カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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黒は白とは相容れない

マックスと立香達はジャンヌの誘導で森の中に入っていく。

 

「...僅かですが、魔性の者達がいるようです。ここから砦まで近い。攻め入る前に倒してしまいましょう。」

 

森の中にワイバーンと獣人が何匹か居ることに気づいたジャンヌは、砦の為に討伐しに行こうとするが、マックスに止められる。

 

「その任務は遠征隊に。我々の役目は、マスター殿の露払い。ご命令を。」

 

遠征隊の本来の活動は、こう言った雑魚の排除であり、冬木でのサーヴァント戦は職務外だった。立香は迷ったが、森の中に居るワイバーンはジャンヌ曰く、そこまで多くないらしいので、任せることにした。

 

「では、お願いできますか?」

「勿論です。マスター殿は、ここでジャンヌ殿からこのフランスで何が起きているか聞いておいて貰えますか?」

「分担ですね。分かりました。隊長さんも怪我しないでくださいね。」

「では。第1から3分隊行くぞ。残りはマスター殿と負傷兵の護衛だ。」

 

遠征隊は負傷兵と護衛、途中で回収した骸骨とワイバーンの素材を置くと森の中に消えていった。

その後、先ほどまで聞こえていた魔性の者達の雄叫びは聞こえなくなり、森は静寂に満ちる。

 

「ジャンヌさん、お話を聞かせてもらえますか?」

「はい...」

 

 

 

 

side マックス

 

マックスはワイバーンと獣人の駆除具合を確かめようと森の中を移動していると、第2分隊長が木の枝をナイフで削り木の槍を作っていた。

 

「どうだ、どれ位終わった。」

「森にいた奴は、殆ど終わりました。負傷者もいません。ワイバーンも頭を潰しただけなので、いい素材が取れるでしょう。」

「解体風景は撮影しておけ。学術的にかなりの資料になる。」

 

現在も森に中で隊員達は茂みに潜み、近くを通る獣人達を茂みに引きずり込んでいた。引き摺り込まれた獣人達は、抵抗する間も無く喉を搔き切られて死んでいく。獣人達はどんどん減って行く仲間に混乱していたが、遠征隊の姿を見つける事は出来きず、全滅も時間の問題で有る。

 

「砦防衛戦で被害を受け過ぎた。これ以上は任務に支障が出る。負傷兵が出ない様、十分注意しろ。」

「召喚サークルが無ければ、予備のパーツが手に入りません。早く霊脈を見つけましょう。」

「カルデアが霊脈を探しているから、もう直ぐ見つかるだろう。残りの作業が終わったら、警戒に2個分隊残して、残りは集結地点まで帰ってこい。ワイバーンの解体をする。」

「了解しました。」

 

マックスが去った後、分隊長は作業を再開する。分隊長は近くの幹に結びつけてあった(つた)製のロープを確認すると、先ほどの木の槍を思いっきり投げる。

 

「こんなもんか。」

 

分隊長は作った槍を全て投げ終えると、獲物を探している分隊員と合流するために森に溶け込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隊員の去った後には、何本もの木の槍が刺さった獣人の死体が逆さに吊られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 立香

 

立香達は火の周りに集まり、マックスの帰りを待ちながらジャンヌの話を聞いていた。

 

「竜の召喚は最上級の魔術と聞きます。まして、これだけの数となれば...」

 

立香達だけではなく、オルガマリーやロマンもホログラムで火の周りに映し出されている。ジャンヌはホログラムに最初は驚いたものの、直ぐに慣れホログラムに手を突っ込み、人がいるのに触れないと言う不思議な感覚を楽しんでいた。

 

『現代の魔術師では、不可能だね。』

『この時代の魔術レベルでも困難なはずよ。西暦以降、一般魔術師が呼んだ記録も無いわよ。英霊級は別として。』

 

カルデアもただ見ていただけではなく、当時のフランスの人口から風土、生態、魔力などの細かい事を調べ尽くしたが、何処にも竜に関する記録はなかった。

 

『となると...立香くん。そんな反則ができるのは。』

「聖杯ですかね。」

 

立香はカルデアでのサーヴァント召喚を経験して、召喚がどれほど大変かを身を以て実感した。同時に、そんなサーヴァント召喚を気軽にできる聖杯の異常さも見せつけられた。

 

『まだ、憶測だけどね。』

『ほぼ確実じゃ無い。特異点、竜の召喚、魔女、サーヴァント、こんなにイレギュラー要素がてんこ盛りなのよ。絶対、聖杯が原因よ。』

 

オルガマリーは遠征隊とマシュからの報告書を読みながら、このフランスの変異具合に聖杯の力に恐怖を抱きながらも、魔術師として多大な興味を抱いていた。

 

「...聖杯などの不明な点が多々ありますが。今のフランスの異変関しては、ある程度は把握できました。」

『マドモアゼル・ジャンヌ。貴方はこれからどうするのですか?』

 

ジャンヌはロマンを真っ直ぐ見て、揺るぎない声で答える。

 

「オルレアンに向かい、奪還します。主からの啓示はありませんが、ここで目を背ける事は出来ません。」

「一人でも戦う...歴史通りですね。」

 

マシュはジャンヌの姿に感銘を覚え、目を輝かせて見つめる。立香も教科書通りのジャンヌに感動したが、同時にオルタやダヴィンチを思い浮かべ微妙な気分になる。

 

「ダヴィンチちゃんとは、大違い。て、言うか、最近歴史の裏側を見過ぎて、混乱しそう。学校に戻ったら、テストで絶対変な回答書く。」

 

立香の呟きにオルガマリーが、今更と言う顔で言う。

 

『学校って、何言ってんのよ。魔術に関わった以上、終身雇用よ。』

「え?...そんなの聞いてませんよ。」

『ちなみに逃げたら、時計塔守護者...つまり遠征隊が世界の果てまで、追ってくるわよ。その年で国連関連機関に就職できたんだから、大出世じゃない。』

 

立香はちょっとしたバイト?気分だったので、いつの間にか終身雇用(命の危険あり、退職不可、残業あり、休日ほぼ無し、給料未定、労働組合なし、監視付き、職場近くに飲食店なし)になっていた事に確然とし、自身の描いていた将来の夢が音を立てて崩壊していくのを感じた。

 

「とりあえず。今度の方針は、彼女に協力する、と言うのはどうでしょう?」

『それでいいと思うわ。』

『僕も賛成だよ。』

「もちろん、私も賛成です。」

 

一種の精神崩壊を起こしている立香と部隊を指揮するために出掛けているマックスを除き、会議に参加していたカルデア幹部達は今後の方針を決めた。

 

『ジャンヌに協力するのが、最善だからね。救国の聖女と共に戦えるなんて、滅多に無い名誉だからね。』

「では、改めて、マドモアゼル・ジャンヌ。これから、貴方の旗の下で、戦う事を許してくれますか?」

 

マシュはジャンヌの前に立ち、昔アーカイブで読んだ騎士のルールに習い、ジャンヌの前に跪く。

 

「そんな...こちらこそお願いします。どれほど感謝しても足りないくらいです。」

 

ジャンヌはマシュの手を取り、立ち上がらせる。手をしっかりと握りながら、満面の笑みで頭を下げる。

その後、ジャンヌさんとマシュで頭下げ合戦になったが、立香が再起動した事でひと段落ついた。

 

「マックスさんと情報の共有が必要ですね。」

 

座って火を眺めていると、立香がマックスに何も伝えていない事を思い出した。すると、近くの遠征隊が置いていったカバンからノイズがした後、マックスの声が聞こえてきた。

 

『全て聞いていたから、不要です。』

 

立香はいきなりの声に飛び跳ねる。オルタは一瞬身構えたが、直ぐにカバンからだと気付く。オルタはカバンを逆さにして振り、中身を乱暴にぶちまける。

 

「盗み聞きか? 品が無いな。」

『アベルはゴミ(裏切り者)の処理などが仕事です。アベルに品などは求めらてられていません。』

 

オルタはぶちまけられた荷物から通信機を拾うと、悪態をつく。立香は盗み聞きされていた事に、少し恐怖を覚え、カルデアに帰ったら自室を調べる事を心に決めた。

 

「品といえば、随分汚い殺し方をするのだな。」

『汚いとは?』

「森から濃厚な血の匂いがする。ただ殺しただけでは、こんなにしないぞ。暴れて血をまき散らしたら、このぐらいするが。どうだ?」

『獣避けを作っただけです。』

 

マックス達が作った獣避け、つまり獣人の逆さ吊りから発せられる濃厚な血の匂いが森中に広まっていた。

 

「俺を呼んでくれれば、獣避けのルーンを刻んだのに。まぁ、おめぇ達のやり方も効果はあるが、怒らせるかもしんねぇぞ。」

『怒った方が動きが単調になるので、怒らせようが怖がらせようが、どちらでもよかったのでこうしました。』

「ふぅん...まあ、いい。早く帰ってこいよ。嬢ちゃん達が待ちくたびれてんぞ。」

『もう少しで、食料調達が終わりますのでお待ちください。』

 

オルタは通信を終えると、通信機を後ろに放り投げる。しばらく待っていると、森に中から隊員と一緒に何かを引きずりながらマックスが帰ってきた。

 

「遅いぞ。なんだそれは?」

「仕留めたワイバーンです。鱗と牙、神経を剥ぎ取ろうと思いまして。」

「神経? 弓の弦にするのか?」

「それは腱の方で作ろうかと。神経は爆破で焼かれたカルデアの有機神経回路を再構築するのに使います。回路が治れば、レイシフトももっと安定するはずです。カルデアに送るのにかなりのエネルギーが入りますが、基地の核融合炉のエネルギーを全て回せばいけるでしょう。」

 

マックスはワイバーンの解体を指示し、カルデアに報告すると立香の隣に腰を下ろし、森で採ってきた果実を立香に差し出す。

 

「大まかな事しか決まっとらんぞ。明日はどこいく?」

 

立香に果物を分けてもらい、頬張っていた茨木がマシュに口元を拭かれながらマックスに尋ねる。マックスは目を瞑り、情報を整理した後口を開く。

 

「まずは...召喚サークルでしょうね。武器は勿論ですが、マスターの生体機能維持に必要な食料を安定させなければなりません。とりあえず今夜は、捕まえた猪と森の山菜で牡丹鍋にしましょう。今、血抜きしているので、後で持っていきます。」

「牡丹鍋...いいな、久しぶりだ...そ、それよりも、サークルの後はどうする?」

 

茨木は牡丹鍋を想像し涎を出しが、急いで拭き何事も無かったかのように聞く。

 

「偵察でしょうね。聖杯という事は、冬木の様に召喚されたサーヴァントもいるはずです。敵勢力のサーヴァントについての情報が無いまま、オルレアンに突っ込むのは愚策でしょう。」

 

マックスは話を区切り、枝を拾うと地面に大雑把なフランスの地図を書き始める。

 

「オルレアン攻略は置いておいて、まずは明日の事を、召喚サークル及び前線基地に設営までの作戦を決めましょう。」

『それもそうね、明日の事を明日の朝に決めてたら、行動が遅くなるわ。』

「行動が遅くなれば、なるほど事態は悪化するしなぁ。」

 

ジャンヌに詳しい地名や地形を聞きながら地図を書くと、今いる森の位置に部隊番号や人数を書き込んでいく。

 

「負傷兵とその護衛、周辺の探索に3個分隊と輸送分隊を置いていきます。」

 

マックスは今いる森を枝で指し、横に「遠征隊 136人」と書き込む。

 

「足がない奴がいても邪魔だしな。」

「多くても見つかりやすくなるしな。森の魔物も一掃したみたいだし、いいんじゃね。」

 

オルタもクーフーリンも異論はないようで頷き、続けつように促す。マックスは森から矢印を引き、別の森に繋げる。

 

「カルデアからの情報では、この森に霊脈があります。ここに行くまでは、マスター殿達には残りの3個分隊、私を含め100名が護衛します。」

「ここには小高い山が有るので、ここを...」

 

その他の細々とした事をカルデア、遠征隊、サーヴァントで決めていると、オルガマリーがクーフーリンを見て、ふと思いつく。

 

『他の協力者も探した方がいいわね。敵のサーヴァントが複数いるなら、今のカルデアでは勝ち目がないわ。』

「協力者ですか...現地民に銃持たせて、オルレアンに突撃させますか?」

『バカ言わないで。そんな事やっても、武器を無駄にするだけよ。』

(人命の心配では、無いのね。)

 

立香が命を大事にしない魔術師(クズ)達に冷たい視線を送るが、二人は気づかず現地協力者について話をする。

 

『冬木でクーフーリンが居たみたいに、このフランスにもまともなサーヴァントがいるんじゃない。』

 

全員があーと言う顔になり、もしかしたらと思い、ルーラーであるジャンヌに目を向ける。

 

「ジャンヌさん。私達の他にサーヴァントの反応はありましたか?」

 

ジャンヌは俯きながら、申し訳なさそうに答える。

 

「申し訳ありません。ルーラーが持っているサーヴァントの探知機能も今の私には使用不可です。」

「遠征隊も探知機を持ってこれなかったので、サーヴァントの広域探知が出来ません。カルデアの探査に期待するしかありませんね。」

『探知範囲が結構狭いから、あんまり期待しないでね。』

 

話していると、森から血抜きの終わった猪や山菜を抱えた隊員達が帰って来たので、夕飯を作る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

立香はジャンヌ、マシュと一緒に鍋を作り、煮込みが終わるのを待っていた。暇なので歩いていると、カルデアのサーヴァント組と遠征隊がワイバーンの死体の側に集まっている。

 

「食ってみようぜ。」

「東洋じゃ、毒だぜ。」

「流石のケルトでも、ワイバーンは無かったなぁ。」

「竜なら食ったぞ。」

 

立香は不穏な会話が聞こえたので、急いでオルタ達のところに行く。遠征隊はカメラで撮影しつつ、オルタにワイバーンの装甲を切ってもらっていた。

 

「守護者大書庫にも、食レポは無かった。知識の収集は守護者の義務だろ。あと、オルタさん、竜の食レポの情報提供をお願いします。」

「普通だった。」

「情報提供ありがとうございます。」

「しかし、油が多いですね。」

「そりゃ、空飛んでるからな。体を軽くするために、油が多くなるわ。」

「ありゃ、魔力で飛んでんじゃねえのか?」

「魔力で浮くにも、体が軽い方が負担が少なくなるだろ。」

「それもそうだな。」

 

隊員達は立香が見ている事に気付き、さっきまで騒がしかったのに一気に静かになる。

 

「何やってるんですか?」

 

立香がジト目で見ていると、分隊長の徽章を着けている隊員が歯切れが悪い返答をする。

 

「いや、その...素材取りついでに、ワイバーンを食べてみようかと思いまして。」

 

アホとしか言えない行動に立香の目に、より強く呆れの感情が入り、遠征隊が小さく縮こまる。

 

「ワイバーンを...食べる。」

「竜の肉って、男の夢じゃ無いですか。」

「男の夢...」

 

サーヴァント達は説教の雰囲気を感じ取り、サッサと逃げていて、残された隊員達が立香前に起立で並んでいる。そんな様子を茨木が爆笑しながら見ている。

 

「さっき森で倒した奴の肉があったので、つい...あの...その...すいません。」

「いや...すごい事考えてるんだなと思いまして。」

「夢が目の前にあったら、食いたいという衝動が湧くじゃないですか。」

「うん...そうですね...お腹壊さないで下さいよ。」

 

立香はマシュ達から鍋ができたと呼ばれたので、遠征隊をおいて火のそばに帰っていった。ちなみに遠征隊曰く、割と美味しかったらしい。内臓を食う際に、誤って火炎袋を火にかけてしまい大爆発を起こしていたが。

 

 

 

 

 

その後、立香は早めの就寝についた。マシュとジャンヌが互いの初陣について話していると、マックスが不寝番の入れ替わりに帰って来た。

 

「マックスさんって軍歴で言ったら、私達よりも長いですよね。」

「功績は足元にも及びませんがね。」

「でしたら、少しお話を聞かせてもらえますか?」

「構いませんよ。」

 

マックスはマシュ達の向かいに腰を下ろし、拾って来た薪を焚べる。

 

「マックスさんの初陣っていつですか?」

「14の時ですね。」

「やっぱり、そんなに若い時から...」

「アベルでは、普通ですよ。もっと若いアベルも過去にいましたが。」

 

ジャンヌはマックスを正面から見るには初めてだったが、聖書の人物の名を持ちながらここまで暗い物が合う人は初めて見た。

40年間世界の裏側のより暗い所で、暗殺などの暗い事をして来たマックスは光を浴びる事はなかった。イザイラはそんな彼を()の元に送りたかったが、マックス自身が光で変わってしまうのを怖がり、なかなか光の元に出る事が出来ず今に至る。

 

「どんな敵と戦ったんですか?」

「最初の任務は、裏切った下部組織の皆殺しでしたね。」

「「......」」

「潜入を生業とする一族でしたから、大変でしたよ。一人ずつ見つけ出し殺しました。」

「一人で...全員を?」

 

マシュは普段より黒く濁った目になったマックスに若干怯えを怯えながら、確認する様に聞く。マックスは噛みしめる様に、ゆっくりと一言ずつ答える。

 

「はい。一人残らず。大人も...子供も。」

 

誰一人話し事なく、ただ薪の弾ける音だけが響く。マックスは立ち上がり、森へと足を向ける。

 

「...そろそろ、マシュ殿も、ジャンヌ殿も寝たらどうでしょう。警戒は遠征隊におまかせ下さい。快適な眠りを保証します。 」

 

マックスは近くに置いていた武器を取ると森の中に消えていった。何時もの、機械のような淡々とした様子とは違い、マックスから滲み出た感情に、マシュはマックスの背中を見つめる。

 

 

 

「本官はアベル。作戦実行局アベル。殺す事が存在意義。愛情はいらない...いらない。」

 

 

 

子供(愛の結晶)の立香のそばにいただけで、自身の心が変わっていくのを感じたマックスは、マックスにアベルとして言い聞かせる。そんな呟きは誰にも聞かれれる事なく、マックスと共に闇に溶けていく。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、焚き火後に準備を終えた。立香達が集まっていた。

 

『先ずは、ラ・シャリテ経由で召喚サークルの場所に行く。その後に、本格的なオルレアンの偵察だね。霊脈の場所はもう見つけてあるから、ナビするよ。』

「はい! お願いします!」

 

立香は遠征隊が準備した落ち葉の詰められた蔦製のハンモックで寝ていたので、疲れも取れ朝から元気に準備をしていた。マックスも準備が終わったようで、立香の元にやってきた。

 

「では、行きましょう。」

「えっと、遠征隊の人達明らか少ないんですけど。」

「後から合流します。」

 

マックスの背後には20人程の隊員しかおらず、昨日聞いた100人の護衛が集まっていない。マックスの打ち上げた信号弾を合図に、隊員達は(もっこ)を背負い移動し始める。

 

「遠征隊の人達に問題が発生したのですかね、先輩?」

 

立香達が森を歩いていても、森中に散っているはずの隊員達の姿がない事にマシュは心配になって立香に尋ねる。立香も心配になり見渡していると、真横の草が盛り上がる。

 

「第3分隊第4班、合流」

 

立香が完全に草だと思っていたものは、草を身体中に括り付けた隊員だった。その後も、森から生み落とされた様に、草木の中から這い出てくる遠征隊に立香とマシュは、その隠密行動に完成度に舌を巻く。

 

「完璧に擬態してますね。」

「そうか? 何と無くいるなーってのは、感じるぞ。ほれ彼処にも。」

 

茨木が石を拾い、木に投げる。すると悲鳴の後、隊員が落ちてきた。自慢げに立香を見る茨木に、落ちた隊員が未だに動かないのを見た立香は微妙な気分になる。

 

 

 

 

 

「まだ、休憩していて下さい。もう直ぐ、連絡が入るはずです。」

 

立香達は平原に出る前に、ワイバーンなどが近くにいないか確認するために送った偵察隊を待っていて、一時休憩していた。立香が付近を警戒している遠征隊を改めて見ると、体の急所となる部分にワイバーンの鱗を貼り付けている。

 

「昨日、遠征隊の皆さんが夜遅くまでやっていたようですから、全く敵に会いませんでしたね。」

「面倒くさくねぇのはいいが、朝の運動には散歩だけじゃものたんねぇな。」

 

立香達がこの時間を利用して、早めの昼食を取っていると、偵察部隊で先行していた隊員から通信が入る。

 

『第2偵察隊より連絡。』

「何かあったのか?」

『ラ・シャリテが炎上中。空中にワイバーンも確認。』

 

休憩していた立香達に緊張が走り、ジャンヌは今すぐにでも駆け出して行きたしそうに、ラ・シャリテの方を見つめる。

 

『生き残りはですね...人影が数人。あれは......』

「ん?どうした?」

『......』

「おい! 返事をしろ!」

 

マックスは隊員達に戦闘準備する様に指示した後、立香の元にやってきた。

 

「第2偵察隊がやられたようですね。マスター殿のブレスレットに変化はありますか?」

「特には...」

 

マックスは隊員に再度偵察隊を出し、ラ・シャリテの近くに探索用の魔法陣を作るように事を指示し、立香達と作戦会議を始める。

 

「肉体がやられただけで、ドッグタグは無事。偵察隊の通信は突然切れた事から、奇襲を受けた。しかし、通信では戦闘音が聞こえなかった。つまり、奇襲により、一瞬で全滅。」

「冬木の召喚サークルと同じ...」

 

立香は冬木の召喚サークルの守備隊と同じ状況になっている事に気づく。

 

「サーヴァントでしょうね。」

「サーヴァントだな。」

「サーヴァントだろ。」

『サーヴァントが探知された!...でも、遠ざかっていくぞ...ああ、駄目だロストした! 速すぎる!』

 

マックス達がサーヴァントの仕業と断定していると、ロマンからサーヴァントがいなくなったと通信が入る。一応、サーヴァントがいなくなり安全にはなったが、不安の多いラ・シャリテに行くか悩む。

 

「...どうしますか?」

「私は...」

「見に行きたいです。」

 

マックスは立香に尋ねたが、立香の発言に被せるように言うジャンヌに眉を潜める。

 

「"私"のしている事を見たいんです。お願いします。」

「...ラ・シャリテに行きます。」

「いいんですか? 危険ですよ。」

 

立香はジャンヌの"自身"に向き合う覚悟を感じ、一緒にラ・シャリテに行く事を決めた。マックスとしては、危険地帯に立香を連れては行きたくない。

 

「護ってくれるんですよね。」

 

立香の視線にマックスは姿勢を正す。

 

「この命に代えましても、全力でお守りします。」

「では、行きましょう。サーヴァントの皆さんもいいですよね。」

「マスターは吾ではなく、其方(そなた)だ。ついて行くぞ。」

「マスターに言われちゃ、行くしかないね。」

「不満はあるがいいだろう。」

「行きましょう。ラ・シャリテへ、生存者がいるかもしれません。」

 

立香達は遠くからもよく見える黒煙に向かって進む。

 

「部隊前進! 目標 ラ・シャリテ! 戦闘陣形!」

 

遠征隊もジャンヌの軍旗を先頭に前進する。

 

 

 

 

 

 

 

ラ・シャリテに着くと悲惨の一言に尽きた。壊れるものは壊れ、焼けるものは焼け、生きるものは死んでいた。

 

「ロマン。」

『この街に命と呼べるものは残ってない。』

 

燃やし尽くされた街は冬木で慣れたと思っていた立香だが、冬木とは違い焼死体が転がる街に吐き気を覚える。

 

「ワイバーンだな。噛み跡がある。」

 

遠征隊は死体を足で転がし、その傷跡をよく見ていた。

 

「この噛み跡は...」

「待って下さい! 今、物音が!」

 

遠征隊はワイバーンとは違う、直径8cm程の円形に近い歯型を見つける。近いジャンヌは路地裏からの足跡に気づき、路地裏に近ずく。路地裏から伸びる手にジャンヌは手を伸ばすが、相手の顔を見て固まる。

 

「違います、それは!」

 

ゾンビはジャンヌに手を伸ばしながら迫る。固まっていたジャンヌだが、ゾンビが手を伸ばし助けている様に見え、その手を取ろうと手を伸ばす。

 

「...今、たす...けま...」

 

ジャンヌの手が触れる直前、ゾンビの手が打ち払われる。

 

「これは、敵ですよ。人ではありません。」

 

マックスはジャンヌがゾンビを倒そうとしないので、持っていたウォーハンマーで腕をへし折った。

 

「さあ、殺しましょう。」

 

マックスはウォーハンマーのツルハシになっている方で、ゾンビの頭を貫くと、捻り切る。ジャンヌは首から吹き出す血を呆然と眺める。

 

「殲滅しろ! 伝染病の原因になる死体は火に放り込め!」

 

隊員達は町中に散って行き、建物を蹴り開けながら一つずつチェックして行く。そして、基督教の教義を冒涜する様に、死体を燃やしていく。

 

「ジャンヌさん。」

 

火から立ち上るドス黒い煙を呆然と眺めているジャンヌに立香は話しかける。

 

「...私達も行きましょう。魂を体から解放してあげましょう。」

 

ジャンヌは旗を強く握ると立ち上がり、遠征隊が死体を投げ込んでいる火に近づく。ジャンヌは火の前に跪き、約束の日まで肉体を持てなかった哀れな人達の為に祈る。

 

「主よ...」

 

ジャンヌが祈りの姿勢になった途端、隊員達はギョッとした顔になり、持っていた死体や武器を放り投げて、全速力で逃げていく。

 

「え?...どうかしました。」

 

ジャンヌは祈り終え、立ち上がると遠くからジャンヌを憎たらしげに見る遠征隊に首を傾げる。

 

「こ...殺す気か⁉︎」

「危ねぇな!こん畜生!」

 

ジャンヌは遠征隊からの野次に目を丸くする。立香とマシュも首を傾げていると、野次を飛ばす遠征隊を面白そうに見ていたオルタが、ニヤニヤしながら言う。

 

「マスターよ、遠征隊はどんな種族だったか覚えているか?」

「種族ですか...えーっと。」

 

立香はいきなり種族と言われ戸惑うが、マシュがさっと答える。

 

「半人半悪霊ですね...あ、なるほど。」

「あの聖処女、祈りでこの地に彷徨う霊を浄化していた。そして、うっかりで半悪霊の遠征隊も全滅させようとした。遠征隊は、後ろから撃たれた気分になってるだろうな。」

 

遠征隊は半悪霊なので、除霊などには耐性がなく、聖人の祈りなどを近くで聞けば速攻で浄化され消失する。立香は未だにジャンヌにブーイングを浴びせている遠征隊を見て、なんだかなぁと言う気分になる。

 

「カルデアの放送使って、祈りを流してみたら、さぞかし面白い事になるな。浄化される遠征隊、暴動を起こす残存兵、パニックに陥るカルデア職員...楽しそうだ。」

『ロマン、放送室の器械にパスワードをかけなさい。』

『お遊びで、人類史崩壊とかシャレにならないよ。』

 

マックスがブーイングしていた隊員達を散らし、ジャンヌに謝っているのを見て、立香はキャラの濃い人たちが多いなと溜息を吐く。

 

 

 

 

 

 

マックス達が町の処理を続けていると、カルデアから悲鳴のような通信が入る。

 

『レーダーに感あり!先ほど去ったサーヴァントが帰ってきた! 君たちの存在を感知していたらしい!』

 

敵も殆どおらず、のほほんとした空気が漂っていた遠征隊の雰囲気が一気に変わり、ピリッとした空気になる。

 

「数は⁉︎」

 

マックスは隊員を踏み台に屋根に飛び上がり、敵の来る方向を双眼鏡で見る。

 

『ウソ...五騎よ‼︎ 今すぐ逃げなさい‼︎』

 

マックスは大型の竜とその周囲を守るように飛ぶワイバーン達の大編隊を見て、冷や汗を流す。マックスは屋根から飛び降り、周りの隊員達に大声で指示する。

 

「撤退‼︎ 撤退だ‼︎ 」

 

隊員達は弾ける様に行動を開始し、逃走経路の確保を始める。

 

『速度が迅い...これは、ライダーか⁉︎」

 

キャスターであるクーフーリンは相性に悪的に、顔が歪む。アサシンのいないカルデア勢力はライダーに対して有効なものが無く、数を生かしてひたすら袋叩きにするしか無いが、敵は五騎もいるのでそれもできない。

 

「勘弁してくれよ、ライダーは相性悪りぃんだよ!」

「バーサーカーの吾が相手するか⁉︎」

「いえ、戦闘はしません。逃走経路確保のため、瓦礫を吹き飛ばしてください!」

 

オルタ達は森に最短距離で逃げるために、邪魔になる瓦礫を吹き飛ばしていく。隊員達も敵の視線を少しでも遮るために、火の中に目についた可燃物を片っ端から投げ込む。

 

『数は同じでも、相手には聖杯がある! 情報が揃うまで戦闘は避けるんだ! いいな!』

『霊脈のある森が近いわ! そこに逃げて身を隠しなさい!』

「逃げましょう!」

 

立香は頷き遠征隊が開けた外壁の穴を通ろうとするが、敵の来る方を見つめたまま動かないジャンヌに呼びかける。

 

「ジャンヌさん!」

「...逃げません。せめて、真意を問い質さないければ...!」

 

マックスは逃げようとしないジャンヌに摑みかかる。

 

「貴方の戦争は終わった! 貴方が死んだ事で、貴方の戦争は終わった! この戦争は我々ための、人類ための戦争だ! 貴方のための戦争では無い! 勝手な行動はやめて頂きたい!」

「マックスさん...落ち着いて。まずは逃げましょう!」

 

マシュはマックスの腕を掴み止めようとする。ジャンヌは目と鼻の先でジャンヌを睨みつけるマックスの目を見つめ、揺るぎない目で自身の決意を示す。

 

「私は知りたいのです。私はどうしてフランスを壊すのか...人を恨むのか。今も昔も私は、私は己の選んだ道のりを走りたいのです。私は私に会う事を選んだんです!」

 

マックスの顔は更に歪む。マックスの感情を表しているのか、マックスの体から黒い鱗粉の様なものが滲み出る。

 

「貴方は人類とともに心中したいのですか⁉︎ 」

「そんなつもりはありません。ただ、私は話をしたいのです。」

「...分かりました。 貴方は人類に不要と判断する! ここで死ね!」

「隊長さん! やめて下さい!」

 

マックスはジャンヌを突き飛ばし、マシュの腕を振り払うと腰からサラエボ拳銃を抜き、ジャンヌの胸元に照準を合わせる。

立香は急いで戻り、マックスの腕を引っ張り銃を下げさせようとする。

 

『何やっているんだ!早く逃げ...あぁ、もう遅い。』

 

ロマンはいがみ合い、未だに逃げていない仲間達にやめる様に叫ぶが、レーダーを見て焦りの感情などが一気に抜け落ちる。見つめ合うマックス達の上を黒い影が通り過ぎた。

 

「また...また...私は裏切られているのですね。学の無い村娘は、覚えると言うことすら知らなかったにですね。」

 

竜の上に乗る黒い"私"が仲間に武器を向けられている"私"に失望と呆れの混じった声をかける。

 

「貴方は...」

 

ジャンヌは竜の上に乗る黒い私を見つめる。竜のうえの"私"は私を見て、嘲る様に笑っていた。

 




えーっと、まずは、はい、遅れてすいません。

本当に忙しかったんです。1日12時間、週6日ぐらい働いてたんです。許して! 忙しすぎてガングートも手に入れられなかったので、結構落ち込んでます。

多分次も同じくらい時間が掛かりそうです。

誰か頑張ってる紅葉餅を褒めて...ここ数ヶ月、人に褒められた記憶がない。



身の上話は置いておいて

この話は結構、展開が急すぎましたかね。自分で読んでいて結構話が急だなと感じたんですよ。取り敢えず一ヶ月空くのはマズイと思って投稿したのですが、意見があったら言って下さい。なるべく反映します。
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