

「何? どうするんだ?」

「時間も惜しいので、実践で!」

 

シンクは会話を打ち切って、走りながらジャンプ、その場で足元に輝力を集める。そして、それを何かの形に押し固めたかと思うと、輝力を炎のように噴射するサーフボードのような形状の乗り物へと変化した。

結構面積も広いので、シンクはライを乗り物の上に降ろす。

 

「シンク! なんかすげえのが出たんだけど!?」

「名付けて、滑空ボード、トルネイダー! これを使って…」

 

そのままトルネイダーの進路を変えて、先程の岩が眼前に見える位置に移動する。

 

「ライさん。一気に行きますから、!」

「へ?」

 

何をどうするのかと聞く前に、シンクは輝力をトルネイダーに溜め込む。

 

「ブーストライドォー!!」

 

シンクの掛け声に合わせて、トルネイダーは矯め込んだ輝力を炸裂させて加速、そのまま眼前の岩の傾斜を勢いよく登っていき…

 

「行っけーーーー!!」

「うおおおおおおおおおおお!?」

 

そのまま斜面を登り切ったトルネイダーは、勢い余って上空へと上昇、つまり飛行に成功したのだ。

シンクの考えた出鱈目な飛び方に、ライも振り落されそうになったが、どうにか踏みとどまれた。

 

「シンク、こんなんなるならなるって最初から言え!」

「すみません、説明してる余裕がなくって。それと使わないに越したこともないんで」

 

シンクに対して怒鳴るライだが、若干震えている。よっぽど驚いたようだ。

 

「あとは……いた!」

 

シンクは辺りを見回して、ディガルドを発見する。一方、ディガルドもこちらに気付いたようだ。

 

「こんなとこまで追いかけて来るか」

「逃がすか!」

 

ディガルドは飛行速度を上げて逃げ切ろうとするが、シンクもトルネイダーを加速させて追いかける。

その最中、ライはディガルドを倒すのにいいアイデアを思いつく。

 

「シンク、止めは任せろ」

「何かいい手はあるんですか?」

「ああ。輝力銃を使って思い付いたことなんだけど、上手くいけば倒せるはずだ」

「え? それって」

「はあ……」

 

ライは剣を両手持ちにして、そこに何と魔力と輝力を溜め込み始めたのだ。先程、輝力銃を使って思い付いたと言ったのは、どうやらこの手段のようだ。

魔力を腕力に置き換えて攻撃するマジックアタックの応用と、「単純に輝力を物に溜め込み、ぶつけて炸裂させるだけなら紋章や術式は必要ないだろう」という考えだったようだが、上手くいったようだ。

それによって剣は、ライの魔力で一番相性の良いメイトルパ属性の緑の魔力が輝力と混ざり合い、美しい深緑の輝力光を纏っている。

 

「おいおい、なんかヤバそうだな。だったら俺もとっておきで!」

 

ライの様子を見たディガルドも、槍だけでなく右腕全体に魔力を纏わせる。それによって、槍と右腕全体がサプレスの属性を意味する紫の魔力光を発している。

ディガルドはありったけの魔力を込めたようで、ついに息切れまではじめてた。

そして、二人は同時に必殺技を放つ。

 

「「必殺!」」

 

そのままライはトルネイダーを足場に大ジャンプ、月をバックに剣を振り上げて叫ぶ。

ディガルドも槍を持った腕を後ろに引き、迎撃態勢に入る。そして、ライが射程内に入ったと認識したら、技名を叫びながら一気に突きを繰り出す

 

「デモンズジャベリン!!」

 

ディガルドの突きを放つと同時に腕を覆っていた魔力は槍に集まり、突きそのものが巨大になってライを貫こうとする。

だが、ライも新たな必殺技を放っている。召竜連撃と違ってライだけで使う新たな必殺技だ。

その名は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響・界・斬・魔・剣!!」

 

技名を叫んだライは、勢いよくディガルドの突きに向かって剣を振り降ろす。すると、振り下ろされたと同時に剣先から魔力と輝力が混ざった膨大なエネルギーが放出された。

 

「ぬ、おおおお……」

「おおおおおおおおおおおおお!」

 

二人の放ったエネルギーは激突、そのままお互いを飲み込もうと拮抗状態になる。互いの技の激突により、バチバチと電流が走るような音が鳴る。

そして、ついに片方の技が打ち消された。

 

 

 

「何!?」

 

打ち消されたのは、ディガルドのデモンズジャベリンだ。

 

「喰らええええええ!!」

 

ライの響界斬魔剣は、ディガルドの技を打ち消してもなお勢いは衰えず、そのままディガルドを飲み込む。

 

「ぎゃああああああああああああああ!?」

 

エネルギーに飲み込まれながらディガルドは断末魔を上げ、そのまま吹き飛ばされる。

悪魔ディガルドを、響界者ライが見事打ち倒したのだった。

 

「………って、これヤバくね?」

 

ふと、ライはこのままでは落下して地面に激突してしまうことに気付く。ここのフロニャ力の強さは解らないが、もし弱かったら落ちた衝撃で死んでしまうのは確実である。

だが、その心配は無用だった。

ドシュッという音と同時にトルネイダーがライの落下先に回り込み、シンクがライを受け止めたのだ。

 

「ふう、ナイスキャッチ!」

「シンクか、助かった」

 

ライは、とりあえず助けてくれた礼をシンクに言う。

 

「ライさん、今の技すごかったですけど…」

 

シンクが指差しながら見つめているのは、ライの握っている剣だった。

なんと、刀身が丸ごと消し飛んでおり、柄もボロボロになっている。

 

「ああ。多分、紋章とかリコッタの改造みたいなやつとか使わなかったせいだと思う」

 

ライは、お紋章を介して輝力を運用した攻撃を使う理由がこれではないかと考えている。仮にそうでないにしても、輝力を魔力と混ぜてしまった所為で出来たエネルギーが普通の武器では耐えられなかったという線も考えられる。

 

「まあ、今度どうにかして紋章を手に入れるわ」

「その方がいいと思います」

 

次回から響界斬魔剣は紋章剣として使おうととりあえず決めておくライであった。技や紋章についてあれこれ話している内に地上に到着したため、そのまま着地する。

着地と同時にトルネイダーを解除するシンクだが、いきなり息切れを始めてしまう。

 

「はぁ、はぁ、すみません。いきなり疲れが…」

「緊張の糸が切れたんだろ。とりあえず休んどけ」

 

ライに言われて、シンクはとりあえず横になる。その状態のまま、シンクはライに話しかけた。

 

「ライさん。姫様との約束、果たせそうにないですね」

「あ、その、……突き合わせて悪かった」

 

コンサートの話を思い出した二人は、どっと落ち込んでしまう。

すると……

 

「パパー」

 

どこからともなくミルリーフの声が聞こえた。と思っていたら、今度は何かがはばたく音が聞こえだす。

ライが声のする方を向くと、何かに納得するような表情を浮かべる。そして、ライの視線の先にあったものがこちらの真上に来たことで、あおむけに倒れているシンクもその正体に気付く。

 

「うわああああああ!?」

 

それは巨大な竜で、思わずシンクも驚きのあまり叫んでしまう。

 

「ミルリーフ、まさかこっちでその姿になるとはな」

「こっちの方が早いからね」

「へ? ミルリーフ!?」

 

竜がミルリーフの声で喋り出すのを聞いて、シンクは更に驚く。

 

「ああ。実はあっちが本来のミルリーフの姿で、ちっこい方の竜は力を抑えたものだったんだよ」

「ええ!? 人間じゃないっていうのは昼間の戦の後で聞きましたけど、これは流石に…」

 

ライからミルリーフの正体を聞いて、もうどう驚いていいかわからなくなってしまうシンクだった。

 

「勇者様、迎えに来たでありますよー!」

「このまま姫様との約束をすっぽかす気か!」

 

背中からリコッタとエクレールの声が聞こえてくると思ったら、エクレールとユキカゼが降りてきた。この分だとブリオッシュも乗っていると思われる。

 

「みんな、迎えに来てくれたんだ。ありがとう」

「か、勘違いするな。お前がコンサートに来なかったら、姫様が悲しむからな」

「それでもありがとう」

「エクレ、とりあえず勇者殿に肩を貸してあげるでござるよ」

 

エクレール達に支えられながらシンクはミルリーフの背に乗る。ライもそれを見送って乗り込んだ。

ちなみに、ライ達の予想通りブリオッシュがすでに乗っており、酒をたしなんでいる。

 

「ところで、ガウルは?」

「ガウル殿下なら、レオ閣下のところに帰って行ったぞ」

 

それを聞いたライ達がエクレールに理由を聞いてみる。

 

「どうやら、姫様のコンサートについてご存じなかったらしくてな。責任を感じて、自ら折檻を受けるとジェノワーズ達を引き連れて帰っていったぞ」

「なんだ。意外と誠実な奴なんだな」

 

だからこその王族なのだろう、ともライは思うのだった。

 

「みんな乗ったね?」

「ああ。ミルリーフ、頼む」

「オッケー! リコ、案内おねがい」

「了解であります」

 

リコがフィリアンノ領までのナビを取り、ミルリーフは飛び立った。

 

 

 

ミルリーフの背に揺られながら、ライ達はフィリアンノ城の音楽ホールに向かう。

その際、ライはシンクにあることを話すことにした。

 

「なあ、シンク」

「? ライさん、どうしました?」

「姫様が、オレを自分の部屋に呼んだ時に話してたんだが…」

 

ライは、昼間にミルヒが話していたことについてシンクに話すことにした。

 

「姫様、お前の召喚についてすげえ後悔してたぜ。まだ、領主になって日が浅いから力不足なんだって、その所為でお前にも迷惑かけたってな」

 

ミルヒがシンクの召喚についてのことで自分を責めている、それを包み隠さず話すライ。

 

「あとで姫様本人に話すのは当然として、オレもここで聞いておく。お前にだって個人の暮らしがあるんだ、ぶっちゃけ迷惑じゃねえか?」

 

それを聞いたシンクは、表情を崩して笑顔になる。

 

「全然迷惑じゃないです。さっきみたいなアクシデントはありましたけど、呼んでもらって凄く楽しかったので、むしろ良かったです。それに…」

 

 

 

「ひよっこでも頑張ればきっと飛べる、毎日一生懸命ならきっと立派な大人になれる、僕の師匠の教えです。だから、姫様が領主になりたてのひよっこでも大丈夫ですよ」

「…そうか」

 

シンクの答えを一通り聞いたライは、再び口を開く。

 

「だったら、コンサートの後にでも伝えてやれ。そうすりゃ、姫様も安心すると思うぜ」

「はい!」

 

もう回復したのか、カラ元気なのかは不明だが、元気そうに返事を返すシンクであった。

 

「みんな、お城が見えて来たよ」

 

ミルリーフの言葉を聞いて一同が進行方向に視界を向けると、たしかにフィリアンノ城が見えていた。

 

「もう着いたのか! 思ったより早いな」

「その上乗り心地もよかったでござるよ」

 

エクレールがミルリーフの飛行速度に驚く中、ブリオッシュは呑気に乗り心地についての感想を述べる。

 

「ねえリコ、姫様のいる建物がどれか教えてくれないかな?」

「ああ、あそこの丸い建物でありますよ」

 

リコッタが指差す方を見ると、そこには円形の建物が立っているのが見えた。ネオンを発して一際目立ったので、すぐに分かった。

 

「オッケー! みんな、飛ばすからしっかり掴まってね!!」

 

そのままミルリーフは飛行速度を上げ、一気に音楽ホールを目指す。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方、音楽ホールの控室にて。

ミルヒはステージ衣装に着替えて出番を待っている。スカート部分を膨らませた真っ赤なドレスを着て、頭に赤い花飾りをつけたその衣装は、彼女にとても似合っている。

だが、彼女の表情は少し暗い。先程、エクレールが砦から通信を受けた際に、謎の乱入者の出現で戦が中止となり、現在シンクはライと二人でその相手を追跡中だと聞いたのだ。相手がこちらに敵意のある存在だと聞かされたため、シンクの身を案じているようだ。

すると、控室の扉からノックの音が聞こえたので、その当てを部屋に入れる。

 

「姫様、そろそろ時間ですよ」

 

入ってきたのは、タイトな服装の眼鏡をかけた、絵にかいたような秘書の出で立ちの女性だった。それもそのはず、彼女の名はアメリタ・トランペ。ミルヒの専属秘書官である。

アメリタから時間を知らされたミルヒは、ステージへと向かう。

 

 

 

『お待たせいたしました。ミルヒオーレ・F・ビスコッティ姫殿下、ご登場です!』

 

アナウンスと同時に暗かったステージに明かりがつき、その中央に佇むミルヒの姿が露わになった。

ミルヒは気持ちを切り替えて、表情を笑顔に変える。

 

「な、何だアレは?」

「こっちに向かってこない!?」

 

客席の方がざわめいたかと思うと、このホールに向かって何か巨大な影が上空から近づいてくるのがわかった。至竜形態のミルリーフだ。

そして、そのミルリーフはあっという間にホールの真上に来たかと思うと、まばゆい光を体から発する。

 

「はい、とーちゃーく」

 

光が晴れると、ミルリーフは人型形態になっており、上に乗っていたライ達一行と一緒にステージに着地する。

 

「…ちょっと、派手すぎたか?」

「まあ、いいではござらぬか」

 

苦笑しながら呟くライに、ユキカゼがフォローを入れる。

そして、その中からシンクがミルヒに近づいて行く。

 

「姫様、約束通りに間に合わせましたよ」

「勇者様!」

 

ミルヒはシンクが約束を守ったことから心底の笑顔を浮かべる。

そして、シンクは特等席に案内され、ライはその隣にあるエクレール達の座る騎士団用席に向かう。本当はライにも特等席が用意されていたのだが、エクレール達と話をしたいと言うことで、特別に騎士団関係者の席に座らせて貰った。ちなみに、ミルリーフは単純にライと一緒に居たいと言う理由だ。

 

「ライ殿、ちょっといいでござるか?」

「どうしました?」

 

席に向かう途中、ブリオッシュがライに話しかけてきた。

 

「あの、ディガルドという男についてでござるが…」

「とりあえず、倒しました。生死は不明ですけど」

 

ディガルドの命を奪ったかもしれない、ということを考えたライは後ろめたそうにブリオッシュに答える。

 

「あの男は確かに拙者達に一方的な敵意を持っていた。流石の拙者でも、あの男はこの世界の住人達とわかり合おいとはしないと思うでござる」

「はい。あいつは根っからの悪人が多い種族の生まれだから、その認識で間違いないと思います」

 

ブリオッシュはディガルドの本質を見抜いているようで、そのことをライに告げる。

 

「でも、もし生き残っていたら拙者達に任せてもらえないでござるか?」

「え?」

「拙者とユキカゼには秘密のお役目があり、あのものがそれに関わる可能性があるでござる」

 

あまり深く話せない事情がブリオッシュにはあるらしいが、それにディガルドが関わると思われるらしい。

 

「…わかりました。でも、オレが帰る日までにその時が来たら、協力させてもらいます。流石にオレの世界と無関係じゃないので、気になると言うか…」

「わかったでござる。その時は助けてもらうでござるよ」

 

話し終えるころにはライ達も席に付き、コンサートが始まった。

 

「今日の戦ではビスコッティに来てくれた勇者様、本来この国に呼ばれる筈のなかったにも関わらず協力してくれた勇敢な親子、そしていつも頑張ってくれている、この国の騎士達が勝利を運んでくれました」

 

ミルヒのスピーチからコンサートは始まる。勇敢な親子とは当然、ライとミルリーフのことである。

 

「今日の勝利を糧に、今日よりもっと素敵な明日を皆さんに送れる様に頑張る勇気を乗せて歌います。“きっと恋をしている”――」

 

最後に曲名を告げると、音楽が鳴り響き、それに合わせて観客たちが蛍光ライトを振る。それによってステージの灯りはより一層強くなった。

前奏が終わると、ミルヒの歌声がホール全体に響く。

その、優しく心が癒されるような歌声に、ライもミルリーフも思わず聞きほれてしまう。

のだが…

 

 

「なんか、思ったのと違うな」

「どうした、姫様の歌にどこか不服でもあるのか?」

 

不機嫌そうなエクレールの顔を見るなり、そのことについてライは否定する。

 

「イヤ、そうじゃなくてな。なんというか、使う楽器とか歌の種類とかがオレのいた世界じゃ見たことない物ばっかだから慣れなくてな」

 

ライの思ったミルヒの歌というのは、国に代々から伝わっていそうな伝承を歌った歌だとか、楽器はリュートやハープを使うものだったりとか、を想像していたらしい。

 

「まあ、それを踏まえてもいいもんだぜ。ミルリーフもそう思うだろ?」

「うん。みんなが姫様のお歌が好きな理由がわかったね」

「だろ? 心して聞くんだな」

 

自分のことのようにエラそうな言い方をするエクレールだったが、それだけミルヒのことが好きな証拠だろう。

 

こうして、ライ達のフロニャルド一日目は幕を閉じたのだった。

 




ライの新技の名前を響界斬魂剣から、規制などを考慮して響界斬魔剣に変更させてもらいました。(8/29)

ドラマCDの話は省略させてもらいますので、ご了承ください。
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