ちなみに最後にちょっとだけですがエギルちゃん(笑)再登場します。
彼がシャムシールでゴロゴロすること約2ヶ月。今日、とうとう迷宮区から最寄りの街『トールバーナー』にて第1層攻略会議が開かれることになった。
彼はそこまで現実世界に戻りたいわけではなかったが、死ぬのはごめんだった。
ナーヴギアを使い続けることで、電熱などにより金属疲労が蓄積し、生命維持装置を使おうとも筋肉の衰えによる不心筋や免疫低下など患者の負担も蓄積され、茅場が言わないだけで、実際にはデスゲームにはタイムリミットがあるということに気付いていた八幡は、ボス攻略に参加することにした。
(デスゲームが始まってしまった今、もう誰かと関わるのはごめんだったんだがな……)
彼の脳裏に二人の少女--雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣の姿が浮かぶ。
(もう、帰って来ないのだろうな……俺にとって、唯一本物を欲したあの場所は……)
が、彼はすぐに思考を停止し、そのことを忘れようとした。
しかし、彼の意に反して思考は波のように押し寄せてくる。
(やめろ……やめてくれ……)
彼は逃げるようにトールバーナーへと駆け出した。
--トールバーナー中央広場--
彼がトールバーナーの中央広場に着いた直後、青い髪の男が声を上げた。どうやら八幡で最後のようだった。
「はーい。それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいまーす。」
(材木座と似た声してるな。材木座か……あいつは意外といい奴だったな。)
「今日は、俺の呼び掛けに応じてくれて、ありがとう。俺はディアベル。職業は、気持ち的に、ナイトやってます」ハハハ ジョブシステムナンテネーダロー ガヤガヤ
周囲から笑い声や突っ込みが聞こえる。張り詰めていた空気が一気に和む。
声は材木座だが、どうやら性格は葉山のようだ。
彼も少しの間笑っていたが、すぐに本題に入った。
「今日、俺達のパーティーがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した」キリッ オォマジカヨスゲー パチパチ
「え?」
彼は余りの驚きに思わず声を上げてしまった。それもそのはず、彼はこのゲームが始まってから1ヶ月後、今日から約1ヶ月も前には既にボス部屋を見つけていたのだ。
彼からしたらレベリングのついでの迷宮区攻略で見つけたボス部屋なので、てっきり今日まで攻略会議がなかったのは人手不足、またはレベル不足が原因だと思っていたのだ。
幸いそこまで大きな声でなかったのに加えて辺りが騒がしかったので誰にも目を付けられることはなかった。
周囲が静かになるのを確認してから、ディアベルは話を続ける。
「俺達はボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリア出来るってことを、始まりの街で待っているみんなに伝えなくてはならない!」
「それが、今ここにいる、俺達の義務なんだ!そうだろ?みんな!」ワーワー イーゾー ヒューヒュー
(俺達の義務?素晴らしい考えだな。そしてその考えの押し付け、本当に葉山のような男だ。だが、ここは死と隣り合わせのデスゲームだ。現実とは違う。すぐに他の奴らも本性を現すだろう。その時にあいつがどこまで対応出来るか、それがあいつとこいつの違いになるのだろうな)
彼はしばらく考えていたが、やめる。
他人のことを考える必要などない。考えたところで意味がない。
どれだけ欲しようと、どれだけ努力しようと、所詮他人なのだ。わかってもらうことも、わかることも出来ない。
本物という幻想になど、届きはしないのだ。
「OK。それじゃあ、さっそくだけど、これから攻略会議を始めたいと思う。」
「まずは6人のパーティーを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティーでは対抗出来ない、レイドを作るんだ」
(まずい……完全に忘れていた。ボス攻略は基本6人パーティー8組の総勢48人でレイドを組むのが定石だったな……仕方ない、帰るか)
彼はその言葉を聞くと瞬時にこの場を離れることを判断した。彼は隠蔽を発動しつつ、持ち前のステルスでこっそり消えようと思ったのだが、
「おーいそこの眼の腐った君。ペアがいないんだったらあの2人組のパーティーに入ってもらえるかな?」
(気付かれたか。俺の隠蔽を見破るなんてかなり索敵上げてるんだな。流石はボス攻略を率いるリーダーってとこか。ってか俺の眼ってここでも腐ってるのかよ。手鏡使ってねぇじゃねぇか)
誰かと組むのは嫌だったが、指名されたのなら仕方がない。彼は大人しく指示に従い、恐らくぼっちが集まったのであろうパーティーに接触をはかった。
「あのー、聞こえてたとは思うんだが、その…パーティーに入れもらえると、助かる」
随分ぎこちない申し出だったのだが、相手は特に気にしていないようだった。
「あぁ、俺は別に構わないぞ。君は?」
「…」コクリ
まだ顔に幼さが残っているので中学生ぐらいにであろう中性的な容姿をした少年と、赤いローブを纏い同色のフードを被った少女?に了解を得て、俺は無事パーティーに加入した。
「よーし、そろそろ組み終わったかな?」
(ナイスタイミングだディ…ディ…ディなんとかさん……言いづらいな。もう材木座でいいや。これで自己紹介しなくてすんだぜ。まぁ、このパーティならあのままでも自己紹介しなさそうだったが)
「じゃあ、「ちょお待ってんか!」」トントンスタッ
ディアベルが続けようとすると、後方から金平糖のような髪型の男が飛び降りてきてディアベルにならび、全員に向けて訴え始めた。
「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前に、言わせてもらいたいことがある」
少しの間をあけ、続けだす。
「こん中に、今まで死んで言った2000人に詫びなあかん奴がおるはずや!」
八幡を含めこの場にいる全員が、その言葉の意味を理解する。元βテスターのことだろう。隣の少年はかなり動揺しているようだ。恐らく元βテスターなのだろう。
全員の意見を代弁するかのように、ディアベルが問いかける。
「キバオウさん、君の言う奴らとはつまり…元βテスターの人たちのことかな?」
「決まっとるやないか!β上がり共は、こん糞ゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて逃げよった。奴らはもろい狩り場やらクエストを独り占めして、自分らだけどんどん強なって、そん後もずーっと知らんぷりや!」
(やはりか…)
「こん中にもおるはずやで、β上がりの奴らが!そいつらに土下座さして、溜め込んだアイテムやら金やら吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」
(聞くに堪えないな。元βテスターがビギナーをサポートしなかった、狩り場及びクエストなどの情報を独占したせいでビギナーが沢山死んだ?だからアイテム・金を賠償しろだと?ふざけているにもほどがある。そもそもデスゲームが始まって自分の命を守れるかすら危うい状況の中、単純計算で1人頭10人の人間をサポートできる筈がない。それに情報なら元βテスターが配布しているガイドブックにいくらでも載っている。その上あいつは自分の主張に頭が回りすぎて、重要なことに気付いていない。今そんなことをしても、ボスに対抗する戦力を減らすだけだということに)
(これ以上ここにいても時間の無駄だな)
彼はそう判断し、帰ろうとしたのだが、
「発言いいか?」
スキンヘッドの大柄なガチムチの黒人が声を上げた。
何となく察した方もいらっしゃるかも知れません。キャラ紹介ではあえて書きませんでしたが、八幡は奉仕部関係で辛い過去を背負っています。