では、最新話をどうぞ。
「レオ様」
ガレット陣営の拠点であるグラナ砦にて、レオに話しかける一人のメイドがいた。彼女の名はルージュ・ピエスモンテといい、本来はガウルに仕える近衛メイド長の一人なのだが、今回はレオについている。レオはあの、ミルヒの死の予言についてのことを、砦に乗り込んだビオレを始めとした極少数の家臣達に話しており、ルージュもその一人なのだ。
そして、今回の褒賞に敗戦国の宝剣を貸し与えるというのは、予言で死ぬのは「エクセリードとパラディオンの持ち主」であったということから宝剣をシンクやミルヒから遠ざけるためのものであったのだ。
「すみません。ビオレ姉様と近衛戦士団は任務に失敗、そのままスリーズ砦内に捕まってしまったと」
「そうか。ガウルはどうした?」
報告を受けたレオは、大した反応も見せずにガウルの様子を聞いてくる。
「ご命令通り、ゴドウィン将軍やジェノワーズを連れて、砦攻めに向かいました。ただ、ガウ様達は今回の戦にあまり乗り気ではいらっしゃらなかったので…」
「かまわん。せいぜい派手に暴れて、民と兵達を楽しませてやればいい」
そして、レオはルージュに聞こえない小さな声で呟いた。
「今回の戦、儂が一人で勝つ」
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それと同時刻、チャパル湖沼地帯にてブリオッシュは本陣を守るために、そこにつながる橋に陣取って迫ってくる兵達を次々と蹴散らしていくのだった。そして、先程一斉に端を乗り越えようとしていたガレット兵達の半数以上を一人で薙ぎ払い、そのまま生き残った兵達も恐れをなして逃げ去っていくのだった。
「ダルキアン卿!」
すると、一人のビスコッティ騎士がブリオッシュに駆け寄ってくる。
「騎士団長より、伝令がございます!」
「応」
「ダルキアン卿と、パネトーネ筆頭の三番隊は、先行二番隊の応援に行って欲しいとのこと」
「心得た」
伝令を聞いた後、ブリオッシュは目前に広がるガレットの軍勢を見渡す。
「敵陣は薄く伸びているな。駆けて抜けるが早かろう」
そして、それをユキカゼと三番隊の面々に報告し、一気にライ達のいる二番隊に合流しに行こうとするが…
「ダルキアン卿、お待ちあれ!」
三番隊に立ちふさがる軍勢の姿が現れた。そして、その先頭に立っているのは、ガレットの将軍の一人であるバナードであった。
「バナード将軍、久しいのう」
「ご無沙汰しております」
黒いセルクルに跨り、ランスで武装しているバナード。ちなみに、レオから詳細を聞いた極少数の一人でもある。
「失礼ですが、ここから先へはお通し出来ません」
「それは一騎打ちのご提案と受け取ってよろしいか?」
「ご無礼でなければ、是非」
そして、そのままブリオッシュとバナードが一騎打ちを始めようとする。
だが…
「その勝負、待った!!」
どこからともなく槍が飛んできて、二人の間にそれが激突すると同時に聞き覚えのある声が聞こえた。
「バナード! その一騎打ち、私が受けよう!!」
槍を投げてきたのは、ロランであった。
「ダルキアン卿、ここは私に任せって行ってくれ」
槍を回収しながらロランはブリオッシュに言う。
「心得た。三番隊、続け!!」
ブリオッシュはロランに言われたとおり、彼にバナードを任せて三番隊を連れて先を急ぐのであった。
「やれやれ。君との一騎打ちなんて、何年ぶりになるやら?」
「私達が騎士団長の職を拝命してからは初めてだ。もう三年以上になるかな」
ブリオッシュが去った後に、二人はそんな、友人同士のような他愛もない会話をする。それもその筈、二人は実際に友人同士なのだ。しかも、プライベートでは季節の贈り物を届け合うなどをするというほどの仲なのである。
ついでだが、念のために言っておこう。贈り物の届け合い、というと一部の性癖持ちが『いかにもな感じの仲』と受け取りそうだが、二人にその気はない。というか、バナードは既に奥さんがいるのでちゃんと女性にも興味があるのは明白であった。
まあそれは置いておき、ロランとバナードの一騎打ちが始まるのだった。
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一方こちらは、ビスコッティの拠点であるスリーズ砦。ここは現在、ガウル率いる部隊と、彼の臣下であるジェノワーズやゴドウィン将軍の攻撃によってピンチとなっていた。
輝力の扱いに長けたガウルの必殺技、ジョーヌやゴドウィンのパワー、ベールの弓兵を率いての一斉射撃、ノワールのスピードを活かした不意打ちなど、能力のバランスが取れており、しかもそのいずれもが強力であった。今回の戦はレオが先ほど言ったように、ガウル達は乗り気ではなかったのだが、ミルヒが砦に不在という報告を聞いて心置きなく責められるということからの結果だった。
すると、砦の上部から何かが突き出してきた。
「主席、行けそうですか?」
「はい! 風も追い風、バッチリ行けそうであります!!」
「ピギィ!」
どうやらそれは発射台のようで、上にはリコッタと竜形態のミルリーフを乗せたハーランの姿があった。そして、その周りには弓で武装したメイド隊が数名ほど待機している。
どうやらライ達と合流しに行くらしく、メイド隊はその援護のために待機しているようだ。ちなみに、リコッタはミルヒのドレスのまま出撃するわけにもいかなかったので、メイド隊の制服を借りている。
「ハーラン、一緒に姫様のところに行くでありますよ」
リコッタの言葉に頷いて答えるハーラン。
すると、リコッタが右手の甲に紋章を出現させる。
「飛翔騎ハーランと学院砲術師リコッタ・エルマール、そして虹翼の守護竜ミルリーフ」
「ピィイ!!」
リコッタが名乗りの際、ミルリーフの分の名乗りも代弁する。そのあと、リコッタが輝力をハーランに流し込んだ。何が始まるかと思っていたら、
なんとハーランの翼が大きくなったのだ。飛翔種というだけあって、一定の条件(輝力による強化など)で飛行能力が身に付くようだ。そして、その状態でハーランが発射台から飛び出した。
「出撃であります!!」
「ピギィイイ!!」
そのままハーランが飛び立ったのを確認したメイド隊は、弓を構えて地上にいるガレット兵達を狙う。
一方井、そのガレット側では…
「行かせません」
ベールが弓隊総出で迎撃しようとしていた。そして、飛び立つハーランの姿を確認したと同時に一斉に矢を放った。
「あわわ!? 危ないであります!」
メイド隊が援護射撃で飛んできた矢を撃ち落し、ハーランも矢を避けようとするが、飛んでくる矢の数が多いため状況は厳しかった。
すると、そこで動いたのはミルリーフだった。
「ピィ!」
ミルリーフが鳴くと、自身の体内に溜まっていた魔力を練り固めて、いくつかの塊を作りだす。
「ピギィ…」
すると、ミルリーフが作った魔力の塊が、彼女たちを乗せているハーランの周りに、後光のような配置に並んだ。
「ピギャアア!!」
ミルリーフが鳴き声を発すると、それが合図となって魔力の塊から無数の光線が放たれた。その光線は、飛んできた矢を全て相殺し、そのまま地上の敵達に降り注ぐ。それを喰らったガレット兵達は、一斉にけものだまへと変化する。
攻撃の終了後、ミルリーフは人型形態に移行する。
「ミルリーフ、すごいであります!!」
「ありがとう、リコ。でも、まだまだこれからだよ」
そういうとミルリーフは、サモナイト石を取り出す。そして、それに魔力を込め始め……
「あ~~、リコちゃんを落とし損ねました…」
同時刻、弓兵を率いていたベールはガッカリしていた。まあ、自分だけでなく率いていた全員の攻撃が不発に終わった上に、その部下たちが半分近く倒されたのだから、当然だろう。
「ベール隊長。上から何かが…」
「はい?」
弓兵の一人に指摘されて上空を見上げると、何かがこちらにめがけて落ちてきた。
それは、球体状で、ペンギンのような顔がある。物体だった。そして、頭のてっぺんには導火線が付いており……
「あれって、勇者デビュー戦で見た!?」
「マジ!? みんな、撤退いいいいいいいいいい!!」
そう、またもミルリーフが召喚したペンタ君が降ってきたのだ。弓兵達は逃げようとするが、気づくのが遅かった。
―ドカ―――――――ンー
『ぎゃひいいいいいいいいいいいいい!?』
ペンタ君の爆発によって残っていた弓兵は全員まとめて爆発に飲み込まれた。
そして、爆発による土煙が晴れると……
「え、えええええええええええ!?」
ただ一人無事だったベールは、着ていた服は下着も含めてすべて消し飛び、生まれたままの姿を周囲にさらすこととなってしまった。これによって敵味方の双方が美味しい思いをすることになったとか。
「また、やりすぎちゃったかな?」
「ミルリーフ。ここはフロニャ力の加護が強くて誰も傷つかないから、やりすぎても問題ないでありますよ」
とりあえず、ミルリーフは「それもそっか」と納得しておく。
「それでは、気を取り直して…」
「パパやシンク達のところへ…」
「「レッツゴー(であります!!)」」
そのまま二人を乗せてハーランは飛んでいき、ライ達のもとを目指すのだった。
「ガウ様、行きましたね」
「ああ」
飛び去っていくハーランを、ガウルはノワールと二人でじっと見つめていた。
「ライ、シンク、ミルリーフ。頼んだぜ」
完全にハーランが視界から消えた後、ガウルは呟く。そして、ノワールと共に再び戦闘に戻るのだった。
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その頃、ライ達はグラナ砦へと突き進んでいく。
『はーい、こちらグラナ浮遊砦前! ビスコッティ二番隊、いよいよ砦のゲートキーパーとの交戦距離に入ります!!』
ビスコッティ側の報道陣による実況があたりに響く。すると、その報道陣が気になる単語を発した。
『本陣を守る部隊には、レオ閣下の作戦により【特選装備部隊】が配置されています!!』
「「特選装備部隊?」」
ライもシンクも思わずその単語を復唱する。名前からして普通の敵と違う兵が来るのは明確だった。
「姫様、皆の中央に」
「あ、はい!」
すると、エクレールはミルヒを下がらせ、同行していた他の騎士たちに指示を出す。
「開放陣形、散開前進! 姫を守れ!!」
『はっ!!』
エクレールの指示に合わせて、騎士達は広がり、ミルヒを守るように彼女を囲いながら前進する。
その一方、ライ達は向こうで攻撃の準備をしている特選装備部隊の姿を見た。
「なるほど、リコッタみたいに大砲を使うのか。それに銃兵もいる」
「銃に大砲!? ライさん、僕達メチャクチャ不利じゃないですか!」
シンクの言うとおりだ。現在進軍しているメンバーの中で飛び道具が使えるのはライだけ、紋章砲を使えばそうでもないだろうが溜めの時間が必要なのでこの状況では不利であった。
すると、ライがある提案を出す。
「シンク、確かエクレールから防御技を教わっていたよな」
「え? あ、はい。確かに教わりましたけど…」
「だったら、それで防御の方を頼む。オレは新調してもらった紋章を試すついでに攻撃に回る」
「…わかりました!」
シンクは了承し、左腕に輝力を収束させて例の紋章術を発動した。
「ディフェンダー!!」
技名を叫ぶと、シンクの全身を隠しきれるような巨大な盾が形成される。そして、その盾を使って飛んできた銃弾からミルヒや他の味方を守る。
砲弾も同時に飛んでくるが、弾が大きい分目視しやすいこともあって、こちらは避けるのが容易だった。
だが、今度はその砲弾が明らかにシンクを狙って飛んできたのだ。やはり先程の敵兵達同様、直接パラディオンを奪おうという魂胆なのだろう。だが、シンクはそうなるだろうと予測していたのかいたって冷静であり、パラディオンの棒形態を発動する。そして砲弾が飛んでくるタイミングを見計らい…
「たああああああああああ!!」
なんと、シンクはバッティングの要領で棒を振り、そのまま砲弾を打ち返してしまう。これには戦慣れしていないミルヒは当然だが、ライもエクレールも驚きを隠せずにいた。
『何ぃいい!? 勇者シンク、殺人砲弾を弾き飛ばしたあ!!』
実況のパーシーも驚愕している。このような報道をしているあたり彼女はを始めとしたアナウンサーは戦の記録などにも詳しいと思われるため、シンクの技は何気にフロニャルド初だったようだ。
「ライさん、あとはお願いします!!」
「あ、ああ! 任せろ!!」
どうにか心を落ち着かせたライは、そのまま攻撃のために一気に前へ乗り出し、早速紋章を展開してみる。
紋章のデザインは、ライ曰く『ミルリーフと剣』だそうで、至竜を思わせる竜のシルエットの前に、バツ字になるように交差させた剣が描かれたデザインである。ただし、今回は銃を使っての紋章砲のようだ。
(イメージは、ミサイルとかいうロレイラルの兵器。技名もそれを使う召喚術から取って…)
ライにとっての強力な攻撃はやはりリィンバウムの召喚術のようで、それを今回のイメージに使ったようだ。ライはとりあえず、技名を叫んだ方がパフォーマンス的にもいいかも知れない、と空気を読んで咄嗟に技名を考える。どうやら、リシェルの使う召喚術から名前を取るようだ。
そして、その技名は…
「ファランクスキャノン!」
ライの構えた銃から、ミサイルを思わせるシルエットをとった輝力の塊が、四発ほど連続して発射される。そして、発射されたそれが飛んでいき、特選装備部隊に激突して爆発した。
爆発によって、特選装備部隊の大半はけものだまへと変化し、そのままダウンしてしまうのだった。
「うわぁ惨い……」
「あいつの世界の技のイメージか? 一体どんな世界だったんだ…」
まあ、異世界から巨大な機械兵器やら武芸に優れた鬼やらが召喚されてくるような世界だ。今回のような技はいくらでも作れそうである。ちなみに、今回の紋章砲の元になったのは、【機神ゼルガノン】という召喚獣だ。この召喚獣は合体機構を持った二体のロボットなのだが、今回はその片割れが使うミサイル攻撃【ファランクス】を名前とイメージに使ったのだ。
「……まあいい。我々はこのまま残敵を掃討、そのまま砦に突入するぞ!!」
『おおおおおおおおおおお!!』
エクレールは気を取り直して、味方の士気を挙げてそのまま斬敵の掃討に乗り出すのだった。
『すごいすごい! 勇者シンクと委託騎士ライ、ゲートキーパーを見事に撃破しました。先程の騎士エクレールにも引けを取らない強さだ!! そんな三人によって砦への潜入が成し遂げられようとしています!!!』
かなりノリノリで実況するパーシーだったが、ふと空を見上げるとあることに気が付いた。
『お天気代わりでしょうか? 東の空から、若干雲が流れてきました』
その雲は雨雲のように暗い色をしていた。まるで、これから起こる災厄を表しているようだが、このときはあの予言を見たもの以外に気づく者はいなかった。
いや、もう二人ほどいた。
「へえ…この気配が旦那の言っていた魔物ってやつか」
ディガルドと、彼を治療した天使と悪魔の両方の翼を持った男の姿があった。
「ああ。俺の見立てが正しければ、さっき言った通りの方法で操れるはずだ」
「了解。じゃあ、旦那にはいくら感謝しても足りねえけど、ありがとうな」
「むしろこちらが感謝したい気分だ。表立って動けない以上、俺の悲願はお前の侵略行為によって果たされるのだからな」
「オーケー、オーケー。じゃあ、俺が支配した後のフロニャルドを楽しみにして待っててな」
そのまま飛び去っていくディガルドを見送り、男は邪悪な笑みを浮かべているのだった。
リコッタはひん剥かれなかったので、原作よりも早くシンク達と合流する予定です。
あと軽いネタバレになりますが、謎の男は二期からライ達と絡む予定となります。
なかなか感想が増えないので、評価共々お願いします。