放課後。
俺は担任の先生に事情を説明して、櫻井の写真を見せてもらった。
「よし…」
職員室を出ると、櫻井の住所を確認した。
「結構遠いな」
一旦帰って自転車で行く事にした。
15分ぐらい自転車を走らせていると櫻井邸周辺に到着した。
「うっし、着いた」
自転車から降りて道路の脇に停める。
そしてしばらく周りを歩くと櫻井と書かれた表札を見つけた。
「でけぇな…」
俺の家もなかなかのデカさだと思ってたが、比べ物にならない。
とりあえず用意した一学期のノートのコピーを持ってインターホンを押した。
ところが、いつまで経ってもでて来る気配がない。
「留守か?」
連打してみても出てこない。留守のようだ。
「無駄足かよー」
せっかく来たのにこのまま帰るのも面白くないので、近くのゲーセンに寄ることにした。
店内に足を踏み入れると、賑やかなBGMが大音量で流れていた。
ゲーム機も持ってなく、普段もゲームはしない俺だが、ゲーセンは嫌いじゃない。
「…」
俺は様々なゲームが並んでいる店内をゆっくりと徘徊していた。
三階建てのゲーセンをゆっくりと巡る。
とある一角にはでかいディスプレイが設置されていて、格闘ゲームの対戦を映し出していた。
ゲームにあまり関わりが無いような俺でも多少は聞いたことのあるような3D格闘ゲームだ。
その画面の中のごつい男たちの筋肉がぶつかり合うたびに重厚な打撃音が耳へと届いてくる。
「すげーな」
思わず目を奪われていた。
「おっと、つい見入っちえまったぜ」
俺としたことが、本来の目的を見失なっちまうところだったぜ。
俺はその場を立ち去ろうとしたが、
「にゃああああああああああああああ!」
俺が今見ていた格闘ゲームの反対側の筐体の方からものすごい叫び声が飛び込んで来た。
ゲーセン内に響き渡るBGMさえも遮る大声に、俺以外の周囲の人たちも注目する。
その先にあったのは、
「うわっ!」
とんでもない格好をした女だった。
上にはノースリーブのシャツで下は派手なチェックスカート。
有名アイドルの衣装みたいだった。
そいつは細身だったが、胸はデカかった。
大事なことだからもう一度言うが、
胸は、デカかった。
整った顔立ちをしているが、今は表情が崩れてすごいことになってるぜ。
「負けたー!なんでっありえないっ‼︎」
さっきまで頭を抱えて床にしゃがみこんでいたが、今度は急に立ち上がって筐体をバンバン叩き始めやがった。
まるでアイドルがライブから抜け出して来たような格好をしてるやつだった。
冗談みたいだが他に例えようが無かった。
どうやらゲームで負けてあーなっちまったようだ。
そんな様子を見かねた対戦相手がそいつに近寄って注意した。
「あのー、他の方にも迷惑かかってるんでそれやめてくれませんかー?」
眼鏡をかけた、小学校6年生ぐらいの女子だった。
何故か、「筋肉」という文字がプリントされたTシャツを着ている。
そこの暴れているアイドルと方向性こそ違うが危険なファッションセンスだった。
アイドルと筋肉。
奇妙な取り合わせである。
さっきまで暴れ回っていた女は、今度は動揺している。
「な、なにかなっ⁉︎」
「ですからぁー、他の方に迷惑がかかるのでゲームを叩かないでくださいと言ってるんですがぁー」
こいつが言ってることは正論だけど、俺がアイドルの立場だったら逆ギレしてたね。
俺はアイドル女の方も逆ギレすると思っていたが…
「うっ、ひっぐ、うぅ〜」
泣いちゃったよっ!
小学生にゲームで負けてガチ泣きしちゃってるよっ!
そんなに悔しいかったのか…それにしてもだけど…
俺はその状況を見ていることしか出来なかった。
アイドル女は、やがて自分の腕で涙を拭くと、
「ごめんね…」
意外にも、普通に頭を下げていた。
あれだけ暴れ回っていた割に、自分の非をしっかりと認めて頭を下げていた。
対して小学生の方は、素直に謝って来たのが意外だったのか、驚いていたようだった。
「謝る相手を間違っているのでは?」
お前もそこらへんでやめとけば良いのによ。
「ご、ごめんなさい…」
「良いでしょう」
俺たちは何を見せられているんだ?みんな唖然としてるじゃねーか。
アイドル女が小学生に話しかける。
「キミゲーム上手いんだねー」
「あなたは下手くそですね」
「この、クソガキがぁ…」
「何か?」
「な、なんでもないよぉー。てゆーかぁー初めてだったんだからしょうがないじゃん」
「あたしも初めてですが?」
「なっ、嘘つくなっ!」
「嘘じゃありません。だってこのゲーム今日から稼働ですし」
さっきまで仲悪かったくせに急に仲良く喋りだしやがったぞ。
「コツとかあるの?」
「ありますよ」
「教えてっ!」
拝むように手を合わせるアイドル女。
小学生は、小学生にしてはデカイ胸を張って得意げに喋り始めた。
「良いですよー?あたしが思うにお姉さんは筋肉に対する愛が足りないのです」
「…え?」
「愛が足りないんですよ」
真顔で言う小学生。
「この肉体美を見てくださいっ!素晴らしいでしょう?」
このガキ頭おかしいわ。
「わ、私には分からないかなぁー…」
「そうでしょうそうでしょう。よく分かっていますねぇー」
人の話を全く聞かずにそこまで話してから、
「えーっ!何でですかっ⁉︎」
「何でと言われても…ていうかキミ、キモい」
「き、キモい⁉︎」
激しくショックを受ける小学生。
「ていうかキミ、BLとか好きなの?」
「BL…って?」
「えっ?知らないの?」
「はい」
「漢同士の熱い絆…かな?」
「ほう」
激しく興味を示す小学生。
「本当に知らないの?」
「知らないですけど」
首を横に激しく振る小学生。
「でも…なんだか良い響きですね!」
「じゃあ帰ったらインターネットで検索してみると良いよ!」
「はいっ!」
小学生に妙なこと吹き込むなよアイドル女。
それに影響受けて、将来とんでもない変態が誕生しちまったらどうするんだよ。
「ではさっそく私は家に帰るので。さようなら、お姉さん!」
最後にそう言い残すと、小学生はゲーセンを出て行った。
俺がしばらく呆然としていると、
「…キミ、何見てるの?」
アイドル女が話しかけて来やがった。
「俺か?」
「キミ以外に誰がいるの」
周囲を見てみると、俺以外は誰もいなくなっていた。
「何って言われてもなぁ。急に変な格好した女が騒ぎ出したから…」
「うっ…」
分かりやすく狼狽えるアイドル女。
「見世物じゃないよっ!」
急に不機嫌になりやがった。泣いたところを見られて今更恥ずかしくなってきたのかも知れない。
「えーっと…」
何か話したほうが良いのか…
「もしかしてナンパ…?」
「違うわっ‼︎」
お前が心配するようなことは何もないから警戒した視線を俺に向けるな。
全力で否定してやると、アイドル女は不審そうな眼差しで俺の顔を覗き込んできた。
「ん?キミ…」
「なんだよ?」
「よく見たら高坂じゃん」
「は?」
「え?高坂京介でしょ?」
「い、いやそうだけど」
なんでお前が俺の名前を知ってんだよ!
「会ったことないよな?」
「会ってなくても知ってるよ〜。キミ、有名人だし」
「そうなの?」
なんか照れるな。そこまで有名だったのか…俺。
「うん。2年1組の委員長がお人好しの熱血バカだって」
「誰が熱血バカだっ‼︎」
「キミだけど」
「なにっ⁉︎」
こんなリアクションをとった俺だが、自覚が無いわけでもない。
俺ってみんなにそんな風に思われてたのか…
てかこいつ一緒の学校かよ。こんな奴見た記憶ねえぞ。
ん、待てよ…
「あぁっ⁉︎」
思いだしたっ!
「お前櫻井かっ⁉︎」
「え?」
「お前は櫻井秋美か?」
「なんで私の名前知ってんの⁉︎」
さっきと立場が逆転している俺たち。
「そりゃあ、有名人だしな」
「そうなの?」
「おう」
「どんな風に?学校一の美少女とか?」
「違えよっ!」
確かに見た目は可愛い…というかかなりタイプだったりもするが、
俺は大袈裟に櫻井を指差した。
「一学期一日も登校して来なかった不登校野郎だっ‼︎」
前回からだいぶ間が空いてしまいすみません{(-_-)}
みなさんお久しぶりです。
やはりリトルバスターズのほうをメインにやっているので投稿間隔が空いてしまいます。
もう忘れてしまった人も多いんじゃないんでしょうか?笑
本当は両立出来たほうが良いんでしょうが、まだまだ力不足で、いつかみなさんに素晴らしい評価をもらえるような作品を書けるように今は精一杯頑張ります!( ̄^ ̄)ゞ