サモンナイト 勇者と姫と越響者   作:玄武Σ

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今回はリィンバウム側のキャラがようやく登場します。
では、お楽しみに。

P.S.亀更新(予定)を外しました。


第5話 暗躍する意思

ここは、リィンバウムの帝国領、トレイユの町にあるブロンクス邸。

 

「ったく、ライのやつどこ行ったのよ? 昼には帰ってくるって言ってたじゃないの」

 

膨れながらそう呟くのは、へそ出しルックの上にコートを着た、ウサギのぬいぐるみが付いた帽子をかぶった少女だ。

彼女の名はリシェル・ブロンクス。このブロンクス家の長女で【金の派閥】の召喚士見習いの、ライの幼馴染である。

 

「姉さん、気持ちは解るけど落ち着いて」

 

そんなリシェルを落ち着かせようとしている少年は、彼女の弟ルシアン。ブロンクス家の秘伝である機械召喚の適性がなかったため軍学校への進学を目指していたが、かつて共闘したアルバという少年の影響から現在は自由騎士になるべく特訓に明け暮れている。

 

「あ、お帰り。見つかった?」

「いえ。町中探しても見つかりませんでした」

 

ブロンクス邸に戻ってきたのは、紫の髪と赤い瞳が特徴的なメイドの女性だった。

彼女はポムニットといい、リシェル達姉弟の世話係をしているメイドだ。先程まで御使い(ミルリーフに仕えている4人組)をはじめとした町の仲間達とライとミルリーフの捜索に出ていたが、町中の何処にもいなかったという。

 

「御使いのみなさんは町の外まで捜索に行ってしまいました」

「…ねえ、あいつらが間違って隣町とかに入っちゃったら、騒ぎになったりするんじゃないの?」

「そこはみなさんも理解しているので、大丈夫だと思います」

 

リシェルの言うことはリィンバウム、それも帝国に暮らすものにとっての常識によるものである。

帝国では召喚獣が個人の所有物と認識されており、召喚獣のみで行動しているとはぐれ召喚獣と見なされてしまうからだ。

 

「…もしアイツに何かあったら、メリアージュに顔向けが出来ん」

 

そう呟きながら机に伏している、高そうな服装の中年男性は、ブロンクス家当主でリシェル達の父、そしてライの雇い主であるテイラー氏だ。

彼はライの父ケンタロウとは腐れ縁、そして同時にその妻であるメリアージュは初恋の相手であるので、その息子であるライの実を案じるのは当然であろう。

 

「ライ…」

(ライ、よくもエニシアを心配させてくれたね。このまま帰ってこなかったら見つけ次第…)

 

ライを心配しているのは儚げな雰囲気の、ライの服と似たようなデザインの物を着た少女。そしてその隣で物騒なことを考えているのは、マフラーと眼鏡を身に着けた赤い髪の青年。

この二人が、現在忘れじの面影亭でお手伝いをしているエニシアと、以前ライが巻き込まれた事件の首謀者ギアンである。

 

このように、ライの身近な者達は皆、彼の心配をしている。これは(ひとえ)に、ライが周りの人々に愛されていることの表れだろう。

そんな状況の中……

 

 

───prrrrrrrr! prrrrrrrr!

「!? あの音は通信装置の…」

「ひょっとしたら、ライさんかも!」

 

突然なったアラームのような音は、ロレイラルから召喚された通信装置によるものだ。この据え置き型通信装置は、地球にも存在しているテレビ電話のようなものであり、音声だけでなく相手の顔や周囲の様子まで映すことが可能な装置である。ライの持たされているものは、これとセットになっている物なのだとか。

 

「この番号、間違いなくライに持たせたものだ」

「! ……あのバカ」

 

ライからの通信だと解って、リシェルは安心すると同時に怒りが込み上げてきた。

 

『お、つながっt「ライ!」!?』

 

画面にライの姿が映った瞬間、リシェルが真っ先に詰め寄った。

 

「ライ、今どこにいるのよ!? そっち行くから教えなさい!!」

「急用でも出来たか!? 帰れるのはいつだ!?」

「どこか行くなら行くで一声かけてくれ! おかげでエニシアが心配しているじゃないか!!」

『え、え~っと、ちょ、待!』

 

リシェル、テイラー、ギアンの順でモニター越しのライに詰め寄る。一斉に詰め寄られたのでライは驚き、答えるに答えられない状態だった。

だが、そんなライに救いの手が差し伸べられた。

 

『あの~、そのことなんですが』

「自分達から話させてもらうであります』

 

ライに救いの手を差し伸べたのは、シンクとリコッタだった。シンクは先に連絡を終えているので、こちら側の会話に参加していた。

リシェル達は、突然出てきた二人組がすぐに気になって、そちらを優先する。

 

「え~っと、あんた達は?」

『僕はシンク・イズミといいます』

『自分はリコッタ・エルマール、ビスコッティ共和国の王立研究員をしているであります』

「メイトルパの亜人なのに家名持ち? それに研究員?」

 

リコッタ、というかフロニャルドの住人達は全て獣耳なので、リィンバウムの住人から見たらメイトルパの亜人と間違えるような容姿である。

そのため、メイトルパの召喚術が専売特許であるギアンも、彼女が家名持ちだと聞いて混乱するのだった。

 

『いえ、自分はそのメイトルパという世界の住人ではなくて…』

 

そこから、リコッタが自分達の素性やライの現状、そしてフロニャルドについてブロンクス邸にいる者全員に詳しく説明した。

 

~説明後~

「未知の異世界に召喚……あんたも相変わらず大変ね」

『言うな…』

 

事情を聞いた一同を代表して、リシェルがそのことについて指摘した。

 

「16日以内、となると………ライさん、その間はお店の方はわたくし達にお任せ下さいまし」

「私も最近、ポムニット並みにお料理の腕が上がってきたから、最低限お客さんに出せるはずだよ」

『お、それは助かった! 二人とも、ありがとうな』

 

ライにお礼を言われたエニシアとポムニットは、思わず顔を赤らめる。

 

「絶対にその日数以内に帰ってこい。客はお前の料理をご所望なのだから、待たせると客が引くぞ」

『あ、はい。なんとかします』

 

テイラーはこの期に及んでもビジネスの話題を出して来た。ライは呆れつつも、自身の雇い主で育ててもらった恩もある相手だったので文句は言わなかった。

 

「僕の方でも連れ戻す手段がないか、調査してみるよ。もちろん、そのシンク君の分も」

『ギアンさん、ありがとうございます!』

「僕はライには助けられたからね、彼の頼みならいくらでも協力してやるつもりだよ」

 

シンクはさらに協力者が得られたことを喜び、その本人であるギアンにお礼を言う。

 

『じゃあ、そろそろ切るな』

「ライ、ちょっと待て」

 

ライが通信を切ろうとしたら、テイラーが待ったをかける。

 

『オーナー、どうしました?』

「ちょっとシンク君達の方に向けてくれ」

 

とりあえずライは、テイラーの指示通りにする。

 

「君達に頼みがあるんだが…」

『はい、なんでしょう(ありましょう)?』

 

テイラーの第一印象から、シンクもリコッタもかしこまった様子で答える。

 

「その、な、なんだ。ライのことを、頼む」

 

いきなり歯切れが悪くなったテイラーの様子に、シンクもリコッタも呆ける。

 

「べ、別にアイツのことを気にしているわけではないぞ! その、アイツは私の初恋の人の息子だから、その人に申し訳が立たないだけで…」

『……ぷ』

 

テイラーの慌てぶりに、思わずシンクもリコッタも噴き出す。

 

「お前達、今笑ったろ!」

『さ、さあ? でも、テイラー様、安心するのであります』

『僕達、もとからライさんの力になるつもりなので』

 

二人とも笑いを堪えながらテイラーに言う。第一印象からかけ離れたリアクションをとったので、そのギャップがすごかったようだ。

 

「だ、だから……あああ! ライ、さっさと切れ!」

『? まあいいか、わかりました』

 

ここでようやく通信終了。

 

「まあ、アイツが無事だったからよしかな?」

「なんというか、何があったかわかるとそれだけで安心できるね」

「ライさんなら何があっても、なんとかしてしまいそうですし」

 

ライの安否がわかった途端、皆が安心してる。

連絡が無い時は絶体絶命ということもあり得たが、堕竜化したギアンを止めて、下手をしたらリィンバウムが滅亡したかもしれない事件を解決してしまった彼だ。無事なら後はなんとかしてしまうだろうと、関係者達は総じて思ったようだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「パパ、よかったね」

「ああ、これで一安心だな」

 

ミルリーフにそう話しかけられてライも応える。シンクも共々、もといた世界への連絡に成功したので安心していた。

すると、リコッタが何かを思い出した様子でライ達に話しかける。

 

「ライ様、勇者様」

「ん、どうした?」

 

とりあえず、ライが応対しようとしたら……

 

「お二人の持ってる通信装置ですが、後で調査させてもらえませんでしょうか?」

 

リコッタはそう言って、何やら危ないオーラを纏いながら二人に近づく。

 

「ちょーっとだけ分解して、構造を調べさせてほしいんであります。見知らぬ機械を見ると、尻尾の付け根と研究心がキュンキュンしちゃうのであります!!」

 

リコッタはかなり興奮しているようで、マント越しにもかなりの勢いで尻尾を振っているのが見て分かった。

当然、その尋常じゃない様子にライもシンクも防衛本能か何かが働いた。

 

「あ、あはは。いや、これ貰い物だからもし壊れたら……」

「平気であります。後でちゃんと元に戻すでありますから」

 

断ろうとしたら今度は目を輝かせ、さらにチョビっとだが涎まで垂らした様子で二人に迫る。

 

「いや、だから! 渡すわけにいかねえんだって!!」

「僕のも、分解したら保証が効かなくなるから!!」

「自分が保証するから大丈夫であります!」

 

リコッタもついに限界が来たらしく、二人から通信機とケータイを奪おうと駆け寄ってきたので、二人ともたまらずに逃げ出す。

 

一方その頃、エクレールは兄であるロランに報告をしていた。使っているものは、1世紀以上昔の地球の電話のようなデザインの通信機だったが、ライの持ってるもののようにテレビ電話の機能が付いているようだ。

 

「ははっ! それは心強い!」

 

エクレールはロランから何かいい知らせを聞いたらしく、嬉しそうな声を上げていた。

 

「エクレ、何か朗報が?」

 

さっきまでライ達を追いかけていたリコッタが、そちらに視線を移して尋ねてきた。

 

「ダルキアン卿が、戻ってこられる!」

「本当でありますか!? なら、ユッキーも一緒でありますね!」

 

どうやら誰かがビスコッティに戻って来るらしいが、二人はその人物達に会えるのが相当嬉しいようだ。

 

「なんだ、誰が来るって?」

 

二人の嬉しそうな様子が気になったライは、エクレールに尋ねてみる。すると彼女は、嬉々とした様子で答えた。

 

「ビスコッティ最強の騎士ダルキアン卿と、我らが友人ユキカゼだ!」

「二人とも、とっても頼りになるでありますよ!」

 

ビスコッティ最強の騎士、騎士を名乗るエクレールからしたら憧れの存在なのだろう。彼女の嬉しそうな様子も、わからなくはなかった。

 

「ん? なにアレ?」

 

妙な気配がしたので振り返ったシンクの第一声がそれだった。

振り返った先にいたのは、半透明の姿をした謎の生物が複数匹。蛙の様なものや一つ目のもの、とバリエーションも豊かだ。

 

「まさか、はぐれ召喚獣か!?」

「ライ様、はぐれ召喚獣が何か知りませんがアレは危なくない生き物でありますよ!」

 

ライが謎生物をはぐれ召喚獣と勘違い、撃退しようと剣に手を伸ばすがリコッタが慌てて止める。

そして、エクレールが誤解を解こうと説明を入れた。

 

「あれは土地神といって、精霊に近い土地に暮らす生き物だ」

「害があるどころか、土地神様が暮らしている土地は自然の実りが豊かになるんでありますよ」

 

ライは説明を聞いて、「妖精は解るけど精霊ってなんだ?」と疑問に思ったが、口に出したらまた駄目出しされそうに思ったので黙っていた。

リィンバウム、というよりサプレスに精霊は存在しているが、ライはつい最近まで自由騎士の存在や、世界の意思であるエルゴも知らなかったので、同様に天使と悪魔以外のサプレスの住人についても詳しくなかったのだろう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

太陽が沈んだ時間帯、フィリアンノ領全体を見下ろせる巨大な崖の上に人影が四つ。

一人は風にマントを靡かせる少年、見たところシンクと同い年のようだ。残りの三人は色違いのお揃いの服を着た少女達だった。

どうやらガレットの住人のようだが、一人だけウサギ耳の少女が混じっていた。ガレット在住の他国出身者と思われる。

 

「ビスコッティに召喚された勇者と、姉上を倒した謎の乱入者か。そいつ等って強いのか?」

「はい。二人ともガウ様と同じ軽装戦士、特に後者は剣以外にも銃や格闘術も使える万能戦士のようです」

 

少年はどうやらレオの弟らしく、ライとシンクに用があるらしい。同行していた少女達に二人の実力について尋ねると、黒猫の耳の少女がそれに答える。

 

「へえ。まあ、姉上の敵討ちって訳じゃねえけど、まとめて遊んでやるか」

 

そして少年は少女たちを連れてその場から移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

同時刻、別の場所にて

 

「クソ、妙なトコに迷い込んじまった」

 

一人の男がどこかの林を歩きながら悪態をついていた。月明かりが射さないので容姿が良くわからない。

 

「マナは豊富みたいだが、負の感情が少なすぎて力が出ねえな」

 

男の口からマナや負の感情、と気になるワードが飛び出すが、彼以外に誰もいないので気にする者もいなかった。

 

「まあ、負の感情はこれから楽しみつつ満たしていけば何とかなるか。楽しみだねェ…」

 

男は心底邪悪そうな笑みを浮かべながら言う。

ここでようやく男が林から抜け出し、月明かりによって容姿が明らかになったが、その姿はフロニャルドの住人どころか、人間にも見えなかった。

 

 

 

 

 

青い色の肌、黒い眼と赤い瞳、鋭い角、そして巨大なコウモリのような翼、まさに悪魔と言ってもいい姿をしていたのだった。

 

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