妖の消失
それは遂に、紅魔館の吸血鬼、その妹と守矢神社の祭神にまで及び
次いで起きたのは……
【妖怪の山 麓】
霊夢と共に山の麓まで戻ってきた早苗と零。
早苗「うーん、やっぱりまだ忙しそうですね」
早苗は山中の空を飛び交っている鴉天狗を眺めてそう呟いた。
零「……あれ? ……なぁ、今は……晴れてるよな?」
山に近づき、零は突然そんな事を言い出し
早苗「えっ? はいっ見ての通り、快晴ですよ!」
早苗は雲1つ無い空を見上げてそう返した。
零「……確かに、けど、ほら……」
と、早苗の言葉を受けて空を見上げた後、零は山中を指さす。
早苗「……あれ? 山にだけ雨……?」
早苗がそう口にしたように、なぜか妖怪の山にのみ雨雲がかかり、雨が降り注いでいたのだ。
早苗「さっきまで降ってなかったのに…」
零「それどころか、こっちは快晴なんだぞ?
風も全く無いし……。
流石におかしいだろ」
零のその発言を聞き、霊夢は1人溜め息を吐く。
霊夢「……また、この異変か」
零「えっ?」
早苗「異変!?」
明らかに知っているような口振りの霊夢に、振り向く零と目を輝かせる早苗。
零「なにか知ってるのか?」
霊夢「まあね。
…それより、とにかく山に入るわよ。
この騒動の原因が分かった以上、ほっとく訳にもいかないわ」
零「って、どういう意味だよ?」
霊夢「いいから着いてきなさい。めんどくさいわね。
ほら、あの極光を目指すの」
言って、山中にうっすらとかかる幻想的な色の揺らめきを指さす霊夢。
零「えっ? …あれって」
早苗「きれ~い!」
霊夢「まったく……また懲りずに降りてきたって訳か…。
今度は神社が壊される前に締め上げてやるんだからっ」
気合いも上々に、霊夢は勇ましくも山へと入って行き
零「あ、おい待てって!」
零と早苗は、そんな彼女の後を追っていった。
・・・・・
【妖怪の山 山中】
「…やっぱり来たわね。博麗の巫女」
極光の下。山の中腹辺り、木々の開けたその場所で
切り裂かれたばかりなのであろう樹液の滴る切り株に仁王立ちし、周囲に鴉天狗が倒れるその中心に彼女は居た。
霊夢「やっぱりあんたか、今度はなに?
結局神社を奪いにきたの?」
霊夢はこちらを見下し話す、腰まで届く青髪に真紅の瞳を持つ見た目は少女にそう返す。
“非想非非想天の娘”
『比那名居 天子(ひななゐ てんし)』
桃の実と葉が付いた丸い帽子をかぶっているのが特徴の“天人くずれ”だ。
天子「そうじゃない。
地上の大地を操る神とやらがいなくなったから来てやったのよ」
霊夢「はぁ?」
早苗「大地を創造するなら諏訪子様ですけど…」
霊夢「なるほど、で、あんたは?」
天子「大地を操る……」
霊夢「分かったなら帰んなさい。
こっちはあんたを相手にしてる暇なんてないの」
ふぅと溜め息1つ、霊夢はシッシッと手で払うような仕草を見せ
天子「随分な態度ねぇ。
こちとらわざわざ出向いてやったのに」
霊夢「誰も望んでないって事よ。
そもそもあんたの持ってるソレのせいで天候が忙しいってよ」
言って、天子が持つ剣の柄、本来刀身のあるべき場所はまるで陽炎のように揺らめき形を留めていないソレを指す。
“緋想の剣”
ソレは周囲の気質を集めて吸収し力に変換する事ができる道具であり、気質そのものを切り裂く事もできる。
そしてこの剣は人物の気質を漏らし、その人物の周りのみ、気質に応じた天候にしてしまうと言う特性も持つ。
天子「あぁ、これはついで。私が来てあげたわよって合図であってそれ以上ではないわ」
霊夢「あぁそう。ならもう充分だからしまってくれる?
それを持ってるだけで天候が荒れて、ほらまた、山の主が怒ってるわよ」
と言う霊夢の指摘と同時に、この場に新たな鴉天狗が舞い降りてきて…
鴉天狗「あんたですね! むやみやたらと天を荒らすのは!
迷惑なんで消えてもらいますよ!」
鴉天狗は天子に向けて叫ぶと、武器である葉団扇を振りかぶる。
天子「ふぅ、馬鹿な妖は手に終えないね」
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一閃。
それは一瞬の出来事だった。
零(……なんだよ、今の)
零が確認できたのはなんて事はない、緋想の剣のただの一振り。
天子「少しは観察してみなさい。
周りに倒れる同種を確認できたなら、すみやかに引き返すべきと心得よ」
塵1つ着ける事も叶わず、果敢に天子に向かっていった鴉天狗は周囲の仲間と同じ道を辿っていた。
早苗「ふむふむ」
零「……おいおい、あんな化け物とこれからどうするんだ僕らは…」
なにやら天子の言葉に感心してか、メモを取る早苗を横目に零は霊夢に問いかける。
霊夢「アレが化け物? ……やっぱ、あんたは使えないわね」
特に畏怖する事もなく、霊夢は呟き
霊夢「これからどうすべきかは、アンタが決めてみなさい」
自身は一歩下がり、零の背中を押して前へと歩み出させた。
零「お、おいっ!?」
天子「はい? 貴方誰? ……巫女は…やらないの?」
霊夢「私は前に戦ったからねぇ。
今回はそいつに遊んでもらいなさい」
「ま、それでもの足りないなら…」と続け、霊夢は早苗へ視線をやり
早苗「ふっふっふっ。任せて下さい霊夢さん!
この現人神、東風谷早苗が妖怪の一匹や二匹!」
早苗は待ってました! と言わんばかりに胸を張り、ふふんっと鼻を鳴らす。
天子「無礼なやつ。私を低俗な妖と見誤るだなんて…。
私は天人。選ばれし人材なのよ」
早苗「そんな低脳な嘘でこの守矢神社の巫女である私を計ろうなんて浅はかなっ!
サクッとサラッと退治してあげましょう、妖怪さん」
と、霊夢の持つ大幣とは別の幣を手に構える早苗。
霊夢「ま、がんばんなさい」
早苗「はいっ」
零「おいっ、僕は承諾してないぞ! そもそも女相手に…!」
霊夢「ぐだぐだ言ってんじゃないわよ。
心配しなくてもアンタ一人じゃ勝てないだろうから安心しなさい」
興味もなさそうに霊夢は近くの木に凭れて話し
零「なっ!」
霊夢「悔しかったら見せてみなさい。
アンタが少しは使える所をさ」
零「ぐむむ…っ、あぁ分かったよ! 今に見てろよ暴力巫女!」
霊夢「はいはい。精々死なないようにねポンコツ剣士」
零「っ───……!!
おいっ! あんた!」
天子「うん?」
零「悪いが付き合ってもらうぞ! 僕の鬱憤晴らしにな!」
天子「……貴方たち、私もそろそろ本気で怒っちゃうよ?」
ヴンッ!
零「行くぞっ!」
いつものように零は右腕を振るい、その手にクリアホワイトの剣を握りしめた。
早苗「安心してください零さん、この私が共に戦う以上あなたに負けは…」
天子「うん? その剣……中々おもしろそうな力だね」
早苗の言葉を遮り、天子は零が手にする剣に着目し
天子「よし決めた。私が勝ったらその剣を貰うからよろしく」
自身は緋想の剣を構えた。
零「勝手な事を……そう易々とくれてやるほど、僕は甘くないっ!」
ダンッ!
言って、天子に向けて飛び込む零。
天子「さぁさよなら」
天子はそんな零の行動を待っていたと言わんばかりに見つめ、先ほど鴉天狗を斬った時と同様に、緋想の剣を薙いだ。
が
ギャリンッ!!
天子「!?」
零「……驚いたな。そんな形で、きちんと実態があるらしい」
天子の薙いだ剣を、零は自身の持つクリアホワイトな剣で防いでいた。
天子(なんで……っ!?)
緋想の剣。この剣は相手の気質を霧に変え、霧はやがて“天候”となる。
そして、その気質の弱点である性質をみずから纏う事で、必ず相手の弱点を突くことができるとされている。
故に常に優位な攻撃をしかけられる天子の攻撃を受け、鴉天狗たちは彼女の一撃のもと倒れていった訳なのだが
零「……はあぁっ!!」
ドンッ!!
天子「!?」
零はそれを受けきる所か、押し返すという荒業を見せ、天子を驚愕させていた。
零「今だ! 早苗!」
早苗「任されました!」
天子を押し飛ばし、すぐさま背後に控えていた早苗へと指示を出す零。
早苗「秘術『グレイソーマタージ!!』」
早苗は抜群のタイミングでスペルカードを発動。
彼女の周囲には力が宿った星が浮かび上がり
ドドドドドンンッ!!!
星は拡散して天子に向かっていった。
天子「っ!」
天子はその弾幕を視界に捉えると、避けきれない事を悟り
天子「護れ!」
どこからか取り出した、手のひらサイズの注連縄つきの岩を投げると
ズンッ!!
それを一瞬で巨大化させ、盾のようにして弾幕を防いだ。
早苗「あぁ! ずるい!」
天子「ずるくない」
もう1つの道具、注連縄つきの岩“要石”を手のひらサイズにもどし、引力でも使っているのか自身の手もとに引き寄せて早苗に反論する天子。
零(剣に盾か……ずるいと言えば2体1のこの状況だけど……これはそうも言ってられないな)
天子「この剣と組み合えるなんて、いよいよその剣、見過ごすわけにはいかないね」
零「元々見過ごすつもりなんてないだろうに、よく言ったもんだな」
自身が持つクリアホワイトの剣を指し話す天子に零は言い返す。
天子「へぇ、よく分かってるわね。
中々読みは適切かしら」
と、天子は不敵に微笑んだ後
天子「その勘なら、私の力も分かってるでしょう!」
叫び、緋想の剣を振りかぶって零に斬りかかった。
零「そうくると思ってたさ!」
ギャンッ!!
再び2人は刃を交えて組み合うが
零「……っ!?」
天子「どうしたの? 随分体が……軽いのねっ!」
ギンッ!!
今度は零が、天子に刃を振り切られ後方へと吹き飛ばされた。
ドンッ!!
零「ぐあっ!?」
勢いよく背後へと吹き飛ばされた零は、そこに立っていた木に背中からぶつかり声をあげる。
零「うっ……」
早苗「零さんっ!?」
早苗は膝を崩して地面に尻餅をつく零に駆け寄り
零「あ、あいつ……とんでもない力だ……」
零は駆け寄ってきた早苗にそう伝えた。
天子「地上の者が天人に敵うわけないのです。
身体能力1つを取ってもこの差なのですから」
自慢気に、上から説明口調で話す天子。
早苗「えぇ……? もしかして、本当に天人様……?」
天子「だからそう言ってるのに」
はぁっ と小さく溜め息を吐き、天子は緋想の剣の切っ先を2人へ向ける。
天子「せめて苦しまないようにこの一撃で決めてあげるわ」
そう話した天子の目の前には、虹色に輝くスペルカードが浮かび上がり
天子「天気『緋想天促』!!」
ボッ!!
緋想の剣を奮った天子。
その刃からは、巨大な虹色の斬撃が放たれた。
早苗「うえぇっ!? ひ、秘法!」
向かってくる斬撃を目前に、早苗は慌ててスペルカードで相殺しようと構えるが
零「任せろ──」
早苗「えっ……!?」
スペルカードを構える早苗の左手を下げ、零は一言呟くと向かってくる斬撃に飛び込んだ。
天子「うん?」
わざわざ自分から斬撃に当たりにきた零の姿を、不思議そうに眺める天子。
すると
零「頼む……消えろォォォッ!!」
ドンッッ!!!
零は叫びながら、天子の放った斬撃に、自身が持つクリアホワイトの剣先をぶつけた。
早苗「む、無茶ですよっ!」
斬撃と接触し、バチバチと激しく火花を散らすクリアホワイトの剣。
早苗はそんな剣を離そうとしない零の背中に叫び
天子「ふん、そんな気合いで消せるようなものじゃあないのよ」
天子もまた、早苗に同調した。
そんな時だった。
霊夢「……あれか」
真横から3人の戦闘を眺めていた霊夢は、集中し、零が剣から発する微かな力の流れを感じて呟いた。
パアァァァ───ンンッッ……!!!!
早苗「……!!?」
天子「嘘っ……!?」
次の瞬間、風船が破裂するかのような音と共に、天子の放った斬撃は四散し
零「ここだッ!!」
まるで斬撃を掻き消す事が前提だったかのように、零はすぐさま強く踏み込み
ダンッ!!
天子「!?」
唖然と立ち尽くす天子に向け剣を振り抜いた。
ザンッ!!
天子「ぐっ!?」
零(っ……斬れない!?)
しかし、零の剣撃をモロに腹部に受けたにも関わらず、天子が斬り傷を負う事はなく
零(ならやっぱり……!)
グッ!
零は更に踏み込み
零「斬気閃ッ!!」
ヲンッ!!
今度はより強烈な斬撃を、天子の腹部に当て
ピシュッ!
天子「このっ……!」
それでも漸く薄皮一枚が切れた程度だったが
零「はあぁっ!!」
ドンッ!!
その狙いは別にあり、体勢を崩し、踏ん張りがきかない天子を零は剣で斬り飛ばし、空中へ打ち上げる。
零「早苗!」
早苗「あっなるほど!」
零の呼び掛けを受け、早苗は再びスペルカードを構え
早苗「秘法『九字刺しッ!!』」
バチチチチチィィッ!!!
天子「なっ!?」
発動したのは、格子のように天子を取り囲むレーザー。
早苗「これならあの石も使えないでしょう!」
言って、更なるスペルカードを取り出す早苗。
早苗「奇跡『白昼の客星!!』」
スペルカードが虹色に輝いた瞬間、天子の頭上には巨大な星が浮かび上がり
天子「っ───」
ドドドドドドッッ!!!
そこからまるで雨のように弾幕が降り注ぎ、格子ごと天子を直撃、その衝撃で地面へと撃ち落とされた。
・・・・・
天子を撃ち落とし、地面を好きなだけ抉って消えていった星。
零「随分……やばんな星だな」
そのスペルカードの威力を目の当たりにして、零は自分が標的じゃなくて良かった……等と心の底から思いながら呟く。
早苗「やりましたよ! 霊夢さん!」
早苗はこの戦いに決着がついた事を確信し、傍観していた霊夢に向けブイッとピースを向ける。
霊夢「……さぁ、どうかしらねぇ」
しかし、それに対する霊夢の反応はそんなもので
「よくも……」
次いで、立ち上る土煙の中から聞こえてきたその声に、零と早苗は驚き振り向く。
天子「調子に乗るのは私の特権なんだけどねぇ」
そこには、煤と土にまみれながらも構わず立ち上がる天子の姿があった。
早苗「そんなっ!?」
零「……タフなのも大概にしてほしいよな…」
額に冷や汗を滲ませる零。
天子「許さない。この私をこんなに汚して……!」
そう冷ややかに話す天子の目は本気で
天子「剣技」
零「!?」
ゾクリと、背筋が凍るような殺気を感じ構える零。
天子「『気炎万丈の剣ッ!!』」
ゴオッ!!
蒼い、炎のような揺らめきが緋想の剣を包み
ヲッ!!
零「ぐっ!?」
ドンッ!!
一気に間合いを詰めてきた天子の奮う緋想の剣に、零の持つ剣は弾き飛ばされ
零「しまっ……!」
天子「ハアァッ!!」
ザザザザザザザザンッッ!!!
それを拾う暇もなく、零は緋想の剣により滅多斬りにされた。
早苗「零さんっ!!」
幾度となく斬りつけられた零を目の当たりにし、早苗はあわてて飛び出し
天子「あんたもっ!」
ドンッ!!
天子はそんな早苗を視界の端に捉え、緋想の剣で彼女の気質を切り裂き
ゴオオォッ!!
早苗「えっ!? きゃあぁっ!!」
ズドンッ!!
早苗の気質である凪を掻き消し、山を襲う強風を一気に早苗にぶつけ、後方にある木の側面に叩きつけた。
ドサッ…
早苗「うぅ…」
零「さ、早苗……」
天子に斬りつけられ地面に四肢をつく零は、木に凭れかかるようにして力なく地面にたおれた早苗を見て
零「ぐっ……あぁぁっ!!」
無理矢理体を起こした。
天子「……おかしいな。あなたの気質は封絶した筈だし、打撃とは言えそもそも立てるような柔な攻撃はしてないと思うけど?」
目の前で立ち上がった零を見て、今度は天子が冷や汗混じりに問いかける。
零「……情けのつもりか分からないが……斬撃じゃなかったのが唯一の救いだったよ…」
そもそも、剣ではあるが斬ることを主としない緋想の剣。
天子は情けで斬らなかったのではなく、本来そういう物のための打撃だったのだが
とは言え、全身を走る激痛を無視して立ち上がった零は
零「今度は…こっちの番だ……!!」
剣すら手元に無いにも関わらず、その凄まじいまでの気迫で天子を圧した。
天子「な、なんなのよ……」
蛇に睨まれたカエルのように、ビクビクとぎこちなく天子は後退りし
「そこまで」
そんな時、外野からそんな声が飛んできた。
零「……?」
天子「……博麗の巫女」
その声は霊夢のもので
霊夢「これ以上は殺しあいになりかねないからね。
……まぁ、あんたにしては上出来なんじゃない?」
2人の近くにまで歩いてきて、霊夢は零にそう話す。
零「……なにを」
霊夢「あんたも、退屈しのぎにはなったでしょ?
こいつに完全に火がつく前に、帰っときなさい」
零の言葉を無視して、霊夢は天子に向けて話し
天子「……ふ、ふんっ。
まぁ、それで勘弁してあげるわ。
今日の所は……ね」
零「なにっ……!」
霊夢「食って掛かるな」
天子の言葉を聞き、グイッと身を乗り出す零をペチンと叩く霊夢。
天子「まぁ、私が本気を出せばあなたたちなんて敵ではないですけど」
霊夢「あーもー、分かったから帰った帰った」
シッシッと、まるでカラスでも払うかのような仕草で霊夢は返し
天子「ふんっ」
そんな霊夢の仕草が気にくわないながらも、天子は緋想の剣をしまい
同時に、山を覆っていた雨雲も、この周囲のみ異様に照っていた日光も、空に掛かっていた極光も消え去った。
そして天子は、ポイッ と要石を背後に投げると、それを巨大化させ
天子「ではまた、暇になったら来てあげるから」
巨大化させた要石に乗り、ゆっくり浮上しながらそう言い放った。
霊夢「こんでいい」
霊夢のそんな返答も軽く受け流し、天子は空へと帰って行く。
霊夢「……さてと」
そんな天子をしばらく眺めていた霊夢は、スッとふり向き
霊夢「私が止めてなかったら、負けてたわね」
意地の悪い笑みを浮かべ、零へとそう告げた。
零「んなっ!」
それに言い返そうとする零を無視して、霊夢は気を失っているらしき早苗に近づいていった。
零「あのなぁっ!」
無理矢理戦わされた上での言い種に、零も流石に苛立ちながら振り返ったが
ズギンッ!
零「ぐぅっ!?」
がくっ
蓄積していたダメージが、いっそう全身を貫き
零「いっ……てぇ~……」
膝をつき、零は動きを止めた。
霊夢「……」
霊夢はそんな零を尻目に、早苗のもとまで歩いてくると
霊夢「こら、起きなさい早苗~」
ヨダレを垂らして気持ちよく眠っているらしい早苗の頬をぺちぺちと叩いた。
早苗「はっ! ラーメンっ!」
霊夢「……はぁ?」
なんの夢を見ていたのか、とにかく早苗は目を覚まし
早苗「あれ? 霊夢さん……って、零さんっ!?」
目の前の霊夢を確認した後、その背後で踞る零を見て、あわてて近づいていった。
早苗「だ、大丈夫!?」
ガッ! と、勢いよく零の肩を掴む早苗。
零「いったい! 痛いって早苗!!」
早苗「あ、すみません」
とりあえず元気そうな零を見て安心したのか、早苗は辺りを見渡し
早苗「終わったんですか?」
今度は霊夢に振り向き、そう尋ねた。
霊夢「ん。 一様ね…」
特になにもしていないのだが、ん~っと伸びをしながらそう返す霊夢。
気がつけば、空を飛び交っていた鴉天狗たちも見えなくなっており
霊夢「まったく、調子のいい連中ね」
霊夢がそう呟き、空を見上げていると
霊夢「……あっちはあっちで、はた迷惑だし…」
視界の端に映った、空へと昇っていく要石。
それを何気なしに見つめていた……
その時だった。
ゾッ……
霊夢「───!?」
いままで感じた事がないほどの、とても冷ややかな気配を感じ
ズリュッ……
霊夢「…………え?」
ほんの一瞬、瞬きした瞬間に
確かに視界に映っていた要石が、捻れたような空間に呑み込まれ
…………。
消えた。
名前 :比那名居 天子
読み :ひななゐ てんし
二つ名:非想非非想天の娘、有頂天なお嬢ちゃん
能力 :大地を操る程度の能力、気質を見極める程度の能力(緋想の剣の能力)
種族 :天人くずれ
呼称 :てんし、総領娘様、有頂天子
所持スペルカード代表:
非想「非想非非想の剣」
気符「無念無想の境地」
「全人類の緋想天」
備考:
天界という雲の上に住む天人で比那名居一族の娘。
生まれついての天人ではなく、修行を積んで天人になったわけでもなく
名居の一族が神霊に祀られた際、部下であった比那名居一族も功績を認められて天界に住む事を許され天人となった。
その時に天子も人間から天人になった。
故に、正式な過程を得て天人になった訳ではなく、比那名居一族は他の天人から「不良天人」と呼ばれている。
天界での退屈な生活に不満を感じており、天界の宝具「緋想の剣」を使って幻想郷に異常気象による異変を発生させ、犯人を突き止めて自分のもとを訪れた者たちと戦うことで退屈しのぎをしようと試みた事もある。
また、その際に博麗霊夢を確実に出動させるため、博麗神社に局地的な地震を発生させ神社を倒壊させた。
見た目と言動に似合わず齢数百歳以上。
人間であったときの名前は「地子」。
天子の帽子についている桃は仙果と呼ばれ、神仙に霊力や不老長寿を与える実とされており、天人の主食でもある。
この仙果には体を鍛える効果もあるらしく、食べるだけで身体能力が上がる。