THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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Destinyのその先へ

 

「デュワッ!」

『おぉりゃあッ!』

 

 ウルトラセブンはサデスと激しくもつれ合いながら格闘。サデスが全身でセブンに飛び掛かっていく。

 

「ダーッ!」

『うおぉぉッ!?』

 

 しかし受け止められ、巴投げで地面に叩きつけられた。

 

『ぐぅぅ……!』

 

 すぐに起き上がって再びセブンに向かうサデスだが、その胸に鋭いチョップをもらう。

 

「デュワッ!」

『うぐぉッ!?』

 

 ひるんだところを狙って、セブンの強烈なココナッツクラッシュ!

 

「ダーッ!」

『うおっちゃあぁッ!!』

 

 流石に効いてよろめくサデスだが、それでも立ち上がってくる。セブンの方も負けじとファイティングポーズを取り直して戦意を表した。

 

「デュワッ!」

『ぬぅーッ!』

 

 その間、オーブはマガタノデアボリックに正面からぶつかっている。

 

『「ダイナさん! メビウスさん!」』

『ジュワッ!』『タァッ!』

 

 やよいがオーブスラッシャースターを握り、両腕を斜めに大きく振り抜いた。

 

「『オレンジライトニングサイクラー!!」』

 

 放たれたオレンジ色の大型光刃が、デアボリックのキャノンの右腕を真っ二つにする!

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 片腕を失ったデアボリックは左腕の機関銃を乱射してくるが、やよいはスラッシャースターを雪歩に渡していた。

 

『「ガイアさん! ネクサスさん!」』

『ジュワァッ!』『ヘアッ!』

 

 オーブはその場で高速スピン。そして、

 

「『ホワイトフォトンフェザー!!」』

 

 スラッシャースターから発射された無数の白い光刃が弾丸を相殺し、更に機関銃も粉砕した!

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 両方の腕を失ったデアボリックだが、代わりのように全身から触手を伸ばして反撃。だがオーブは空中に飛び上がって回避した。

 

「グギャアァァァ――――!!」

 

 すかさず怪光線を吐いて追撃するデアボリックだが、律子がスラッシャースターを握り締める。

 

『「ヒカリさん! エックスさん!」』

『テェアッ!』『トワァッ!』

「『グリーンナイトアタッカー!!」』

 

 オーブが四肢をX字に伸ばすと、全身から緑色のクリスタル状の光線が発射され、怪光線を押し返してデアボリックに命中!

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 デアボリックは身体中の触手が千切れて転倒。サデスの方も、セブンのドロップキックをまともに食らって吹っ飛ばされた。

 

「ダァーッ!」

『うおおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!』

 

 同時に倒れたサデスとデアボリックはよろめきながら肩を寄せ合う。

 

『セブンのキック、効っくぅぅぅ……!』

 

 オーブとセブンも並び合って、サデスたちと対峙し直した。

 オーブたちが戦っている一方で、エックスたちも敵宇宙人と激闘を繰り広げている。

 

『はぁぁッ!』

「テェェェェアァッ!」

 

 エックスはデータスパークザンバーを大きく振り下ろし、キングガッツの装甲に深々と刀傷を刻み込んだ!

 

『ぬあぁぁッ!? こ、この防御力が意味をなさないとは……! ぐぅッ!』

 

 再び斬りかかってくるエックスだが、キングガッツは分身能力を発動して回避。更に瞬く間に六体に増殖してエックスを取り囲んだ。

 

『ぬうぅぅぅッ!』

 

 六方向から破壊光線を浴びせるキングガッツ! だがエックスは上空へと飛び上がって逃れていた。

 

『「一気にケリをつけるぞ、エックス!」』

『了解だ!』

 

 反転して地上のキングガッツを見下ろしたエックスは、ベータスパークハート・ブラスターモードを構えて六体のキングガッツの中心に照準を合わせた。

 その彼の身体に、はるか上空から光が降り注いで吸収されていく!

 

『何と!?』

 

 衛星軌道上で戦っている魔導師たちの光が、エックスに集まっているのだ!

 そしてエネルギーをフルチャージしたエックスが、杖の先端にまばゆく輝いた虹色の光より砲撃を発射する!

 

「『ベータスパークライトっ! ブレイカぁぁぁぁぁ――――――――――っっ!!」』

 

 地表に着弾した砲撃が、六体のキングガッツを全て巻き込む大爆発を起こした!

 

『ひぎゃああああぁぁぁぁぁぁ―――――――!!』

 

 光の爆撃はキングガッツのみを消し去り、エネルギーを全て放出したベータスパークハートはエックスの身体から解除されたのであった。

 同じ時に、ギンガビクトリーはヒッポリト星人とテンペラー星人による合体星人と互角以上の勝負を展開していた。

 

『『むぅんッ!』』

 

 合体星人がハサミから光のムチを伸ばして振るってくるが、ギンガビクトリーは動じずに反撃を行う。

 

『「「ウルトラマンメビウスの力よ!!」」』

『セアッ!』

 

 メビウスのビジョンを呼び出して、ともに両腕を頭上に掲げてメビウスの輪を作る。

 

『「「メビュームシュート!!」」』

 

 浅い十字に組んだ腕から撃たれた光線が、光のムチを切り裂いて合体星人に着弾!

 

『『うがぁッ! おのれぇッ!』』

 

 のけ反った合体星人が長い口吻から火炎弾を連射するも、ギンガビクトリーは次にティガのビジョンを生じさせた。

 

『「「ウルトラマンティガの力よ!!」

『ヂャッ!』

『「「ゼペリオン光線!!」」』

 

 ゼペリオン光線は火炎弾を弾き返しながら進み、合体星人に更なるダメージを与えた!

 

『『ぐわあああぁぁッ!』』

 

 合体星人を追い詰めるギンガビクトリーだが、長く戦っていることでカラータイマーが赤く鳴り始めた。

 

『「そろそろ日が暮れるな! 行くぜ、ショウ!」』

『「ああ! 行くぞ、シェパードン!」』

 

 ギンガビクトリーの左手に、呼びかけに応じて地中から飛び出してきたシェパードンセイバーが収まった。そして右手にはギンガスパークランスが握られる。

 

『「「これで決める!!」」』

 

 シェパードンセイバーとギンガスパークランス。双方を前に突き出して切っ先を合わせることで、莫大なエネルギーの螺旋状光線を発射する!

 

『「「ギンガビクトリーアルティメイタム!!」」』

『『はぁッ!? でぇぇぇぇぇッ!!』』

 

 合体星人も最大威力の光線を発射。両者の光線はぶつかり合って押し合いになるが――ギンガビクトリーの気合いが上回り、合体星人を打ち破った!

 

『『うぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!』』

 

 爆炎の中に消えた合体星人を見届けて、ギンガビクトリーは元のギンガとビクトリーに分離したのだった。

 

「ジュワッ!」

「オリャアッ!」

 

 セブンとオーブは立ち位置を入れ替え、セブンがマガタノデアボリックを、オーブがサデスの相手をする。

 

「ダーッ!」

 

 セブンが巧みな格闘技の連続でデアボリックを抑え込んでいる間にオーブはスラッシャースターでサデスの剣と切り結ぶ。だがスラッシャースターが回転すると、その勢いで剣を弾き返してサデスの腕にスラッシャースターを押しつける。

 

『痛い痛い痛い痛いッ!!』

「オォォッ! シェアッ!」

 

 スラッシャースターの振り下ろしが決まり、サデスに縦一直線の衝撃が走った!

 

『うわぁぁぁーッ!』

 

 サデスもデアボリックも全身ボロボロで、三大宇宙人も既に倒された。完全に追い込まれたサデスであったが、それでも嬉々としていた。

 

『ピンチこそ最大のチャンスぅ! リミッター解除ぉ!』

 

 剣を投げ捨ててデアボリックの背後に回り、再度マガタノデアボリックキャノンを起動。

 

『ファイナルブーストチャージッ!!』

 

 砲身にエネルギーを充填させる。しかも今度は先ほど以上のエネルギーであり、キャノンが焼きつきそうなほどである。

 だがオーブは決して恐れない。春香がスラッシャースターを受け取り、強く握り締めた。

 

『「ウルトラマンさんっ! ベリアルさんっ!」』

『シェアッ!』『フエアッ!』

 

 掲げたスラッシャースターを中心に、赤い光と闇の巨大光輪が形成される!

 

『てぇぇぇ――――――――ッ! おらおらおらおらぁぁぁぁぁ――――――ッ!!』

 

 それを、相手の砲撃と同時に投げ飛ばした!

 

「『レッドサンダー光輪!!」』

 

 巨大光輪は暗黒の砲撃を切り裂きながら突き進み――デアボリックとサデスまでも両断した!

 

『うっぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

 真っ二つにされたサデスだが、それでもデアボリックから腕を離していない!

 

『まだイケるッ! まだやれるぅッ!! デアボリックぅぅぅぅッ!』

「グギャアァァァ――――!!」

 

 サデスの操作によって、デアボリックがガコンッ! と不気味な音を立てた。

 

『リミッター全解除ッ! お前の全てを燃やし尽くせぇぇぇぇぇぇッ!!』

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 そしてマガタノデアボリックの肉体から、暗黒のエネルギーが放出されて八つ首の蛇に変わっていく。ただならぬ様子だ!

 しかし、セブンはオーブに告げる。

 

『今こそ、絆の力を使う時だ。行け、ウルトラマンオーブ!!』

『分かりました!』

 

 オーブが前に出て、そして春香がスラッシャースターを高く掲げると、全アイドルも腕を高々と伸ばす。

 

『「これが、私たちのマスターピース!!」』

 

 春香の宣言とともに、アイドルたちの胸の内からそれぞれのカラーの光が発せられ、オーブスラッシャースターに集まって極彩色に光り輝いた!

 

『行けぇぇぇ―――――――――ッ!!』

「ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 輝くオーブに向かって、マガタノオロチが怨念の咆哮を上げ猛然と突進してきた!

 オーブはそれに向けて、全身から光線を放つ!

 

「「「「「「「『レインボーミラクル光線!!!!!!!!」」」」」」」』

 

 極彩色の絶大な光のロードは、暗黒の八つ首の蛇を呑み込み返す!

 

「ピュウオ――――――――――ッ!!!」

 

 マガタノオロチが光の中に消滅していき、絆の光はサデスを、デアボリックを、宇宙船のムルナウをも覆い込んだ。

 

『燃え尽きるぅぅぅ―――――ッ!! でも僕、大満足だよぉぉぉぉぉ――――――――――ッ!!!』

 

 サデスはぐっと両手の親指を立てながら消えていき、

 

「あぁぁぁ―――――――――――っ!? う、美しすぎるぅぅぅぅぅぅ――――――――――――――――――っ!!!」

 

 ムルナウの宇宙船も街の向こうに墜落。

 

「グギャアァァァ――――! ウオオォ――――ン!」

 

 最後に、デアボリックが跡形もなく爆ぜ散った。

 

「やっっったあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――っっ!!」

 

 ウルトラマンオーブたちの完全勝利に、未来たちは輪を作ってあらん限りの声で喜びを分かち合ったのだった。

 

 

 

『シャイニングエメリウムスラッシュ!!』

「エクサランスカノン、フルバーストぉっ!!」

 

 宇宙空間で、シャイニングウルトラマンゼロとなのはの光線がバルタン星人の数十体を纏めて吹っ飛ばした。しかし、宇宙の大戦はそれを最後に幕切れを迎える。

 

「フォッフォッフォッフォッフォッ……!」

 

 バルタン星人の全員が突然動きを止め、背後に開いた空間の穴に吸い込まれるように飛び込んでいったのだ。その様子を驚いて見つめる魔導師たち。

 

『敵異星人、全て撤退していきます! これは……!』

『へッ……どうやら終わったみたいだな』

 

 ゼロがひと言つぶやくと、なのはは地上に向けて通信をつないだ。

 

「ダイチくん、スバル、こっちは終わったよ」

『なのはさん、こちらも終わりました!』

 

 残存のムルナウ一味の宇宙人を全て捕縛したスバルが返答。なのははにっこり微笑んだ。

 

「作戦完了! お疲れさま」

 

 

 

 すっかり夜の帳が下りた中、オーブはセブン、エックス、ビクトリー、ギンガの四人と面と向かった。

 

『皆さん……ありがとうございました』

 

 オーブが謝礼を告げると、セブンがぐっと手を握りながら言った。

 

『この星に生きる人々の信頼と絆が、我々に一番大きな力を与えてくれる! それこそが、光の力なのだよ!』

『「俺たちはみんな、この星空の下でつながってる!」』

『「困った時は、いつでも呼んでくれ」』

 

 ギンガとビクトリーもそう語ると、ウルトラ戦士たちはオーブの中の春香たちに、地上の未来たちをじっと見つめた。

 

『君たち、最高のユナイトだった!』

『「765プロのみんな、一緒に戦えて良かった」』

「生きる世界は違っても、みんな頑張って夢を実現していこうね!」

 

 エックスとダイチ、エックスの手の平の中のスバルが告げると、未来が大きな声で返答する。

 

「地球を救ってくれて、どうもありがとうございまーすっ!」

 

 その声にうなずくオーブたち。そこに宇宙から、ウルティメイトゼロがテレパシーで呼びかけてきた。

 

『みんな! 俺はそろそろミッドの人たちを送り帰すぜ。親父たちも、そろそろ引き上げたらどうだ!』

 

 それに応じるように、春香がオーブに呼びかける。

 

『「プロデューサーさん、私たちもそろそろ帰りましょう!」』

『ああ……!』

 

 オーブがうなずいたのを合図とするように、五人のウルトラ戦士は夜空に向かって勢いよく飛び上がり、それぞれの世界へと帰っていく。

 

「ありがとうござまーすっ!」

「ありがとーッ!」

「さよーならー!」

 

 未来たちは大きく手を振って、帰還していくウルトラ戦士を見送ったのであった。

 

 

 

 ――事務所へと帰る前に、春香たちは宇宙船の墜落現場に足を運んでいた。

 そこで待っていたのは、ひと足先に来ていたガイと――宝石と化して横たわっているムルナウだった。

 

「……その人、自分が宝石になっちゃったんだね」

 

 美希が静かに聞くと、ガイは無言で首肯した。

 

「……ムルナウは、純粋な人だった。本当の美しさが何かを知っていれば、こんなことにはならなかったのにな……」

 

 ガイの訥々とした言葉を耳にしながら、アイドルたちは粛々とムルナウを見つめる。

 

「永遠に美しくあり続ける物なんてない。次の世代を信じ、命を託す。その願いのリレーが、永遠なのだから」

 

 そう言い切ったガイは、ハーモニカを奏でながらムルナウに背を向ける。

 春香たちはムルナウに黙祷を捧げて、ガイの後について事務所に帰還していった。

 

 

 

 長く激しい戦いが終わり、一夜が明けると、765プロのアイドルたちは――。

 

「ふうぅぅ~……いい湯加減ですぅ」

「戦いの疲れが癒やされてくぞぉ~」

「まこと、良い心地です……」

 

 全員で銭湯を訪れて、朝風呂に浸かっていた。やよい、響、貴音が長く吐息を漏らすと、小鳥が皆に労いの言葉を掛ける。

 

「みんな、本当にお疲れさま。全員そろってのフュージョンアップは興奮したわぁ! 未来ちゃんたちも、お疲れさま」

「ありがとうございますっ!」

 

 未来が礼を返すと、翼は美希にじゃれついた。

 

「まさか美希さんたちがオーブだったなんて~! わたしもオーブになっていいですか? ってか今すぐなりたいですっ!」

「え~? ダメだよぉ遊びじゃないんだよ?」

 

 翼と談笑する美希。静香は、真剣な面持ちで律子に質問していた。

 

「それにしても、人間が一瞬であんなに大きく変身するなんてどういう原理なんですか? 質量はどこから来てるんでしょう?」

「その点については、私も研究中で……」

「真美~! 競争だよぉ~!」

「まっけないぞ亜美~!」

「こらそこの二人! お風呂で泳がないの!」

 

 律子が言葉をさえぎって、亜美と真美に注意した。

 伊織は湯船に浸かりながら、大きくため息を吐く。

 

「それにしても、ほんとあんたたちには驚かされたわよ――麗華」

 

 傍らに浸かっている麗華たち三人にそう呼びかける伊織。

 

「一体どういう経緯で、ジャグラーなんかと組んだ訳?」

 

 その質問に、不敵に笑いながら答える麗華たち。

 

「ふふっ。プロデューサーの方から私たちに接触してきてね。憧れてたものに裏切られた私たちに親近感を覚えたとか言って」

「最初は誰よこの胡散臭い男って思ったものだけど、プロデューサーが見せてくれた世界はとにかくすごくって! すっかり魅了されちゃったんだよね~」

「それで、プロデューサーについていくことを決めたの」

 

 満足げな三人に、あずさがふと尋ねかける。

 

「でもあなたたち、これから大丈夫なの? ジャグラーはお尋ね者よ。それを渋川さんに見られちゃったのだから……」

「そうなのよねぇ。今までの私たちの不正もいずれ明るみに出るでしょうし、今までのようにアイドルやるのは厳しいわね」

「いっそのこと、地球を飛び出して宇宙デビューしちゃおっか! 闇のヒールアイドルってのも面白そうじゃない?」

「いいかもね、それも」

 

 りんの提案に乗り気になるともみと麗華。

 

「私たちに地球は狭すぎる! なーんて」

「あはははははは!」

 

 破顔する魔王エンジェルを、真と千早はジトーと目を向けていた。

 

「……何か、とんでもないこと話し合ってるよ、あの人たち」

「私たちより先に宇宙デビューしようなんて……」

「でも、いいんじゃないかな? 人の夢は、人それぞれなんだから」

 

 雪歩の言葉に、春香がうなずいた。

 

「そうだよね。誰にでも、夢に向かってまっすぐ進む権利はある。どんな人にも、光を掴める可能性がある――」

 

 

 

 男湯の方では、高木がガイと話し合っている。

 

「そうか、再び旅立ってしまうのか……。どうせなら、ゆっくりしていけばいいのに」

「お心遣いはありがたいですが……俺もまだ旅の途中です。今回は、あくまで途中で起こったイレギュラー。それに対処しに来ただけですから」

「正義の味方も忙しいものだ……。しかし、落ち着いたらまたいつでも帰ってきてくれていいからね! 我が765プロは、いつでも君を待っているぞ!」

「ありがとうございます……!」

 

 高木の厚意に感謝しているガイだが、そこに水を差すように呼びかける声が。

 

「ふッ……そうやってあいつらを放っておいていいのかな? ガイ」

「ジャグラー……!」

 

 ジャグラーもまた、湯船に浸かっていた。ニヤニヤ笑いながらガイに告げる。

 

「俺もプロデュース業を始めたんだ。今度はアイドルプロデュースで勝負を挑むつもりだったんだが、お前がこのまんまプロデュースから離れるってのなら、俺の不戦勝ってことになるなぁ~! ハッハッハッハッハッ!」

 

 愉快そうに高笑いしたジャグラーに、少々むっとしたガイは、

 

「……女の子を三人も侍らせてるって、ビランキに言いつけるぞ」

「おいそれだけはやめろ」

 

 珍しく色をなくすジャグラーであった。

 

 

 

「ふ~。いいお湯だった!」

「やっぱり銭湯はいいですね~」

 

 風呂を上がり、銭湯から出てきた春香たち765プロの一団の元に、渋川が自転車でやって来た。

 

「よッ、みんな! 風呂上がりかい? 色っぽいね~」

「おっちゃーん、褒めても何も出ないよ~?」

 

 などと言いながら満更でもなさそうな亜美。しかし、

 

「ところでガイ君は? 一緒じゃねぇの?」

「あれ?」

 

 この中にガイの姿だけがないので、皆キョロキョロ辺りを見回した。

 

「社長、ご一緒だったんじゃ?」

「さっきまではそうだったんだがねぇ……」

 

 小鳥の問いかけに首をひねる高木。すると、春香が声を上げた。

 

「あっ! あそこ!」

 

 ガイは一人、川縁に沿いながらどこかへと立ち去ろうとしていた。そこに追いすがる春香たち。

 

「おーい! 風来坊!」

 

 渋川の呼びかけで振り返ったガイに、千早たちは呼び止めはせずに、代わりに尋ねた。

 

「いつかまた、帰ってくるんですよね?」

「また、お会いしましょう!」

 

 雪歩の後に、美希が呼びかける。

 

「ミキたち、ずっと待ってる……ううん! いつかきっと、追いつくの!」

「ちょっとちょっと、追いつくってどういうこと……」

 

 伊織が突っ込もうとしたが、それをさえぎるように春香が口を開いた。

 

「ううん。私たちはみんな、あの太陽に向かってまっすぐ進んでる! だから、いつかプロデューサーさんに追いつくよ! だからそれまで、プロデューサーさん……」

 

 アイドルたちは声をそろえて、ガイへと告げた。

 

「お元気でっ!!」

 

 ガイはふっと笑い返すと、皆に言い渡した。

 

「あばよ」

 

 朝焼けに向かって去っていくガイを、春香たちは見送る――。

 

 

「あばよ!!!」

 

 

 

 

 

THE ULTRAM@STER ORB 特別編

『絆の力で、輝きの向こう側へ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――惑星O-50、『戦士の頂』。ガイはオーブカリバーを掲げ、新しいミッションを授かる。

 

「……」

 

 そして宇宙のどこかで起きているトラブルに、ウルトラマンオーブを必要としている人たちの元へと旅立とうとするのだが、その寸前に彼の脇をジャグラーがすり抜ける。

 

「ガイ、お前が光であり続けるのなら、俺も闇であり続ける。光と闇は表裏一体、決して消えることはない。お前が光の戦士である限り、俺たちの戦いは続くんだぜ」

 

 不敵に笑みながらそう言い残して、ジャグラーは先に前へと進んでいった。

 その後から、ビランキが走ってきてガイに振り返る。

 

「紅ガイ、私だってあんたに挑戦し続けるわ! だって私の愛は永遠! あんたをやっつけて、必ずジャグラー様を振り向かせてみせるんだから! ジャグラー様、待ってぇ~!」

 

 言いたいだけ言って、ジャグラーを追いかけていくビランキ。

 しばらくその場にたたずんでいたガイだが――向かう先から、彼に呼びかける声が。

 

「プロデューサー、どうしたんですか?」

「早く行きましょう、プロデューサー!」

「うっうー! みんな待ってますよー!」

「あなたを待ってる人は宇宙中にいるんですから!」

「あらあら、早く私たちを導いて下さい」

「ぼやぼやしてると置いてっちゃうわよ!」

「ジャグラーたちに先を越されちゃダメですよ!」

「ほーら兄ちゃん、早く早くー!」

「もう待ち切れないよー!」

「いつまでも、どこまでも一緒なの!」

「自分たち、運命の先にまで歩き続けるぞ!」

「さぁ、出発の時です」

 

 顔を上げたガイに、彼女たちが手を差し伸べる。

 

「プロデューサーさん、進みましょう! きらめくステージへ!」

 

 ガイの口元が綻び、一歩を踏み出した。

 

「ああ! 行こうか!」

 

 そして、『彼ら』は向かう。

 星の(ステラ)ステージへ――!

 

 

 

『渡り鳥たち、宇宙(そら)を行く』

 

 

 

 

 




 




次回予告!



――千早が前人未到のステージに進出! そこは何と……!

高木「如月君、君の次のステージは火星だ!」
千早「火星!?」

――しかしそれに文句を言ってくる宇宙人が現れた!

のヮの『私はノノワン星人エリーコォ将軍! 宇宙一の山賊だぁ!』
全員「?」

――エリーコォ将軍の恐るべき隕石攻撃が襲い掛かる!

雪歩「ドロップしてくるコンペイトウは全てレモン以上です!」
春香「うわぁそのネタ懐かしい!」

――ビートル隊は一丸となって千早のシャトルを火星に飛ばす!

渋川「地球の未来を頼んだぜぇッ!」
千早「私、火星に何しに行くんですか!?」

――火星に到着した千早たちを待っていたのは――!

律子「これが私の開発した人型決戦ロボット、キサラギよ」
千早「歌を歌うんじゃなかったの!?」

――人類の希望キサラギ! しかし一つ重大な欠陥があった……!

律子「コックピットが狭いのよ」
ガイ「どうしてそんな……!」
律子「設計ミス」
ガイ「……」(前に振り向き)

――そのため、キサラギの搭乗者になれるのは千早だけなのだ!

律子「バストが72センチ以下の人じゃないと乗れないのよ」
千早「どういう理屈!? それに別に私じゃなくてもいいじゃない!」

――千早を無理矢理押し込み、キサラギは発進! 巨大隕石に向かっていく!

モニター『たぶん10キロメートルくらい』
千早「適当!!」

――窮地のキサラギを救ったのは、伝説のキャプテン・あずさ!

あずさ「男には、負けると分かっていても戦わなければならない時もあるわ!」
千早「あずささん女でしょ」

――火星基地に落下していく巨大隕石を押し返そうとするウルトラマンオーブ! そしてキサラギ!
――果たして、人類を救うことは出来るのか!?

千早「いやこれ絶対夢オチでしょう!?」

乞うご期待!



※この次回予告は全くの嘘偽りです。





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