東方零人記~とうほうれいじんき~   作:†Ria†

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村の子供に案内され

1人の青年と出会った巫女

彼女は、異変の元凶を青年として

彼を戦いへ誘う…。



第2話~虚空の剣士

 

【迷いの竹林】

 

霊夢「はあっ!」

 

ビビッ!

 

青年「くっ!」

 

青年は霊夢に投げられた札を避けながら村から離れ、近くの竹林に逃げ込んでいた。

 

霊夢「…どうしたの?

逃げてばかりじゃ勝負にならないわよ」

 

余裕綽々な霊夢の言葉に反応してか青年は立ち止まり

 

くるりと、霊夢に振り向いた。

 

青年「…別に逃げてた訳じゃない。

村から離れたのは、僕が目立ちたくないからだ」

 

霊夢「…は?」

 

青年の言葉の意味が分からず、霊夢は?を頭に浮かべる。

 

青年「見せてやるよ…僕の力(能力)を…」

 

言いながら、青年は右腕を横に振るった

 

すると

 

ヴンッ!!

 

霊夢「……へぇ、さしずめ、“剣を操る程度の能力”…ってとこかしら?」

 

青年の右手のひらには、“クリアホワイトの剣”が現れた。

 

青年「なんでもいいさ。

それより、あんたが始めた戦いだ…後悔…するなよ!」

 

ヲッ!!

 

霊夢「!!?」

 

ザンッ!!!

 

青年は剣を構えると、一言呟き、霊夢に向かって刃を薙いだ。

 

霊夢「やっぱり…素人じゃないわね」

 

しかし青年が斬ったのは一本の竹で

霊夢はと言うと、青年の頭上に浮かび、彼の太刀筋を見てそんな事を口にしていた。

 

青年「っは!!」

 

バチィィ!!

 

青年はそんな霊夢に振り向くと同時に剣を突き出し

霊夢は人差し指と中指で挟むように持っていた札を使い作った結界で青年の剣を防いだ。

 

パアァァンッ!!!

 

まるで風船が弾けるような高い音と共に攻撃が相殺され

その衝撃により背後へ吹き飛ぶ二人

 

ズザザザッ……ダンッ!!

 

青年は一瞬地面を滑ったものの

体勢を立て直すとほぼ同時に前に踏み出し

 

青年「はあぁっ!!」

 

今、空中で体勢を立て直したばかりの霊夢に向け剣を振り下ろした。

 

霊夢「………フッ」

 

青年「!?」

 

ピタッ!!

 

剣の刃が霊夢に触れる寸前、青年はなにかを感じ取り刃を止め

 

霊夢「…中々…冷静ね!!」

 

ドゴッ!!

 

青年「ぐっ!?」

 

剣を止めた青年の腹部を蹴り飛ばし

霊夢は指の間に挟んでいた札を空中に投げた。

 

すると

 

キィィィィィンッ!!!

 

札は虹色に輝く、一枚のカードへと変化した。

 

霊夢「受けなさい…!

スペルカード…発動!!」

 

ヒュンッ!

 

霊夢が叫び、空中に浮かぶカードを手に取り青年に投げつけると

カードは消え

 

代わりに、青年を囲むように四方の地面に陣が描かれ

 

ドドドドウッ!!!

 

陣からは大量の光が吹き出された。

 

青年「!!?」

 

霊夢「夢符『封魔陣』!!!」

 

四方の光を放つ陣は霊夢のその言葉を合図に一気に中心に立つ青年に迫っていき

 

カッ――…!!!

 

ズアァァァァッ!!!!

 

青年「ぐああぁぁぁっ!!?」

 

四つの陣は中心で重なり一つの巨大な陣となって、放射する光の中に青年を閉じ込めた。

 

 

文「あやや~。

またずいぶん、派手に暴れていますね~」

 

その頃、霊夢と青年を追ってきていた文と魔理沙は、竹林を出た空中から二人の戦いを観戦していた。

 

魔理沙「スペルカードか…。

霊夢のやつ、決めにかかったな」

 

背中から生える黒い鴉のような翼で空中を飛ぶ文の隣で

箒に股がり下を見下ろす魔理沙は、立ち上る光に気を配りながら呟く。

 

文「にしても、普通の人間にスペルカードを使うとは…。

巫女も案外非情ですねぇ」

 

魔理沙「今更なに言ってだ、霊夢の非情加減なんて前から分かって……ん? 普通の人間?

ちょっと待て? あいつは妖怪じゃないのか?」

 

文「なんだ気づいてなかったんですか?

妖力の欠片も感じないのに…。

それどころか彼、霊気も、魔力も持ってないみたいですけど」

 

魔理沙「…言われてみれば…。

って!? じゃあ…そんなやつ相手にスペルカードなんて使ったら…!」

 

文「死ぬでしょうねぇ」

 

魔理沙「……さらっとなにを……!」

 

淡々と述べる文の言葉に

驚きを隠せない様子の魔理沙

 

文(でも妙ですね…。

泥棒でもあるまいし、あの巫女がその程度の事に気づかない筈ないのですが…)

 

慌てる魔理沙の隣で

文は霊夢を見つめながら、冷静に考えを巡らせていた。

 

 

 

バシュウゥゥゥ……。

 

青年「っ………」

 

ドシャッ!!

 

光の陣から解放され

全身から煙を吹き出しながら青年は地面に倒れた。

 

霊夢「…………」

 

霊夢は、そんな青年をただしばらく見つめていたが…

 

「待て待てー! やめろ霊夢!」

 

ブアッ!!

 

霊夢「…魔理沙」

 

文の話を聞き、現状を把握した魔理沙が青年と霊夢の間に割って入った

 

魔理沙「こいつは普通の人間だぞ!

妖怪退治ならともかく、これじゃ単なる人殺しだろ!」

 

霊夢「止めた…」

 

魔理沙「そうだ、止め……え?」

 

霊夢「止めたって言ったのよ」

 

くるりと魔理沙に背を向け、黒髪を整える霊夢

 

文「やはり、霊夢さんも気づいていましたか」

 

と、混乱する魔理沙の隣に降り立ち、文は手帳を広げ、ペンを片手に霊夢に尋ねる。

 

霊夢「あたりまえでしょ。

妖気なんて最初から感じなかったんだもの」

 

魔理沙「はぁ?

ならなんでいきなり攻撃なんて…」

 

霊夢「…人間の筈なのに、異様な力の気配を感じたから…かしらね」

 

魔理沙「かしらねって…。

そんな曖昧な理由でスペルカードなんか使って…」

 

霊夢「生きてんだから別にいいでしょ」

 

ふぅ…と、説明がめんどくさくなってきたのか、霊夢は言いながら魔理沙の背後に視線を向けた。

 

「っう……く」

 

魔理沙「…はぁ??」

 

魔理沙が振り向くと、そこには、大した外傷の見当たらない青年が、剣を杖がわりにして立ち上がる姿があった。

 

青年「っ…なんなんだ…いきなり……」

 

青年は戦意を無くした霊夢を見てひとまず安心したのか、小さく息を吐き

 

魔理沙「…なにしたんだよ」

 

霊夢「別になにもしてないわよ」

 

青年から視線を戻し、ジト目で霊夢を見る魔理沙

 

霊夢「それに、それはこれから……私が聞かせてもらうわ」

 

霊夢は魔理沙をあしらうと

青年に視線を移し、小さく笑った。

 

霊夢「あんたが何者なのか…。

なんでスペルカードが効かなかったのか…。

しっかり聞かせてもらうわよ」

 

青年「え……?」

 

文「わくわく…」

 

青年「ちょっ…近い…」

 

 

 

 

【博麗神社】

 

霊夢「さて、それじゃあ聞かせてもらおうかしら。

あんたが何者なのかを…」

 

竹林から神社に戻った霊夢は、目の前に座らせた青年に話す

 

青年「その前に…何故僕は縛られてるんだ…」

 

しかし青年は、霊夢の質問に答えるよりも先に、仏頂面で、後ろ腰辺りで縛られた両手の事を尋ねる

 

霊夢「現時点で得体が知れないんだから当然の措置でしょ?」

 

「なに言ってんの?」とでも言いたげな顔で、青年を見る霊夢の様子に

青年は抗議を諦め、大人しく座り直した。

 

文「さてさて、それでは一段落した所で再び質問ですが…。

あなたはいったいぜんたい何者なのですか?」

 

霊夢「私のセリフを…」

 

しらっと霊夢の役を横取りし、メモ帳とペンを手に青年に問いかける文

その隣では、むぐぐっ と歯を食い縛る霊夢を魔理沙が宥めていた。

 

青年「…何者って……人間…だと思う」

 

青年は文の質問に間を置いた後、自信無さげにそう答えた。

 

文「う~ん…ずいぶんと曖昧なのですねぇ」

 

唇にペンを押し当て、文は不信な視線を青年に向ける

 

青年「しかたないだろ…僕だって分からないんだ…。

と言うか、多分質問するだけ無駄だと思うぞ…。

なんせ……『記憶が無い』んだからな」

 

文に視線を向けられ、居心地悪そうにしながら青年はそう言い切った。

 

霊夢「あんた…ふざけんのも大概にしなさいよ」

 

プルプルと拳を震わせ青年を睨む霊夢

 

青年「別にふざけてなんてない。本当のことだ」

 

しかし青年は極めて冷静に霊夢を見つめ返して答える。

 

青年「僕は今日まで、記憶を取り戻す旅をしてたんだからな」

 

魔理沙「記憶を取り戻す旅とはまた…壮大な話だな」

 

青年「今はそれもできないけどな…」

 

魔理沙の呟きに、嫌味を込めて話す青年

 

文「すると、名前すら覚えていないのでしょうか?」

 

青年「…零」

 

文「はい?」

 

青年「名前だろ?

名前だけは覚えてるんだよ…。

『儚士 零(はかなし れい)』それが…僕の名前だ」

 

霊夢「儚士零…ねぇ」

 

魔理沙「それで結局、霊夢のスペルカードが効かなかったのは、どういった理由があるからなんだ?」

 

ムムッと眉間にシワを寄せ、魔理沙は青年、零の顔を覗きこむ。

 

零「はぁ? スペルカード……?

なんだか分からないが、あの攻撃の事なら、十分効いたぞ。

じゃなきゃ女に捕まるなんて……」

 

霊夢「ほほぅ。あんたなに?今時男女差別ってやつ?

これだから男は、好きになれないのよねぇ私」

 

はぁーぁ、と息をつきながら横目で零を見やる。

 

零「僕だって暴力的な女は嫌いだ」

 

霊夢「なんですって!?」

 

魔理沙「あーもー、そのへんにしとけって霊夢。

これじゃあ話が進まないだろ?」

 

ぐムムムッと睨みあう二人の間に割って入り、魔理沙はそう話した。

 

文「泥棒の言う通りですね。

まずはその男の素性を調べるのが事件解決への道となり、加えて面白い記事への発展へと繋がる筈ですが」

 

魔理沙「後半のはお前の自己都合だけどな」

 

霊夢「……ふん。なら好きに調べてやればいいじゃない。

ハッキリ言って、私嫌いだわその男」

 

吐き捨てるように言って、霊夢は零へ背を向ける。

 

魔理沙「お、おいおい、どこ行くんだよ霊夢!」

 

霊夢「どうせそいつが事件の主犯なんだし、だとしたらこれで異変は収まるでしょ。

私は疲れたからお茶でも飲んで休むわ」

 

魔理沙「ちょ、待てよ霊……」

 

パシッ!!

 

と、後を追おうとした魔理沙を遮るように、霊夢は部屋の襖を閉めた。

 

魔理沙「……ありゃ、しばらく話も聞かないな」

 

閉められた襖を見つめながら魔理沙は呟き

 

文「ま、巫女については仕方ないですが、これでスムーズに取材ができるってもんです」

 

文はお構い無しに青年の前にしゃがみこむと再びメモとペンを構えた。

 

魔理沙「お前は私欲を出しすぎだろ」

 

零「あのなぁ…。

さっきも言ったが、僕には記憶がない。

なにを知りたいのか知らないが質問は無意味だ。

だからこの縄を解いてくれ」

 

文「あやや、それを私に言いますか」

 

零「なに?」

 

魔理沙「まぁ…実際、私は構わないがな、どちらにせよ犯人は妖怪しか襲わないようだし」

 

文「それは無いですよ魔理沙さーん」

 

魔理沙「お前は急に下手にでるな、そもそも、鴉天狗のお前が簡単にやられるとは思えないが」

 

言いながらジトッと横目で文を見れば、フフッと余裕の笑みを溢す始末。

 

零「なんの話をしてるのか分からないが、僕は襲ってきた妖怪を撃退しただけだ。

こっちからはなにもしてないし、する気もない。

それに……あんたは強そうだしな」

 

文「あやや、誉められちゃいましたね~!」

 

魔理沙「それはどうでもいいが、お前」

 

零「零だ」

 

魔理沙「零、妖怪が襲ってきただって?」

 

零「あぁ。あの村の近くで不穏な気配を感じたから探ってみたら、大きなコウモリみたいなやつにな。

そいつを斬ったら、仲間のような奴らが襲ってきたから仕方なく撃退してただけだ」

 

魔理沙「大きなコウモリ……そんな妖怪見たことも聞いた事もないな」

 

文「私も初耳ですね。しかし……コウモリと言えばアソコですか」

 

魔理沙「ま、今はそこ以外にあてもないしな」

 

文と魔理沙は、二人でなにか思い当たる節について話していたようだったが

 

魔理沙「なぁ零、ひとつ相談なんだが」

 

途中零に振り向き、そう声をかけた。

 

零「……なんだ?」

 

魔理沙「このまま縛られたまま放置されるのと、私たちについてきて自分の無実を証明するのと。

どっちがいい?」

 

零「………それは相談なのか?」

 

 

 

 

 

【紅魔館】

 

零「…これはまた、随分おかしな風景だな」

 

紅魔館、それは幻想郷の“妖怪の山”の麓、“霧の湖"の畔に建つ洋館。

 

全体的に赤い色調をしているのが名前の由来となっているのか…、とにかく、零、魔理沙、文の三人は、ヘソを曲げた霊夢を置いてこの場所を訪れていた。

 

零「にしても、なんで僕がこんな事を…。

聞けば妖怪の神隠しがあったからって、そんなの人間の僕には関係ないじゃないか」

 

文「いえいえ、理由があったにせよ妖怪を倒したのは事実である以上、あなたはもはやこの事件の関係者です。

一度でも疑いをかけられた容疑者であるならば、無実を証明するため共に真相を解き明かすのもまた責務となります。

と、思いますけど?」

 

零「そもそもその疑いってのも、あんたたちが勝手にかけたんだろ?

…それに、俺にはあんたたちがただ楽しんでるだけのようにも見えるが?」

 

文「あややや、それはまた…、まともな目をおもちで」

 

ニシシッと笑ってみせた文に、言葉を失い項垂れる零。

 

魔理沙「まぁいいじゃないか、零一人じゃこんな場所には来なかっただろ?

もしかしたら、お前の記憶の手掛かりなんかも見つかるかもしれないんだからさ」

 

零「……下手に言いくるめられてる気もするが、まぁいい。

過ぎた事を言うのは性に合わない…気がするし。

こうなったら、とことん付き合ってやるよ」

 

文「そうそう! イッツ前向きに!ですよ!」

 

魔理沙「さぁて! そうと決まれば、さっそく乗り込むか!

吸血鬼の……根城にな」

 

 

10分後……

 

 

零「……で? なんでこうなるんだよ!」

 

と、クリアホワイトの剣を片手に背後の魔理沙と文に叫ぶ零。

 

その正面には、紅魔館の門番を務める“中国人風の妖怪”。

 

民族風の衣装に身を包み、帽子に付いた星には“龍”の文字が刻まれている赤い髪の少女。

『紅 美鈴(ホン メイリン)』が、なにやら拳法の構えを取り対峙していた。

 

文「恨まないでください。それもまた、天命」

 

零「違うだろ!? あんたらが無理矢理押しやったんだよなっ!?」

 

魔理沙「おいおい落ち着けよ零。

なにも…、本来なら無視して空から侵入できるがお前の実力が知りたくて当て馬にした。

なんて言ってないだろ?」

 

零「なるほどな! よく分かりましたよありがとうッ!」

 

美鈴「さて、おしゃべりは終わりましたか…?」

 

しゅごぉぉぉ…… とでも音を響かせるようにラスボス感を出しながらジリジリと零に迫る美鈴。

 

文「あやや、普段ぞんざいに扱われてるからやる気満々ですね」

 

魔理沙「8割あいつが寝てるんだけどな」

 

ガラにもなく黒々としたオーラを身に纏い、強者である事をここぞとばかりに強調する美鈴を見て、二人はのんびりと呟く。

 

零「あぁもう! なんでこんな事に…」

 

美鈴「この鬼門に手をかけたのがアナタの運のつき……。

さぁ……!! 背水の陣だッ!!」

 

ギラッ! と瞳を輝かせ、決まったと言わんばかりに構えをとる美鈴。

 

零「……意味分かんねぇよ」

 

 

 

 

ウボッッ!!!

 

零「ッッ!!?」

 

突如目の前に迫る弾丸のような足先を、反射的に背を反らせて回避する零。

 

しかし

 

ガガッ!

 

目の前のそれは陽動で、美鈴は零の上着のすそを両手で掴むと

 

美鈴「ソイッ! ヤァッ!!」

 

ブンッ!!

 

零「うわっ!?」

 

立ち位置を交代させるかのように、彼を空中へ投げ飛ばした。

 

零「ッ……くそっ!」

 

クルッ! と空中で体勢を立て直し、美鈴へ振り向く零

 

そんな彼の視界は

 

美鈴「はあぁっ!!」

 

迫り来る美鈴の拳で覆われた。

 

ドゴッッ!!!

 

零「ッッが───!?」

 

モロに拳を顔面に受け、空中で縦に回転しながら

 

ドゴンッ!!!

 

強く地面に叩きつけられた零。

 

スタンッ!

 

美鈴「ふぅっ」

 

そんな零に背を向け地面に着地した美鈴は、気持ちよさげに一息ついた。

 

魔理沙「……あれ? あれ死んだんじゃ……」

 

文「そういえばあの門番、近接戦闘では最強格でしたね…」

 

美鈴「さてと、さぁ、お次はどちらですか?」

 

零を倒し気をよくしたのか、美鈴は左腕を後ろ腰にあてがい、右手で二人に向け手招きして見せた。

 

魔理沙「仕方ないな、いきなりだがここは私が……」

 

「ま、待てよ……」

 

箒を片手に一歩前に出た魔理沙を制し、声の主は、美鈴の背後で立ち上がった。

 

美鈴「っ!?」

 

まさかソレが立ち上がれる筈もないと踏んでいた美鈴は、驚き振り向く。

 

零「今ので決めたつもりなら……甘いんだよ」

 

そこには頭部から血を流しながらも、しっかりと剣を構える零の姿があった。

 

魔理沙「おいおい、なんて奴だよ……」

 

美鈴「そんな……! 今ので立ち上がるなんて……」

 

零「……今度は、こっちの番だ……」

 

渾身の一撃を叩き込み、尚も立ち上がった零にうろたえる様子の美鈴。

 

だが

 

零(……くそ、視界が歪む…。

こりゃ……立ち上がれたのは奇跡だな……)

 

やはり先ほどのダメージは深刻で、零はもはや、立っている事でさえ精一杯だった。

 

零(近接戦の技量ではあっちが格上……、だが、こっちに飛び道具は無い。

しかも恐らく、まともに動けてあと一度か二度……さぁて、これはなんて詰みゲーだ?)

 

何度考えても敗北のイメージしか目の前には浮かばず、零はそれがおかしくて、フッと笑った。

 

しかしその笑みが、彼の活路を開く事になる。

 

美鈴(こ、この状況で笑ってる……!?

この人、勝利を核心してるって言うの……!?)

 

ただでさえ渾身の一撃を受け立ち上がられ、その上笑みを溢されては美鈴から見ればこれ以上不敵なものは無く

 

美鈴「……仕方ない」

 

結果、美鈴は最後の手段を使わざるを得ない状況に追いやられた。

 

美鈴「今のでダメなら、コレで決めるまで!」

 

と、彼女が胸元から取り出したのは一枚の呪符。

 

魔理沙「なっ、あれは!」

 

美鈴「スペルカード発動!! 華符『芳華絢爛』!!」

 

美鈴が叫びながら呪符を掲げれば、それは虹色に輝き、彼女の周囲に虹色の弾幕を展開した。

 

零「…なっ……」

 

虹色の華のように輝くそれはとても美しく、零は見とれて言葉を失った。

 

魔理沙「バカ! 見とれてないでスペルカードを使えよ!」

 

惚けたまま動かない零に、叫ぶ魔理沙。

 

零「スペルカード……? そんな訳わからないもの持ってるわけないだろ……」

 

魔理沙の叫び声でハッとなり、我に返ったものの、零にはそれがなんなのかすら理解できておらず

 

美鈴「終わりです」

 

スッ…………ゴオォォアッッ!!!

 

次の瞬間、美鈴の周りに浮いていた弾幕は一斉に零へと降り注いだ。

 

 

魔理沙「っ!!」

 

あまりに無防備な零が見てられず、魔理沙は駆け出そうとするが

 

文「はいストップ」

 

文はそんな魔理沙の服の襟首を掴み、それを制した。

 

魔理沙「っ放せ! あいつは人間なんだ!

あんなボロボロな状態でスペルカードをモロに受ければ確実に」

 

文「死ぬでしょうね」

 

魔理沙「なら!」

 

文「まぁまぁ魔理沙さん、落ち着いてくださいよ。

忘れたんですか? 彼が、巫女のスペルカードを受けても無事だったことを」

 

魔理沙「それはたまたま……!」

 

 

ドドドドドドドドォォンンッッ!!!!!

 

 

そこまで話し、魔理沙が慌てて振り向けば、そこはすでに爆煙に包まれていた。

 

美鈴「……少しやり過ぎたかな……?」

 

視界の半分以上が爆煙に覆われ、風で館内まで煙が入っていくのを見て美鈴は呟き

 

美鈴「またお嬢様に怒られるかも……」

 

と、その様を想像して恐怖していた。

 

そんな時

 

ボッ!!

 

美鈴「!?」

 

突如、爆煙は何かが通る事で穴が空き

 

ヒュッ!!

 

その穴を抜けて猛スピードでかけてきたそれは

 

ザンッ!!

 

美鈴の左腹部から右肩にかけてを、斬り裂いた。

 

美鈴「……えっ……」

 

美鈴が動けなかったのは、それが反応できないほどのスピードだったからでも、スペルカードを発動した事による反動のため、などでもない。

 

単純に、理解できなかったからだ。

 

彼が 

 

「……悪いな、僕の勝ちだ」

 

動ける理由を……。

 




名前 :霧雨 魔理沙
読み :きりさめ まりさ

二つ名:普通の黒魔術師.普通の魔法使い

能力 :魔法を使う程度の能力

種族 :人間

呼称 :魔理沙、白黒、泥棒

所持スペルカード代表:
魔符「スターダストレヴァリエ」
恋符「マスタースパーク」

備考:
魔法使いの宿命として、人々から離れてくらしている少女。

霊夢同様、本作、東方Projectの主役であるが、今回は違うもよう。

力に執着し、力を誇示する自信家だが、それらは全て、影の努力の成果である。
努力が報われないと思っている霊夢とは対照的に、努力により力を手にした功労者。

しかし性格に難があり、大層な負けず嫌いでひねくれもの、嘘も平気でつき、どこにいっても迷惑がられるが、変人には好かれる。

ひとたび異変と聞けば、本業である霊夢を差し置いてでも解決に乗り出す等、かなりのお転婆。

霊夢とは友人のような関係ではあるものの名言はしておらず、異変が発生した時などは、どちらが先に解決するかで、一方的にライバル視している節もある。
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