サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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英雄王伝説、ここで終わらせるつもりが想像以上に長くなったので分けさせていただきました。


第41話 運命を乗り越えし者 The Lowler

ギアンの猛攻を退け、そのまま逃げ去ってしまった魔王。英雄王のいない今の時代に、彼らは魔王を止められるのか?

そして、魔王の行方は?

 

 

 

~エッシェンバッハ城~

「いいぞ、いいぞぉ……」

 

なんと、魔王は宮殿近くの木の上から、パスティヤージュ騎士団詰所の女子更衣室を覗いていた。なんというか、魔王を名乗る存在の悪事にしてはみみっちい物だった。

 

「折角の自由が、訳の分からん連中に台無しにされそうになっちまったからな。その分楽しませて……って、気づかれたか」

 

魔王が独り言をつぶやきながら嬉々として覗きを楽しんでいると、着替え中の騎士達に気づかれてしまう。術や射撃を主体とするパスティヤージュの騎士は視線に敏感なようで、すぐに覗かれていると気づいたようだ。

 

「覗きは犯罪です! みんな、撃てぇえ!!」

 

即座に近くにあったタオルを巻いて裸体を隠し、そのまま近くに置いてあった銃で撃ち落そうとする。だが……

 

 

「ふっ」

 

なんと、魔王は飛んできた銃弾をキャッチしてしまい、それを投げ返して騎士達を撃破してしまう。覚醒状態のギアンと互角に戦っただけあって、やはり強い。

 

「けほっ、けほっ……今の、何なの?」

 

攻撃を喰らって無事だった騎士の一人が呟いた直後……

 

「え、ええええええええええええ!?」

 

タオルがはじけ飛んで裸に剥かれてしまう。そして慌てる様子を見て、魔王は愉快そうに笑っていた。

 

「はーっはっはっは! 眼福眼福!! さて、次は…」

 

ひとしきり裸体を満喫した魔王は、そのまま飛び去って別の場所へと向かって行く。

 

 

その頃

 

「いやぁ~、バルレルと言ったか小僧? 見た目の割に、いける口ではないか」

「あたぼうよ。俺は今じゃこんななりだが、百年以上は生きてるんだぜ。そこらのニンゲンよりはつぇえ自身はあんだよ」

 

宮殿の廊下でバルレルとゴドウィンが酒瓶片手に談笑している。二人とも顔がほんのりと赤いため、それなりに飲んでいるようだ。

 

「ん? 何の騒ぎだ?」

「あそこで喚いているのは、城のメイド達か?」

 

そして近寄ってみると、そこはちょうど魔王がメイド達を相手にスカート捲りをしている最中であった。

 

「絶景かな、絶景かな! さて、他にもメイドはいるから楽しませてもらおうか!!」

 

そのまま魔王は、右腕を払うような仕草と同時に強風を起こす。どうやらこれでスカートをめくっていたようで、反対側やバルレルたちの後ろから来たメイド達のスカートが次々とめくられる。

 

「な!? あの男、破廉恥な……」

「ああ、そういやあんた嫁がいるとか話してたな。じゃあ、独り身の俺はこの状況を楽しませて……」

 

ゴドウィンの驚愕の事実が判明する中、各々が異なる反応を見せる現状。だが、その時にそれは起こった。

 

「あ、酒が!?」

 

その時、バルレルたちの持っていた酒瓶が風で吹き飛び、壁にぶつかって割れてしまった。中身がまだ半分以上残ったままでだ。しかもゴドウィンは、もう一本持っていた未開封の物まで吹き飛んでしまうという事態だった。

 

「さーて、絶景を楽しませてもらったことだし、今度は風呂場でも……」

「……おい、待てや」

 

そのまま魔王が去ろうとするが、バルレルが呼び止める。

しかし、バルレルはゴドウィン共々凄まじい怒気を放っており、その姿は禍々しく見えていた。

 

「てめぇ、俺の酒を……パスティヤージュ原産の最高級果実酒をよくもおじゃんにしてくれたな」

「エリーナへの、妻への土産まで台無しにしおって……」

「へ?」

 

バルレルとゴドウィンのあまりの怒気に、魔王はつい呆けてしまう。バルレルの怒りは完全に自分勝手なものだが、ゴドウィンはいかに愛妻家なのかが伺えた。

 

「「俺達の怒り、思い知りやがれえええええええええええええええ!!」」

 

バルレルは何処からともなく呼び出した槍を、ゴドウィンは愛用の鉄球斧が無かったので己の拳を振るい、魔王に飛び掛かる。

 

「うぉお! 今度は何だ!?」

「よそ見している場合じゃねえぜ、スケベ野郎!!」

 

ゴドウィンの拳を避けた魔王に、バルレルはすかさず刺突を放つ。しかし、魔王はバルレルの槍を掴んで攻撃を阻止してしまった。

 

「ちっ……人の楽しみを邪魔するんじゃねえ!!」

「ぬわぁあ!?」

 

魔王はそのまますさまじい怪力を発揮し、バルレルを槍ごとゴドウィンに向けてブン投げてしまう。

 

「せっかく一人で目覚めたと思ったら、妙な邪魔ものどもに何度も会うとはな。まあ、ここでおさらばさせてもらうか」

 

そのまま魔王は、二人が起き上がる前に窓から飛び出してどこかへと去ってしまう。

 

「あの野郎……ぜってぇに見つけて八つ裂きにしてやる」

「物騒なこと言うガキだな……メイド達、早いところ騎士団や閣下たちに侵入者のことを伝えろ。俺達はあいつを追う」

 

バルレルの様子に一瞬引いたゴドウィンだったが、すぐさまメイド達に指示を出して二人で魔王の捜索に向かって行った。

 

~大浴場~

「はぁ~……やっぱりでっかいお風呂はいいわね」

「本当ですね……」

 

リシェル達残っていた女子一同は、宮殿の大浴場にいた。肩まで浸かって、御満悦状態だった。

しかし……

 

「きゃあ!? 誰かいる!!」

 

入浴中の少女の内一人が、天窓に人影あることに気づいて叫ぶ。案の定また魔王で、天窓を突き破って堂々と入り込んできため、大浴場にいた全員が悲鳴を上げた。

 

「はっはっはっはっは。騒ぐな娘達、俺に素肌を見せてよい」

 

そのまま魔王は意味不明なことを言いだし、入浴中の女性達に近づいて行った。

 

「何ふざけたこと言ってんのよ、あいつ」

「リシェル、まずはアタシに任せて下がって」

 

リシェルが憤慨しながらサモナイト石に手を伸ばすが、直後に七海が静止をかけてエクスマキナを発動、ブーメランの形状に変形させた。

 

「エクスマキナ・ブーメランスラーッシュ!!」

「ふっ、この程度……がぁあ!?」

 

魔王はブーメランを避けようつぃたが、不規則な動きで飛んできたために対応できず、そのまま顔面に喰らってしまう。

 

「バレットカード、セット!」

 

そして追撃と言わんばかりに、レベッカもバレットカードを魔王に目掛けて投げつける。カードから発せられたエネルギーが光線状になり、それが魔王に命中した。

 

「とどめは貰うわよ!」

 

そして待ってましたと言わんばかりに、リシェルがサモナイト石を使って召喚術を発動する。

 

「召喚、ウィンゲイル!」

 

召喚されたのは、両腕が大型の扇風機になっているマシーンだった。そして、その召喚獣ウィンゲイルは魔王に向かって強風を起こす。

 

「な、なんだコイツ……って、うぉおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

そのまま魔王は吹き飛び、最初に侵入した点までに押し戻されて一気に吹っ飛んでいった。

 

「たぶん、あいつはまだ無事ね。追いかけてとっちめるわよ!!」

「リシェルに賛成! 行こう、ベッキー」

 

そのままリシェルに先導される形で、七海達も後を追う。

そんな中、先程から会話に全く参加していなかったアメルはあることが気になっていた。

 

(あの人、邪悪な感じは全くしなかった……スケベだけど、悪い人じゃない?)

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その頃、宮殿内の庭園でレオとミルヒがお茶をしていた。

そんな中……

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

リシェル達に吹き飛ばされた魔王が、その近くに落下してきた。

 

「痛て……妙な連中からの妨害が続きやがるな。今の時代、何が起こってやがる?」

 

起き上がって呟く魔王だが、流石に総攻撃が聞いたようで若干ボロボロであった。

 

「なんじゃ、あいつ?」

「怪我をされてるようですが……」

 

レオたちは突然降ってきた魔王の様子に、ついキョトンとしてしまう。

しかし直後

 

「ええ!?」

「何じゃ、一体!?」

「こ、今度は何が……ぎゃああああああああああああ!!」

 

空から無数の光線が飛んできて、それが魔王に降り注いだのだ。

 

「姫様、無事かああああああ!?」

「僕達が戻ってきたから安心してくださああああい!」

「ら、ライさんにシンク?」

 

空からライ達の声が聞こえたので見上げると、至竜形態のミルリーフが飛んできていた。どうやら光線を放ったのは、ミルリーフだったようだ。そしてミルリーフは着地と同時に人間態になり、ライ達もそのまま地面に降り立ってミルヒ達に駆け寄る。

さらに今度は、ルシアンと晶術騎士団たちが駆けつけてくる。そして先頭には、バルレルとゴドウィンの姿があった。

 

「姫様、閣下、無事ですか!?」

「こちらに不審者が向かったという報告を受けましたが、お二人とも無事でしょうか!?」

 

ルシアン達がミルヒやレオに声をかけた直後、光線が降り注いだ影響で出来たクレーターの中心から、魔王が起き上がってくる。相当タフなようで、目立つ外傷どころか装備破壊すらしていないのが伺えた。

しかし、それでもひるむことなく騎士団はクレーターの縁に立ち、中心にいる魔王を包囲した。

 

「見つけたぜ、うさんくせぇ恰好の亜人野郎。今度こそ八つ裂きにしてやるぜ」

「流石に八つ裂きはやりすぎだが、貴様をひねりつぶさんと怒りは収まらんな」

 

バルレルとゴドウィンは怒り心頭のようで、得物を構えながらかなり物騒な発言をしている。その様子に騎士団一同もドン引きしていた。

 

「えっと、気を取り直して……そこの人、痴漢及び盗撮の容疑で逮捕します!!」

「へ、痴漢?」

「ま、魔王なんて名乗ってるのにみみっちいことしてるな……」

「なんか、さっき激怒したのが恥ずかしくなってきたんだが……」

 

ライ達も流石に予想外だったため、魔王のやったことを聞いて思わず固まってしまう。ギアンまで頭を抱える始末だった。

すると魔王は立ち上がり、何やら苛立った表情となっている。

 

「誰が痴漢だ! ………よく聞け、人間ども!!」

 

直後に魔王が指を鳴らすと、なんと空が曇り始めた。得体のしれない相手に動揺が走る中、魔王は赤黒いオーラを纏い始める。

 

「我が名は、魔王カルバドス!!」

『うわああああああああああああああああああああ!!』

 

再度名乗ると同時に右手を払う仕草をすると、魔王は周囲へと衝撃波を放つ。あまりの威力に、その場にいた全員が吹き飛ばされてしまう。

 

「恐れよ、そして崇めよ」

 

全員が倒れ伏す中、魔王は告げた。そしてそんな中、どうにか一同は立ち上がる。

 

「だいじょうぶか? ミルヒ、エニシア」

「はい……ああ!?」

「た、確かあれって…」

 

するとミルヒ達は視線の先にあるものが映る。先程の衝撃でミルヒの神からリボンが外れ、呑み掛けのアイスティーもかかって汚れてしまっていたのだ。このリボンはミルヒ自身がお気に入りと語っていたが、昨年リコッタからプレゼントされた物だったのだ。そんなものを台無しにされてしまい、ミルヒはショックを隠せず、再開してすぐにそれを聞かされたエニシアも心情を察して辛そうな顔をしていた。

 

「感じるか、本能に訴える恐怖を! 平伏して許しを請う気になったか!?」

 

そんな中でも魔王は演説の様に周りにいる全員に告げる。先程で小物のように感じられていたが、前言撤回で魔王を名乗るに相応しい悪人だと場にいた全員が確信した。

そんな中、シンクがライに声をかける。

 

「ライさん」

「ああ、気に入らねえな」

「はい。女の子を脅して泣かして……」

「嬉しそうに笑ってやがる……」

 

 

 

「「その腐った根性が気に入らねえ!!」」

 

そしてライとシンクは怒りの表情を浮かべ、同時に駆けだして魔王に殴りかかろうとする。

 

「はーっはっはっはっは! 我は魔……ぐぉお!?」

「「え?」」

 

しかし、それよりも早く誰かが魔王に殴りかかり、魔王は城の壁に激突した。そしてその人物は、マグナだった。

 

「ま、マグナさ……!?」

 

ライ達は横からマグナの顔を覗き込むが、その表情を見て驚愕する。

 

「若造が、舐めるな……!?」

 

復活した魔王もマグナに詰め寄ろうとするが、同じく表情を見て固まった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前……アイツと同じか」

 

マグナの表情は、ライ達のそれとは比較にならない、憤怒の表情を浮かべていた。

そのわけは、マグナの脳裏によみがえったある光景にあった。

 

『アメルさん、貴女という人は……つくづく愚かですねぇ!!』

 

人の恐怖を煽り、その様を楽しむ様子は

 

『貴方の持つ魔力を血識としてねぇ!!』

『愚かな召喚師たちは自分達の所為だと思っていたようですが、それもまた私が偽りの記憶を与えてそう思わせていただけですよ』

『いーひゃはははははは!』

 

先祖との因縁を持つ、怨敵の姿と重なった。

 

「お前も、人の心を弄んで楽しむ最低最悪なやつなのか!!」

 

マグナの怒号と同時に、凄まじい魔力がマグナの体から湧きたつ。大気が震えるほど強大なそれは、かつて運命を律するとまで言われた伝説の召喚師の血筋の証でもあった。

 

「みんな、無事!?」

「って、これは一体……」

 

直後に七海達が駆けつけるが、事態が事態だったため動きを止めてしまう。

 

「みんな、手を出さないで欲しい。たぶん、俺はこいつに手加減できねえと思う」

 

マグナの驚くほど静かで、それでいて煮えたぎったマグマのような熱い何かを感じる声に、ライ達を含めて全員がそれに従った。

そんな中、クーベルは下がる前にマグナに声をかける。

 

「マグナ、本当は英雄王の子孫としてウチが立ち上がりたかったが、なにかあるんじゃな。それに免じるが、代わりにウチの分もがんばってくれ」

「ありがとう、クー様」

 

クーベルは強い意志を感じる瞳をしており、本当は自分も戦いたかったというのが伺えた。しかし、それでいてマグナを信じ、彼に全てを託すことを決意したのである。

そんな中、バルレルにまず声をかけてきた。

 

「バルレル、力を開放する。暴れるぞ」

「へへへ、待ってたぜぇ」

「お兄ちゃん、ハサハもいく」

「おい! お前はともかく、そっちのは……」

 

直後にゴドウィンが静止をかけるが、バルレルもハサハも効く耳を持たずにマグナに近寄る。直後に、マグナは右手を天に掲げた。

 

「行くぞ、神剣エルシード!!」

 

マグナが叫ぶと同時に、右手の中指にハマっていた指輪状態の宝剣が煌めき、刃渡り2メートルはある巨大な剣に変化した。ドラジェの宝剣を使いやすい形で発現した結果、マグナは普段から振るっている大剣の形で発現したというわけだ。

 

「バルレル、誓約解除! ハサハ、輝力充填!」

 

直後にバルレルの体からサプレスの属性を秘めた紫の魔力があふれ出し、ハサハは背中に展開された紋章からマグナの発する輝力を吸収する。

そしてそのまま二人はサプレスの紫、シルターンの赤の魔力光に覆われる。そしてそれがはじけ飛んで中から現れたのは……

 

 

 

「ふふふ……ひゃっははははははははは! 狂嵐の魔公子、復活!!」

 

青年の姿で高笑いを浮かべるバルレルと、大人の女性の姿になったハサハの姿だった。ハサハは面影が残っているが、バルレルは細身でありながらしまった肉付に、側頭部に生えた角と元よりも立派な翼、そして額に開いた第3の眼といった面影が感じられない姿であった。あまりの変貌ぶりにライ達全員が驚愕する。

魔王も動揺しつつ、マグナ達に啖呵を切る。

 

「て、てめぇはいったい何者だ! 魔王の俺が言うのもなんだが、そんな禍々しい奴従えてるって……」

 

そんな魔王に対し、マグナはエルシードを構えなおして名乗りを上げた。

 

「俺はマグナ・クレスメント。蒼の派閥の召喚師兼ドラジェ領国の勇者で、またの名は……

 

 

 

 

運命を超えし物、超律者(ロウラー)だ!!」




ようやくマグナを動かせた。次回でようやくこの話が終わるので、お付き合いいただけたら幸いです。
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