サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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一週間かかった割には原作通りのシーンが多い形になってしまいました。
そんな回ですが、どうぞ。


第17話 姫の決意

会見の後、ライ達は城内で先程の会見について話し合っていた。

 

「なあ、宝剣は国の代表の証って聞いたけどよ、そんな物を賭けの対象にして大丈夫なのか?」

「確かに問題ではありますけど、国同士の友好の証として一時的に貸し出したりすることは時々あるのであります」

「おそらく、民衆は今回もそのノリだと思っているみたいでござるよ」

 

今回のレオの様子について知っている城勤めの者達、最近フロニャルドに来たばかりであるライ達だからこそ気付けた疑問ということであったようだ。

 

「何か、僕達にできることはないのかな?」

「こういうのは政治家の仕事だ。戦うだけ、とか一つのことでしか役に立てないオレ達の立場じゃ何も出来なさそうだ」

「ライ殿の言う通りでござるな。姫様や騎士団長達の答えを待つしかないでござるよ」

 

シンクはライ達と話しながら歯がゆい気持ちで歩いている。すると、向こう側で何かがあった。

エミリオをはじめとした騎士数名が誰かを囲んでいる。囲まれているのは騎士の鎧を着ていたが、何か様子がおかしい。

 

「あれ? アイツって…」

 

それに真っ先に気付いたのはライだった。囲まれていたのは、ジェノワーズの一人であるジョーヌだったのだ。

すると、ユキカゼが真っ先に近づいて事情を聞いてみる。

 

「エミリオ、どうしたでござるか?」

「パネトーネ筆頭。実は、ガレットの密偵が騎士団に化けて…」

「密偵ちゃうって!!」

 

密偵だと言われたジョーヌは真っ先に否定する。そこに遅れながらライ達も到着する。

 

「ねえ、そうじゃないなら何でここの騎士のかっこうしてるの?」

「アー!? この間の…ってこれには事情があってやな!」

 

ミルリーフの顔を見て過剰反応したジョーヌ。まあ、ミオン砦で自身をフルボッコにした本人に会ったのだから、仕方がないだろう。

ジョーヌは、視線をライとシンクの方に合わせて、懐から何かを取り出す。

 

「ウチはさるお方から、勇者シンクと委託騎士ライ宛の秘密のメッセージを持って来ただけや!!」

「メッセージ? って、矢文とか見つからない方法が他にもあったんじゃねえのか?」

「あ……まあそれよりも、読み終わったら付いて来て欲しいんやけど…」

 

それから、二人はジョーヌから届けられた手紙を読み、彼女に付いて行く。

 

 

付いて行った先にいた手紙の差出人の正体、それはガウルだった。どうやら隠れて出てきたらしく、フードを被って顔を隠していた。

 

「ガウル、話って?」

「当然、今回の戦についてだ。今回の戦にはどうにも納得できないことがあってな、俺やゴドウィンは反対なんだよ」

 

ガウルが隠れてやって来た理由は、当然だった。彼の姉であるレオは一国の主、そんな彼女に反対意見のことで敵対国の関係者に相談をしたなど、知られては色々とまずいだろう。

 

「こっちでも、ガレットは本気でビスコッティを侵略する気なんじゃないかって話なんだけど」

「ああ。そんな由緒正しい宝を賭けの対象にするってのは尋常じゃないから、そういう思惑があってもおかしくはないからな」

「いくら姉上でも、それはねえ筈だ」

 

ライもシンクも城内の関係者達や自身の考えについて話すが、ガウルは真っ向否定してきた。そして、ガウルはそのまま言葉を放つ。

 

「ビスコッティとガレットは友好国として、何代も前からずっと支え合ってきたんだ。それを今更侵略だなんて、道義も立たなきゃ意味もねえ。だが、告知されて民が楽しみにしている以上、戦はもう避けられねえ」

「やっぱり無理か。どうするつもりなんだ?」

「ギリギリまで懸賞に出される宝剣の扱いをハッキリするように姉上に具申するつもりだ。だが、そいつが叶わずに姉上の目的がはっきりしなかった場合は、どうにかしてお前らが勝ってくれ」

 

ガウルが偽りのない眼でそう懇願してくる。その様子に対して、ライは彼にあることを聞く。

 

「聞いてもいいか? 国同士が友好的だからって、ガウルは何でこの国に肩入れするんだ?」

「俺は、ビスコッティって国が普通に好きなんだよ。飯は美味いし人も景色もいい。姫様だって優しいしな」

 

ガウルは素直にそう言う。一国の王子である以上、自国が一番というのはあるのかもしれないが、それでもガウルはビスコッティが好きなようだ。

 

「それに、フロニャルドの戦は楽しい興業じゃなきゃいけねえんだ。参加者や支援者や見学者、戦に関わりのない国民達、それらが勝っても負けても楽しくなきゃいけねえ。大変な思いするのは王族だけでいい。だが今回はその筋が通らねえ。それだけさ」

 

ガウルが自分の思いを告げ終えると、手綱を力強く握りしめる。その様子から、両国の現在の関係についてどう思っているのかが見て取れる。

 

「流石に、王族にはそれ相応の思慮があるんだな」

「まあ、普段いい加減だからその分しっかりしねえといけねえってのが強いんだがな」

 

ライに言葉を返した後、ガウルはセルクルの向きを城と逆向きに向け、ジョーヌと二人でその道を行く。

 

「話は以上だ。俺がこんな話をしたってのは、城の連中には言うなよ」

「ガウル、ありがとう」

「ああ。シンク、ライ、頼んだぜ」

 

去り際にシンクがガウルに先程話してくれたことの礼を言う。ガウルがシンク達にこの話をしたのは、直接会った回数は少ないながらも競い合い、共闘もしたので通じ合っているのだろう。

すると、シンクはあることが気になったため、遠ざかっていくガウルに大声で聞いてみる。

 

「ガウルー! 最後にもう一個、姫様とレオ閣下が昔は仲が良かったって聞いたけど、何か知らないー!?」

「悪い、俺もよく知らねえ。けど、二人のことならアメリタが詳しいはずだ」

 

それだけを告げるガウルの後ろ姿は、次第に小さくなっていく。

そして、早速城に戻ってアメリタから詳しい話を聞いてみることにする二人。

 

「シンク、アメリタさんからはオレが聞いておいておく」

 

帰りの道中、ライがシンクにそう言った。二人で聞きに行くつもりだったシンクは、思わず首を傾げる。

 

「姫様の支えになってくれる奴は多い方がいいだろ。だからお前は姫様についていてやれ」

「……ライさん、ありがとうございます」

 

ライの気回しに、シンクは礼を言うのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後、ライはミルリーフを連れてアメリタの下へとやって来て、ミルヒとレオの関係についての話を聞いてみた。

 

「両国の先代領主が旅立たれる前、レオ閣下は姫様をとても大切に扱ってくださいました。その様子はまるで、生まれついての姉妹のようでもありました」

 

アメリタは話しながら部屋のタンスの上に飾っている写真立ての方に近づき、それを立て直す。

そこには、幼い頃のレオとミルヒの姿が映されていた。

 

「幼い頃から臣下と民を思いやる心をお持ちだった姫様と、武術と紋章術にとても秀でていたレオ閣下。お二人は互いに足りないところを補い合い、大切なことを教え合っていました」

 

聞けば聞くほどミルヒとレオの仲の良さはハッキリとした物であることが解る。ならば何故そのようになってしまったのだろうか?

 

「お二人が領主となられてからも目立った波乱もなく、会う機会は減っても公式非公式問わずに仲良くしていたのですが、半年前のこと」

 

どうやら、ここからが異変の始まりのようだった。だが、それは予想とは違うものだった。

 

「レオ閣下が、急に姫様や我々騎士団のことを気遣ってくださるようになったのです」

「気遣う?」

「ビスコッティの軍備増強を提案したり、姫様が危険な目に合うような興業は避けるように、姫様に護衛を付けるように、といった具合にとても一生懸命に話していました」

 

昔からそうだったのなら、優しいミルヒを心配しての過保護な行動だと取れる。だが、九にそのような行動をとるのは確かに不可解である。

 

「ですがその三か月後、今から三月ほど前に急に冷たくなられて、現在の様になってしまわれたのです」

「あの、いくらなんでも急すぎじゃないですか? 徐々に避けるようになって、とかなら解りますけど…」

 

ライとしてもこれは不可解極まりなかった。急に心配して、急に敵対してきて、これでは相手の真意を本人にでも聞かない限り知ることなど出来そうになさそうだ。

 

「ええ。ですから、そこまで急な姉妹のように思っていた幼馴染の心変わりに、姫様は領主と個人の両面で心を痛めてしまったのです。そのうえ、今回の戦でもし負けてしまって、宝剣まで奪われてしまったら…」

 

アメリタのその様子を見て、ミルヒと国の心配をし過ぎて何があったのかを推論する余裕もないらしい。裏を返せば、それだけ仕えているミルヒを気遣っている、秘書の鏡のような人物なのだが。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後、ミルヒが宣戦布告についての告知を国民に対して行うようで、ライ達は城のバルコニーに向かっている。

 

「ねえパパ、さっきの話…」

「ああ。不可解極まりない話だったよな」

 

移動中も、先程のアメリタの話のことを考えているライとミルリーフ。しかし、いくら考えても結論が出てこない。

 

「やっぱり、レオ様にちょくせつ聞いた方がいいかな?」

「話してくれるかどうかは解んねえけど、それしかないか」

 

真相を知る手段が一番確実性に欠けるものしかない。かなり致命的な状態である。

 

『こーんにーちわー!!』

 

廊下を歩いていると、ミルヒの声が響いた。どうやら発表が始まったらしく、城に残っている者にも聞こえるようにしているため、廊下にいるライにも聞こえたようだ。

 

「考え事している間に、始まったか」

「パパ、急ごう」

 

ライはミルリーフを連れて走る。その間にも、ミルヒのスピーチが続く。始めにレオの告知についての話をし、政治のサポートをしている元老院の老人衆が驚いて椅子から転げ落ちた、など冗談を混ぜて話を行っている。おそらく、国民達の緊張感をほぐしているのだろう。

そして、ミルヒがガレットとの戦での連敗について話し出したところでライ達はバルコニーに到着した。

 

「悪い、遅れた」

「ライさん、どうでした?」

「不可解極まりなかった。詳しいことは後で話す」

 

ライはそこで話を切り上げ、ミルヒのスピーチを聞くことに専念する。

 

『これまでの敗戦は単に、十分に戦支度を行えなかった私の力不足です』

 

ミルヒがこれまでの連敗は自分の無力さによるものだと自分を責めるように集まってきた国民達に告げる。

すると、国民達が総じて「そんなことはない」など、ミルヒに非は無いという意見を投げかけてくる。これは、ミルヒがそれだけ国民達に慕われているということのようだ。

 

「ありがとう、みんな。でも、だからこそこれ以上負けないようにこの半年、準備を重ねてきました」

 

商工会が武器を用意した、若手騎士達も強くなった、そして極めつけに勇者と思わぬ助っ人が来てくれた。だからビスコッティは今まで以上に強くなったと、ミルヒは自身を持って告げる。そして、次に彼女が発した言葉こそがレオへの答えだった。

 

「だから、レオ閣下からの戦の申し出を、よろこんでお受けします!」

 

そのミルヒのその言葉と同時に、花火が打ち上げられ、ミルヒの答えに対して国民達は歓声を上げる。

そして、右腕を空にかざし、人差し指に差している指輪状態のエクセリードをカメラに映るように向けながら言葉を続ける。

 

「勿論、神剣パラディオンと聖剣エクセリードを賭ける条件もお受けします。何故なら、私達は負けないからです!!」

 

ミルヒの言葉に対して、またも国民達が歓声を上げる。

 

「あんまり、驚かないんだな」

「さっき姫様から話を聞きましたから。そういうライさんも、初めてのわりには冷静ですね」

「アメリタさんの話聞いたからな。おそらく、姫様も真相が知りたいんだろう」

 

周りに気付かれないように、ライとシンクが会話をしている。

そして、ミルヒのスピーチがクライマックスに突入した。

そして、ミルヒが締めの一言を群集に投げかけた。

 

「勝って、楽しい明日をつかみましょう!!」

 

その言葉とともに、群衆がこれまで以上の歓声を上げる。

 




ライの称号に越響者を使わなかったのは、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、第2期の話に突入するまで使わないでおこうと思ったからです。
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