サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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今回はお茶会と予言の話になります。
預言の内容にはかなりアレンジが加わっております。

あと、冒頭にてちょびっとだけリシェルとベッキーが登場。ベッキーについてはようやくですね。


第15話 星詠みの姫 Black Prophecy

ライ達がブリオッシュ等と釣りや昼食を楽しんでいたのと同時刻。

~リィンバウムにて~

ブロンクス姉弟は、ポムニットと一緒にシャオメイの店にやって来た。彼女の占いでライの連れ戻す手段のヒントを得られるのかもしないと踏んだのだ。

 

「こ、これってどういうこと?」

 

リシェルは、占いの内容を聞いてシャオメイに尋ねる。

 

「どうって言われても、そのまんまの意味としか言えないわね。なんならもう一度読み上げるけど?」

「お願い。もしかしたらあたし達の聞き間違いかも知れないから」

 

そしてシャオメイが占いの内容を読み上げるのだが……

 

「界の境界を越えし者の前に邪悪に縛られし者が降臨、大地を蹂躙する。それに伴い別なる邪悪が降臨して混乱が訪れるだろう」

 

内容がこれなのだ。

 

「やっぱり聞き間違いじゃなかった…」

「…メチャクチャ不吉ですね」

 

ルシアンもポムニットも、占いの内容を聞いて顔をしかめる。あまりにも内容が不吉すぎるので、それも当然だろう。

 

「これも星の導きである以上、逃れることはできない……でも」

「「「でも?」」」

 

一拍置いてシャオメイが口にした言葉。

 

「お兄様ならどんな困難が来ても乗り越えられるはずだし、大丈夫」

 

ウィンクしながらリシェル達に告げるシャオメイ。

 

「ライ、マジで無事でいなさいよ。邪悪なんて、ブッ飛ばしてやりなさい」

 

口調は強気だったが、リシェルの表情には不安の色が見えている。

 

~地球にて~

とあるマンションの一室から一人の少女が出てきた。

 

「シンクのバカ。メールとかしょっちゅう送って来るくせに、偶に途絶えるから心配するんじゃない」

 

独り言を呟きながら出てきた少女は、シンクの幼馴染レベッカ・アンダーソン。シンクをはじめとした一部の友人からベッキーという愛称で親しまれている。

そんな彼女も、文句を垂れつつシンクの心配をしているようだ。

 

(あ、そういえばまだ今週の占い見て無かった)

 

そう思ったレベッカはポケットに入れた携帯電話を取り出し、エレベーターを待っている間に占いのサイトを覗く。

 

「私の運勢は可もなく不可もなく。で、シンクは…」

 

シンクの運勢を見た瞬間、彼女はギョッとする。占いの内容は…

 

 

「今週は最悪、予期せぬ不幸が襲って来まくり…」

 

占いの内容を見て呆然としていると、丁度エレベーターが彼女の居る階に到着した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そんな感じで不吉な占いがリィンバウムと地球で行われたとはつゆ知らず、フロニャルドにいるライ達はブリオッシュ等と休日を満喫している。

そして夜になった。

 

 

フィリアンノ城下町の大通りにて、巨大な影が闊歩しているのが目撃され、道行く人々の注目をかっさらう。

その正体は……

 

「すみませ~ん!」

「おお、すまぬ。ちょっと失礼するでござるよ」

 

ブリオッシュの乗るセルクル、ムラクモだった。その体は、後ろをついて行くライ達の乗るセルクルと比べても二回り以上に大きく、本当に同種の生物なのか疑わしかった。

そりゃ注目もされるだろう。

 

「ねえ親方様。その子、目立ちすぎない?」

「ムラクモは拙者と同じく図体がデカイでござるからな」

「イヤ、あんた自身と比べてもかなりデカいぞコイツ」

 

ライの膝の上に座るミルリーフが、思わずブリオッシュに指摘してしまう。そのブリオッシュの返事に対するライのツッコミだが、まさにその通りだ。

 

「さて、拙者らは騎士団本部に顔を出すでござる。たしか勇者殿はこの後、姫様と御会見でござったな」

 

ミルヒは領主の仕事が忙しいせいであまりシンクと話せていない。だが、今日のこの時間帯はスケジュールに余裕が出来たらしく、シンクとの会見という名目のお茶会を開き、二人で話すことが決まっていたのだ。

シンクはその話を聞いた際、ライも誘ったのだが何故か断わられたのだ。ユキカゼはシンクがブリオッシュと話している際、こっそりとライから理由を聞いてみる。

 

「ライ殿はどうして姫様との会談を断ったのでござるか?」

「イヤ、普通に考えて姫様とシンクが二人っきりの方がいいだろ? オレでなくても男が二人もいたら邪魔者にしか見えねえ気がすんだよ」

「……ライ殿、結構空気が読めるでござるね」

「どういう意味だよ」

 

とのことだった。ライと話を終えたユキカゼは、今度はシンクに声をかける。

 

「姫様に失礼のないようにするでござるよ」

「大丈夫!」

 

そのままライ達は城に帰っていく。ライはミルリーフを連れて自分達に宛がわれた部屋へと戻ってくつろぐことにし、シンクは会談の前に風呂に入るように言われたので大浴場へ向かった。

余談だが、シンクは大浴場に入った際、メイド長のリゼル率いるミルヒ直属メイド隊に、徹底洗浄の名目で揉みくちゃにされてしまったらしい。こっそりと様子を見に来たライは、断って正解だったと胸を撫で下ろして安心するのだった。

そしてライはシンクが大浴場から連れ出されたのを見計らい、ミルリーフを連れて自身も風呂に入り、一日の間に流した汗を洗い落とすのだった。

 

 

部屋で二人がくつろいでいると、扉をノックする音が聞こえた。

 

「はい、どうぞ」

「ライ様、失礼するであります」

 

部屋を訪れてきたのは、エクレールとリコッタだった。

 

「ライ様、銃の点検が終わったから届けに来たであります」

「おお、サンキュー。ところで、エクレールは何で…」

「リコの付添だ。暇だったからな」

 

そっけない態度でエウレールは言う。まあ、リコッタとは友人同士だからちょっとくらいの付添はどうということないだろう。

 

「二人とも、せっかく来たんだ。茶でも淹れるから適当に掛けてくれ」

「ありがとうであります」

「まあ、せっかくだから飲んでやらんこともない」

 

相変わらずツンケンしているエクレールであった。

ちなみに、ライの宿屋ではチーズやフランクフルトの様な軽食メニューも取り扱っており、それに合わせてコーヒーや紅茶の注文も入る。それによってライはお茶淹れもお手の物だった。

 

「初めて飲んだ時も思ったんだけど、ここの茶ってそのものの味や香りが果物みたいに甘くて、不思議だな」

「そのお茶は花茶といって、ビスコッティの名産の一つでありますよ。遠方の国では結構な高級品として扱われているでありますよ」

「姫様と勇者の会談でも出されてると思うぞ」

 

リコッタやエクレールがライに対して茶の説明をする。

ライの知る茶は茶葉を発酵させた紅茶、させてないお茶(いわゆる日本茶で、シルターンの茶)二通りだ。この花茶は色こそ紅茶に近いが、茶葉の種類がビスコッティ特有の物であるため味が極端に違うのだろうと、二人の説明を聞いて結論付けた。

 

「ねえリコ、急に気になったことがあるんだけど」

「ミルリーフ、何でありますか?」

 

そのまま一服していたらミルリーフがあることを尋ねてきた。

 

「姫様がシンクを勇者にえらんだ理由って、知ってる?」

「ああ、それオレも気になるわ」

「本当にいきなりだな」

 

エクレールの言う通りいきなりである。もっと早いうちから聞けたことではあるので、ここで急に聞いて来たらそういう反応は当然だろう。

 

「流石に当てずっぽうは無いからな。何かでシンクのことを知ったんだろうけど、どうやって…」

「一度だけ姫様から聞いたことがあるであります」

 

すると、そこでリコッタが口を開く。召喚主であるミルヒから聞かされたことがあるらしい。

 

「その話の前に説明したいことがあります。紋章術の一種に、星詠みというのがあるのでありますよ」

「星詠み?」

「占いみたいなもの?」

 

ライもミルリーフも首を傾げ、それにリコッタが答える。

 

「おおむね正解であります。映像板を用いて未来を占うのでありますが、他にも別の世界の様子を覗くこともできるのでありますよ」

「「別の世界を覗く!?」」

 

リコッタの説明を聞いて、ライ達は声を揃えて驚く。

リィンバウムは結界で覆われているため、ラウスブルグや今回のようなケースでもない限り、行き来どころか様子の覗き見など不可能なのだ。それを考えると、その様子を覗ける星詠みは相当凄いものということになる。

 

「まあ、個人差があったりで、見れる時間とかも限られているんでありますけど」

「いや、それでも十分スゲェんだけど」

「で、私も聞いたのだが、姫様がその星詠みで勇者が活躍しているところを見たそうなんだ」

 

まあ、そのような技術があったからシンクのあの卓越した身体能力を知ることも出来たのだろう。当然の判断だった。

 

 

 

その後、ライはリコッタ達を部屋に送る。その帰りしなに、ある人物の顔が視界に入った。

 

(お、シンクがいる)

 

丁度ミルヒとのお茶会を終えて自室に帰る途中のシンクを発見したのだ。一国の姫と会いに行っただけに、黒の燕尾服という正装姿だった。

 

「うっす、シンク」

「あ、ライさん」

 

声をかけると、シンクとミルヒが反応する。

 

「そうだ! ライさん、明日の朝に姫様と散歩の約束したんですけど、ミルリーフと一緒にどうですか?」

「あ、いいですね。ライさんもよければご一緒に…」

 

ライはシンクがミルヒと二人きりの約束だと判断し、今日の会談と同様に断ろうとしたら、ミルヒまでが誘ってくる。

ここで断ったら後で気まずい展開になると判断した。

 

「…わかった。どの道ミルリーフと散歩はその内する予定だったから、問題ねえぜ」

「わかりました。明日の朝6時、城門前にセルクルの用意をさせているのですぐにわかると思います」

 

ということで、ライも明日の朝の散歩に参加することとなった。まあ、ミルリーフも一緒に連れて行くのだから、二人とは別に親子団らんでもしてればいいという妥協もあっての答えである

その後、ミルヒと別れて二人で廊下を歩くライとシンク。ライは先程リコッタから聞いた話をライに振ってみることに敷いた。

 

「さっきな、リコッタからお前が勇者に選ばれた理由を聞いてよ。姫様がお前の活躍を見たんだってな」

「そ、そうなんですか。リコもそれ知ってたんですね」

 

何故かその話題を振った瞬間、シンクの歯切れの悪くなった。

 

「どうした? なんか拙いことでもあったか?」

「実は、その姫様が見た試合なんですけど、僕の負けたヤツなんですよ」

 

シンクの話を聞いてライは驚くが、「当然ですよね」という表情を浮かべながら話を続ける。

 

「対戦相手はナナミっていう僕の親戚で、この間話した師匠で、同時にライバルでもあるんです」

「ああ、例の」

 

初日の夜にコンサートに行く途中、シンクが話していた師匠が彼の親戚なのだという。

 

「でも、お前が負けた試合を見て、なんでお前を選んだんだ? そのナナミか、他の世界のもっと強い奴を呼べばよかったんじゃ…」

「え? リコは言ってなかったんですか?」

「活躍を見てた、しか聞かなかったぞ」

 

それを聞いたシンクは、何かに気付いたような顔をした。

 

「ああ、たぶん姫様が恥ずかしがって言わなかったんだと思います」

「? どういうことなんだ?」

「姫様曰く、その時僕の流した悔し涙が決め手だそうです」

 

「悔し涙?」と、ライが首を傾げると、シンクがそのまま説明を続けた。

 

「その涙が、自分のすべてを出し切った人の流す、尊くて綺麗な涙だったそうです。それを見て、僕を選んでくれたらしいんですよ」

「そっか…」

 

確かに、本人が恥ずかしがりそうな理由だった。それを聞いたライは、話さなかったのも当然かと思わず苦笑するのだった。

 

~同時刻、ガレット獅子団ヴァンネット城にて~

 

場内にいきなり何かが割れるような音が聞こえる。

 

「クソォ…またか」

 

音が聞こえた部屋にいたのは、レオだった。彼女は現在荒れ果てており、足元に割れた花瓶が落ちていることから荒げて叩き割ってしまったようだ。

 

「戦を済ませて戻っても、やはり何も変わらん。いや、かえって悪くなった!」

 

レオが忌々しそうに見ているのは映像板だった。どうやら星詠みをしていたようで、口振りから以前にも行ったことがあるようだ。

 

「さして強くもないはずの儂の星詠み。なのに、何故、こうまではっきり未来が見える……?」

 

表情が忌々しそうなものから悲しげなものへと変わり、嘆くようにそう言うレオ。

そして、映像板に映っていた光景にもう一度眼をやる。

 

 

 

そこには、大勢の屍が横たわっている、地割れが起こっている、地面から火柱が上がる、といった地獄絵図のような光景が映っており、地面には折れたパラディオンとピンクの短剣が突き刺さっていた。

そしてフロニャ文字が示されており、こう書かれてた。

 

 

【『エクセリード』の主 ミルヒオーレと『パラディオン』の主 勇者シンク、30日以内に死亡。その後にビスコッティ共和国とガレット獅子団領国に災厄が訪れる。この映像の運命はいかなることがあっても動かない】

 

「ミルヒだけでなく勇者まで死ぬ!星の定めた未来か知らんが、かのような出来事、起こしてたまるか!!」

 

子の星詠みの結果を見直したレオは、何かを決心したような表情になり、今いる部屋とつながっている隣の部屋に移動した。

 

「貴様を出すぞ、グランヴェール!!」

 

レオがグランヴェールと呼んだのは、その隣の部屋に安置されている戦斧で、青白い不思議な光を纏っている。

 

「天だろうが、星だろうが、貴様となら動かせる!!」

 

その翌日、レオはビスコッティ及び、その周辺諸国に対して驚きの布告をするのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

同時刻、どこかの洞窟にて、白い光に包まれている巨大な結晶と、それの前に佇む人影がある。

その人影だが、背中の右側には天使を思わせる白い翼が生えており、左側には蝙蝠に似た悪魔の翼を生やした、かなり異様な容姿をしている。

 

「この調子だと治療が終わるまで、大体4日か。まあ、あの傷で生きていたのが奇跡だという状態だったからな」

 

どうやら誰かの治療をしているらしく、結晶の中にはその治療相手が眠っている。

 

「俺は表に立つ訳にはいかないから、お前はもう暫く俺に利用されてもらうぞ、ディガルド」

 

そう、男が結晶の中に入れて治療していたのは、先日ライ達によって倒された筈のディガルドだった。

 

災厄の時は、刻一刻と近づくのであった。




レオ閣下が7話の会見で4日後に興行を行うと言っていたので、その前日であるこの話では5日後になるはずです。
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