太正?大正だろ?   作:シャト6

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第二十二話

今日はシンデレラ公演が上手くいったお祝いに、関係者等を集めてシンデレラ公演成功パーティーが開かれる事になった。俺もさくら達からそのパーティーに招待されている。始まるまで少し早いが、俺は既に劇場に来ている。中を見ると、さくら達がパーティーの準備に追われていた。

 

「大変そうですね」

 

マリア「森川さん!」

 

食堂のキッチンで料理を作ってるマリアに声をかける。

 

「凄い量ですね」

 

マリア「ええ」

 

大神「大丈夫かいマリア。手伝おうか?」

 

大神が食堂に来て手伝いを申し出てきた。

 

マリア「いえ、手伝っていただけるのなら、カンナ達をお願いします」

 

大神「カンナ達?」

 

マリア「はい。買出しに出てまだ帰ってこないんです」

 

マリアにそう言われ、大神は買い出しに行ってるカンナ達を迎えに行った。しかし、未だに料理の用意には時間がかかりそうだな。

 

(仕方ない、手伝うか)

 

俺はキッチンに入り、マリアがまだ切っていない材料を切り始める。

 

マリア「森川さん!?」

 

「料理の準備が遅れてるんだろ?せっかくここに普段から料理してる人間がいるんだ。使わない手はないと思うぞ?」

 

マリア「しかし…」

 

マリアは申し訳なさそうな顔をする。確かに今回俺は招待客の1人だ。だが、それで料理が間に合わなきゃ意味ねぇからな。

 

「気にすんな。逆に料理がパーティーまでに出来なきゃ、来た客の評価に繋がるぞ?」

 

マリア「…分かりました。お願いします」

 

「任せろ」

 

そして俺は材料を切り始める。ま、貰ったスキルに今までの蓄積があるから、貰った当初より素早くできるがな。で、あっという間に俺は材料を全て切り終わった。

 

「終わったぞ」

 

マリア「えっ!?」

 

流石のマリアも驚くか。普段は教えながらだから普段より遅く作ってるからな。

 

「どれどれ…残るはこれとこれか。代われ」

 

俺はマリアと交代する。そしてキッチンにあるコンロを2つ一気に使う。テキパキと料理を作る俺の姿をマリアだけでなく、いつの間にか来ていたさくら、椿、かすみが驚きの顔で見ていた。

 

「完成しましたよ」

 

「「「「……」」」」

 

「皆さんどうかしましたか?」

 

さくら「いえ…」

 

かすみ「なんといいますか…」

 

椿「あっという間の出来事で」

 

マリア「そうね」

 

「ああ。普段は皆さんに教えながらなのでゆっくりですが、店を切り盛りしている時は今位ですよ。でなければ、1人で店を回せませんよ」

 

俺の言葉に唖然としながら4人は納得した。そして夜になり、シンデレラ成功パーティーが始まった。

 

カンナ「カンパーイ!!」

 

『カンパーイ』

 

カンナが木の着ぐるみを着て、乾杯の音頭を取っていた。

 

カンナ「なんだってアタイがこんな格好しなきゃなんねぇんだよ!!」

 

すみれ「あ~らカンナさん、舞台の上より余程お似合いです事よ。オッホホホホホホッ!!」

 

カンナ「なんだとぉ!このサボテン女が…あややや…どわっ!!」

 

おいおい、あんな恰好で無理に動こうとするからそうなるんだよ。倒れたカンナを黒服の男達が起き上がらせる。

 

米田「…ク~ッ!うんめぇ!打ち上げパーティーの酒ってやつは、また格別だぜ♪大神!おめぇも遠慮なくやれ」

 

大神「いえ、自分は任務がありますので」

 

大神はいつものように断る。だが、流石に今回はパーティーの席だ。

 

「大神さん、今回はいいんじゃないですか?折角の打ち上げパーティーなんですから」

 

米田「そうだぞ大神。隊長たる者、苦しみと喜びを仲間と分かち合ってこそ、真の隊長と言える。ここに来て3か月も経ってるのにまだそんな事も分からねぇのかこの石頭!」

 

おっさんはおっさんで、普段から大神に酒を進めすぎなんだよ。

 

米田「さぁグッといけ!!」

 

大神「…はぁ」

 

大神は諦めたのか、酒を飲んでいく。それを見たおっさんも満足したのか、更に自分も飲んでいく。俺は少し離れた場所に移動する。そして暫くすると、おっさんと大神は酔いつぶれて眠っていた。

 

あやめ「あらあら、2人とも」

 

大神「支配人…もう飲めましぇん…」

 

米田「グ~ッといけ…グ~ッと…」

 

やれやれ。

 

カンナ「はい!という訳で盛り上がってまいりました~!シンデレラ杯花組争奪隠し芸大会!!お次のチャレンジャーは誰だぁ!!!」

 

さくら「はい!あたしです!」

 

するとさくらは、カンナと打ち合わせをし、竹を2本高く投げるようにお願いした。

 

さくら「…お願いします」

 

カンナ「んじゃ、いくぜ!とりゃあああああああ!!!!」

 

カンナは空高く竹を放り投げた。

 

さくら「…!!たあああああああっ!!!!」

 

それと同時に、さくらも高くジャンプして竹を一振りでバラバラに斬った。斬った竹は、コップみたいになってそれぞれの場所に落ちてきた。地面に着地し刀を収めると拍手が響き渡る。確かにあれはすげぇな。

 

さくら「故郷でお祝い事があると、こうして杯を作って乾杯するのが、真宮寺家の習わしなんです」

 

カンナ「へぇ」

 

花組の面々はさくらの技を褒めていた。

 

マリア「わ…私も…」

 

するとマリアが話し出す。

 

マリア「か、かくし芸…やってみようかしら」

 

マリアがそう言うと、マリアの性格を知ってる連中は全員が驚いた。

 

『ええええええええっ!!!!?』

 

ま、そら驚くわな。俺ですら顔には出してないがさくら達と同じ様に驚いてるんだもんよ。

 

あやめ「珍しい事もあるものね。何を見せてくれるのかしら?」

 

するとマリアは、懐から自分の拳銃を取り出した。

 

マリア「私がお見せするのは、The Verses 日本の言葉で乾杯という意味です」

 

紅蘭「なんやベロ噛みそうな名前やな」

 

カンナ「ザ、ババーシュ…いってぇ!」

 

すみれ「言ってる側から噛んでるおっちょこちょいがいますわよ」

 

アイリス「で、どんな事するの?」

 

マリア「空に向けて銃を撃ち、落ちてきた弾に向かって次の弾を発射して、空中で2発の弾丸をぶつけ、2つの標的を同時に命中させるという技よ」

 

カンナ「ちょちょちょ!タンマタンマ!!」

 

流石のカンナもかなり焦っている。そらそうだわな。自分に弾丸が飛んでくると聞いて落ち着ける訳ないわな。

 

マリア「カンナ…私を信じろ」

 

カンナ「…お~し!いつでも来やがれ!!」

 

カンナもハラを括ったのか、覚悟を決めていた。そしてマリアは空に向けて銃を放った。そして落ちてくる弾丸を確認して前に構える。見るとカンナは冷や汗がダラダラ流れている。そして次の瞬間、2発目の弾を放った。だが、マリアが言った通りにはならず、2発目の弾は壁に命中した。

 

カンナ「…けはぁ」

 

カンナは安心したのか、安堵の表情を浮かべた。

 

マリア「フッ…フフフフ…そんな芸当できるわけないでしょ。本気にした?」

 

マリアはそう言い、周囲は笑いや安堵の雰囲気になる。カンナも笑いながら俺達の元に来る。だが、俺は見た。マリアが本気で悔しがっていた。

 

(マリアの奴…)

 

そしてパーティーはお開きになった。俺ももう遅いと言われあやめの行為に甘え、帝劇に泊まることになった。そして皆が寝静まった時、俺は中庭に人の気配を感じたので見に行く。

 

「こんな時間に誰だ?」

 

中庭に行くと、マリアが立っていた。失敗して壁に穴が開いた場所に。

 

「こんな時間に出歩くとはな」

 

マリア「誰!!」

 

「よぉ」

 

俺はマリアの側に行く。

 

マリア「森川さん…」

 

「やはりいたか。周りの連中は気づかなかったが、俺はお前の表情を見たんでな」

 

マリア「…そうですか」

 

「んで、失敗したのは、自分が今の生活に堕落したとか思ってんだろ」

 

マリア「!!」

 

俺にそう言われ、マリアは驚きの顔をする。

 

「やっぱりか」

 

「……」

 

「お前、自分は幸せになっちゃいけないとも思ってるだろ」

 

マリア「…はい」

 

「……」

 

俺はマリアに近づき、胸倉を掴む。

 

「テメェふざけんなよ」

 

マリア「!?」

 

「幸せになっちゃいけない奴なんて、この世に誰もいないんだよ。そして、自分でそんな事を思う奴が俺は一番嫌いなんだよ!」

 

マリア「だったら…だったらどうすればいいんですか!!

 

マリアは目に涙を浮かべながら叫んだ。

 

マリア「戦場では、一つのミスが命取りになります!だから、あのミスは私はしてはだめなんです!!」

 

「何でもかんでも、お前1人で抱え込んでんじゃねぇよ。花組の連中がいるだろう。花組が無理なら、俺がお前のミスをカバーしてやる。他の連中が助けなくても、俺がお前を助けてやる!だから…だからお前も誰かに頼れ!そして、幸せになるんだよ!せっかくここにお前の帰りを待ってくれる仲間がいるんだからよ」

 

マリア「あっ…あぁ…あああああああ…」

 

マリアは俺の胸で泣き出した。そして暫くして泣き止み、顔を赤くしていた。

 

マリア「すみません…」

 

「気にするな。それでお前の気持ちが少しでも楽になればいいさ」

 

マリア「…ありがとうございます」

 

そしてマリアは自室に戻って行った。

 

「フ~…で、見てたんだろさくら」

 

さくら「……」

 

出てきたさくらだが、少しだけむくれていた。

 

「なにむくれてんだよ」

 

さくら「別にむくれてませんよ」

 

「いや、むくれてるだろうが」

 

さくら「いいですよね。マリアさんは頭を撫でてもらって」

 

あぁなるほど。つまりさくらは拗ねてるって訳か。

 

「仕方ねぇな。ホラ」

 

俺はさくらの側に行き、マリアと同じ様に頭を撫でて抱きしめる。

 

さくら「♪」

 

さくらは満足そうに俺に体を預ける。

 

「話を聞いてたなら分かると思うが、マリアの奴も辛いんだよ」

 

さくら「それは…分かってます。でも、私だって森川さんに甘えたいんです」

 

「…分かったよ。だが、2人きりの時だけだ」

 

さくら「はい♪」

 

そしてさくらも部屋に戻り、俺も割り振られた部屋に帰って寝るのだった。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

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