ご意見、お願いいたします。
ライ達はミルヒの臨時ライブが開かれるという場所までやって来た。そこは昼間の戦場となっていた平原の一部分で、意図的に削り取られたようなホール状になっている。そこの一角で現在、ライはシンクと二人でロランと話をしていた。
「勇者殿にライ殿、事の次第はエクレールから聞いたよ。君たち二人、特にライ殿のおかげで大事に至らずに済んだ。ありがとう」
「いえ、むしろエクレールを危険な目に合わせてしまって……」
「いや、ライ殿の仲間のリビエル殿だったか? 彼女のおかげで怪我も治っているそうだし、大して問題ない」
ロランがフォローを入れるも、シンクの表情は暗いものから真剣なものに変わっていく。
「でも、フロニャルドって平和な世界だと思っていたのに、あんな魔物もいるんですね」
「ああ。流石にあそこまで巨大な個体は今まで見たことがないし、例のディガルドという男のような件も前例は無かったがな」
それから、ロランが続けて語り出した。
「守護力の働く場所から一歩でも出たら、それなりに危険もある。我々の普段行っている戦には、ああいった脅威と戦う勇気を忘れないように、という意味もあるんだよ」
「戦興行に、そんな意味が……」
「傷つける力を振るうことはよいことではないが、戦わずに蹂躙されるばかりでは大切なものを守り通せないからね」
「はい」
ロランから語られた戦興行の意味、それが今回の一件もあって、ライとシンクは強く感じ取れた。
すると、エクレールがこちらに駆け寄ってくる。そして彼女についてくる形で、エニシアとミルリーフもやって来た。
「兄上、現場警備についてスタッフが相談をしたいと」
「ああ、すぐ行く。では二人とも、私はこれで」
そのままロランはライ達に別れを告げて、エクレールが来た方に走って行った。
「二人とも、どうしたんだ?」
「パパたちがどこにいるかわかんなかったから、エクレに連れてきてもらったの」
「ライは騎士団長さんに会いに行ったって聞いたし、エクレちゃんがちょうど会いに行くところだからまさかと思ってね」
チャッカリとしている二人に、思わず苦笑するライだった。そんな中、シンクはエクレールに声をかける。いくら大丈夫と聞かされても、本人から話を聞かずには安心できないようだ。
「エクレ、動き回って大丈夫なの?」
「問題ない。ライやリビエル殿のおかげで体調は万全だからな」
「そっか。よかった」
安心したシンクは思わず笑顔を見せる。それを見たエクレールは、思わず顔を赤くするが、それを誤魔化すようにあることを尋ねる。
「ところでお前たち、食事はまだか?」
「あ、そういえば……」
エクレールにそう聞かれた途端、二人は空腹感に襲われる。
「よかったら、そこの屋台で食べていかないか?」
「お、いいのか?」
「じゃあ、僕もごちそうになるよ」
ライもシンクも、エクレールの誘いに乗る。まあ、今日の激務を考えると今まで腹が空かなかったことの方が不思議だったから、当然だろう。
すると……
―くぅ~―
いきなりかわいらしい何かの音が聞こえたが、音の出どころはすぐに分かった。
「あぅ……」
「はは、二人も腹減ったか。せっかくだから、一緒に案内してもらうか?」
「うん、お願いします…」
ミルリーフとエニシアは恥ずかしそうにしながら頷く。そして、そのままエクレールに案内される形で出店の方に向かっていくのだった。
だが、この光景を物陰からこっそりと見つめる影があった。
「何やら興味深げな雰囲気でありますよ」
「でござる」
リコッタとユキカゼが、物陰からその様子を覗き見している。俗に言うデバガメだ。
「あ~、エニシアに先を越された……」
二人のすぐ隣でリシェルが呻いている。彼女もエニシアもライに好意を抱いているため、リシェルにとって今の状況はあまり嬉しくなかった。
実は、リシェルはエニシアと協定を結んでおり、ライが正式にどちらかに振り向くまでデートの回数を均等にする等の対等の条件でライを取り合っていたのだ。ちなみに、本人公認である。
ライがフロニャルドに来る前はそういったものが同じ回数であったため、再会したら早い者勝ちでライをデートに誘い、恨みっこなしという口約束をしていたという。
エクレールに案内された屋台で、売っていた料理を買う一向。
「えっと、これなに?」
「なんか、シルターンのお好み焼きって料理を、クレープみたいに巻いた感じだな」
「あ、確かに」
「そっちの世界の料理はよく知らんが、これはココナプッカといってな、気軽に食べられて栄養も取れる料理だ」
見たこともない料理につい見入るライ達。特に、今日ここに来たばかりのエニシアは初めてフロニャルドで食す物なので、珍しさも人一倍感じただろう。
「まあ、百聞は一見に如かずならぬ、百見は一口に如かずだ。とりあえず食うぞ」
「それもそうだね」
「いただきまーす!」
ライに促されて、早速ココナプッカを食べてみるエニシアとミルリーフ。
「あ、おいしい」
「うん。それに食べやすくていいね」
「これ、うちの店に出せねえかな?」
「さ、さあな……私は、コイツを勇者に持って行ってやらねば」
ココナプッカは好評で、ライに至っては宿屋の新メニューに出来ないかと検討している。その時の目の色が本気の物だったため、思わずエクレールもたじろいでしまう。
そして、シンクを言い訳にしてそのままライから離れようとしたエクレールに、いきなりエニシアが近づく。
「それじゃあ、ライは私が引き受けるから、シンク君と二人で楽んでね♪」
「な!? な、何を言っている!?」
エニシアに耳打ちされたエクレールは、顔を真っ赤にして慌てふためく。その様子を見て、エニシアはクスクスっと笑った。
「それは自分で考えてね。じゃあ」
そのままエニシアはエクレールから離れていき、ライとミルリーフを連れて移動してしまう。そして、その光景を見ていたリシェルは、ものすごくがっかりした様子だった。
「仕方ない、今回はアッチの恋模様を覗いて我慢するわ」
「リシェル殿……」
リシェルの変な開き直り方に、ユキカゼも思わず苦笑するのだった。
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「ふぅ、腹も膨れたな」
ライはベンチに座りながら、紙コップに入っているお茶を飲み干す。すると、隣に座っていたエニシアが声をかけてきた。
「ねえ、ライ」
「ん、どうし…」
ライが応える間もなく、エニシアはライに抱き付いてきた。
「え!? エニシア、ちょ、どうした!?」
いきなりの事態にライは慌てふためき、ミルリーフも固まっている。
「ライ、私ね、本当に心配したんだよ。もしかしたら本当に帰れないかもしれなくって、もしそうなら二度と会えないかもしれなかったし。それに、向こうでリシェル達が占いで見てもらった時、ライにとっても不吉なことが起きるって言われて、それを伝えても強がって…」
エニシアは、今朝方の一件について話す。あの後、彼女は不安で心が押しつぶされそうになっていたという。
「あのエルゴの声を聞いた時、間に合わなかったらライが死んじゃうんじゃないかって、本当に心配したんだよ。私だけじゃなくって、リシェルもルシアンも、ポムニットやグラッドさんやミントさんも、御使いのみんなやオーナー、ギアンにメリアージュさんも、本当に…ほんと、うに……」
「エニシア…」
段々と涙声になっていくエニシア。そんな彼女や、今この場にいないリシェル達駆けつけてくれた仲間、向こうで待っている面々の気持ちを聞いて、彼らに対する不義と、純粋な嬉しさが混じって湧いてくるライだった。
「……」
「ライ?」
そんな中、ライは無言でエニシアを抱きしめる。
「悪かった。お前やみんなが、そんなに心配してくれていたなんてな。でも、オレはお前やリシェルを残してくたばる気はねえから。安心しろ」
「……うん!」
ライの言葉に安心して、エニシアは再び笑顔を浮かべる。
(これは、エニシアがママに一歩近づいたかな?)
その光景を見ながら、ミルリーフはエニシアに未来の母の姿を思い描くのだった。
「おお、ライじゃねえか!」
そんな中、いきなり少年の声が後ろから聞こえて来たので、驚きながら振り返ってみる。すると、そこにはガウルがいた。
「ガウル!? いきなり出てきてどうしたんだ?」
「いや、三バカ連れて屋台回ろうと思って探しててな。その途中でおまえらを見かけたから、ついでに声を掛けようと思ったんだよ」
「で、何やってたんだ?」
「あ、えーっと、その……」
もう少し長く抱擁していたら、ガウルに見られていたかもしれない。そう考えると、二人は顔を真っ赤に、人力ポットに出来そうなほど熱かった。
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一方こちらは、ミルヒが控えている楽屋の裏手。ミルヒはお客が来たという知らせをメイドから聞いたので、その人物が待つというこちらを訪れていた。そして、ミルヒは見覚えのある人物を目撃する。
「レオ様!」
そこで待っていたのはレオだった。だが、彼女の隣に別の人物が佇んでいるのに気付き、咄嗟にそちらに気を回す。
「あれ? 確か、ギアン様ですよね」
そう、レオと一緒にいたのはギアンだったのだ。
「はい。でも、様はちょっと窮屈だからできれば”さん”で」
「わかりました、ギアンさん」
今のギアンはクラストフ家を捨てたため平民同前、そうでなくても一国の姫より身分は低いので年下のミルヒやレオにも敬語で喋っていた。何故ギアンが一緒にいるのかミルヒには疑問だったが、レオがすぐに事情を説明する。
「おまえに謝ろうと思ったのだが、今までのことを考えると一人で行く勇気がなくてな。そこで、偶然見かけたギアンに同行を頼んだのじゃ」
「とりあえず、静観させてもらうだけなのでお構いなく」
口には出してはいなかったが、レオは謝罪がしたかったのかもしれない。自身の独りよがりな行動によって幼馴染のミルヒに危険が及び、それに巻き込まれる形でシンクやライにも危険が迫った。本人に謝罪しても気にしないと言って余計に重荷に感じてしまうかもしれないと思ったのか、年長者である彼を見かけた際に丁度いいと感じたようだ。
「お前を危険な目に合わせたことや、戦興行を台無しにしたこと、そしてここ半年辛い思いをさせたこと、すまなかったな」
「いえ、今回の一件で私は領主としていろんなことを学ばせてもらいました」
そして、ミルヒはその学ばせてもらったことについて話す。戦や危険に備えること、国や民を導くことの難しさと大切さ、一国の主として大切なこと全てだった。
「レオ様のおかげで、もっと立派な領主にならねばと心に誓うことが出来ました。だから、ありがとうですレオ様」
ミルヒの一言に、レオもつい顔を赤らめる。
「それに、ここ最近の行いも私のことを思ってだと聞いたので」
「ま、待て! 誰に聞いた?」
ミルヒが自分の行動の真相を知っていたことに驚くレオ。だが、知っていたのは至極単純な理由だった。
「ビオレとルージュに」
「あの、馬鹿どもぉ……」
それを聞いたレオは
「お二人を叱らないでください。私が無理やり聞き出したんです」
「わざわざ舞台前のお前を呼んだのも、その話をするためだったというのに…」
「ご、ごめんなさい」
思わず謝るミルヒだったが、その後で彼女が表情を変える。
「でも、私はその話を聞いたとき、本当に嬉しかったんですけど、今の私はちょっと
そのことで首を傾げるレオ(とギアン)だったが、ミルヒは彼女に詰め寄り、再び口を開く。
「『未来は自らの手で決めるものゆえ、占いや星詠みに踊らされるのは愚かしいこと』と、レオ様は仰っていました」
「その気持ちは今も変わらん」
「なのに」
レオが反論する間もなく、ミルヒは彼女にさらに詰め寄って言葉を続ける。
「ここ最近のレオ様は、星読みばかりを気にして、私には本当のことを告げずに、私のことを守ろうとしていました」
「えーっと……口を挟むけど、そこに怒る理由ってあるんですか?」
ギアンの疑問にも答える形で、ミルヒは再び口を開く。
「レオ様に守ってばかりだった小さなミルヒは、今ではそれなりに大人になっています。信頼できる友人や臣下もいます。だから、レオ様はご自分を殺してまで私を守らないでいいんです」
ミルヒの怒りの理由、それはレオが自身を顧みずにミルヒを守ろうとしたことだった。幼馴染としては、彼女自身の幸せを考えてほしいということである。
「イヤ、お前はわかっておらぬ!!」
すると、レオは暗い表情で、だが強い口調で反論する。
「幼いころから儂を見守り慈しみ、そんなお前がくれた優しさがそれだけ儂を支えてくれたことか! お前にいなくなられたら、お前のいない世界など……」
レオにとって、「ミルヒ無くしては自分の幸せはない」といっても過言ではないようだ。そこまでミルヒのことが大切だったから、あのような行動に出てしまったようだ。そんなレオをミルヒは抱きしめながら、何処にも行かないと言い聞かせて安心させている。
一方、ギアンはそんな二人に悟られないように手で何かのサインを送る。その先にいたのはロランとアメリタだった。実は、ギアンは二人に頼まれてミルヒ達の様子を見ていたのだ。そのために、偶然を装ってレオに接触したのだという。
その後、コンサートの時間が迫ったようで、メイド達がミルヒを探し回っているのが聞こえた。
「久しぶりにお前の歌、聞いてもいいか?」
「はい! 一生懸命歌わせてもらいます」
レオの頼みに、飛び切りの笑顔で答えるミルヒ。ギアンも、一般席でライ達と一緒に見ると言って、彼女たちと別れるのだった。
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「お姫様が歌い手の仕事を兼任ねぇ……あたし等の世界じゃ考えられないわね」
「歌い手を生業とする姫君……これが本当の歌姫というやつだな。あっはっは」
「セイロン、それは身も蓋も無さすぎですわよ」
一般席でそんな会話をしているリィンバウム組。リビエルはセイロンの物言いに、思わずジト目になってしまう。
「とりあえず、姫様の歌は世界一だからな。お前達も聞けば納得だぞ」
「だからなんで偉そうなのよ。自分のことでもないのに……」
エクレールの口調や物言いに、思わず悪態をつくリシェル。まあ、初見ならみんなこうなるだろう。
すると、いきなり舞台の周りの明かりが消えて暗くなった。
「お、どうやら始まるみたいだな」
一度ミルヒのコンサートを見ていたライはそこから始まったのだと気づく。
すると、暗闇の中で光を発する不思議なキューブ上の物体が現れ、そのまま舞台の上までゆっくりと飛んでいく。舞台上に物体が到着すると、さらに強く発光し、それに合わせて舞台の上の仕切りがキューブに分解されていく。それがすべて部隊の両脇に移ると同時に音楽が鳴り響き、待ってましたと言わんばかりに観客が歓声を上げる。鳴り出した音楽は以前のコンサートの時のような優しい曲調ではなく、全体的に明るめのアップテンポな曲調だった。音楽が鳴る中、舞台袖からミルヒとは違う女性が出て来たかと思うと、中央にミルヒと思わしきシルエットが既に佇んでいるのが見えた。そのシルエットの人物が振り返ると同時に何かの仕掛けが動いてそのまま覆い隠してしまい、その仕掛けにミルヒの顔がアップで映される。そして、そのままミルヒが笑顔を見せると、仕掛けがいきなり光を発し出す。そして、それを通り抜けてミルヒがついに姿を見せた。来ている衣装は以前のコンサートと違って、動きやすそうなデザインの赤とピンクを基調とした衣装だった。そして、ミルヒは先程舞台袖から出てきた女性に手を引かれながら歩み、舞台の前の方に出てくる。それを確認すると、女性は一礼して下がっていき、ミルヒは左手に持っていたマイクを両手持ちにして胸元に持っていく。そして、舞台の背景から複数人の女性たちがいきなり飛び出してきたかと思うと、それに合わせてミルヒが歌い始めた。ちなみに、飛び出してきた女性たちはバックダンサーだったようで、ミルヒの歌に合わせて踊っている。
「へぇ、中々いい声じゃない」
「うん、これなら人気も納得だね」
「だけど、聞いたことのない系統の音楽だな」
「少なくとも、リィンバウムや四界のどの世界の音楽にも属すものではないな」
「おそらく、このフロニャルド独自で発達した音楽ですわね」
「世界が違えば文化も違う、まさにその通りだな」
リシェルやエニシアが純粋に歌の感想を述べる中、ギアンと御使いたちは考察に入ってしまう。
「あの~」
「どうした、シンク?」
そんな中、シンクがリィンバウム組の面々に声をかけてくる。何事かと思って聞いてみる。
「一応、僕の世界にもあるジャンルの音楽なんですけど」
「え、あんのか?」
「アイドルっていう、可愛い女の子があんな感じの衣装で歌と踊りをやる仕事が僕のいた世界、地球には存在しているんです。逆に、カッコいい男の人がやる場合もあって……もちろん、衣装も男向けの物でやりますよ」
「へぇ~。前の時は相席じゃなかったから聞けなかったけど、その時もそう思ったのか?」
「僕の世界じゃ当たり前の音楽だったから、何も考えずに聞き入ってました」
そう言って苦笑するシンク。だが、ちょうど番の歌詞が終了するところだったので、一同は考察を中断することにした。
1番を歌い終えたミルヒは、後ろ姿を見せながら髪をかき上げ、振り返って笑みを客席に向ける。そして胸元についてあったエンブレムから栓のような物を引き抜くと、衣装が解けて光となって消え、下から純白の新しい衣装が出て来た。さらに、マイクがいきなり蕾の閉じた花のような形状に変化する。同じものをバックダンサーたちもいつの間にか持っており、ミルヒたちはそれを天高く放り投げる。投げられたそれは上空で蕾が開き、そこから光り輝く花びらが大量に降り注いだ。そして、花びらが舞う中でミルヒが歌を再開する。
「綺麗……」
「ああ。これは幻獣界でも見れないような光景だな」
「うむ。中々に壮観であったぞ」
御使い一同も今の演出に目を輝かせている。単純に演出の見事さもあるが、元いた世界でもリィンバウムでも見れないという珍しさもあって感動はさらに強かったようだ。
「見えているでござるか? あのお方がお前を救い、母君を悲しみから解き放ってくれた姫様でござるよ」
そんな中、ユキカゼが子狐を抱きながら、囁くように言い聞かせる。すると、子狐がいきなり体を震わせたかと思うと、全身が光り輝きだす。そして、その後でとんでもないことが起こった。
「えええ!?」
「な、何だこりゃ!?」
「木が、いきなり……」
なんと、いきなり舞台の周りから木が生えだしたのだ。木は生えてくると同時に、そのまま花を咲かせて舞台周辺をより華やかなものに変えていった。あまりの出来事に一同は騒然とし、ギアンすら開いた口が塞がらない状態となっている。
「これは一体?」
「その子狐の力?」
一同が子狐に注目し、セイロンとノワールが口を開く。
「それもあろうが、それだけではござらんよ……」
ユキカゼが何かを察したように呟き、生えてきた木の方に視線を向ける。
(? 何かを感じる……これは、魂の波動?)
リビエルが感じ取ったそれは、ユキカゼの視線の先にあった。するとそこには、一匹の狐がいた。見た目が子狐と似ていることから、どうやら母狐のようだ。そのまま母狐の魂は空を一直線に駆け抜け、美しい光の軌跡を描いていく。
「うおぉ……」
「きれいだね、パパ」
ライたちもコンサートそっちのけでつい見とれてしまう、美しい光。
その光はまるで、この世界を邪悪から守った英雄たちを祝福するかのようにも見えた。