サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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ちょっと今回は詰め込ませてもらいました。半年以上経って第1期が終わってないので、そろそろ一気に進めようかと。



第24話 希望の兆し

「喰らえ!」

「喰らうでござる!」

 

まず、ライがディガルドに銃で、ユキカゼが輝力手裏剣で攻撃しながら突撃し、シンクがそれに続いていく。

 

『そんな攻撃が今の俺に効くか!!』

 

ディガルドは攻撃を受けても微動だにせず、向かってくるライ達に向けて右腕の大太刀を振り下ろす。

ライ達はそれを見ると、咄嗟に散らばって攻撃を回避する。

 

「行くぞ! シンク、ユキ!!」

「「合点承知!!」」

 

ライはシンクとユキカゼに呼びかけると、剣を構えた状態でストラを使用する。そこにユキカゼが跳んできて、ライの構えている剣の胴に飛び乗る。

 

「行って来い!!」

 

ストラで強化された腕力により、剣に乗ったユキカゼを天高く打ち上げ、同じく跳んできたも同様に打ち上げた。

 

「ユッキー、お願い!!」

「了解でござる!」

 

ユキカゼが右足を突き出してきて、シンクがそこに飛び乗る。そして、そのタイミングを見計らってユキカゼが右足でシンクを蹴り上げてさらに大ジャンプする。それによって、シンクはディガルドの頭部付近まで一気に飛んでいった。

 

「たあああああああ!!」

 

シンクは棒形態のパラディオンをディガルドの頭に勢いよく振り下ろす。兜越しにディアルドの頭部に振動が伝わり、軽い脳震盪を起こして一瞬よろけた。

 

『ちぃ、考えやがったな。だが、これならすぐに……』

「獅子王烈火」

 

持ち直そうとしたところ、ディガルドの目の前にレオがグランヴェールに輝力を収束して現れた。

そしてそれと同時に、ミルリーフが上空で滞空しながら魔力ビームの発射準備をしている。

 

「爆炎斬!!」

「いっけえええええ!!」

 

そのまま炎の紋章術を放って攻撃し、ミルリーフもそれに合わせて一斉射撃を行った。放たれた炎は巨大な火の鳥の姿になってディガルドに飛んでいく。

 

『だらぁああああ!!』

 

ディガルドは達に魔力を纏わせて、それをレオの紋章砲に叩き付ける。それによってレオの攻撃は相殺されたが、そこにミルリーフが放ったビームが雨のように降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

『へへ、これで終わりか?』

「流石にこれで倒せるとは思わんかったが、いくらなんでも効かなさすぎじゃろ」

 

ディガルドはこれだけの猛攻撃を喰らってもまだピンピンしており、レオも忌々しそうに見ている。だがその一瞬の隙を突き、今度はエクレールとブリオッシュがディガルドに飛び掛かる。

 

「「裂空……」」

 

二人とも紋章剣の使用準備が完了しており、いつでも使用可能状態だ。

 

「十文字!!」

「一文字!!」

 

ブリオッシュの紋章剣と、それをもとにエクレールが編み出した応用技が同時に放たれる。

 

『おらよ!!』

 

それを見たディガルドは大太刀を振るい、攻撃をまとめて相殺する。魔力を用いずに武器の性能のみで紋章術を相殺する、その攻撃力はすさまじいようだ。

 

『その程度の攻撃じゃ俺に当てること、ぐぁあ!?』

 

喋っている途中でいきなりピンク色の輝力が放たれ、それを顔面に喰らってしまうディガルド。

 

「姫様、やりましたね!」

「エクレールやブリオッシュのおかげです」

 

今の攻撃を放った人物は、ミルヒだった。今の彼女はエクセリードを覚醒させているため、今回の戦闘にも参加可能となっている。だが、ついさっき戦えるようになったばかりのうえ、ライやシンク、レオやブリオッシュといった腕の立つ面々が集まっているため、ディガルドはそちらに気を取られてミルヒのマークを忘れていたようだ。

そのため、今回は不意打ちに成功したのだろう。

 

『うぐ、ぬぅ……』

「? あいつ、ミルリーフの攻撃を喰らった時よりダメージが大きくないか?」

 

ライの指摘通り、ディガルドは若干苦しそうにしている。攻撃の規模は明らかにミルリーフの方が上だった筈なのに、何故かミルヒの攻撃の方がダメージが大きいのだ。

 

「もしや……」

 

ブリオッシュが何かに気づいたようで、シンクがそれについて尋ねる。

 

「ダルキアン卿、何か分かったんですか?」

「これは拙者の推測でござるが、奴の力の源が禍太刀であるから、宝剣の魔を払う力が有効なのではござらぬか?」

「なるほど。じゃからさっき、儂の攻撃を優先して相殺したわけか」

 

確かに、レオが同じく宝剣のグランヴェールで紋章砲を放った際もそれを接戦して相殺していた。ディガルドも本能的にそれを察したのか、武器に魔力を纏わせるという念の入れようだった。ブリオッシュの推測もあながち間違いではなかろう。

すると、それを聞いたライは新たな疑問が浮上する。

 

「あれ? さっき、シンクが直接宝剣で攻撃したのに、あそこまで効かなかったはずじゃ……」

「これも推測でござるが、パラディオン本来の姿である剣の形態よりも力が弱いのかもしれないでござる」

 

まあ、パラディオンの剣としての姿はミルヒ曰く必要な時に変化するそうなので、他の形態にはリミッターのような力が働いているという可能性はあった。

 

『おらあああ!!』

「!? やべぇ!!」

 

戦いの場であるにも考察に入ってしまった一同に、いつの間にか復活したディガルドが太刀で薙ぎ払ってきた。どうにか全員気が付き、その攻撃の回避に成功する。

ちなみに、ミルヒはシンクに抱きかかえられて事なきを経た。

 

『てめぇら、一発喰らわせたところで俺を無視してお喋りたぁ、舐めてくれるじゃねえか! ええ!?』

 

バカにされたと思い激昂するディガルド。気のせいか垂れ流している魔力の量が増している。

 

『今度はこっちから行かせてもらうぜ!!』

 

ディガルドが垂れ流していた魔力が、いきなり彼の口元に集まっていったかと思うと、黒いエネルギー球へと変異する。

 

『がああああああああ!!』

 

ディガルドが咆哮を上げると、と同時にそのエネルギー球が天高く跳んでいく。

 

「そ、空に撃った?」

「あの男のことだから、何か意図があるのでござろう」

 

エクレールはディガルドの奇怪な行動に首を傾げるも、ブリオッシュはディガルドがこの局面でこんな間抜けな失敗はしないと見抜き、警戒を強める。

 

『まあ、そっちは後のお楽しみってことで!!』

 

そして再びディガルドは太刀を振り下ろしてきたが、先程と違いそちらに意識を集中していたので容易く避けれた。

 

「そんな単調な攻撃で、ぐわぁあ!?」

「がぁあ!?」

「シンク、エクレール!!」

 

攻撃を避けたかと思うと、シンクとエクレールに向けて何かが向っていき、二人纏めて吹っ飛ばされる。ミルヒが二人の心配をする中、ライやブリオッシュは攻撃が飛んできた方向に視線を向け、その攻撃を放った物を見据えている。

 

「し、尻尾?」

「まさか、あのような使い方をするとは…」

 

どうやら、ディガルドは自身の尻尾を鞭のように振り回し、それでシンク達を吹っ飛ばしたようだ。同じく尻尾を持つフロニャルドの住人でも、長さや形状のこともあってかこのような発想には至らないだろう。

 

『おらおら、呆けてる場合じゃねえだろ!!』

「!? 姫様、いったん離れろ!!」

 

ライは攻撃の激化を予測し、ミルヒを離脱させる。ディガルドはそのまま、太刀と同時に尻尾を使った攻撃を織り交ぜて手数を増やしてきた。今の動きは巨体であるため動きは鈍重だが、代わりに攻撃の間合いが広くなったため、そこに手数が増えたことで凄まじい猛攻と化していた。

 

「ダルキアンよ、このままではこちらが攻撃する隙が無いぞ!」

「レオ姫、手は打ってあるでござるよ」

 

 

 

 

 

「隙ありでござる!!」

 

その時、ディガルドの背後からユキカゼの声が聞こえた。どうやらいつの間にか背後に回っており、そのまま不意打ちを仕掛けようとしているようだ。声が聞こえたにもかかわらず、ディガルドは振り返りもせずにライ達への攻撃を続けていた。

 

「ユキカゼ式忍術。閃華…」

『甘いなぁ!!』

 

ユキカゼが攻撃しようとした瞬間、突如としてディガルドの片翼が巨大化した。

 

「ぐぅう!?」

 

ディガルドはその巨大化した方の翼で、ユキカゼを叩き落とした。

 

「ユキカゼ!!」

『他人の心配をしてる場合か!!』

 

今度はディガルドの額の眼球から、光線が放たれた。ブリオッシュも咄嗟のことで回避できずに、左肩をその光線で貫かれてしまう。利き腕出なかったので戦闘は続行可能だが、長引くと傷が広がる危険もある。

 

「よくもユッキーたちを!!」

 

二人がやられたことに怒りを爆発させたミルリーフは、ディガルドに向かって急降下し、その勢いで蹴り倒そうとする。

 

『おっと。そういやお前を忘れてたなぁあ!!』

 

ディガルドは両翼を肥大化させ、先程ユキカゼを叩き落とした要領で、急降下してきたミルリーフにその翼を叩き付ける。どうにか落ちなかったものの、強烈な打撃を喰らって体中が揺れ、ミルリーフは脳震盪を起こす。

 

「ぁ、ぁあ……」

『で、こいつでフィニッシュだ!!』

 

ディガルドが叫ぶと同時に、ミルリーフの目の前に魔方陣が出現する。そして同じ見た目の魔法陣が、ミルリーフをとり囲むように四方八方に出現した。

―パチンッ―

最後にディガルドが左手で指を鳴らすと、その魔方陣から極光が放たれる。

―どおおおおおおおおおおおんッ―

最後に大爆発が起きた。

爆発が晴れると、ミルリーフが傷だらけの状態で落ちてきて、落下中に子竜の姿になってしまう。おそらく、大ダメージを受けて消耗したためにそれを抑えようとしたのだろう。

 

「ミルリーフ!!」

 

その光景を見たライはその場から走り出し、落ちてきたミルリーフを受け止めようとする。ライはどうにか間に合い、落ちてきたミルリーフのキャッチに成功した。

 

「ミルリーフ、大丈夫か!?」

「ピ、ピギィ…」

 

ミルリーフは重傷を負ってはいるが、意識は残っており、治療すれば助かりそうだった。

 

「こやつ、全身が武器と化しておる。しかもさっきのあの威力は……」

「複数の動作を行いながら、瞬間的にそちらの操作に意識を映している感じでござるな。こんなことが可能なのか……」

 

ディガルドの、まるで複数の思考があるかのような複雑な攻撃と、ミルリーフを落としたあの一撃に、その場にいた全員が戦慄している。

 

「ダルキアン卿、レオ閣下!!」

 

声のした方を見ると、先程吹っ飛ばされたシンクとエクレールがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。エクレールの方は、ブリオッシュの方に真っ先に向かっていった。

 

「ダルキアン卿! その傷は…」

「拙者よりユキカゼを。先程ディガルドに叩き落されてしまったでござるから、拙者より重症の筈でござる」

「ユキが!? 閣下、姫様の方は……」

「ミルヒはライが向こうに下がらせた。流石に一人であの猛攻を避けられそうになかったからな」

「そうですか。勇者、私はユキを回収するから閣下たちと攻撃に回れ」

「わかった、エクレ」

 

戻ってきたシンク達が、早速行動に移ろうと思ったその矢先、いきなりディガルドが空を見上げだした。

 

『そろそろみたいだな』

 

ディガルドが何かを呟いたかと思うと、一同の脳裏にある光景が浮かんだ。それは、先程ディガルドが魔力球を空に向けて放ったあの行動だった。先程の猛攻で意識がそちらに持っていかれ忘れかけていたが、それが今になってこちらに返ってくるようだ。

 

「まさか……全員、ここから離れろ!!」

 

レオが叫ぶと同時にシンク達はその場から離れ、バラバラの方向に逃げる。すると、上空から黒いエネルギー弾が雨のように降ってきた。

 

「うわぁ!? さっき撃ったのは一発だけじゃ…」

「まさか、空で分裂でもしたのか!?」

 

そのままディガルドを中心に半径50mほどの範囲で、魔力弾が降り注いでいく。あまりの範囲の広さに、全員が回避に集中せざるを得なかった。

 

「エクレ、姫様とユッキーが!!」

「!?」

 

ミルヒは身体能力が他の面々と比べて低く、ユキカゼも先程ブリオッシュが言ったように身動きが取れない状態であるため、一方的に攻撃を喰らってしまうのは確実だった。

 

 

 

 

 

 

のだが、その心配も気鬱だったようだ。

いきなり、ピンクの輝力が放たれる光景がシンク達の視線に入ったのだ。

 

「エクレ、もしかしてアレって……」

「ああ。姫様がエクセリードで身を守っているようだ」

「おーーーーい!!」

「勇者殿ー、エクレー!!」

 

ミルヒの安否を確認した直後、ライとユキカゼの声が聞こえたのでそちらに視線を移す。その先には、ライが脇に子竜ミルリーフを抱え、ユキカゼを負ぶった状態でこちらに駆け寄って来ていた。ミルリーフを受け止めた直後にあの攻撃が始まったので、そのままユキカゼも救出したのだろう。

 

「ライさん、ユッキーを助けてくれたんですね!」

「ああ。でも、その状態で、走り回った、せいで、少し疲れが……」

 

流石のライも、人一人分の体重を支えながらあの猛攻を凌ぐのは体力が持たなかった。そして、その隙をディガルドは逃さなかった。

 

『固まるのは命取りだぜぇええ!!』

「「ぐぁああああああ!?」」

「「うわああああああ!?」」

 

ディガルドはその隙を見て、しゃがむと同時に右足でライ達を薙ぎ払う、俗にいう足払いを放ってきた。

 

「く…」

「今のは、流石に……」

 

ライ達はディガルドの足技を喰らって満身創痍となっていた。あの巨体からなる足技の威力はすさまじく、これと言って攻撃を喰らっていなかったライも大ダメージを負っている。しかも、ライはすでに重傷を負っていたユキカゼやミルリーフを庇ったため、受け身を取れずに余計なダメージを負ってしまったようだ。

 

『中々に粘ったみたいだが、そろそろお終いにするか』

 

そう言ってディガルドが太刀を振り上げると、何処からともなくピンクの輝力が放たれた。先程のようにミルヒが不意打ちを仕掛けたようだ。

だが、ディガルドは咄嗟に攻撃に気づいて、振り上げた太刀をその輝力に向けて振り下ろし、相殺してしまう。

 

『同じ手を二度と食うかよ!!』

「きゃあ!?」

 

そのままディガルドは攻撃が飛んできた方にいたミルヒを見据え、ブリオッシュに使った光線攻撃を放つ。それが左手の甲を貫通し、ミルヒは持っていたエクセリードを落としてしまう。

 

「「「姫様!?」」」

「ピギィイイ!!」

 

ついにミルヒまでが攻撃を喰らってしまい、ライ達が揃って声を上げる。

 

『さぁて。全員に最低一発ずつぶち込んだし、このままとどめと行くか!!』

 

ディガルドが太刀にこれまでと比べ物にならない膨大な魔力を込めたかと思うと、それをいきなり地面に突き刺した。それによって、地面にディガルドを中心とした巨大な魔方陣が描かれた。

 

「ま、まさか……」

『ああ。中央を除く魔法陣内の物体を一つ残らず塵と化す技だ。一瞬で終わるから、苦しまずに死ねるぜ』

 

ライ達は今、逃げようにも満身創痍で体の自由がきかないため逃げられない。レオやブリオッシュは先程の魔力弾の雨で散り散りになってしまたのでわからないが、今この場で動けない自分達は少なくとも逃げられない。

 

「姫様、急げば間に合うかもしれないから、早く逃げて!!」

「我々のことはいいですから、早くお逃げください!!」

「イヤです! シンクやライさん達を置いて逃げるなんて、出来ません!!」

「姫様はビスコッティの象徴だろ!! そんなあんたがここで死んだら国民が悲しむだろ!!」

「ライ殿の言う通りでござる、だから姫様はお逃げください!!」

 

ライ達は必死になってミルヒを逃がそうとするが、ミルヒはその優しさからライ達を置いて行けずにいた。

 

『えらく強情なお姫様だな。まあ、おかげで攻撃する手間が省けたぜぃ』

 

どうやら、この大技の準備中でもある程度の攻撃は可能なようで、どの道ミルヒの脱出は絶望的だったのだ。

 

『じゃあ、お前らが死んだあとは任せな。そのあとでこの悪魔王ディガルド様がこの世界の支配者として君臨してやるからよ』

 

その時、魔法陣が少しずつ光り出してきた。どうやら攻撃の準備が整いつつあるようだ。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

もはや危機は逃れられない、そう思いライは叫んだ。

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐぁああ!?』

 

いきなり何かが飛んできたかと思うと、それがディガルドの顔面にぶつかった。その時の衝撃でディガルドは仰け反り、それによって地面に刺した太刀が抜けた。それと同時に魔方陣が徐々に消滅していき、攻撃が不発に終わったことが明白となる。

そして、その隙を見計らってミルヒがライ達に駆け寄ってきた。

 

「みんな、大丈夫ですか!?」

「なんとかな。それにしても一体なにが……」

 

ライが視線をその物体が飛んできた方に見ると、そこには見覚えのあるものがあったのだ。

 

「な、なんでアレがいるんだ?」

 

それは、オレンジの色をした巨大な人型の機械だったのだ。これはロレイラルの召喚獣ナックルボルトといい、巨大な両腕をジェット噴射で打ち出して敵を粉砕する戦闘兵器だ。召喚獣がいるということはそれを召喚できる者がいるということ。だが一体誰が…

 

「あれは、何だ?」

 

次にエクレールが何かに気づく。いつの間にか上空に正体不明の飛行物体が現れたのだ。

シンク達がそれに対して警戒する中、ライとミルリーフはその正体に気づいた。

 

「ろ、ロレイラルの乗り物? あれに乗ってる人がアレを召喚したのか?」

 

またもロレイラル関連の物が出現、少なくとも味方のようだが何者なのか? ライがそう思うと、その乗り物の窓が開いて、ある人物が身を乗り出してライに呼びかけてきたのだ。

 

 

 

 

 

「ラーーーーーーーーイ! 助けに来たわよおおおおおお!」

「リ、リシェル!?」

 

なんと、それに乗っていたのはリシェルだった。なぜ彼女がフロニャルドにいるのか、など疑問はあったが援軍が来てくれたことを喜ぶのがいいだろう。

 

『召喚師だと!? 一体どうやってこの世界に来たんだ!?』

 

予想だにしなかった事態に、ディガルドも思わず狼狽える。

 

「生憎だが、来たのは召喚師だけではないぞ」

 

その時、ディガルドの耳に聞き覚えのない女性の声が聞こえた。そしてその声のする方に振り替えると、いきなり矢が飛んできたのだ。

 

『ぎゃあああ!?』

 

その矢がディガルドの額についている眼球に突き刺さる。そして立て続けに矢が放たれ、そのすべてがディガルドの顔に刺さっていった。

 

『な、何が起こっ「ホワタアアアアアアア!!」ぐあああ!?』

 

今度は掛け声と同時に何者かがディガルドの頭部に飛び掛かり、そのまま右のこめかみに蹴りを叩き込んだ。連続して攻撃を喰らったディガルドは、そのまま倒れ込む。

そして、その蹴りを放った人物は空をかけてきた何かに手を掴まれ、その何かと共にライ達のすぐ近くまで降りてきた。

 

「ライ、それに御子様、大丈夫ですか?」

「店主殿に御子殿、助太刀に来てやったぞ」

 

空を駆けていたのはインディアン風の衣装を身に纏い、背中に翼を生やした女性。その手には弓が握られており、ディガルドに矢を放ったのも彼女のようだ。もう一人の蹴りを放った人物は、カンフー映画の衣装のような服を着た、角の生えた赤毛の青年だ。

この二人はミルリーフに使える4人の御使いのうち2人、順にアロエリとセイロンという名だ。

アロエリは幻獣界メイトルパの有翼亜人セルファン族の弓の名手で、セイロンは鬼妖界シルターン出身の龍人族の武術家(同時に龍人族の未来の長)だ。

 

「アロエリにセイロン、二人ともどうやって?」

「それは後で落ち着いてから話そう。それよりも今はあれをどうするか」

 

セイロンがそう言って指を指した方には、起き上がろうとしているディガルドの姿があった。

 

「勇者、ミルヒ、ライ!!」

「エクレール達も無事でござるか!?」

 

その時、レオとブリオッシュがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

 

「貴様ら、何者だ?」

「ちょっと待て、閣下。二人とも味方だから安心してくれ」

 

セイロン達を見るなり、グランヴェールを構えて警戒心をむき出しにするレオ。まあ、いきなり現れた見たこともない種族が相手だと、この反応は当然だろう。

 

「ライ、あなた御子様にお怪我を負わせて……」

 

またも後ろから声が聞こえてきた。声の主を見た一同、特にシンクは驚く。

 

「え、天使?」

 

そこには、シンク達と同年代の少女の姿をしていたが、背中に白い翼を生やしており、薄い紫色の髪をドリルヘアーにし、その先端に光る輪が嵌っているという容姿だった。

輪の場所はともかく、その姿はまさに天使そのものだった。

 

「私は御子様に使える御使いの一人、リビエルと申します。とりあえず込み入った話は後にして、まずは皆さんの治療をいたします」

 

そう言ってリビエルは懐からサモナイト石を取り出して、召喚術を行使する。

 

「召喚、聖母プラーマ」

 

現れたのはディガルドも召喚していた聖母プラーナだ。ディガルドが召喚していた召喚獣が現れたので一部のメンバー(主にエクレール)が警戒していたが、召喚術の概要はライから聞いていたのですぐに警戒を緩める。

プラーマを呼び出した直後、リビエルは両手をかざして魔力を収束させる。すると、それに比例してリビエルの翼も光を放ちだした。

 

「光の翼よ。彼の者達の傷を癒したまえ!!」

 

プラーマの治癒魔法に合わせてリビエルは淡い光をライ達に放つ。すると、ライ達の傷が見る見るうちにふさがっていった。この光は天使特有の能力“治癒の奇跡”で、一般的な傷だけでなく肉体の不調や欠損部まで治療してしまう力だ。

ただし、欠点として魂そのものに負担をかける為、使いどころを間違えるとかえって体調不良を促してしまうこともあるという。ただし、ライやシンクをはじめとし、この場には若く生命力があふれたものが集っているのでその辺りも心配はなかろう。ユキカゼも自身で土地神を名乗っていたことから普通の生物よりも魂が強靭なのだろうし、ブリオッシュも見たところ問題無さそうだ。

 

 

『隙だらけだぜ、てめぇら!!』

 

するとディガルドがいつの間にか起き上がっており、治療中のライ達を目掛けて攻撃を仕掛けてきた。口元に魔力を収束して、それを弾丸として打ち出してきたのだ。

 

「やれやれ。君は回復中の隙ぐらいカバーする要員がいることも考えられないのかい?」

 

何処からともなく声が聞こえたかと思うと、突如一体の巨大な獣が上空から現れた。

その獣はエジプトのファラオの被り物を被った虎のような姿で、背中から鷲の頭と翼が生えているという、奇怪な姿をしていた。そして、その獣は咆哮を上げたかと思うと同時に、黒い稲妻を落としてその魔力弾を相殺したのだ。

 

「ま、魔物のような姿?」

「だが、儂らを助けてくれたじゃと?」

「こいつは確か……」

 

周りが驚く中、ライはその獣に見覚えがあった。これも召喚獣で、凶魔獣レミエスという名だ。複数の幻獣を外道の術で合成した存在で、ある人物が十八番としている召喚術だ。

すると、レミエスの背中から一人の男が下りてきた。そしてその男は、ライと同い年ほどの少女を抱きかかえている。

 

「ライ、まだクラウレが療養中だから僕らが代わりに来たよ」

「だから安心してね、ライ」

「ギアンにエニシア!?」

 

なんと、リシェルや御使いに混じってギアンとエニシアまでがフロニャルドに足を踏み入れていた。非戦闘員の彼女がいることに、驚きを隠せなかったライだった。

 

「ギアンはともかく、なんでエニシアまでここに?」

「みんなに無理を言って連れてきてもらったの。流石に私は直接戦えないけど、みんなの役に立てるはずだから」

 

そう言ってライを無理やり納得させるエニシア。まあ、ギアンが堕竜化した際もエニシアの能力があったから勝てたようなものなので、納得せざるを得なかった。その時に丁度治療が終わり、レオが真っ先に問い尋ねる。

 

「ライよ、この者達は一体?」

「さっきも言ったように、全員リィンバウムでのオレの仲間だ。ギアンやエニシア、あとリシェルはシンク辺りも通信越しに会ってるだろ」

「まあその通りなんですけど、それにしてもずいぶんと個性的な方達で……」

 

シンクも流石に顔が引きつっていた。悪魔の次に天使やら龍人やらと立て続けに会ってしまったのだから、この反応は当然だった。

すると先程の乗り物が着陸し、中からリシェルが下りてきてライ達のところに駆け寄る。彼女しか降りてきてない辺り、どうやらリシェル自らが操縦していたようだ。

 

「ライ、どうやら無事みたいね」

「おかげさまでな。とにかく、来てくれてありがとう」

「ま、まあ幼馴染のピンチなんだから、当然よ当然!」

 

ライに礼を言われたリシェルは、思わず顔を赤くする。

 

「って、そんなことより! エニシア、もう全員揃ったからアレをお願い!!」

「うん、それじゃいくね」

 

そう言うと同時に、エニシアの体が光り出したかと思うと、その光がライ達にも移っていった。

 

「な、なんじゃこれは?」

「とっても、優しい光……」

「だが、これは……」

「体の奥底から、力が湧いてくる!」

 

シンク達はエニシアが放つ不思議な光と、それによる不可思議なパワーアップに驚きを隠せずにいる。

 

「これは、紋章術ではござらんな」

「かといって、ライ殿達の召喚術とも違うようでございます」

 

ブリオッシュとユキカゼもこの力について考察するが、見たことない系統の力ゆえに見当がつかない様子だった。

 

「これは、私の生まれつきの力です」

「生まれつき?」

 

エニシアの言葉に、シンク達は首を傾げる。ライ達はかつてこの力によって堕竜と化したギアンを止められたので、この力の詳細をよく知っていた。

 

「エニシアは妖精と人間のハーフでね、これは彼女の妖精としての力なんだよ」

「妖精とのハーフ……」

 

シンクがエニシアの詳細を聞いて唖然としている。フロニャルド組も妖精が何かは知らなかったが、名前の響きから精霊と似た何かだと推測し、エニシアがそれの特殊な力を持っていることに驚く。

そこで口を開いたのは、いつの間にか人の姿になったミルリーフだった。

 

「妖精はメイトルパに住む花から生まれる生命で、生まれたもとになった花ごとに異なる力を持っているの」

 

ミルリーフがそこまで説明をすると、ギアンがその続きを引き継ぐ。

 

「エニシアの母親は、その妖精の中でもとりわけ特殊な力を持った月光花シグマリアという花から生まれた妖精なんだ。そしてそのシグマリアの妖精の力というのは……」

 

 

 

 

 

 

「……生物の秘めたる力と才能を開花させる。だからみなさんが感じている力は、皆さんの中で眠っている力なんです」

「儂らの秘めたる力……」

「私に、これほどの力が眠っていたのか」

「でも、これなら……」

「あいつに、ディガルドに勝てる!!」

 

エニシアの力の正体を知り、シンク達の目に闘志が宿っていく。そして、それを見てディガルドが焦り出した。

 

『妖精の血を引く人間、だと? しかも、それによるパワーアップ!?』

「まあ、そういうことだ。で、ディガルド」

 

その時、一同は総じて得物を構えて臨戦態勢に入る。そしてその先頭にライが立ち、剣の切っ先をディガルドに向ける。

 

「さっき言ったことを今度こそ実行させてもらうぜ」

「ライさん、僕にも言わせてください」

「おう、せっかくだからいいぜ」

 

隣に来たシンクも、今度はパラディオンを神剣形態にして、ライ同様に切っ先をディガルドに向ける。

そして、二人で同時に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「「今度こそ、地の果てまでぶっとばしてやる!!」」




次回、いよいよ決着。ちなみに、セイロンや召喚獣の攻撃が効いたのは、不意打ちだったので対応できなかったのが大きいです。
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