『さあさあ、空は晴天! 本日は絶好の戦日和です!! 主役の到着がまだですが、ビスコッティとガレットの両軍の戦いは、すでに始まっています!!』』
ファルネット湖ではビスコッティとガレットの戦興行が絶賛進行中。ガレット国営放送のアナウンサー、フランボワーズがハイテンションで実況を行っている。
『というわけで、今回の実況はガレット国営放送のフランボワーズ・シャルレイと……」
『ビスコッティ国営放送の、パーシー・ガウディがお送りします!!』
アナウンサーの自己紹介が終わると同時に、次の紹介が始まる。
『そして、両国からお招きした素敵なゲストのみなさん!』
『ガレットからは、バナード将軍とレオ様のお傍役ビオレさん!』
紹介された二人は順番に観客へとあいさつをすると、観客たちも大声で挨拶を返す。
『そして、ビスコッティからはロラン騎士団長と隠密隊頭領のダルキアン卿!』
「はい」
「……」
ロランは返事を返したものの、ブリオッシュは無反応となっている。
『あの、ダルキアン卿?』
「はっ!?」
パーシーに再度呼びかけられて、ようやく気が付いたブリオッシュは、観客たちに謝罪の言葉を向ける。
「ああ、これは失礼したでござる。少し考え事をしていて(あの夢のことを気にしても仕方ないでござるな。今はこちらに専念して)…」
『それは珍しいですね。……では気を取り直して、このメンバーで今回の戦を熱く楽しく実況していきたいと思います!!』
ブリオッシュのフォローに場を盛り上げる言葉を叫ぶと、見事に再び熱狂の渦が巻き起こった。
『さて、今回の戦は"お帰り勇者様・歓迎記念戦興行"ということですが?』
「はい。今日はビスコッティの勇者シンク殿と、委託騎士ライ殿が友人たちを率いて戻ってこられます」
「姫様達も、ちょうど彼らのお迎えに向かっていたのでござるよ」
「それと、ライさんのご友人たちは何人かがガレットについてくれるそうなので、レオ様もそちらのお迎えに向かいました」
『おお! それはまたすごいですね。ではみなさん、そんな勇者様達が到着したら、戦場は大変なことになります!!』
『それまでの間に、皆さんポイントをじゃんじゃん稼いじゃってくださいね!!』
その一言に戦場は先程よりも熱気を増して、両軍の士気がぐっと上がった。その後、ガウルがプロレスのヒールのような、ジェノワーズが昔ながらのヒーローのような口上で登場して、ガレットの士気を上げつつ現場に乗り出すのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
~ビスコッティ陣営~
「これが、戦……」
「はい。地球風に言いますと、国主催の国民参加型の大運動会、というところですね」
「話には聞いてたけど、本当に死人どころか怪我人もでないんですね」
「これでしたら、お嬢様達がどれだけ派手にご活躍しても、何ら問題も無いですね」
ミルヒがお茶を淹れながら(ポムニットがお手伝い)、レベッカやルシアン達に戦興行についての簡単なレクチャーをしている。
「シンクが春に召喚された時は、とても盛り上がったんです」
「へぇ~。で、姫様はホント、シンクに夢中みたいね」
「ええ。なんたって、我がビスコッティの勇者様ですから」
リシェルに言われたと同時に、ミルヒは満面の笑顔で返す。
(けど、それだけじゃないんでしょうねぇ)
(お嬢様、やっぱりなんですか?)
その様子を見たリシェルは、こっそりとにやにや笑いを浮かべる。その様子に、ポムニットは諌めるわけでもなく妙にノリノリだった。ポムニットも他人の色恋沙汰に首を突っ込むのが好きなので、こんなことになってしまったのだった。
~同時刻・ガレット陣営~
本陣で待機しているレオのそばにいるのはエニシアにギアン、クラウレとアロエリ、そしてミントと黒髪の少女だった。この少女はシンクのいとこで師匠兼ライバルの高槻七海である。
「勇者って、シンクが?」
「ああ」
「でも、こういった競技だったらシンクは活躍できそうですよね」
七海はシンクが勇者と聞いて最初はキョトンとするが、冷静に戦の内容を見て彼の得意分野だという琴に気づいて、すぐに納得した。
そんな中、今度は今まで黙っていたアロエリが口を開く。
「で、オレはイクサコウギョウとやらで活躍しているあいつを見たことはないが、どれほどのものだったんだ?」
「あやつは中々に良い勇者じゃったぞ。実力はまだ発展途上だがセンスが高くての、以前に呼ばれた時も両軍を盛り上げてくれたんじゃよ」
「なるほど。敵側でありながらそこまで言わせる辺り、相当の物らしいな」
レオのあまりにも自慢げな様子から、聞き手に回っていたクラウレも感想を漏らす。
「でもこの戦、いいなぁ……」
「あれ? 七海ちゃん、目が…」
すると、七海がいつの間にか目を輝かせながら中継を見ている。この師匠にしてこの弟子ありとでもいうのか、七海も根本的な部分はシンクとそっくりだった。その様子に、エニシアも苦笑している。
そんな中、レオが七海にある提案を持ち込んできた。
「もしよければ、出てみるか?」
「いいんですか!?」
「まあ、実を言うとそのためにおぬしをここに呼んだんじゃが」
するとレオは備えられていた椅子から立ち上がると同時に、右手でマントの裾を掴んでその場で一回転し、思いっきり広げる。妙に恰好をつけている気もするが、これもガレット戦士としての性であろう。
「高槻七海よ。ガレットの勇者、やってみるか?」
七海はそのままレオの姿をじっと見つめ、やがてレオの方から握手を求めてくる。そして、七海は笑みを浮かべてその手を取るのだった。
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その後、ガウルとジェノワーズの猛攻によって、防衛線の守備をしていた兵達が次々に倒され、ビスコッティが劣勢に立たされてしまう。
「よっしゃあ! 防衛線突破!!」
「後は本陣まで一直線や!!」
「戦士団、突撃~!!」
そのまま、ジョーヌやベールに促されてガレット軍は一気に進軍していく。防衛線が全て突破されてしまった以上、ここで彼らを倒さなければビスコッティは敗北してしまう。
しかしその時……
「え!?」
「あ!」
「へへっ」
いきなり一人の人物がジェノワーズたちを掻い潜って、奥にいるガウルに飛び掛かる。その人物は青い鉢巻に白い服とマントを纏った金髪の少年で、武器として長い棒を手にしている。そして、その姿を見てジェノワーズは驚き、ガウルは不敵な笑みを浮かべた。
「やっと来やがったか!!」
「ああ。お待たせ!!」
その人物は武器の棒を落下しながらガウルに振り下ろすが、咄嗟に輝力で作った爪でそれを防ぐ。その時の衝撃で棒は吹っ飛び、その少年自身も後方へと吹っ飛ぶ。しかし、見事に着地して飛んできた棒をキャッチして見せた。
『き、き…』
「お待たせしました。姫様からのお呼びに預かり……
勇者シンク、ただいま見参!!」
『来たああああああ!! 勇者シンク、降臨!!!!』
そう。シンクが地球の少年としてでなく、ビスコッティ共和国の勇者としてこの場に現れたのだ。
「シンク!」
「シンク君!!」
「シンク、おかえ……」
ジェノワーズもライバルの復帰を祝福し、言葉を送ろうとするが……
「あれ?」
なんと、いきなりジェノワーズたちの持っていた武器にひびが入り、そのまま木端微塵になってしまったのだった。
「「「えええええええええええ!?」」」
「ジョー、ノワ、ベール。約束通り、鍛えて来たよ」
どうやら先程のすれ違い際に、武器に何かしらの攻撃を仕掛けたようで、それによって破壊されてしまったという。
「そやけど、この程度のダメージならまだまだ!」
しかし、ジョーヌの言う通りジェノワーズは武器を無くした程度では特に問題無さそうだ。ベールは紋章術も使えるし、ジョーヌも元の怪力を活かせば素手で戦えるはず。そしてノワールも問題なしだ。戦興行には、タッチボーナスという相手の背中などにタッチしたら一撃でダウンさせられ、しかも危険度が高い分ポイントも多く加算されるという仕組みだ。ノワールはこのタッチボーナス狙いが得意なので、彼女も武器なしで問題なく戦えるというわけだ。
そういうわけで、ジェノワーズは揃って戦える状況だったのだが……
「「「ん?」」」
いきなり何かの音がしたかと思うと、輝力の弾丸が無数に飛んで来て、それが彼女たちに向けて雨のように降り注ぐ。
そして、それが晴れると……
「え、ええ…」
「うわあああああああああああ!?」
一糸纏わぬ姿をさらしたジェノワーズの姿があった。そして、そんな攻撃を仕掛けた張本人は……
「は~い、ジェノワーズの出番は一旦終了」
「勇者様の活躍を邪魔したら、メッであります」
リコッタとユキカゼの姿があった。二人とも戦闘準備万端で、それぞれハンドカノンと輝力手裏剣で武装している。さらに、奥にはセルクルに跨ったエクレールがスタンバっている。
『あーっと! ここで学院主席と隠密部隊筆頭が登場!!』
『そして我らが親衛隊帳、騎士エクレールも到着しています!!』
ビスコッティの主力達が到着して、実況組も熱が入る。しかし、そこであることに気づいた。
『あれ? そういえば、委託騎士ライとみんなのアイドル・ミルリーフちゃんがいませんね?』
『ああ。呼んだか?』
すると、ビスコッティ陣営のモニターの映像が切り替わり、そこにライとミルリーフの姿が現れた。
『おっす、みんな。久しぶり』
『みんな、やっほー!!』
「「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお(きゃあああああああああああああああああ)!!!!ミルリーフちゃあああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!」」」」」」」」」
ミルリーフの満面の笑顔での挨拶の直後、両軍の選手観客、老若男女問わずから発狂したかのような歓声が上がる。かつてミルリーフがビスコッティでその愛らしさを振る撒き、ミルヒと人気を二分するアイドルとして勝手に祭り上げられていた。そんな彼女が帰っている間、骨抜きにされてしまった人々はミルリーフ成分を注入できずにおり、大体100日ぶりに彼女の笑顔を見た反動で、ここまでの反応を出してしまったというわけだ。
『お前、相変わらず人気だな』
『あはは。ちょっと複雑かも…』
想像だにしなかった事態に、ミルリーフも珍しく苦笑している。そんな中、フランボワーズがライに話しかけてきた。
『ところでライさん、今どちらにいらっしゃるのでしょう? 見たところ、どこかの厨房みたいですが?』
『ああ。ビスコッティ側で昼飯の準備を手伝わせて貰ってます。最初はシンクに出番をやって、オレや仲間は午後から出させてもらうつもりなんだ』
『なるほど。まずは勇者シンクに出番を譲って、あとで一気に増員して決着をつける戦法ですね。で、ライさん自身はなぜに食事の準備を…?』
『オレは本業が宿屋の店長兼料理人なんで、結構腕に自信ありだ。そういうわけで、昼飯は期待して……
手をよく洗って待っててくれ!!』
料理人としての決め台詞を叫びながら、右手に持った包丁を構えて格好をつけるライ。妙にノリノリだった。
『なるほど、わかりました。……では両軍のみなさん、午前の部終了後の昼食は期待しておいて、そのまま戦に精を出してくださいね!』
フランボワーズもナイスな実況で場を上手く盛り上げていく。何気にライもこの手のパフォーマンスが得意になっている気もしたが……
すると今度は花火が上がるような音がしたかと思うと、ガレット側のモニターにレオの姿が現れる。
『久しいな、勇者よ。そしてライ、勇者に任せて食事の準備とは余裕じゃな』
「閣下!」
『強くなって帰ってきたこと、嬉しく思うぞ。じゃが、我らも負けてはおれん。そこで、儂は助っ人を用意しておいた』
そう言ってレオが下がると、代わりにギアンとエニシアが前に出てきた。
『みなさん、どうも。知ってる肩もいると思いますが、ライの知人のギアン・クラストフといいます』
『エニシアです。ビスコッティとガレットのみなさん、お久しぶりです』
「「「「お久しぶりでえええええええす!!!!」」」」
二人の挨拶に対して、先程のには遠く及ぶものの熱烈な挨拶を返す人々。フロニャルドの住民は、基本的にノリで生きているような印象を与えるのだった。
『今回は戦力バランスを考えて、ライの仲間は僕を含めた何人かはガレット側に付かせてもらいます』
『後ろにいる3人が今回、ガレットに協力してくれます。ただし、ライと同じで午後からになりますけど』
説明を終えると後ろに控えていたクラウレたちを紹介していく。すると、ミントのそばにはいつの間にか護衛獣のオヤカタの姿があった。
『はじめまして。召喚師のミント・ジュデップといいます。で、こっちが護衛獣のオヤカタです』
『ムイムイ!』
『以前もあったことある者もいるが、オレはアロエリ。セルファン族の誇り高き戦士だ。弓の腕に自信はあるぞ』
『アロエリの兄のクラウレだ。妹共々、よろしく頼む』
『そういうわけですから、ガレットのみなさんは大船に乗った気でいてくださいね』
ガレット側の協力者を見て、会場が湧き上がる。そして、再びレオが前に出てきてあることを告げた。
『そして、今回はそれだけではないぞ。ビスコッティが勇者召喚を使うのなら、我らもやってやろうではないか』
その一言で、会場全体がさらに湧いた。特に、ガレット陣営は自国もシンクに対抗した勇者の出現という
『括目してみよ。我がガレット獅子団の、勇者の姿を!!!』
その直後、砦から何かが動く音がした。それは勇者が乗っているであろう昇降機だったが、それが到着したところで会場に動揺が走る。なんと、いるはずの勇者がいなかったのだ。
何事かと思ったその時
―バン、バーン―
またも花火の上がる音がしたかと思うと、それに合わせて一人の少女が飛びあがってきた。その少女は砦の塀の上でバク転を繰り返しながら先程の昇降機に着地、右手でシンクと同じく武器として棒を持ち、残った左手でピースをしながらポーズを決める。
「レオ様からのお呼びに預かり……ガレットの勇者・高槻七海、華麗に見参!!」
七海の勇者服はシンクの物と色違いのようなデザインで、シンクは白と黒、赤を基調としているが七海は赤ではなく青になっている。
「へぇ、アレがシンクの従妹ねぇ」
「なんていうか、シンク君と雰囲気が似すぎてますね」
「血が争えぬのは店主殿と父君だけではないということか。あっはっは」
リシェル達は七海の姿を見て正直な感想を漏らし、相変わらずセイロンは笑っている。
「やっぱり、七海さんも参加されましたね」
「あ、あはは…」
そんな七海の様子を見て、ただただ苦笑するしかないレベッカ。すると、ミルヒがそんな彼女にある提案を持ちかける。
「よければ、レベッカさんも参加してみますか?」
「えええ!?」
「砲術師とか、弓兵とかで」
「いえいえ! 私はこういうのは全然…」
大慌てで断るレベッカに対して、ミルヒはある提案を思いついた。
「せっかくですから、レベッカさんを皆さんに紹介しますね」
そう言ってミルヒは、カメラを自分達に向け、その様子を戦場のスクリーンに持っていく。
「みなさん。こちらが両国勇者の幼馴染、レベッカ・アンダーソンさんになります」
「こ、こんにちわ」
「「「「「こーんにーちわーーーーーーーー!!!!!」」」」」
「「ベッキーーー!!」」
フロニャルドのノリノリな人々や、シンク達の様子に、レベッカは恥ずかしそうにしていた。
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その頃
~ビスコッティ近隣諸国の一つパスティヤージュ公国~
その宮殿で、勇者歓迎戦の中継を見ているひとりの少女と、その付き人らしき青年の姿があった。このパスティヤージュの住民は、ビスコッティの犬とガレットの猫に対して、リスの耳と尻尾が身体的特徴に表れている。
「盛り上がっとるのぉ」
「そうですね」
「ミルヒ姉もレオ姉も、楽しそうじゃのう」
少女はミルヒとレオの両者と親しい間柄らしいことから、この国の王族(公国なので厳密には違う)と思われる。そんな彼女はつまらなさそうにお茶菓子を摘まむ。
「ウチのパスティヤージュもパーッと派手にやりたいが、戦興行は全然……お?」
ぼやきながら再び中継に眼を通すと、そこに移っていたレベッカの姿に気を取られる。
「この子は?」
「ああ、両国勇者のご友人だそうです」
「そうか。この子は何処の勇者でもないのか……」
すると、何かを思いついた少女は立ち上がって青年にあることを告げる。
「この子、なんかいいぞ! ウチの直感にピコーンと来た!!」
「は、はぁ…」
「ウチはこの子に会いに行く! ついでにミルヒ姉たちの戦に乱入じゃ!!」
「はぁ……って、えええええええ!?」
少女の突然の提案に、青年は物凄くびっくりしている。まあ、いくら王族だからといって、他国の興行に乱入するなんて言い出したらこんなことになるのは当然だろう。しかし、少女は青年の様子も顧みずに、再びレベッカに視線を移す。
「待っておれよ、ウチの勇者よ」
~同時刻 ガレットの友好国の一つ・ドラジェ領国~
「この方たちが、勇者ですか…」
ドラジェの勇者召喚の台座にて、召喚を行ったと思われる一人の少年の姿があった。ちなみに、ドラジェの住民の身体特徴は、イタチの耳と尻尾という珍しいタイプだった。そして勇者召喚で呼ばれたのは……
「えっと、ここは?」
「確か、変なイタチが魔方陣を作って…」
複数人の人間だった。いや、何人か人間でないものも混じっており、狐の耳が生えた少女に悪魔の翼を持った少年と少女がいた。
せっかく公式であるので、ドラジェも使わせてもらいました。ただし三期の音沙汰が無いので、ドラジェ側にはオリジナル設定がいくつか入ります。