「敵を殲滅せよ!」
ベルカ上陸から二日で編成を終えて侵攻を開始した。ゾンビを全面に押し出し敵の防衛戦を蹂躙していく。既に敵の防衛戦はほぼ機能していない。
そこへプラスして砲足軽による敵後方への砲撃により大小様々な混乱が生まれつつあった。
「ゾンビの攻撃を防ぎきった人間はゾンビの後ろの幻魔が殺せ!一人として生きて返すな!」
これはグレゴールの時から行われているためベルカ侵攻時には一千万はいたシュトュラも十分の一の人口を失いつつあった。更に言えばベルカの総人口は既に半分がいなくなっている。
ハクアがベルカに来てから変わったことは捕虜を取らなくなったことくらいだ。
ハクアの勢いは凄まじくたった一日でグレゴールが戦死する直後の位置まで押し戻されていた。この調子で行けばシュトュラの国は一週間もかからないうちに蹂躙されることなるだろう。そしてシュトュラが滅びれば近くにある国は一瞬で滅ぼされる可能性もあった。
これを受けて聖王連合はゆりかご起動のために更に心血を注いでいくことになる。そして幻魔の動きはとある少女の意思を固めることとなった。
「どういうことだヴィヴィ!」
シュトュラ王城の門の前でクラウス・イングヴァルドは憤っていた。理由は聖王連合に戻ろうと馬車に乗っているオリヴィエである。
たった一日で防衛戦を押し戻されたと聞いたオリヴィエはゆりかごの王になるために名乗り出ようとしていた。そのために式典のためと言ってゼーゲブレヒト家に帰還しようとしていた。その事を知ったクラウスはそれを止めるべく丁度王城を出ようとしていたオリヴィエを呼び止めたのだ。
「何故ヴィヴィが!?」
「クラウス殿下、このままではシュトュラはおろかベルカ自体が滅びてしまいます。そうならないためにもゆりかごを…」
「それはヴィヴィじゃなくてもいいだろう!?」
ゆりかごの王にしたくないクラウスは必死で止めるがオリヴィエの決意は固かった。
「私はこの国が好きです。クラウス殿下もシュトュラ国王陛下も民の一人一人皆大好きです。そんな皆さま方を私の命で救えるのなら…」
オリヴィエはクラウスに微笑む。その顔は何処か哀愁に満ちていた。
「私は喜んでこの命を捧げます」
出してください。オリヴィエは馬車に戻りゼーゲブレヒト家に帰還しようとしたがそこへ兵士が駆けつけてきた。何処か焦っている兵士はクラウスに告げた。
「大変です!魔女の森が燃えています!」
完全に油断していた。
クラウスやオリヴィエ、シュトュラ国王はそう思い続けている。異形の化け物が侵攻してきているのは北から。そのためシュトュラの南部に広がる魔女の森が狙われるとは思っていなかった。
クラウスが駆けつけたときには既に魔女の森は全焼しておりこれ以上広がらないようにするので精一杯であった。
魔女の森に住んでいた人たちも大半が異形の化け物たちによって殺されており親しかった魔女クロゼルクも怪我をしていた。
異形の化け物はクラウスやエレミア、ゼーゲブレヒト家への帰還を中止させたオリヴィエ達の尽力により倒すことが出来たが失ったものは大きかった。
更にこの一件によりオリヴィエの覚悟は完全に固まりゼーゲブレヒト家に帰還すると直ぐに適性検査を受けた。
「安定時魔力圧7580万」
「『聖印』動作正常」
「『聖王核』動作安定」
「玉座への適合率…116%」
その後の話は早かった。既に王都周辺まで追い込まれているシュトュラのためもあり直ぐにゆりかごの王に決まった。
クラウスとシュトュラ王家はこれに反発したがゆりかごの王になることは変わらずオリヴィエ、とクラウス、シュトュラ王家の願いで一日だけ時間をもらえるも玉座の王の栄冠が取り消されることはなかった。
クラウスは自分の全てをかけて止めようとするがオリヴィエを止めることは叶わず翌日にはゆりかごにオリヴィエが乗ることとなった。