剣崎一真が艦これの世界にいく話 作:しょちょー
小さく吐息を漏らした若葉は少しだけ残っていたコーヒーを飲み乾した。冷めきって香気も飛んでしまってはいるが、その苦味は頭を落ち着かせるには丁度良い。普段から冷静であり、またそうあることを心がけている若葉ですら、剣崎の語った過去は混乱を生じさせるに十分なものだった。
「……アンデッド、統制者、そしてジョーカー、か。すまない。一真が嘘をついているとは思わないが、話があまりに大きすぎて。」
「いや、話している俺自身でも信じ難いくらいなんだ。気にしないでくれ。」
若葉たちから投げられる質問に答えつつ、剣崎は都合30分程度は話していたことになる。三人の少女たちはそれぞれに思うところがあるようで、若葉の言葉を最後にしばらく沈黙が流れた。
「つってもよぉ? 聞いたことねぇぞ、アンデッドなんて。えぇっと、そいつらが暴れまわってたのが、確か……。」
「12年ほど前、ですよね? そのときあたしは4歳……あったのかなぁ、そんなこと。」
椅子の背もたれにだらりと背中を預けた天龍が、軽く天井を見上げながらに呟いた。それに応じて、阿武隈も記憶を探るかのように唇に人差し指を添えて視線を伏せる。二人もまた、剣崎が告げたことを嘘だとは思っていない。艦娘でもない彼が深海棲艦と戦えていたという事実こそが、彼が語った戦いの日々を裏付けていた。
「かなり大きなニュースにはなっていたと思うんだ。BOARDが隠していた情報も明るみに出ざるをえなかったから。」
あの戦いのあと、アンデッドの存在はメディアによって大きく取り上げられることになった。当時剣崎がいたアメリカでも深刻なニュースとして受け止められていたことを覚えている。
しかし、当時幼かったであろう若葉たち三人がアンデッドのことをまったく知らないというのは、そこまで不自然なことでもない。わずかに過ぎった荒唐無稽な予感を振り払うように、剣崎は軽く頭を振る。
「赤城なら覚えているかもしれないな。」
皿に残ったエッグタルトのかけらを指先で摘み、覗かせた赤い舌先で舐め取ってから若葉が言う。そのとき、潮の匂いを孕んだ風が背後から吹きぬけた。その場にいた全員が背後、つまり外へと続く鉄扉へと視線を向けると、そこには赤城と明石の姿があった。赤城の座る車椅子を明石がゆっくりと押して、二人は剣崎たちが座る円卓へと近づく。
「噂をすれば……ってやつだな。どうだ、赤城? 傷の具合は。」
「えぇ、明日には出られますよ。」
天龍が赤城に視線を向けながらに問う。対する赤城は穏やかな声色で応えた。彼女は剣崎が海で見たときとは異なり、胸に徽章が着けられた紺色のダブルボタンのスーツに同色のハーフパンツを身に着けている。剣崎は知らず表情を強張らせた。あれだけの怪我を負って、わずかのうちに普通に会話ができるまでに回復することなんてあるのだろうかと。そんな剣崎の疑問を知ってか知らずか、赤城は剣崎の方へと向き直る。それを察した明石は、彼女が座る車椅子を剣崎の方へと近づけた。
「剣崎一真さん、ですね。さきほどは、ありがとうございました。あなたがいなければ、私は恐らく……。」
「良いんだ。気にしないでくれ。いや、そんなことよりも、傷は大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。まだ歩くのは少し厳しいですけど、ほら……って、はしたないですね。ごめんなさい。」
「ん、あ……いや、そうか、そうだよな。こっちこそ、すまない。」
赤城はその細くしなやかな指先で自分の太腿を示すと同時に、穿いていたハーフパンツの裾をたくし上げる。千切れそうになっていた右太腿には白い包帯が幾重にも巻かれているが、どうやら傷そのものは塞がっているようだった。これほど急速な回復は人間には到底不可能であり、剣崎が知る限りそんな芸当は自分を含めたアンデッドにしかできない。やはりこの少女たちは普通ではない、と確信しながら、まじまじと赤城の太腿を見つめる剣崎に、赤城は慌てた様子でハーフパンツの裾を元に戻した。狼狽する様子の赤城に剣崎は首を一瞬傾げたが、直後に理解してばつが悪そうに視線を逸らしつつ謝罪する。
「えぇっと、気を取り直して。初めまして、剣崎さん。赤城と申します。お恥ずかしいところをお見せしましたが、これでもこの南鳥島艦隊の旗艦を務めております。」
「同時に、この基地の司令官さんでもあるのです。」
車椅子に腰を下ろしたままではあるが、居住まいを正した赤城は整った所作で剣崎に頭を下げた。彼女の言葉に続いたのはどこか得意げな明石の声。先ほど見たときの白衣は脱いでいるようで、セーラー服を思わせる制服を身につけた明石は自分の胸に軽く手を添えて、誇らしげな表情を浮かべている。
「あぁ、よろしく。ところで、司令官というのはわかるけれど、キカン……というのは? 旗艦……フラグシップのことかな。」
「はい。そのご認識で合っています。その辺りも含めて、剣崎さんがご自分のことをお話くださったように、私たちも艦娘についてご説明したいと思っています。」
「ごめんなさい、一真さん。司令官の治療中、あなたのお話を二人で聞いていたんです。」
「いや、構わないよ。俺も君たちの話を聞きたいと思っていたところだから。」
明石が天井に視線を向ける。剣崎がその視線を追うと、丁度円卓の真上にあたる位置に小型の機械が据付けられている。あの機械を通じて、別室にいた赤城たちにも四人の会話が聞こえる状態になっていたということだろう。
「ん、そういうことなら、赤城姉ぇが適任だよね。お菓子、おかわり持ってくるね。」
「しゃあねぇな。もう一杯コーヒーいれてやるか。」
阿武隈と天龍がそれぞれ全員分のコーヒーと焼き菓子を出し終えてから、あらためて全員が席に着く。赤城は車椅子のままであったが、円卓の椅子と座高はほぼ同じであったため、特に不便はなさそうだった。
「剣崎さん、私たち艦娘とあなたは似ているかもしれません。元々は普通の人だったんです。」
剣崎の瞳をまっすぐに見つめながら、赤城はとりわけ落ち着いた声色で話し始めた。ことの始まりはおよそ6年前。国籍や目的がなんら不明の集団により、各国の海洋戦力が襲撃を受けたことに端を発する。敵の多くは通常の人と同様の姿形をしているが、その力は圧倒的で、米国を含めた主要国による艦隊ですらもあっさりと敗北を喫するほどであった。大量破壊兵器ですら、敵の一時的な撤退にしか繋がらなかったのである。つまり、人類は三度目となる核兵器の実戦使用をせざるをえなかったのだ。海の底から這い上がるように現れ、海上を這うように駆ける彼女たち――深海棲艦――を前に、世界の海が人類から奪われた瞬間だった。
そんな状況に光が差したのは半年後。西部アメリカのとある街の浜辺が深海棲艦の艦隊が襲撃を受ける。現地の海洋警備隊はすでに全滅しており、海岸周辺の街には壊滅をも覚悟した非難警告が出されていた。
そんな中、一人の少女が浜辺に立ちはだかる。泣き腫らした顔で両手に石を握り締めた彼女は、まっすぐに異形の集団に近寄っていく。少女の裸足の足は波に取られることなく、波風を味方につけたかのように海上を歩いた。そして、怒りの限りに上げた叫び声とともに投げられた小石は、海を割って深海棲艦たちを引き裂いた。
その少女こそが深海棲艦を打ち倒した最初の一人であった。彼女自身、深海棲艦によって父を喪った怒りと悲しみのままの行動であり、その日のことは良く覚えていないらしい。
しかし、彼女の存在が確認されて以降、各国で超常の力を自覚した少女たちが多数出現することになる。少女たちは一様に、力の発現と同時に第二次大戦前後に建造された特定の艦艇への強い親近感や自己同一感が現れるのが特徴であり、対象となる艦艇が重複することは今のところ確認されていない。このことから、彼女たちは――艦娘――と呼ばれ、彼女たちに芽生えた艦艇としての自己に敬意を込めて、原則的にはその艦艇の名で呼ばれることになる。
以降、各国の軍隊に編成されることになった艦娘と深海棲艦の戦いは続いているというのが現状であるらしい。剣崎は膝の上に置いた拳を握り締める。話を聞く限り、ことは世界規模で起きているようだ。にもかかわらず、剣崎は深海棲艦の存在など聞いたこともなかった。あまりに不自然な齟齬であり、考えないようにしていたある予感がわずかに真実味を帯び始める。
「……こんなところですか。まとまらない話でごめんなさい。」
「そんなことはないよ。良くわかった。」
話を終えた赤城は軽く頭を下げた。剣崎は緩く首を振って、一息つくようにカップを傾ける。
「そういやぁ、二人はアンデッドとやらのことは知ってんのか?」
「ごめんなさい。聞いたことがありません。」
「BOARDのテクノロジーには興味がありますが、残念ながら……。」
コーヒーを飲み干した天龍が、赤城と明石を交互に見ながらに問う。しかし、二人ともが首を横に振るだけだった。
「一真と私たちで食い違う点はあるが、お互いがどんな存在かはわかった。今のところはそれでいいだろう?」
「あぁ、十分だよ。」
全員の瞳をまっすぐに見てから、若葉が落ち着いた声色で言う。拭いきれない違和感はあるが、その正体を突き止める方法はいまのところない。若葉の言う通り、現時点ではそれ以上考えることに意味があるとは思えなかった。赤城たちにあわせて、剣崎もまた緩く頷いた。
「ねぇ、赤城姉ぇ。”私たち”にとって、大事なこと……一真さんに話しておこうよ。」
「うん、そうね。みんなさえ良ければ、隠すつもりはないわ。どうかしら、剣崎さんにお伝えしても構わない?」
テーブルの上で組んだ自分の指先に視線を落としてた阿武隈が、赤城を見ながら躊躇いがちに問いかけた。赤城は阿武隈を優しげな瞳で見つめた後、円卓に座る全員を順番に一瞥する。赤城以外の少女たちはそれぞれ赤城を見遣り、ゆっくりと頷いた。それを確かめた赤城は、軽く首を傾げた剣崎に向き直る。
「この南鳥島艦隊に所属する艦娘は、みんな一度沈んでいるんです。」
「沈む?」
「俺たち艦娘にだけ使われる言葉だよ。まぁ、戦いで死ぬってことだ。」
「それはつまり、君たちは、その……。」
出かかった言葉の意味の重さに、剣崎は視線を伏せて口をつぐんだ。そんな剣崎の意図を理解したうえで、赤城は緩く微笑んで小さく頷いた。
「えぇ、そういうことです。深海棲艦に殺されたときのことも覚えていますよ。けれど、次に気づいたときには再び艦娘として甦っていました。」
剣崎は思わず少女たちへと視線を向けた。少なくとも一見する限りは、若葉と明石はごく平然としているように見える。一方天龍は苛立たしそうに視線を逸らしていて、阿武隈は胸の前で両手を組んで、どこか不安そうにしていた。
「一度間違いなく死んだ奴が復活しやがったんだ。俺なんて、そりゃあもうぐっちゃぐちゃになって沈んだんだぜ? そりゃあ気味悪いよな。っつうわけで、俺たちは本州から離れたところの基地に押し込まれたってわけだ。まぁ、でも……。」
「みんな同じ境遇を抱えている。だからというわけでもないが、私はみんなを心から信頼しているし、この日々が大切だと思っている。」
「そう、だったのか。」
両手を頭の後ろで組んで、背もたれで身体を仰け反らせながらに天龍が言う。その言葉に続けるように、剣崎を見遣りながら一切の迷いなく告げた若葉の言葉は、彼女たち全員の意思が現れているように見えた。
「さてと、私たちのお話はこれくらいでいいでしょう。剣崎さんはこれからどうされるおつもりですか? 私としては、あなたの装備とか、体組織とか、色々見せていただきたいのですけど……。」
「別に、それは構わないんだけど。ひとまず、仲間たちの状況が知りたいんだ。と言っても、俺自身が本州に戻るわけにはいかないからな。一旦連絡を取ってみようと思う。」
明石が顔の前で両手をすり合わせつつ、上目気味に剣崎を見つめながらに囁いた。一方の剣崎としても、特に調べられることを厭うものではなかったが、それ以上に始たち仲間の状況が気になった。思った以上に大きな戦いが起こっている以上、彼らも何らかの形で戦っている可能性は高いと踏んだのだ。
「えぇっと、始さん……? たちと、一真さん自身が会うことはできないんですよね。」
「あぁ、さっき話したように、俺と始の間で生存者競争が始まってしまうんだ。だから……仲間たちの無事さえ確認できたら、また旅に戻ろうと思う。」
問いかける阿武隈に応じて、剣崎は深く頷いた。ジョーカー同士で戦いが始まった場合、その時点で統制者による世界の崩壊が始まるかもしれない。赤城たち艦娘が深海棲艦と戦っている状況で、さらに混乱の火種になるような選択肢を取るつもりは剣崎にはなかった。
「わかりました。では、後ほど電話をお貸しします。この島は通常の携帯電話は使えませんから。」
「あぁ、ありがとう、助かる。」
赤城の申し出に剣崎は軽く頭を下げる。その直後、壁にかけられた古びた時計が小さな鐘の音を鳴らした。剣崎が視線を向けると、時刻は17時を過ぎているようだった。
「そうだ。剣崎さん、良かったら今日はこの基地に泊まっていきませんか? 助けてくださった方に、少しくらいはお礼がしたいですから。食事とお風呂も用意できますよ。」
「ありがたいけど、迷惑じゃないか?」
確かに、現在の剣崎にとってはありがたい提案だった。アンデッドの身体とはいえ、疲労は蓄積する。特に今日は心身ともに疲れを覚えていた。久々に屋根の下で眠れるのなら、それほどありがたいことはない。剣崎は少女たち全員に問うように言葉を返した。
「とんでもない、一真さんなら大歓迎。女の子ばかりだから、やたら泊まりたがる政府のおじさんなんかは叩き返してますけどねー。」
「私も一真の戦いの話が聞きたいと思っていたんだ。是非泊まるといい。」
「今日の飯当番は俺なんだ。この際、天龍様の超美味ぇ飯も食って帰るといいぜ。」
「採血だけはさせてくださいね。」
「そうか。だったら、お言葉に甘えて泊めてもらってもいいかな?」
赤城以外の少女たちもまた、特に剣崎を滞在させることに異議はないようであった。剣崎が少々躊躇いがちに問うと、彼女たちは口を揃えたように、もちろん、と応えた。
***
12月の冷たい夜の潮風が頬を撫でた。満月の月明かりを受けて、海上には遠く映る水平線からこちらに向ってプラチナを溶かしたかのような光の筋が揺らいでいる。
剣崎は一人、砂浜に腰を下ろしていた。あれほど賑やかな食事は何年ぶりだっただろうか。日本を出てから一度も味わうことのなかったものであることは間違いなかった。自分が孤独であると思ったことはないし、永遠に独り生き続けることを怖いと思ったこともない。しかし、こうして独りでない時間を過ごすと、確かに少し寂しい気分を覚えてしまうのは、まだまだ自分が甘いということだろうか、と剣崎は小さく笑みを浮かべる。
「お兄さん、お隣は空いてますか? なんて、ね。」
少し離れたところから、少々芝居がかった優しげな声が響く。肩越しに振り返ってそちらを見ると、松葉杖で身体を支えた赤城が歩いてくるところだった。長い黒髪を海風になびかせて、ゆっくりと剣崎に近寄るその足は弱々しいながらも地面に着けるほどに回復しているらしい。
「赤城か、今日はありがとう。」
「とんでもない。むしろ、助けていただいて本当に……。」
「こちらこそ、とんでもない。」
二人小さく笑い合いながら、剣崎は腰を下ろす赤城に肩を貸した。二人並んで、夜の海へと視線を向ける。
「唐突かもしれませんけど、自分語りをさせてください。剣崎さんに聞いて欲しくて。」
「もちろん、いいよ。」
「なんだかね、最近自分に自信を失っていたんです。」
「自信?」
「私が艦娘としての旗艦と、艦隊の司令官を兼任していることは話しましたね。実は、司令官のお仕事しかできないはずだったんです。」
「それは、つまり……。」
「はい。私は、艦娘ではありませんでした。防衛大を出てすぐの新米が、この島の艦隊を指揮するように、なんて辞令を貰って……。なにせ今は人手不足ですから、珍しいことではないんです。」
「ということは、艦娘の力を得たのはこの島に来てからなのか?」
視線を向けた先の赤城は、抱えた両膝に額を押し付けていた。剣崎の問いから少しだけの間を置いて、赤城は口を開く。
「いいえ。島に辿り着いたときには、艦娘でした。ここに来る途中のフェリーで、深海棲艦の攻撃を受けたんです。だから、あの子たちとは少し違うかもしれません。人間として死んで艦娘として甦ったわけです。」
剣崎は無言のままに、その先を促すように頷いた。赤城は自身の膝から顔を上げて、剣崎の方を見つめる。
「艦隊司令 相良茜としても、艦娘 赤城としても……とても中途半端で。現在進行形で焦っているのだと思います。」
「それが、今日の怪我に繋がった?」
「わかりません。でも、剣崎さんの話を聞いて……その、勝手な言い分なのは承知の上ですよ? 少しだけ、羨ましいと思ったんです。自分がやるべきことに、強い信念と自信を持っているんだな、って。」
「そんなことはないよ。俺なんて、自分の姿形すら不定形じゃないか。ただ、自分にできることを必死にやっていただけなんだ。結局、好きなんだよな。誰かの為に戦うことが、さ。きっと、それだけなんだよ。」
剣崎は足元の小石を握り締めて、海の方へと放り投げた。水切り石の要領で、小石は波頭すらも飛び越えて見えなくなる。赤城も剣崎に倣って手ごろな小石を放り始めたが、凄まじい勢いで遠くへ飛ぶばかりで、一度たりとも海面を切ることはできなかった。
「不定形……ジョーカーアンデッド、でしたっけ? その姿の方が楽なら、どうぞ。私、エイリアンモノの映画とか、好きですよ?」
「結構酷いこと言うな、赤城って。」
にんまりと悪戯な笑顔で剣崎の顔を覗き込んできた赤城に対して、口を尖らせ気味に応じた剣崎。一拍の後、二人揃えて肩を震わせて笑い出す。
「好きだから……ですか。やっぱり、羨ましいですね。のんびりと考えてみることにします。」
「あぁ、それがいいと思う。あまり複雑に考えるのは良くないんだ。まぁ、言うのは簡単なんだけど。」
「まったくです。私、そろそろ眠ります。ありがとう、剣崎さん。」
両手をついて立ち上がろうとする赤城に再び肩を貸して、ゆっくりと遠ざかる彼女を見送る。海面に映る月を眺めながら、剣崎も緩慢に立ち上がった。今夜はぐっすり眠れそうだ。