最新話をどうぞ。
現在、ライ達はそれぞれセルクルの背に乗ってミオン砦に向かっている。ちなみに、ミルリーフはライと二人乗りで、ライの膝の上だ。
最初、二人とも騎乗というものに慣れていなかったので振り落されそうな様子だったが、もともと身体能力が高かったこともあり、すぐに慣れた。
「オレ達はたったの五人だからな、なんかの作戦が無いと厳しいぞ」
「ああ。ガウル殿下の精鋭は二百、兵力差は歴然だ」
「……そういえば、リコッタはどう戦うんだ? なんとなく召喚師みたいな後方支援ってのは解るんだが」
ライはリコッタの戦い方について気になった。まあ、彼女は見たまんま研究職の人間なので戦うとしたら、リィンバウムの召喚師のような後方支援、下手をしたら大火力砲撃といったものだろう。
「おおむね正解でありますね。自分は砲術師、ようは大砲での援護射撃を担当しているであります」
「大砲………すごいもん使うんだな」
リコッタの戦い方を聞いたライは、思わず冷や汗をかく。リコッタの説明によると、持ち運びができる小型の大砲を用いるのだが、ライはそう言ったものを見たことが無いので、聞いた瞬間は砦付近に巨大大砲が設置されてるものだと思っていたとか。
すると、それを聞いたミルリーフがあることをライに提案する。
「パパ、今回はリコッタについてっていいかな?」
「いいけど、何でいきなり?」
普段ライにベッタリなミルリーフが自ら別行動を取ると言うので、当然ライも疑問に思う。
「うまく召喚術を使えば、リコッタのお手伝いができるし、プニム達を傍に置いておけば敵が来ても安全かなぁ、って」
ライはミルリーフの言ったことに、内心で驚いていた。先代の守護竜の力、知識や記憶といったもの全てを継承後のミルリーフは確かに大人びた感じにはなった。それからそんなに日にちが立たないうちにギアンとの決戦を終えて日常に戻ったため、普段の甘えんぼなミルリーフに戻ったような印象で見ていたのだ。確かに根っこの部分は甘えんぼで、変わったと言えば一人称が自分の名前から「わたし」に変わったぐらいなのだが、やはりあの時の大人っぽくなった部分は大きく残っていたようである。
とりあえず、そのままミルリーフはリコッタと行動することとなった。
すると、今度はリコッタがライのすぐ隣に近づいてきた。
「ライ様、さっきの銃をお返しするのであります」
リコッタはそう言ってライに銃を投げ渡し、ライもそれを受け取る。すると、リコッタはそのままライにあることを話す。
「ライ様、実はその銃、さっきの間に軽い改造を施したのであります」
「改造?」
そのままリコッタは改造についての説明をする。
「輝力を弾薬の代わりにすることで、弾切れの心配を無くしたのでありますよ。輝力を込める量で威力も調節可能でありますが、使い過ぎるとライ様自身が消耗してしまうので気を付けて欲しいであります」
「成る程。ありがとう、助かったぜ」
リコッタがライの銃に施した改造は、フロニャルド限定だが弾切れという銃で一番目立つ欠点を克服したものだった。これなら補給の心配をしないでも戦えると、ライはリコッタに礼を言うのだった。
「ライ、もし輝力の生成の仕方がわからないなら私に聞け」
「エクレールもありがとうな」
「お前は勇者とちがって紋章を授かってないからな。輝力の使い方を教わってないだろ」
「え? 授かる?」
ライはエクレールの言ったことについて疑問を思った。するとシンクがそれについて説明をする。
「ライさん、紋章は人がくれたり自分で買ったりしたものを登録しないと使えないんです。僕も姫様からもらった紋章で紋章砲撃ってますから」
「え、マジ!?」
ライはシンクから紋章の概要を聞いて驚く。
「お前、まさかやり方を知っていたらその場で紋章術が使えるとでも思ったのか?」
「ああ。紋章って人の個性が形になって出て来たものなのかなあ~って」
「あの、ライさん。何でそんな、地球の漫画みたいなことを?」
「いや、なんとなく。ってかマンガってなんだ?」
一種のコントのような会話が展開されているが、そろそろ別れて行動するのにちょうどいいエリアに突入した。
先程リコッタがライに銃を帰すために近づいたままだったので、そのままミルリーフがリコッタの方に跳び移る。
「リコッタ、よろしくね」
「ミルリーフ、よろしくであります」
リコッタとそれだけの言葉を交わして、早速移動を開始する。
「パパ、行ってくるね。わたしもがんばるから」
「おお、頑張れよ」
そのまま、リコッタとミルリーフを乗せたセルクルは別のエリアに向かって走っていくのだった。
ミルリーフ達が視界から見えなくなってから……
「ミルリーフは呼び捨てなんだな…」
「まあ、見た目のこともあるしね」
ライは自分の呼び方について、さん付けか呼び捨てをリコッタに推奨したが、しっくりこないと言う理由で断念せざるを得なかった。
だが、ミルリーフは見た目的にリコッタも呼び捨ての方が呼びやすいと思ったようであり、それを間近で見たライは複雑な気分になるのだった。
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同時刻、ライ達を遠巻きに見ている人物の姿があった。
縞合羽を纏い、頭に笠をかぶるという、見たまんまシルターン(または江戸時代辺りの日本)の旅人。ご丁寧に望遠鏡まで使って見ていた。
服装の所為もあって性別は良くわからない。
「親方様~!」
その人物を親方様と呼んで駆け寄ってきたのは、同じような格好をしているが、合羽の隙間から見える服装と声色、これらから察してこちらは女性だと言うのが伺えた。
ちなみに、同じく合羽の隙間から見える尻尾は狐を彷彿とさせており、犬に近い尻尾のためビスコッティ人と思われる。
「何か面白いものでもございましたか?」
「おお、ユキカゼ! どうやら戦のようでござる」
親方は女性と思われる高めの声をしていたが、
果たしてこの二人は味方なのだろうか?
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ライ達と別れたミルリーフとリコッタは、砦付近の林に到着後、砲撃の準備をしていた。
「じゃあ、さっそく…」
リコッタが砲台を設置している間、ミルリーフはサモナイト石をいくつか取り出している。
「あの、ミルリーフは何をしているでありますか?」
「味方をよぶ準備だよ」
よくよく考えれば、最初の戦でペンタ君を召喚した時は後方からこっそりとやっており、ミルヒの救出にテテやプニムを召喚した時も物陰に隠れていたので、フロニャルドの誰にもリィンバウムの召喚術を見せていなかった。
リコッタの疑問も当然である。
「じゃあ、始めるね」
ミルリーフがサモナイト石に魔力を込め始めると、彼女の周囲にまばゆい光が充ち始める。その幻想的な光景に、リコッタは思わず見とれた。
「いっしょにがんばろう…召喚、ワイヴァーン!」
ミルリーフが召喚獣の名を叫ぶと、光が一層強くなる。そして光が晴れると……
「り、竜!? 竜が出てきたであります!!」
ミルリーフによって召喚されたのは、メイトルパに住むワイヴァーンという種類の竜。このワイヴァーンは見た目は凶暴そうだが、人懐っこい性格で知られている。だが、両翼で高速飛行し、口から放つ強力な火球で敵を蹴散らす、戦闘能力の高い召喚獣である。
「急に呼び出してごめんね。でも、いまは人手が足りないから力を貸してほしいんだけど…」
懇願するようにミルリーフはワイヴァーンに話しかける。
するとワイヴァーンは首をもたげて、ミルリーフを見ながら小さく頷く。
「ありがとう」
ミルリーフは礼を言いながらワイヴァーンの鼻辺りを撫でてやる。
その直後にリコッタに向き合った。
「リコッタ、この子の背中にも何個か大砲のせられる?」
「…あ、はい。イケるであります!」
一部始終を見て固まっていたリコッタは、ミルリーフに呼ばれて我に返る。
時間も惜しかったので3,4個ほどしか載せられなかったが、準備万端だ。
「じゃあ、おねがい」
「Gyuaaaaaaaa!!」
ワイヴァーンはそのまま咆哮を上げて飛翔、砦へ向かって飛んでいく。
ちなみに、中継もある為あまり近づいたらパニックに陥ってしまうため、相手に見え辛く火球が届くギリギリの距離からの射撃を指示した。
ガレット軍がパニックになればこちらが有利なのは確かだが、中継が入っているようなので視聴者側までパニックになるだろう、という配慮である。
「じゃあ、そろそろ始めるであります」
「オッケー。みんな、リコッタを守ってね」
「ムイー」
「ぷに」
それに合わせてリコッタが砲撃を開始する。ちなみに、テテもプニムもリコッタがワイヴァーンの背中に大砲を乗せている間に召喚しておいたようだ。
ようやく、ミオン砦が視界に入るまでのエリアに突入したライ達。道中でライもエクレールから輝力の精製法を聞いておいたので、戦闘準備は万端だ。
すると、エクレールがライ達にいきなり話を持ちかける。
「お前達、戦う前に一つ言っておく」
「なんだ、いきなり?」
「我々だけでは、ガウル殿下の精鋭二百人を相手にするのはぶっちゃけ厳しい」
至極当然のことを言い出すエクレールだが、まだこの話には続きがあり、本題はそこからだった。
「だがな、かつての大戦では千を越える騎兵隊を切り抜け、見事一騎だけで敵将に辿り着いた伝説の騎士だって存在した!」
「一人で千人も!?」
「そいつ本当に人間か!?」
ライもシンクもバカデカい声で驚く。まあ千対一で一人勝ちなのだ、驚くのも無理はなかろう。
「それを考えれば、百人やそこら我々でも相手にできるだろう!」
「だね。やってやれないことない!」
(まあ、ミルリーフとリコッタを含めたら、一人で四十撃破でノルマ達成だからな。イケそうだな)
ライ達はそのまま気を引き締め直し、ミオン砦に正面から突っ込んでいく。
ミオン砦正門前、見張りをしていたガレット兵達がライ達の接近に気付いた。
「垂れ耳隊長と勇者、マジで来ます! 真っ正面!」
「よぉし! 返り討ちじゃ、ボケェ! 弓兵、弓構え!」
そのまま弓で撃退しようと構えを取るが…
―ドカーンッ!―
「「「「「「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」」」」」」
突如上空から輝力による砲撃と巨大な火球が降り注ぎ、正門前の敵兵達に直撃する。
直撃しなかった敵兵達も爆風に巻き込まれて撃破され、まとめてけものだまに変化していく。
「リコの砲撃は相変わらず強力だな」
「ミルリーフもちゃんとやってくれたみたいだな」
ライとエクレールが砲撃組の活躍について感心している。
「じゃあ、僕らも行くよ!!」
シンクが先陣を切って砦に乗り込む。ライ達もそれに続いて一気に乗り込んだ。
そこまでは良かったが…
「熱烈大歓迎ってか?」
「みたいですね」
入っていきなりとんでもない数の敵兵がいた。
おそらくは精鋭二百人の半分近くがここに集まっているのだろう。
「だが、私達も負けるわけにもいかない。このまま突っ切るぞ!!」
エクレールが啖呵を切って双剣を抜き、構えを取る。シンクも貸し与えられた武器、【神剣パラディオン】を構えなおす。
昼間の戦ではライが活躍してばかりだったので触れられていないが、このパラディオンは普段は指輪の姿をしており、持ち主が頭で思い描いた武器に自在に変化する力があるのだ。シンクは元の世界でやっていた棒術という文字通り棒を武器として使う武術をやっていたので、パラディオンは棒状に変化させているのである。
「オレも負けてられねえな」
この様子を見ていたライは、剣を右手に、銃を左手に構え、臨戦態勢に入る。
「てめぇら、恨みはねえし特に悪いこともしてねえけど、急ぎの用事があるんでな
まとめてブッ飛ばしてやる!!!!」
ライが叫ぶのに合わせて、三人は敵軍に向かって駆け出した。
作者自身、紋章はス○ンドみたいに個性が形になったものだと思っていたので、ドラマCD聞いた時は軽く驚きましたね。
次回でようやくあの騎士やら将軍やらが動きます。