「ライ!」
「待ってたぜ、アロエリ!」
リシェルとレベッカがクーベルと別れて、ビスコッティの本陣への攻撃に乗り出した直後のこと。クラウレと別れたアロエリがようやく到着した。
「ライさん、アロエリさんと何するつもりなんですか?」
「オレは輝力武装使わねえから、別の方法で飛ぶつもりだ。あと、ミルリーフデカくしたら反則っぽいしさ」
そう言ったライは、左脇に子竜状態のミルリーフを抱えながら右手を挙げる。そしてアロエリが近づいてきたかと思うと
「は!」
「しっかり掴まっていろ!」
ライが掛け声をあげてその場から跳び上がると、そのままアロエリはライの右手を掴んで一気に飛翔する。そして、いきなり紋章を発動したかと思うと、それで胸に障壁を張り出す。
「よし、あとはこのまま…」
そしてミルリーフがライの脇から抜け出してアロエリの背中に回り、アロエリはライを羽交い締めにしてそのまま上昇した。
『おお! ライ選手はセルファンのアロエリと共に空を飛ぶようです!!』
『確かに、これなら輝力を温存しつつ空を飛べるぞ!』
その様子をパーシィとようやく復活したフランボワーズが実況する。ちなみに、まだ鼻血が止まらないのか鼻にティッシュを詰めていた。
「それじゃ、僕達も行こうか!」
「オッケー、シンク!!」
そして、シンク達もその様子を見た後で輝力武装を発動、こちらへと向かってくるレベッカとリシェルに突撃していった。
『さーて、ついに勇者シンクと勇者七海、そして委託騎士ライが勇者レベッカとリシェルに戦いを挑むようだ!!』
『三人の勇者、そしてライとリシェルはそれぞれ幼馴染同士との情報ですが、戦中はそんなのお構いなしのようです!』
そして再び二人の実況が場を盛り上げる。そしてついに両者が対面した。
「来たわね。行くわよ、レベッカ!」
「はい、リシェルさん!」
そして、レベッカとリシェルも飛行速度を上げて、近づいてくるライ達を迎え撃たんとする。
まず最初に動いたのは、シンクと七海であった。
「豪熱…」
「海王…」
「「双神掌!!」」
シンクと七海は互いの紋章砲を同時に放ち、真正面から向ってきたレベッカを撃墜しに行く。
しかし……
「え!?」
「避けた!?」
レベッカは二人の合体攻撃を真正面から避けてしまったのだ。
「炸裂弾!」
しかも、そのまま晶術弾をすれ違い際に放ち、そのままシンク達を一気に爆破してしまった。
それによって、シンクも七海も装備破壊され、湖へと落下していった。レベッカもシンク達と同じ場で二人に勝てたのがよっぽど嬉しかったのか、声を上げて喜んでいる。
「シンク達がやられたか。アロエリ、リシェルには悪いが早いところ倒しちまってあの子を抑えに行くぞ!」
「言わずもが!」
「ピギィ!」
アロエリだけでなく、背中に乗るミルリーフもやる気満々らしい。そして、剣を抜いて紋章も発動し、リシェルを迎え撃とうとする。
「ライ、やる気満々のところ悪いけど、一気に勝たせてもらうわ!」
しかし、リシェルは腰に差していた二丁拳銃を抜いたかと思うと、そこから晶術のレーザーを撃って来た。
「なに!?」
アロエリもライも一瞬驚くが、咄嗟に方向転換してその攻撃を避ける。
『おぉ! リシェル選手も晶術を使って、ライ選手達を迎撃しに向かっています!』
『パスティヤージュに付いた以上、技の使い方も伝授していて当然のこと。これはライ選手たちの読みが甘かったようだ!』
「まあ、そういうことよ。流石に、こんな場でさっきみたいに召喚獣を使っても面白くないと思ってね」
実況に同意するかのようにリシェルは告げ、そのまま攻撃を続ける。しかも規模が激しいため、ライ達は防戦一方の状態だった。
このままではレベッカによって本陣を落とされる、そう危機を感じたライはアロエリにある提案をした。
「アロエリ、ミルリーフを連れてレベッカを追え。後はオレが何とかする」
「な!? 貴様、本気で言ってるのか! 第一、お前ひとりでどうやって飛ぶつもりだ!」
「一応、ディガルドとやりあった時に一回やった方法がある」
「……あれか。だが上手くやれるのか?」
「どっちにしても、このままじゃレベッカに本陣を潰される。姫様もやれるらしいけど、まだ実戦慣れしてないから心配だしな。大丈夫、上手くやるさ」
ライの言葉を聞いて、アロエリは少し考える。
「わかった。ここはお前に任せる」
「ピ、ピギィ!」
アロエリは了承し、ミルリーフも頑張れといった感じで鳴き声を上げる。そして、アロエリは羽交い絞めを解いてライを開放した。
「何のつもりか知らないけど、先に片付けさせてもらうわ!」
リシェルが再度晶術を発動しようとするが、ライはそれよりも早く紋章を発動する。そして剣を斜め下に向けたかと思うと、そこで紋章砲を放つ。
「うそぉお!?」
ライはなんと、紋章砲を放った際の推進力でリシェルに向かって飛んでいったのだ。一応、前回のフロニャルド行きでディガルドとの決戦でも用いられたが、この場で出してくるのは想定外だったようだ。
『おお! ライ選手、なんと紋章砲の推進力で飛ぶという離れ技を使用したぁ!!』
『これには、リシェル選手も度肝を抜かれたようです。思わず攻撃の手が止んでしまってます!!』
今の実況を聞いたライはまさにチャンスだと思い、すかさず攻撃態勢に入った。
「リシェル、悪いな!」
「そうはいくか!!」
ライが剣に輝力を纏わせてリシェルに斬りかかろうとすると、リシェルも咄嗟に晶術のエネルギーを充填し始める。そして、二人の攻撃が同時に放たれた。
「オレが貰ったぁあああ!!」
「それはアタシのセリフよぉ!!」
そして、ライの紋章剣とリシェルの晶術が同時に激突。巨大な爆発が生じた。
「……相打ちか」
「みたいね。ああ、服が……」
爆風が晴れると、ライはリシェルと二人揃って湖へと落下していくところだった。その最中、二人の服がはじけ飛んで揃って下着姿となる。
『おおぉ! ライVSリシェルの対決は引き分けとなったようだ!!』
『そして同じタイミングで、ミルヒオーレ姫VS勇者レベッカの対決も終わったようです! 結果は両者とも装備破壊に終わった模様!!』
その時流れた実況がライ達の耳にも届く。どうやら、心配は無用だったようだ。
『姫様、私は一旦陣地に戻ります!!』
『は~い! 避ければ、また後で』
『わかりましたー!!』
その際、同時にレベッカとミルヒの会話も聞こえた。まだ出会って数時間な上に戦中にもかかわらず、揃って仲がよさそうな様子だった。
しかし、その頃
「……御子様、我々の出番はありませんでしたね」
「ピギィ……」
レベッカを止めに向かったミルリーフとアロエリが、その様子を眺めながら黄昏ていた。
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一方、ポムニット対ブリオッシュはというと……
「……ポムニット殿、中々の腕前にござるね」
「そちらこそ、わたくしの技量に合わせていただいて感謝いたします」
見たところ互角の勝負をしている様子だが、実際のところはポムニットの言う通り、実戦経験やポテンシャルはブリオッシュの方がはるかに上なので、互角の勝負は戦興行の為に合わせられているからであった。
「ですが、そろそろ体力の限界ですので次で決めさせていただきます」
「なら、拙者もそうさせてもらうでござるよ」
するとポムニットは拳を構えた状態で魔力を充填し始め、ブリオッシュも紋章を発動したまま居合切りの体勢に入った。
「ぶっ飛んでくださいまし……」
「それは遠慮させてもらうでござるよ」
そして、互いの技の発動準備が完了した。
「メイドクライシス!!」
「裂空一文字!!」
ブリオッシュが居合で輝力の斬撃を飛ばそうとした瞬間、ポムニットは地面を殴りつける。直後、ブリオッシュの足元で魔力の爆発が生じた。しかし、攻撃の阻止には間に合わずにポムニットもブリオッシュの技を受けてしまう。
『おーっと! 戦うメイドさんポムニットがダルキアン卿に挑んだ勝負もちょうど終わったところだ!!』
『お互いに攻撃を喰らってしまったようだが、果たして立っているのはどっちだ!? はたまた引き分けか!?』
「ポムニットさん!」
「お館様!」
実況を聞いて、ルシアンとユキカゼが攻撃の手を止めて二人の方を見る。リビエルとビオレもこの結果が気になったのか不意打ちはしたくなかったのか、それとも両方か、同じく動きを止める。
「ふぅ、中々効いたでござるな。けど、勝負は貰ったでござるよ」
「へ、へうぅ~……」
ブリオッシュは上着がボロボロになっていながらもブリオッシュが立っており、ポムニットはメイド服を若干ぼろぼろにしながら、目を回して伸びていた。
『決まったぁーーーーー! この勝負、ダルキアン卿が勝ちました!! 流石は大陸最強、異世界の使い手相手でもやはり強い!!』
『さらに同じタイミングでクーベル様がレオ閣下に挑んだようですが、こちらも閣下の勝ちだったようです! 閣下もグランヴェールを持ち出して宝剣対決が勃発。クーベル様も奮戦なされましたが、やはり閣下の方が一枚上手だったようです!!』
ブリオッシュが勝利を収めたのと同じタイミングで、レオ対クーベルの対決も決着がついたというアナウンスが入った。
その後の結果発表にて、今回の戦はガレットの勝ちという判定が出た。そして、ビスコッティとパスティヤージュは同点という結果に収まった。結果としては、助っ人参戦のライ一行を含めてガレットやビスコッティの陣営から主力を削ったため、パスティヤージュにも撃破ボーナスが加算されたためだという。
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そしてその日の夜。
「で、戦には結局勝てんかったがレベッカをウチにくれんか?」
「だ、そうなんですが……」
一同が休んでいる中、クーベルがレベッカに抱き付きながら告げる。
「儂に言われてもな。保護者に聞け」
「そっちの勇者達、シンクに七海!」
レオに促されて、シンク達に話を振るクーベル。
「パスティヤージュはビスコッティのお隣じゃし、みんなで遊べる時間も用意するから、レベッカをウチにくれんか? ライ達も、同じ条件を出すからリシェル達を連れて行かせてほしいんじゃが…」
「私もクー様の勇者でいたいから、お願いしていいかな?」
クーベルが懇願する中、レベッカからも頼み込まれる。シンク達もそんな彼女の意志を汲んであげることにした。
「そういうことなら、いいよ」
「クー様、ベッキーのことよろしくお願いします」
「お願いされたのじゃ」
シンク達の答えを聞いたクーベルは、とてもうれしそうな表情を浮かべる。一方、ライ達の方はというと
「アタシは昼の戦でついた側に最初から行くつもりだったから、別に問題ないわよ」
「オレも特に依存はねえな。ていうか、オレらは仕事で来てるのもあるから、リシェル達がパスティヤージュに行ってくれる方が都合がいいかもな」
「仕事? 何の仕事じゃ?」
それを聞いたクーベルが首を傾げた。ミルヒやレオには事前に手紙で伝えていたがクーベルはいきなりの乱入だったためそのことを知らず、ライ達は自分たちのもう一つの目的である”フロニャルド美食調査”について話をすることにした。
「なるほど。料理の勉強のためにいろんな国に滞在したいと……よし、ウチも出来る限り協力してやろうかの」
「クー様、ありがとうな」
「ほんと、ありがとクー様」
「いや、それほどでもなぁ」
ライとミルリーフに礼を言われて、嬉しそうな様子のクーベル。このあたりに年相応の様子が見えていた。
「とは言っても、到着当日から別れることも無かろう。クーベル」
「あい」
「少し打ち合わせなどもしたいから、二日ばかりこちらに残れ。その間、勇者たちとリィンバウム御一行は自由行動としよう」
それを聞いたシンク達は嬉しそうな表情を浮かべた。初めて会った者や前回合ったけど殆ど話せてない者と、親交を深めるいいチャンスだと感じ取ったからだろう。
そんな中、ミルヒがシンクに近づいてある話題を振ってきた。
「ねえ、シンク。朝のお散歩、避ければご一緒いただけるでしょうか?」
「あ、いいですね。よければ、ベッキー達やライさん達もどう?」
それを聞いたライは、前回のフロニャルド行を思い出し、つい顔を引きつらせてしまうのだった。