サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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かなり長くなりましたが、最新話をどうぞ。
そして、もう一作分のサモンナイトキャラが登場。勘のいい方はわかるかも?


第39話 魔の刃操りし英雄 monosift on

ジョーヌが謎の女性に助けられたのと同時刻、七海は一人で町を疾走していた。

そしてようやくあの男を見つけたのだが……

 

「え?」

 

なんと、あの男は七海の方に向かって走っているのだ。訳が分からずついキョトンとしてしまう。

 

「止まるな、後ろだ!」

 

直後に男がそう叫んだため、七海はつい気になって後ろを振り向く。そこには、ジョーヌを襲ったのと同じおかっぱ頭のウサ耳少女が鉈を手に迫ってくるところだった。

そのまま少女が鉈を振りかざして飛び掛かってくるが、七海は間一髪回避に成功する。

 

「君、下がっているんだ」

 

謎の男はそのまま七海を下がらせ、自らは例の少女と対峙する。そして、少女が飛び掛かってきたのと同時に紋章を展開した。

 

「天元伐砕」

 

呟いた直後に男は居合の要領で抜刀、すぐさま納刀する。直後、少女に輝力の斬撃が浴びせられた。

 

「飛天・襲狼牙」

 

最後に技名を完成させ、そのまま襲ってきた少女は地面に激突して爆発する。七海はその光景を呆然として見ていたのだが、直後にアロエリが下りてきた。

 

「七海、無事か?」

「アロエリ、私は大丈夫。それより、さっきの犯人だと思った人が助けてくれて……」

 

直後に二人は襲ってきた少女の方に視線を向ける。しかし煙が晴れた先にいたのは、けものだまではなく人間の子供ほどある巨大なウサギだった。

 

「わかったかい、君達? 追い剥ぎ事件の犯人は、この魔物だよ。小型だが、人に化ける力を持っているんだ」

「え、この可愛いのが?」

「というか、魔物が着物なんかを盗んでいたのか?」

 

男は真相を教えた後、気絶していた魔物に札を張る。どうやら、何かしらの封印で力を抑えているらしい。

 

「こいつらの仲間は他にもいるから、さっきのお友達と一緒に宿に帰るんだよ」

 

そのまま男は七海達に忠告して去ろうとする。だが……

 

 

 

 

「な!?」

「待て。流石に一人で全滅させるには、荷が重いのではないか?」

 

直後にクラウレが舞い降りてきて、男の進行方向を遮ってしまう。しかも、今の魔物と同種の物を数匹ほど捕まえた状態だった。

 

「兄者!」

「クラウレさん!」

「二人とも、どうやら無事らしいな」

「はい。けど、それよりも流石です兄者。もう真犯人たちを撃破して捕えるなんて……」

 

アロエリはクラウレの戦果を見て、ついそんなことを口走る。クラウレのリハビリは順調なようで、アヤセの町一帯の魔物達を倒せるだけの腕っぷしと飛行持続時間を取り戻しつつあるようだった。

 

「七海ちゃん、アロエリ!」

「二人とも、無事か!?」

 

直後に、ジョーヌとベールが駆けつけてきた。ジョーヌは謎の女性が倒した魔物をそのまま捕まえ、一緒に担いできたようだ。

 

「私達は大丈夫。それより、二人も無事みたいだね」

「はい。私はさっきクラウレさんに助けられて…」

 

そう言って、少し顔を赤らめながらクラウレの方を見る。特に意識しているわけでなく、どうやら不意打ちを受けたのが恥ずかしいらしい。

 

「なに、そこの男が犯人というのが腑に落ちなくてな。それで飛び回っていたら案の定、真犯人が現れたというわけだ。彼女もそのついでに助けてな」

 

クラウレは男を指さしながら告げる。そんな中、ジョーヌがあることを思い出して、七海に尋ねかけた。

 

「なあ、七海。さっき鶏冠みたいな髪型の女の人に助けられたんやけど、見てへん?」

「え、何それ? この人に会うまで、誰にも会わなかったけど……」

「そうか……まあ、強かったから心配いらんと思うんやけど」

 

男は突然の事態に困惑し、つい尋ねかける。

 

「えっと……君達は?」

「ああ、すまんな。俺達はヴァンネットから追い剥ぎ事件の調査に送り込まれた者で、そちらの七海は調査に参加したガレットの勇者だ」

「……お城の人と勇者、だったのか?」

 

詳細を聞かされた男は、少し驚いている様子だった。どうやら年若い七海達を城の関係者だとは思わなかったらしい。

 

「そういう訳だから、オレ達も犯人の捕縛に協力させてもらう」

「見たところあなた、魔物に詳しいみたいなのでこちらからも協力をお願いします」

 

アロエリとベールの弓使い二人が男に協力を要請、その後にビオレと町の役人に報告して包囲網を張ることになった。

 

 

 

そして捜査チームは普段の戦闘装束に着替えなおした後、男と共に魔物の討伐に乗り出し始めた。

 

「この魔物、追い剥ぎウサギは群れで行動し、群れのボスが好む物を集める習性を持っている」

「なるほど。少女の着物ばかりが盗まれたのは、そのボスが偶々好んでいたという訳か」

 

男とクラウレは真面目に話をしているが、魔物のボスの好みを聞いているとただの変態にしか聞こえず、つい七海達も顔を引きつる。男同士でそんな会話が成されたからだろうか?

 

「それで、仲間意識が強いから捕まった仲間がここに居れば……」

「取り戻しに来るっちゅうわけか!」

 

その為、男は懐に捕まえた魔物のうち一匹を忍ばせている。

そして、早速魔物が襲ってきたのだが……

 

 

「え!?」

「こ、こんなに!?」

「不利と判断して、物量戦で来たか…」

 

魔物達はなんと、20匹はいると思われる大所帯で襲ってきたのだ。こちらの数が多く、且つ練度も高いためそう判断したのだろう。

 

「さっきのお返し、させてもらいます!」

「オレも今回は暴れさせてもらうぞ!」

 

直後、ベールとアロエリが弓を構え、ともに紋章を発動する。そしてそのまま弓にエネルギーが充填され、発射準備が完了、同時にアロエリが飛びあがった。

 

「フラック・アローズ!」

「天陣弓!」

 

ベールが飛び掛かって来た魔物達に、アロエリが地上を走ってきた魔物達に弓を放つ。ベールの放った矢は魔物をかすめてそのまま飛んでいったかと思うと、上空でUターンしてそのまま魔物に命中したのだ。

対してアロエリの放った矢は魔物達を囲むように地面に刺さっていき、円陣を描いた後でその中央に最後に放った矢が刺さると、巨大な爆発が生じて円陣内の魔物達を纏めて撃破した。

しかし、それでも仕留めきれずに半分ほどの魔物達が襲ってきた。

 

「ならば、後はオレ達でやるぞ!」

「オッケー! ジョー、行くよ!!」

「合点!」

 

クラウレの合図と同時に、七海は棒形態のエクスマキナを地面に突き立て、それをジャンプ台として宙を舞う。そしてジョーヌは、拳に輝力を溜めて地上に待機する。

そして七海は跳び上がってきた魔物達を迎え撃つため、エクスマキナを再度発動して迎撃態勢に入った。

 

「せーの…」

「虎王拳!!」

 

七海は襲ってきた魔物をエクスマキナを叩き付けて地上に落とし、待機していたジョーヌがアッパーでとどめを刺す。しかし、それでもまださらに半数の魔物しか倒せず、残りは七海達を最初から無視してクラウレと男の方に向かっていた。

 

だが、心配する必要はなかった。

 

「はぁあ!」

「せい!」

 

男は先程と同じく居合風の紋章剣で薙ぎ払い、クラウレは高速の連続突きで纏めて撃破してしまった。クラウレは当然だが、男の方も相当の腕前だったようだ。

 

「……ふぅ。気配がかなり薄くなったみたいだ」

「つまり、ほとんどの魔物を撃破したということか」

 

ひとまず安心する一同だったが……

 

 

「! 気配が急に濃くなったぞ。油断するな!!」

 

場の空気が急に変化し、男が警戒を呼び掛ける。直後、地響きのような音が聞こえた。しかしどこか規則的なテンポで音が聞こえ、足音の様にも取れた。しかもこちらに近づいているのか、次第に音が大きくなってくる。つまり……

 

「デカいのが近づいてくるか」

「つまり、ボスが来たってことね」

 

クラウレと七海の言葉と同時に、一体の巨大な魔物が出現した。群れのボスというのは本当らしく、先程と同じ追い剥ぎウサギのようだが大きさは2、3メートルはある巨体で、他の個体と違い魔物の姿のまま衣服を纏っている。しかしそれ以上に目を引いたのは、頭に被った男物のパンツだった。

 

 

 

「な、なんだこのいかがわしい格好は?」

「服はともかく、頭の方はボス共通の装いなんだ。気にしないでくれ」

「いや、気になるだろ! 何で下着、それも同姓の物を……」

 

アロエリが柄にもなくツッコミに入るが、直後に何か得体のしれない気配が感じられた。

 

「なんだ? 急に禍々しい気配が、奴から……」

 

直後、ボスウサギの眼の色が赤から黒に変化し、何やら得体のしれない気配を纏う出したのだ。

 

「……グ、グワォ……

 

 

 

 

 

グギャルルルルルルオオオォォォォォオオオオオオオオアアアアアアアアrrrrrrrrrr!!!」

 

魔物とは言えウサギとは思えない、それこそメイトルパのワイヴァーンに勝るような獰猛な咆哮を上げる。しかも、その音量は大気が震える程すさまじかった。

 

「ソイツ、何かがおかしい。気を付けろ!」

 

男がクラウレ達に警戒を呼び掛けると、ボスはそのまま前足で握り拳を作って殴り掛かってくる。

間一髪で回避するが、殴られた地点を中心に地割れが生じた。

 

「嘘でしょ!?」

「いくらボスとはいえ、追い剥ぎウサギは直接の戦闘力は低い筈じゃ…」

 

七海だけでなく、男の方も驚愕していた。どうやら、追い剥ぎウサギのボスも本来は直接戦闘が苦手らしい。するといきなり、飛び退いた七海に向かってボスウサギは鋭い爪を突き立てながら飛び掛かってきた。

 

「って、ヤバ!?」

 

七海は咄嗟にエクスマキナを構え、攻撃を防ごうとする。エクスマキナはその衝撃で真っ二つに折れ、そこを見計らって手の甲を払うように叩き付けてきた。

 

「「「「七海(ちゃん)!!」」」」

 

クラウレ達が心配するも、ボスウサギはその隙をついて今度はベールに飛び掛かる。

しかし、あの男が間に入ってそのままボスウサギの爪を刀で防ぐ。

 

「早く離れろ!」

「は、はい!」

 

ベールはそのまま男に言われるがままに、その場を離れる。アロエリもチャンスと判断し、七海の救出に向かう。

 

「さて、これは流石に厳しいかな……」

「だな。大人しく援軍を待って、物量戦で攻めるか…」

 

男とクラウレが警戒し、揃って得物を構える。直後、ボスウサギはそのまま飛び掛かって二人に迫る。

 

 

 

 

 

 

 

「スプラッシュ!」

 

するといきなり聞き覚えのない少女の声が響いたかと思うと、ボスを目掛けて雹が降ってきた。ボスはそれを諸に喰らって隙が出来たため、七海は咄嗟にその場を離れる。

 

「大丈夫ですか?」

 

直後、七海達の前に現れたのは二つの人影だった。それぞれ、胸に割れたハートの意匠が施された服を着た悪魔の少女と長いマフラーを身に着けた、中性的な容姿をした亜人の子供がいた。今声をかけてきたのは亜人の方だ。

 

「ああ、アーノにディナ! ようやく見つけた!!」

 

直後に現れたのは、ピンクの髪の女性だった。それは先程、ジョーヌを助けた人物で、今一行を助けた二人組が、探していた仲間のようだ。ちなみに、先程の槍とは別に剣も持っていた。

 

「ああ、さっき助けてくれたお姉さん!」

「ん? ああ、さっきの。で、またピンチの渦中みたいね」

 

ジョーヌの反応を見て、軽そうな感じで答える女性。直後、アロエリに助けられた七海が女性の存在に気づいて声をかける。

 

「まさか、あなたがジョーヌを助けてくれた……ありがとうございます」

「アタシも仲間を探してるついでだったから、いいってことよ。さぁて、諸悪の根源っぽいのやっつけますか……貴方達、ここはアタシに任せて」

 

女性は七海達の前に出てくるなり、そう言う。

 

「無茶だよ! いくら何でも一人じゃ……」

 

七海は女性からただならぬ気配を感じ取り、途中で言葉を遮ってしまう。

 

 

「はぁああああ……」

 

直後、女性の衣服が徐々に消えて言ったかと思うと、体の各所から赤い線のような模様が浮き出てきたのだ。

そして、そのまま赤い光に包まれていった。

そして

 

 

 

 

 

 

 

「え……その姿って……」

「へ、変身した……」

 

なんと、女性は白い鎧を纏ったような姿へと変じていたのだ。そしてその背中には、赤い光の翼のような物まで生えている。しかもその手には、身の丈ほどある片刃の大剣が握られていた。

 

「それじゃあ、パパッと片づけてくるね」

 

女性はそれだけ言って、ボスに向かって突撃していった。

 

「ディナ、スペルガードをお願い」

「わかったわ!」

 

直後にディナが魔力を練り始め、女性に対して体を膜のように覆う結界のような物を張った。

 

「アーノ、牽制して」

「はい、クルクルでいくです!」

 

そのままアーノは、高速回転しながらボスウサギに突撃していく。そしてボスウサギはそれを迎え撃とうと、右腕を叩き付けてきた。

 

「とぉお!」

「グギャアアアアアアアアアアア!?」

 

しかし、腕が命中するよりも早く、アーノはボスウサギの懐に潜り込み、そのまま回転タックルを叩き込んだ。

 

「アーノ、ありがとう! 後はアタシに任せて!!」

 

そのまま女性は剣を振りかぶりながら、ボスウサギに向かって行く。直後にアーノが離れ、それを見計らって斬りかかる。

しかしボスウサギは持ち直し、左手の爪でそれを防ぐ。

 

「結構強いね。けど、アタシだってこんな物じゃないよ!」

 

しかし女性の剣の腕は確かなようで、すぐさま剣を引いて再度斬りかかる。ボスウサギも咄嗟に防御するが、女性の猛攻とアーノの攻撃によるダメージにより、防戦一方に追い込まれてしまった。

そして……

 

 

「ぐがぁあ!?」

「爪が折れた!」

「よし、今がチャンス!」

 

そのまま爪が折れたボスウサギに、女性は一気に斬りかかる。そのまま一気に連続切りに入り、ボスウサギの体力を削っていく女性。やがて消耗が激しくなったようで、ボスウサギが息切れし始める。

 

「よし、これでとどめよ!!」

 

そのまま女性は剣に魔力を込め始めたかと思うと、それが一気に増大し、そのまま赤いエネルギー波として剣先から放出され、ボスウサギを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ぎ、ぎゅうぅぅ……」

 

攻撃が終わると、ボスウサギはその場で伸びている姿があった。女性の勝ちは明白だった。

直後、女性の変身が解けて元の姿に戻ると、持っていた剣をくるくると回転させ始める。

 

「やったね!」

 

そのまま剣を持った手でガッツポーズを決める。ディナやアーノが何も言わないところ、お決まりの勝利ポーズのようだ。

 

「す、すごかったね……」

「ああ。魔力も剣の腕も、相当の物だったな……」

 

七海が驚愕し、クラウレもその実力を絶賛する。

 

 

「う~む……どうやらわしらの出番は来なかったようじゃな、犬姫侍」

「ですね、獅子王侍様。でも、私達でも勝てなかったかもしれないので、これでよかったと思います」

 

すると聞き覚えのある声で背後から話し声が聞こえたので、振り返ってみる。

 

「姫様にレオ様? なんでここに……」

「というか、その恰好は何だ?」

 

そこにいたのはミルヒとレオだったのだが、そろって普段と違う格好をしている。ミルヒは桃色がかった巫女っぽい服を、レオは髪をツインテールに纏めて着流し姿になっていた。

 

「……それが、会食の時に追い剥ぎの話したらね姫様も一緒に行くってなって」

「それでわざわざ用意までしたってわけだよ」

「折角準備したのに……」

「…であります」

 

直後にエニシアとギアンもやってきて、事情を説明する。その際に同行していたノワールとリコッタが、しょぼくれていた。仕事を取られたようだ。

 

「それじゃ、俺はこれで……」

 

すると男が人の集まってきたところで、何食わぬ顔で別れを告げたのだ。

 

「おい、流石にそれは水臭いんじゃないか?」

「そうですよ。それにまだお名前も聞いてないんですし……」

 

アロエリと七海に止められた男は、少し気まずそうな様子だった。

 

 

 

「イスカ様ー! やっぱりイスカ様でござる!!」

 

直後に、ユキカゼがやって来て男の名前らしきものを呼んでいた。

 

「ユキ坊!」

「イスカ様、御無沙汰にござる!」

 

イスカと呼ばれた男の方も、どうやらユキカゼと面識があるらしい。再会がよっぽど嬉しいのか、ユキカゼは満面の笑みを浮かべていた。

 

「魔物騒ぎを感じて駆け付けたでござるが、七海達も無事なようでござるね」

「ああ、うん。主にクラウレさんとあの女の人のおかげで……」

 

突然の事態に茫然とする七海達だったが、どうにか声を振り絞ってイスカの詳細を尋ねることにした。

 

「ユキカゼ、コイツと知り合いなのか?」

「……騒ぎになっていると思えば、また兄者の仕業か」

「ほぉ、これが話に聞いていた兄君ですか。確かに似てますね」

 

しかし、返事が返ってくるのを待つまでも無くブリオッシュがやって来て、イスカを兄者と呼んだ。隣にいるシンゲンも聞き捨てならない言葉を発している。

 

 

 

 

「あ、兄者って……」

「つまり、ダルキアンの……」

 

ブリオッシュの兄者発言を聞いて、ジェノワーズとアロエリが呆然とする。

 

「ヒナ、お前も来てたのか!」

「そ、その名で呼ぶなと……」

 

イスカの口からブリオッシュとは別の名前が飛び出し、それに反応したブリオッシュはかなり恥ずかしそうにしていた。すごく珍しい。

 

「あ、紹介が遅れたでござる。こちらはお館様の実の兄君、イスカ様でござる」

「不詳の兄でござるよ」

 

ブリオッシュが恥ずかしそうに、イスカのことをそう紹介する。すると、そんな中であの女性が声をかけてきた。

 

「ねえ、そろそろアタシも自己紹介していいかな?」

「ああ、ごめんごめん! それで、あなたは一体?」

「アタシは…」

 

 

 

 

 

「え、エア!? 何でここに…」

「おーぅ、久しぶりじゃねえか」

 

直後に聞き覚えのない声で、女性の名前らしいものが呼ばれる。そこにいたのは、ドラジェのレザン王子とマグナ達だった。今回はアメルとハサハではなく、ゴーグルを額に嵌めた悪魔の少年がいる。

 

「マグナじゃない! 久しぶり、元気してた?」

「そっちこそ。で、エアも勇者として呼ばれたのか?」

「勇者って何? アタシは武器の材料探しに言った遺跡で、転移装置みたいなのウッカリ触っちゃって、気がついたら……」

 

女性はマグナと面識があるらしく、そのまま話し込んでしまう。その際に、自身がフロニャルドに来てしまった理由も語られていたが、勇者召喚によるものではないことが分かった。同時に、ドジなところもばれたが。

その一方で、レオとレザンが挨拶を交わしていた。

 

「レザン王子、久しぶりじゃの。そちらが、貴殿が勇者として呼んだ者達か」

「レオ閣下、お久しぶりですね。そうです、こちらがリィンバウムのマグナさんとお仲間のバルレルさんです。他にもいるんですが、今は本国で留守番しています」

「そうか。ところで、ライはおらんのか?」

「ライさんもまだ本国にいます。ドラジェの特産品を物色するのに夢中みたいで……」

 

そのままレオとレザンは話し込んでしまったので、エアは自己紹介を再開する。

 

「じゃあ、改めて自己紹介ね。アタシはエア・コルトハーツ、こう見えて鍛冶師よ。よろしく」

「コイツの護衛獣やってる、悪魔のディナよ」

「同じく、アーノです。よろしくです」

「コルトハーツ……まさか、魔刃使いの一族か!?」

 

そんな中、エアの苗字に反応したのはギアンだった。

 

「ギアン、知ってるの?」

「ああ。彼女はかなり特殊な家計でね……」

「まあ、取りあえず腰を落ち着けられるところで改めては無そうではないか」

 

その後、レオに促されて一行は町の集会場に移動する。ちなみに、別エリアでシンクとガウルが他の魔物を掃討しており、彼らも合流するのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「それで、こちらの方はブリオッシュの兄でイスカ・マキシマさん。ブリオッシュと同じ退魔剣士で、旅の一流鍛冶師でもあるんです」

「今までにも、国宝級の名刀をいくつも打って来た天下に名を馳せる男じゃぞ」

「へぇ、あなたも鍛冶師なんだね。同業者同士、よろしく」

「いやいや、俺は単なる流しの鍛冶師ですよ。あと、こちらこそよろしく」

 

ミルヒやレオがイスカの経歴やら功績やらを口にするが、当の本人は謙遜している。ちなみに、マグナ一行やレザン王子は自己紹介済みだ。

 

「流しはいいが、頼りも残さないのはどうかと思うぞ? 何処かで野垂れ死んでいるかと思ったぞ」

「俺がそう簡単に死ぬかよ。それより、お前こそ飲みすぎて体壊したりしてないだろうな?」

「それはこっちのセリフだ。兄者は私より深酒をするからな……」

 

イスカと話すブリオッシュは、なんとござる口調が消えて一人称も私になっている。かなり珍しい光景だ。

 

「兄妹同士だから出来る会話もあるということか。アロエリ、お前も彼女に肖って男言葉を外してみてはどうだ?」

「あ、兄者!? いきなり何を……」

 

アロエリがクラウレの言葉を聞いて、つい驚愕する。そんな中で、エアの力や素性について語られ始めようとしていた。

 

「で、エアさんのさっきの力は一体なんなんですか?」

「ギアンも何か知っているみたいだけど……」

「ああ、文献とかで見てね。けど、詳しい本人がいるから直接聞いた方が早いかな」

 

そして、改めてエアの素性が語られ始める。

 

「今よりもずっと昔に、シルターンからゴウラっていう召喚獣が呼ばれたんだ。かなり強大な召喚獣だったらしくて、何人もの召喚士を集めてやっと呼べたらしいんだけど、事故で召喚師の内一人に魂の一部が宿ってしまったそうだ。で、それが最初の魔刃使いだそうだよ」

「アタシも人から聞いたんだけど、大体あってるね。で、そのゴウラは魂が欠けた所為で暴走しちゃって、力の源の魔刃って剣を奪って倒して、どうにか封印したの。けどゴウラは数年前にちょっとした事件の後で正気になって、シルターンに帰ったから安心して」

 

ゴウラの一件はすでに解決済み、そこに一行は胸を撫で下ろす。

 

「それで、コルトハーツ一族は代々、肉体にゴウラと誓約したサモナイト石を埋め込むことで、その力を行使する異形の姿になる”モノシフト”という力を使えるんだ」

「なるほど。さっきの変身が、そのモノシフトってわけね」

「うん。ゴウラの魂は返したんだけど、力は染みついているみたいで今も使えるみたい」

「まあ、魂の力はそこが知れないってことね」

 

エアがいまだモノシフトが使えることについての推測を離し、ディナもそれを肯定する。

その後、事件解決の食事会を取ることとなった。ブリオッシュの姉弟再会ということもあり、酒も振舞われる宴会となった。

 

 

 

「そういえば、あの魔物達ってどうするんだ?」

「やっぱ、消滅か封印でもするのか?」

 

マグナがふと魔物達の処遇について気になったので、シンク達に尋ねる。その際、バルレルが物騒なことを言っていた。

 

「まさか、人里から離れたところに逃がすよ。棲み分けが出来るなら、それに越したこともないしさ」

「魔物っつっても、あれくらいなら野生動物と一緒だしな。それに、盗られた着物も無事取り返せたから問題ねえよ」

「なんだ、つまんねえの」

「バルレル、やめろ」

 

バルレルが空気を読まない発言をしたため、マグナがそれを諌める。

 

「なんか、今回はいまいち活躍できなかったなぁ」

「贅沢言うな。そもそも、お前は町と子供たちの平和を守ることが第一目標だったろ?」

「それもそっか」

 

七海が不満そうにする中、アロエリに言われて納得する七海。そんなわけで、これにて追い剥ぎ事件は一件落着となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「読心の奇跡も源罪(カスラ)も初めて使ったが、思いのほか上手くいったな」

 

同時刻、アヤセの町の上空で一人の男が背に生えた翼で空を飛んでいた。驚くことに、その男の背から生えた翼は『悪魔の翼』と『天使の翼』の両方を備えた、不可思議な姿をしていた。

 

「しかし、マキシマ兄弟がいるとはな。早いところ戦力強化を図るか」

 

その男は、そのまま上空で誰にも悟られずに飛び去って行った。




実はクラフトソードは動画補完なので、エア達の口調に違和感があるかもしれません。ご指摘など、お願いいたします。
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