それでは、どうぞ。
「オレとリビエルで奴を牽制するから、ライ達は地上から攻撃を頼む」
「わかった。二人とも、頼んだぜ」
アロエリはリビエルと二人で飛翔する。
「リビエル、憑依召喚を頼む」
「任せて、アロエリ」
アロエリの指示を受けると、サモナイト石を取り出して召喚術を行使する。憑依召喚とは、妖怪や霊体の召喚獣を他者の体に宿らせることで、味方の強化や敵の弱体化を促す召喚術のことだ。アロエリはリビエルに強化用の憑依召喚を頼んだようだ。
「召喚、氷魔コバルディア!!」
リビエルによって召喚されたのは、黒い鎧と青いマントを身に着け、二本の剣を繋げたダブルセイバーのような武器を持った女性の悪魔だった。コバルディアは名前通り氷の魔法に長けた召喚獣で、その氷魔法で直接戦闘や憑依による強化を促す応用の利く召喚獣だ。
召喚されたコバルディアは半透明になったかと思うと、アロエリの体と同化した。憑依に成功したようだ。
「氷の矢を受けてみろ!!」
アロエリが早速ディガルドに弓を射ると、放たれた矢が氷の魔力に覆われて飛んでいく。そして、同様に氷の矢を連続して発射すると、それがディガルドの体のいたるところに刺さる。すると、刺さった個所からディガルドの体が凍り付いてきた。
『この程度の攻撃で俺を止められると思うな!』
だが、ディガルドは意に介さずにアロエリに狙いを定め、太刀を振り下ろしてきた。やはり的が大きすぎるようで、強化したとはいえ矢の攻撃では決定打は与えられないようだ。アロエリはディガルドの攻撃を、落ち着いて回避する。
「オレだってこの程度で効くとは思ってないさ。あくまで牽制しているだけだ」
『何? はっ!?』
その時、どこからか巨大な火の鳥が飛んできて、それがディガルドの左腕に命中した。
『ぐぁああ!? し、しまった…』
「あの程度の攻撃で気を逸らされるとは……貴様、本当は大したことないのではないか?」
今の攻撃が飛んできた方を見ると、レオがグランヴェールを構えてドヤ顔で立っている。急な増援によって、ディガルドは動揺しているようだ。
『こうなったら、頭数を揃えさせてもらうぜ』
すると、ディガルドの周囲に魔力が立ち込め、召喚術の発動する前触れが起こる。この状態でも、どうやら使えるようだ。しかもそれだけでなく、キリサキゴホウの周囲に現れた霊魂のような物も現れた。
数が増えて不利になる、と思われたが…………
『な!? 召喚術が…』
なんと、召喚術がいきなり中断されて、霊魂だけが出現した。増援の数を減らされてディガルドも思わず動揺する。
「あっちの方は召喚術じゃないみたいだな。送還術が効いてない」
召喚術が中断されたのは、ギアンによるものだった。ギアンは召喚術の原型である“送還術”を使えるのだ。
送還術とは、サプレスの悪魔やシルターンの悪鬼といった異世界からの侵略者を迎撃するために生み出された術で、相手を無理やりもといたい世界に送り返す術で、これを逆転して召喚術が生まれたのだ。現在は召喚術の発展で廃れてしまっているので、おそらく送還術を使えるのはギアンだけと思われる。
「あっちの霊魂どもは、我らに任せてください!」
「拙者達も見せ場が欲しいでござるよ」
ギアンの前にエクレールとユキカゼが躍り出てくる。二人とも紋章を展開しており、戦闘準備万端だ。そして、そんな二人に向かって霊魂達が飛び掛かって来た。
「紋章剣…」
「ユキカゼ式忍術…」
二人の紋章が色鮮やかになり、技の発動準備が完了した。
「裂空十文字!!」
「閃華・双烈風!!」
エクレールは自身の十八番を、ユキカゼは先程の戦闘で出しそびれた技を放つ。ユキカゼに関しては、ミオン砦戦でミルリーフの窮地を救った輝力の手裏剣を飛ばす技のようだ。
二人が技を放つと、とんでもないことが起こった。
「うぇ!?」
「で、でかい……」
なんと、二人の技が通常よりも強化されて放たれたのだ。“裂空十文字”は普段の数倍の出力で輝力を飛ばして霊魂を次々と押しつぶしていき、“閃華・双烈風”は投げると同時に手裏剣が巨大化して、次々と霊魂を切り裂いていった。
「ユキ、確かエニシアは私達の潜在能力を引き出したと言っていたよな」
「だとすると、拙者達にはここまでの強力な力が眠っているということになるでござるな」
二人は、自身の中に眠っているという力の強大さに、驚愕するのだった。ディガルドも同様だったようで、二人の方を見ながら呆然としていた。
『な、なんなんだあれは……ぬぐっ!?』
茫然としていると、ディガルドは胸部に痛みを感じて苦痛の表情を浮かべる。痛みのする方を見ると、シンクがパラディオンを突き刺していた。
「よし、効いてる!」
『な!? てめぇ、いつの間に…』
「あなたが味方を呼んでる間に近づいたんですよ。しかもエクレ達の攻撃に驚いてたんで、隙だらけでしたし」
そう。シンクはライやセイロンといった前衛組と共に、ディガルドが召喚術を使っている間に接近、攻撃を仕掛けたのだ。まずシンクを担いだセイロンが、ジャンプ台役のライに打ち上げられ、限界まで跳びあがった後でシンクを蹴り上げ、それに合わせてシンクもジャンプして一気に飛びあがって攻撃をしたという算段だ。
『てめぇ、離れろ!!』
ディガルドがシンクを払い除けようとしたら、咄嗟にパラディオンを抜いて咄嗟に地上に降りる。
「
「わかりました!」
すると、地上に落ちていくシンクと入れ違いにセイロンが飛びあがって来た。どうやらライが先ほどと同じ手順で打ち上げたようだ。シンクはそれを見ると咄嗟にパラディオンを棒に変化させる。
「行っけええええ!!」
シンクはセイロンとすれ違う際に棒をバットの要領で振り回し、それをセイロンが足場代わりにして一気に飛びあがる。
「ホワタァアアアアアアアアア!!」
『ぐがぁ、ああ…!?』
セイロンは高速でディガルドの懐に飛び込み、シンクがつけた傷口に蹴りを叩き込む。生傷に直接衝撃が与えられたので、ディガルドのダメージは大きかった。
攻撃を終えると、セイロンは重力に従ってそのまま自然落下するが、そこにアロエリが飛んできて、先程のように彼の腕を掴んでそのままディガルドから距離を取って飛翔する。ちなみに、落下していったシンクはライにキャッチされて事なきを得た。
『クソがぁ……これでも喰らいやがれ!!』
猛攻を喰らったディガルドは激情し、周囲に魔力の塊をいくつも作り出す。そして、それらを辺り一面に乱射しだした。
「あいつ、とうとう見境が無くなったな」
「これは避けるの難しそうですね…」
怒りに任せて撃ち出された魔力弾だったが、その一つ一つが的確にライ達を狙っている。
だが、それの回避について心配するのは気鬱だった。どこからともなく、無数のビームが放たれてそれが魔力弾を一つ残らず撃ち落した。
「この攻撃は…」
「パパ―!」
「シンクー!」
上空から、至竜形態のミルリーフがミルヒを背に乗せて飛んできたのだ。どうやら、今の攻撃は二人によるものだったようだ。二人のおかげで難を逃れたかと思うと、ミルリーフの背中からミルヒがブリオッシュに抱えられた状態で飛び降りてきた。
『てめぇら、いい加減にしやがれ!!』
直後にディガルドがまたもぶち切れしたかと思うと、地上のライ達に向けて額からレーザーを放ってきた。それと同時に、尻尾をこちらに伸ばしてそれを連続で突き刺してくる。攻撃をよけながら、ブリオッシュはあることが気になっていた。
「さっきディガルドの額は矢を受けて潰されたはずなのに、普通に機能している?」
「まさか、再生したのか?」
そう。ディガルドは額にある眼球からレーザーを放つのだが、それはさっきアロエリの矢によって潰されて使えなくなったはずだった。にも拘らず、こうやって普通に使っている。どうやらパワーアップと同時に再生能力まで手に入れたようだ。よく見ると、レオの攻撃で丸焦げになった左腕や、シンクがつけた胸の傷口が徐々に治っていくのが見える。
逆転できたかと思ったらまたふりだしになってしまう、そう思ったその時…
『んんっ!?』
なんと、いきなりディガルドの頭が凍り付いた。それによって眼球も凍って魔力の収束も中断され、レーザー攻撃も止まった。
「みんな、大丈夫か?」
「ギアン、助かった」
何かの足音が聞こえたのでそちらを振り向くと、レミエスが背中にギアンとエニシアを乗せて走ってきていたので、その攻撃によるもののようだ。レミエスの背からギアンがこちらに声をかけてくるので、ついでに彼の知恵を借りることにした。
「ギアン、あいつなんだけど、とんでもねえ勢いで再生していくんだ。どうすりゃいい?」
「みたいだね。それを攻略するとなると……」
ギアンは早速思案してみる。そして、結構速く考えがまとまった。
「やっぱり、強力な攻撃を連続して叩き込んで再生する隙を与えないようにするしかないな」
「そうだよなぁ。あの時もそうだったけど、コイツにそれをやるとなると骨が折れそうだな……」
比較的単純な作戦だが、ディガルドの今のサイズを考えると結構難しい。
ちなみに、ライの言うあの時というのは、ギアンが敵としてトレイユの町に攻めて来たのことだ。ギアンは幽角獣という聖獣の血を引いており、それによってディガルドと同じく再生能力を持っていたので、自身がやられて厳しい攻撃を考えた結果、この結論に至ったというわけだ。
どうしようかと思っていたら、リビエルがこちらに下りてきた。
「だったら私が強力なのを一発ぶちかまします。皆様、下がってください」
「リビエル……そうか、あれを呼ぶのか。 みんな、とりあえずリビエルの言う通り下がれ!」
皆が距離を取ったのを確認すると、リビエルサモナイト石と一冊の本を取り出す。取り出した本を開くと同時にサモナイト石に魔力を込めると、それに連動して開いた本のページがひとりでに、しかも高速でめくられていく。
「おいでなさい!!」
召喚に必要な魔力が溜まったところで本を閉じ、叫ぶと同時に召喚術が行使された。
「あ、あれは……」
「女の人?」
「あのような者を戦わせるのでござるか?」
召喚されたのは杖を携えた天使の女性なのだが、一見してもそんなに強そうではない。だが、シンク達が魔力という力を感じることに慣れていないため気づいていないが、実はこの女性はすさまじい魔力をその身に秘めていた。
「いいや、あれだけじゃない。上をよく見ろ」
「上? ……ええ!?」
「きょ、巨大な鎧!?」
ライに指摘されて上を見上げると、天使たちと同じ白い翼を持った上半身だけの巨大な鎧がいたのだ。そして、その鎧には強大なエネルギーに満ちている。
この召喚獣の名は聖ジャルヌアーク。上空に現れた巨大な鎧、通称“聖鎧”を使役して戦う天使の聖乙女で、清き歌声とともにあらゆる不浄を浄化するといわれている。
「~~♪」
ジャルヌアークが歌いだしたかと思うと、聖鎧は左腕を振り上げてそこに浄化の魔力を集める。そして、左腕全体に魔力が溜まったと同時に、ジャルヌアークと聖鎧は飛びあがる。
まだ頭が凍っているので喋れないが、ディガルドが焦り出したのが見て取れた。ジャルヌアークのような高等天使は悪魔の最大の天敵なので、攻撃を喰らいたくないのは当然だろう。どうにか防ごうと、ディガルドは太刀に魔力を纏わせる。
「させないよ。レミエス、頼む!」
ギアンはエニシアを抱きかかえてレミエスから降りると、ディガルドにレミエスを
「リビエル、今だ!!」
「わかりました。ジャルヌアーク、大聖浄!!」
リビエルの掛け声と同時に、上空でジャルヌアークが杖を振りかざす。すると、聖鎧がそれに連動して左腕の浄化の魔力をディガルドに向けて放った。
「よし、レミエス送還!」
ジャルヌアークの攻撃が見えたと同時に、ギアンはレミエスを送還する。それによって、たった一体で残されたディガルドに攻撃が命中する。ジャルヌアークの放った一撃によって、巨大な魔力の爆発が火柱のように天高く立ち上っていく。
『はぁ、はぁ、く、くそぉ。今ので鎧が……』
立ち上がってきたディガルドは、全身に纏っていた甲冑を今の攻撃で破壊され、上半身裸の状態になっていた。目に見えるような傷はなかったが、浄化の魔力に当てられて体中から煙が上がっている。
「丸裸になった。ってことはダメージが大きくなる!」
「今が好機、拙者に任せるでござるよ」
そう言ってブリオッシュが前に出てくると、何も持っていないはずの右腕に纏っていた輝力が集められていく。先程の間に大技の準備をしていたようだ。
「神狼滅牙……」
技名をつぶやくと同時に右腕を天に掲げるブリオッシュ。すると、そのまま輝力が天へと伸びていき、それが徐々に形を成していく。
「え、えええええええええええ!?」
「ちょ、何よこれ!?」
「みなさん、私達の戦い方に驚いていましたけど、人のこと言えませんわ!!」
なんとブリオッシュの右腕に、巨大な太刀が形成されたのだ。それこそ、太刀だけでディガルドの今の身長と同じくらいのサイズという規格外すぎるものだった。
「封魔断滅!!」
そしてブリオッシュはそのまま太刀をディガルドに向けて振り下ろす。
『今度こそ喰らうか!!』
ディガルドも太刀を構えてこの技を防ごうとする。封魔と銘打たれた技である以上、宝剣や天使の力同様に今のディガルドには効果が絶大なのは確実なので、なんとしても防ぎたかった。
「せっかくの大打撃、防がせるわけにはいかぬ。アロエリ!!」
「ああ!」
セイロンが叫ぶと、アロエリは腰のホルダーに弓を掛け、セイロンの右腕を自身の両腕でつかみ、一気に飛翔する。
「いけええええ!」
「ウォアタアアアアアアアア!!」
天高く上昇したアロエリは、そこからセイロンをディガルド目掛けて力の限りブン投げる。投げられたセイロンは雄叫びを上げながら蹴りの態勢に入って下降していく。そして、ディガルドの右肩に直撃した。
その衝撃で構えを解かれたディガルドは、攻撃を諸に喰らう。
『ぎゃあああああああああああ!?』
ブリオッシュの技を喰らったディガルドは痛みから絶叫、胸から腹にかけて巨大な刀傷をつけられた。レオやジャルヌアークの攻撃同様、効果は絶大だ。
「んじゃ、今度はアタシの番ね」
リシェルはサモナイト石を取り出すと同時に叫び、杖の先に魔力を収束させる。杖を介してサモナイト石にリシェルはありったけの魔力を注ぎ、召喚術を行使した。
「召喚、機神ゼルガノン!!」
リシェルが召喚獣の名前を叫ぶと、その召喚獣“機神ゼルガノン”が現れた。そして、それを見たシンクやフロニャルド組はまたも度肝を抜かれることとなる。
「ええええええ!! 何ですかコレ!?」
「また鋼鉄の巨人!?」
「しかも二体とは……」
「ま、まさかこれロボット!?」
そう、ゼルガノンは両肘から鋼鉄製のブレードを生やしたスマートな人型ボディと、胴体と頭部が一体化したような体躯で両肩に巨砲が備え付けられた重厚なボディの、まさに地球のテレビアニメに登場しそうな巨大ロボットそのものの姿をした二体一組の召喚獣だったのだ。かつてロレイラルに存在した伝説の機械技師“名匠ゼル”が作ったという究極の戦闘兵器“ゼルシリーズ”の一つに数えられ、高い戦闘能力を有する召喚獣だ。
「ゼルガノンA、クロスラッシュ!!」
リシェルが指示を出すと、スマートな方のゼルガノンの両腕が回転して両肘のブレードが前を向いた。それと同時に背中から炎を吹きだして高速ダッシュし、ディガルドに突撃していく。
ディガルドは今度こそ喰らうまいと、ゼルガノンAを迎え撃つために右腕の太刀を振り下ろしてきた。かと思うと、いきなり何かがディガルドに向かって飛んでいき、振り下ろされた太刀に攻撃を加えてそのまま達が振り下ろされる軌道を逸らした。
飛んできた何かは、武者甲冑を身に纏った鬼で、武器は巨大な太刀だった。ただし、今のディガルドのように腕と一体になっているのでなく、しっかりと腕に握られている。
『な!?』
「油断したようだな。我も召喚術が使えたとは思いもしなかっただろう」
今の攻撃はセイロンの召喚獣によるものだった。セイロンはリビエルやリシェルに比べると威力が低いというだけで、ライやアロエリよりは召喚術が得意な方に分類されているのだ。今回は攻撃を逸らすのが目的だったので、それなりに衝撃を与えられれば問題なかったということで使用したのだった。
ちなみに召喚されたのは鬼神将ゴウセツという、大昔のリィンバウムへの侵略戦争で人間側についた伝説の鬼将の一体だ。そして、そのゴウセツによって攻撃が不発に終わったため、ゼルガノンAの攻撃を顔面に諸に喰らった。
『がぁああ!?』
「今よ! ゼルガノンB、ファランクス!!」
ゼルガノンAの攻撃が入ったのを確認すると同時に、リシェルは残ったもう一体のゼルガノンに指示を出す。するとそのもう一体、ゼルガノンBの両肩が開閉し、そこからミサイルが発射された。
『ぎぃあ、があああああああああ!?』
発射されたミサイルは、今のゼルガノンAがつけた傷や、先程つけられた傷に直撃した。いかに強靭な肉体で、宝剣や封魔の技以外の攻撃の耐性が強くても、鎧を失った体に練続して攻撃を喰らうと傷はつくし、その傷口に直接攻撃されればまさに生き地獄というべき苦痛を味わうこととなる。
「おーい、貴様らぁ!」
「儂らのことも忘れてもらっては困るぞ!」
「でござる!」
その時、レオがエクレールとユキカゼを引き連れて、こちらにかけて来た。しかも、攻撃の準備が万端だ。
「魔神・閃空斬!!」
「裂空十文字!!」
「閃華・双烈風!!」
そのまま三人の紋章砲がフルパワーで放たれ、ディガルドに命中、さらにダメージを重ねていく。
それが終わったのを見ると、リシェルが再び杖を構えだす。
「じゃあ、シメの一発行くわよ。ライ、ミルリーフ、お願い!」
「わかった。やるぞ、ミルリーフ!」
「うん!」
リシェルに言われるがまま、ライはミルリーフと二人でリシェルに魔力を注ぎ込む。この技はサモンアシストといい、複数人で召喚術を行使することで威力アップや魔力の節約、それによってでしか使えない召喚術を使用可能とする技だ。
そして、ゼルガノンにはサモンアシスト専用の召喚術があった。そして、その実態は……
「ゼルガノン、ドッキング!!」
リシェルの叫び声と同時に、ゼルガノン二体が飛びあがり、そのまま上空で変形を始めた。ゼルガノンAは両腕が折りたたまれると、股から開いて両足がそのまま腕の形に変形し人の上半身のような形状となる。対してゼルガノンBは、背中の巨大パーツが両足と連結して、こちらは下半身のような形状となった。そしてそのまま変形した二体が連結、平たく言えば“合体”して巨大な人型ロボットの姿となった。この合体機構がゼルガノンの真骨頂で、この状態でないと使えない強力な武装があった。
「な、ななななななな!?」
「別々の体が一つに……」
「ま、まさかファンタジー世界で合体ロボを見るなんて……」
ジャルヌアークと違った意味で度肝を抜かれたフロニャルド陣営。特にシンクは、自身の世界では創作物の中の存在でしかなかった合体ロボの出現に、どうリアクションするべきかで困惑していた。
そうこうしているうちに、ゼルガノンの右手に巨大な剣が出現した。この剣こそがその合体時専用の武装で、それを握ったと同時に両足のバーニアを噴出して上空に飛びあがる。
「神剣イクセリオン、ゴー!!」
リシェルが叫ぶと同時に、ゼルガノンは右手に握っていた剣“神剣イクセリオン”をディガルドに向けてブン投げる。
『な!?』
先程の連続攻撃によるダメージでディガルドは対応できず、イクセリオンが直撃した。胴体を刺し貫かれると同時に、イクセリオンから破壊エネルギーが放出され、ディガルドの体が爆発した。
『く、くそぉ……よくも、やったな…』
爆発が晴れた先にいたディガルドは、左腕が力なく垂れ下がり、右腕の太刀はボロボロになって、イクセリオンの爆発によって胴体に風穴が空いている、といった状態にもかかわらずまだ生きている。
「あんな状態でまだ生きていられるなんて、どういうことだ?」
「そうよ。普通、体の中から爆発したなら、生き物だろうと機械だろうと原形を留めている筈ないのに」
フロニャ力は悪魔に効かないというのはディガルドと戦ったその日の内に判明しているし、効いたとしても今はキリサキゴホウが出現した影響で弱まり、その力の核をディガルドが引き継いだのでまだ弱まったままだった。
「? あれはいったい何だ?」
その時、アロエリがディガルドの体に空いた風穴から何かが見えているのに気付いた。それは、金属光沢のある赤紫色の塊だった。しかも、その塊は一定周期で躍動している。
「まさか、あれがディガルドの心臓か?」
「なにやら金属のようなものに覆われているようだが、あれは一体?」
「悪魔だからって、心臓があんな妙なことになってるなんて、聞いたことありませんわ」
ディガルドの心臓については、サプレス出身であるリビエルや御使いとして博識であるセイロンもよくわからない状態となっていた。そんな中、ブリオッシュはその正体について感づいたようだ。
「おそらく、あの者が力の核として取り込んだ禍太刀やもしれん」
「え!? ダルキアン卿、それはどういう……」
「勇者殿も見ていたと思うでござるが、禍太刀は刀の状態のままでも生き物のように蠢くことがある。おそらくディガルドは禍太刀から力を完全に取り込んで、残った刀をその特性で自身の心臓を覆う保護膜として扱っているのでござろう」
「なるほど、この世界特有の害悪をあやつが利用したということか……何か打つ手は?」
「本来ならば禍太刀は封印して、ある場所で浄化するのでござるが、もはや禍太刀に意思は残ってないと見た。ディガルド諸共完全に滅するしかないのでござるな」
「なら、その方法って何なのよ。勿体ぶらずに教えなさいよ!」
「おい、リシェル」
「コイツ、知らないとはいえダルキアン卿になんて口の利き方を……」
ブリオッシュに対して遠慮なく問い詰めるリシェル。ここに来て、彼女が平常運転というのはある意味安心できるかもしれない。ただし、エクレールは憤慨していたが。
「勇者殿と姫様の宝剣が確実でござるな。お二人は輝力をまだあまり使っていないから、力も有り余ってるはずでござるよ」
「僕達、ですか?」
シンクとミルヒは顔を合わせ、そのあとでライの方を見る。
「わかった。一緒にやってやる」
「「ライさん…!」」
「よし。ミルリーフ、頼む」
「オッケー、パパ!」
ミルリーフがライ達を背に乗せ、そのまま一気に飛翔する。ある程度の高さに達すると、ディガルドの胸の辺りが少しずつ再生していくのが見えた。今を逃せばまたふりだしになると考え、シンクとミルヒは紋章剣の準備に入る。エニシアの力で潜在能力を引き出されたため、子狐をキリサキゴホウから解放した際に使ったもの以上のエネルギーが溜まっていく。そして、充填を完了したと同時に二人はミルリーフの背から飛び降り、トルネイダーを発動して一気にディガルドの懐に潜り込む。そして、紋章剣を放った。
「「フルパワー・ホーリーセイバーーーーー!!!」」
二人の攻撃はこれまでとは比較にならない輝力を剣先から放出、それがディガルドの心臓を覆っている禍太刀に命中した。宝剣の魔を断つ力が込められた輝力の直撃を受け、保護膜化した禍太刀が悶絶するかのごとく激しく蠢き出す。すると保護膜が下から少しずつ崩れていき、完全に心臓が剥き出しになった。それを見計らってシンク達はトルネイダーで離脱すると、ライが剣先から紋章砲を放って、その推進力でディガルドの心臓に飛び込む。
「ディガルド、コイツでとどめだ!!」
そのままライは魔力を纏わせた剣で、剥き出しになったディガルドの心臓を滅多切りにする。シンク達同様、エニシアの力でライの響界種の力はフルに引き出されており、その威力は絶大だ。
「はあああ!!」
ライはひとしきり攻撃を終えると、魔力を剣先から放射、ディガルドから距離を取ってそのまま上空に登っていく。そして、輝力と魔力を混ぜ合わせて剣先に集中して振りかぶる。それと同じタイミングで、先程待機していたミルリーフが魔力ビームとブレスの同時発射の準備を終えていた。
「喰らえ、召竜連撃+響界斬魔剣………」
最初の連続切りはフロニャルドに来る前からの必殺技である“召竜連撃”の物で、そこにフロニャルドに来てからの新必殺技“響界斬魔剣”を組み合わせた新必殺技で決めるようだ。しかも、後者についてはディガルドに対して初めて使った、輝力と魔力を混ぜ合わせたものを使用するというものだった。
そして、その新必殺技がついに放たれた。
「召・竜・響・界・剣!!!」
ライとミルリーフの攻撃が同時に放たれ、それがディガルドに命中していく。ミルリーフの魔力ビームがディガルドの四肢や頭部に当たって彼の動きを完全に封じ、防御体制の取れないままライの直接攻撃とミルリーフのブレスが心臓に命中する。絶え間なく攻撃を受け続けた心臓は黒ずんでいき、やがて少しずつ崩れていった。
もはや、ライ達の勝利は確実だった。
ゼルガノンのA,Bという呼び方は自分で勝手に呼んでるだけです。あしからず。
そして、召喚術のランクはPS2版の単独Sランクを採用しています。
決着はつきましたが、次回もう一イベントある予定です。果たして、その真相はいかに?