剣崎一真が艦これの世界にいく話   作:しょちょー

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An(the) ominous feeling(s) creeping in.

 都内にあるビジネスホテルの一室。日本有数のビジネス街にあって地下鉄の駅にも近く、辺りにはコンビニも多いが、その分部屋は狭い。観光客で賑わっていた頃は、この手のホテルですらも満室続きだったという。もっとも、ここ数年は深海棲艦の出現によって観光客どころか出張での利用者も激減したらしく、多くの宿泊施設が廃業に追い込まれつつある。結果、未だに営業を続けているホテルの予約は取りにくい状況が続いていた。部屋の中央壁際に設置されたベッドの上、長い黒髪を広げて両足を抱えるように眠っているのは一人の少女。

 

「んっ……。」

 

 電子音が室内に鳴り響く。無意識に音から逃れるように寝返りを打ったものの、当然音が止むことはない。十秒ほどして少女はうっすらとまぶたを開ける。両手で枕元を探るが、それらしいものを掴むことができず、ようやく大儀そうに上体を起こすことにした。ホテル備え付けの浴衣は襟元が派手にはだけてしまっていて、素肌の上半身をちっとも隠せていない。しかし、そんなことを気にする余裕があるはずもなく、視線を部屋中に巡らせてベッドサイドの電話台に置かれたままの携帯電話を手に取った。

 

「は、はい! 親潮です。」

 

 画面に表示された発信者の名前を見て、慌てて携帯電話を耳に添える親潮。中途半端にはだけた浴衣が邪魔で、携帯電話を持ちにくいのだろう。鬱陶しそうに帯を解き、浴衣をベッドに放り投げる。慌てた様子で鞄から取り出したノートパソコンを片手に、ベッドの上にあぐらをかいて座る。もはや下着一枚の状態ではあるが、幸い室内は十分に暖房が効いていて、寒くはなかった。

 

「おはようございます、赤城司令。はい、おっしゃるとおり、今起きたところです……。あ、でも! 今すぐで大丈夫ですから。」

 

 電話越しにもかかわらず勢い良く首を縦に振る親潮。同時に、ノートパソコンの画面を開き、表計算のソフトを起動させる。ちょっとしたメモにも、親潮はこの手の表計算シートを使うのが好きだった。

 

「はい、本日は予定通り、本省に申請書類を提出しにいきます。え? 追加のお願い……?はい……。」

 

 電話越しの赤城の話を聞きながら、親潮は機関銃のようにキーボードを叩いていく。聞かされた話は、にわかには信じ難いものだった。赤城の命を救った剣崎という青年の話。アンデッドにまつわる戦いの経緯。そのいずれもが親潮の理解を超えてはいたが、赤城の言葉である以上、親潮にとっては十分信用に値するものだった。

 

 昨夜、剣崎という客人は基地の電話機を借りて、当時の仲間たちに連絡を試みたのだという。しかし、誰一人として繋がらなかったらしい。そこで、ちょうど本土へと出張に出ていた親潮を頼ることになったとのことだ。剣崎はそこまでして貰う必要はないと何度も辞していたらしいが、南鳥島の艦娘たちに押し切られた形なのだろう。なんとなく、親潮にはその場面が想像できる。勝手なイメージではあるが、人の好い、現代の英雄かくあるべしといった感じの青年と、押しの強い彼女たちの姿が。

 

 いずれにせよ、赤城の指示に応じない理由はない。こんな自分を暖かく迎えてくれる彼女たちに、どんな形であれ報いられるなら、それに勝る喜びは親潮には存在していなかった。電話を終えた親潮は、携帯電話の時刻表示を確かめる。時刻は7時前。まずはベッドから飛び降りる。旅行鞄から乱雑に取り出したのは、色気のかけらもないモールドカップのブラジャー。面倒そうに手早く身につけて、事前にハンガーに吊っておいたシャツに袖を通した。ふと、バスルームの姿見に映る自分に視線を向ける。みぞおちのあたりから下腹部にかけて、薄桃色に皮膚が変色している。親潮が沈んだときに受けた傷の跡だ。普段は意識しないようにしているが、鏡で見ると傷跡と正常な皮膚の境目がやけに目立つのだ。何故シャツのボタンを止める前に鏡を見てしまったのか。自分に苛立ちながらも、思わず胸を駆け上がった嘔吐感を必死におさえて、とにかく急ぎ身支度を整えることにした。

 

 黒のジャケットを羽織り、革製のブリーフケースを片手にした親潮が最初に向かったのは市ヶ谷。ここに防衛省の本省が存在する。ホテルからは電車で20分ほどの距離だった。平日の朝といえば、数年前までは世界有数の通勤ラッシュを拝めたものだが、今は電車内に空席すら見られるようになっている。企業活動そのものが停滞しているというのもあるが、政府の支援と艦娘たちの健闘により、一定の輸出入は維持しており、失業率はそれほど上がっているわけではない。むしろ、深海棲艦の攻撃を想定して、時間差通勤が一般的になったというのが混雑解消の大きな理由であるらしい。確かに、以前のラッシュアワーを狙われたなら、それこそ日本の経済が致命的な打撃を受けかねない、というのは一理あるのだろう。

 

 防衛省での仕事はあまりにもあっけなく終わった。受付で身分を告げて、指定の部署で担当者に資料を提出し、提出した資料に基づき十分程度の打ち合わせをする。提出した資料も親潮が作ったものであり、この手の仕事は得意分野だった。今回申請したのは、次年度の南鳥島基地にかかる予算案。艦娘たちの賃金を含む様々な費用は、当然ながら国の防衛費の一分として計上される。人類を守るにも、お金は必要なのだ。

 

 本省のビルを出た親潮は、不意に肩を叩かれてびくりと振り返る。親潮の視線の先には、艶やかなアーモンド色の髪を風に揺らす、優しい笑顔を湛えた女性の姿があった。

 

「Hey, 親潮! How have you been?」

「あ、金剛さん……。ご無沙汰しています。元気にやってますよ。」

 

 女性らしく豊かなシルエットを強調するような黒のパンツスーツを着た金剛は、少々強引に親潮の肩に腕を回すと、力いっぱいに抱きしめた。

 

「I’m relieved to here that. 親潮が戦い続けていると聞いて、あれからずっと心配していマシタ。」

 

 金剛の胸元に顔を埋めさせられたまま、親潮はわずかに拳を握りしめる。彼女が善意で言っていることはわかっている。金剛は昔から一貫して、親潮に戦いは向いていないと考えているらしい。親潮自身もまた、そんなことは百も承知だった。

 

「こんな風になったのも、何か意味があると思うんです。だから、最後まで……。」

「I know what you mean, but...忘れないデ。辛くなったらいつだってやめられマス。ワタシは、親潮を……。」

 

 親潮を抱擁する腕からゆっくりと力が抜かれていく。解かれた金剛の両腕から抜け出した親潮は、一歩下がって、自分より少し背の高い彼女の表情を見上げる。金剛の優しげな瞳は、今の親潮にとって、胸の奥の痛みを呼び覚ますものだった。

 

「気にかけてくださって、ありがとうございます。でも、大丈夫です。南鳥島でも、皆さんによくしてもらってますから。」

「Yes...赤城は艦娘としてもAdmiralとしても、とても優秀な人デス。でも、何か困ったことがあれば、いつでも Get in touch with me.」

「はい、ありがとうございます。金剛さん。」

 

 親潮は金剛に頭を下げて、踵を返した。金剛には色々と世話になった恩があるし、尊敬に値する人物だ。そのうえ、能力面でも人物面でも、日本で最高の艦娘の一人であることに間違いはない。しかし、少なくとも今はまだ顔を合わせるのが気まずい人であった。こういうときに限って、親潮は良くない巡り合わせを引いてしまうのだ。

 

----------

 

 市ヶ谷から何本かの電車を乗り継いで、さらにタクシーを使って計一時間程度の道程の末、親潮は一件のレストランに辿り着く。駅からここまでの間は比較的新しい住宅やビルも見られたが、店の周囲には舗装されていない道と背の低い草の絨毯が広がっていた。アーリーアメリカンを思わせる落ち着いた印象の店構えとあわせて、ここだけが時代に取り残されたようにも見えてしまう。赤城からの指示で訪れたとはいえ、親潮個人としても好みの雰囲気だった。錆びついたアンティークカーを横目に、スロープを上がって店の扉を開ける。扉の横には、《San Agustín》と刻まれた木製のプレートがかかっている。これが店の名前なのだろう。

 

 店内に足を踏み入れた瞬間、コーヒーの甘い匂いが鼻腔を擽った。天龍が淹れるコーヒーにも負けないくらいの豊かな香りは、建材に用いられた古い木々の匂いと相まって、どこか懐かしささえ感じさせる。店内には親潮以外に十名ほどの客がいるようだ。平日の昼前という時間を考えれば、繁盛しているといえるだろう。

 

「いらっしゃいませ。どうぞ、お好きな席へ。」

 

 カウンターでコーヒーを淹れていた初老の男性が、低く穏やかな声色で告げる。彼がこの店のマスターであろう。親潮は小さく頭を下げて、窓際の二人がけの席へ着いた。席に備え付けられたメニューを見ているうちに、マスターが席のそばへとやってくる。

 

「ご注文はお決まりですか?」

「はい。コーヒーと、チーズケーキを。」

「承知しました。お待ちください。」

 

 無駄のない所作で親潮に頭を下げて、踵を返そうとするマスターに、親潮が小さく声をかける。

 

「あの、ちょっとお聞きしたいことが……。」

「はい、何かございましたか?」

「このお店、随分前から続けていらっしゃるのですか。」

「そうですね。大体25年ほど前から、といったところでしょうか。」

「ずっとこのお名前で……?」

「えぇ、サン・アグスティンというのは、コロンビアにある遺跡の名前です。この店を始める前、会社員時代に赴任していまして。」

「そうだったんですね。素敵なお店だったので、ちょっと気になってしまったんです。ありがとうございます。」

「いえ、気に入っていただけたなら幸いです。では……少々お待ちください。」

 

 鞄から取り出したスマートフォンに、親潮は何やら文字を打ち込んでいく。赤城から頼まれたのは、《ハカランダ》という店に向かって、《相川始》なる人物に接触するか、ないしは彼の消息を探ることだった。赤城から送られた情報が正しければ、この店がそのハカランダであるはず。しかし、店の名前が一致しないうえに、マスターの話によれば店の所有者が変わったとも考えられない。左手でスマートフォンを支えながら、指先を唇に添える。考えても答えが出る類の話ではないから、まずはありのまま赤城に報告することにした。

 

 メールを送り終えた頃、コーヒーとチーズケーキが供される。ハンドドリップ特有の僅かに油膜が浮いたコーヒーと、しっかりと焼き目のついたベイクドチーズケーキがテーブルに並ぶ。南鳥島で味わえるものとどちらが上だろうかと、少しだけ美食家気取りでコーヒーを一口飲んだ後、切り分けたケーキを口に運ぶ。料理全般が得意な天龍と阿武隈は、それぞれコーヒーと洋菓子の類に関しては特に一家言を持っている。そんな彼女たちが作るコーヒーとケーキに、この店も決して負けてはいなかった。親潮は小さく頷いて、再度コーヒーカップに唇を寄せる。ちょうどその時、店の奥にある地下へと続いているらしい階段から、木製の床特有の甲高い靴音が響いてきた。

 

「お忙しいところ、申し訳ございませんでした。ご協力、感謝いたします。」

「いいえ、特に何もないようで、安心しました。艦娘さんが確認してくださったなら、安心できますしね。」

「私たちが持っていた情報が誤りだったのかもしれません。再度十分に捜査したうえで、あらためてご報告に上がりますね。」

「はい、ありがとうございました。」

 

 聞こえてきたのは、二人の女性の声。そのうち一人の声は、酷く聞き覚えのあるものだった。フォークを持つ手がわずかに強張ったのを自覚する。

 

「折角ですから、もしお邪魔じゃなければ、お茶の一杯でもいただいていこうかしら。」

「えぇ、是非どうぞ。」

 

 悪い予感に限って的中するものだ。地階から姿を表したのは、この店の従業員であろう女性と、さきほど顔をあわせたばかりの金剛だった。すぐに視線を逸らしたつもりだったが、この狭い店内で隠れられるわけもない。当然親潮に気づいた金剛は、驚きに瞳を見開いたものの、すぐさま平静を取り戻したようだった。

 

「知り合いがいたようなので、あちらの席を使いますね。コーヒーを一杯、お願いします。」

「はい、すぐにお持ちいたします。」

 

 彼女の靴音が緩やかに近づいてくる。金剛の立場で考えるなら、親潮がここにいることは予想外であったにしても、不自然ではない。赤城からの指示さえ漏らさなければ、何も問題はないはずだ。なのに、どうにも手の平と脇の下が汗ばむ程に焦燥感を覚えてしまう。この嫌な予感は、何を意味するのだろうか。

 

「Too much of a coincidence. 親潮……、なんでここにいるデス?」

「金剛さん、偶然ですね。折角本州まで来たんですから、飛行機の時間まで少し観光していこうかな、って。ちょうどネットで評判のいいお店が見つかったので。こういうアンティーク調のお店、好きなんです。」

「Well, いいですネ。本当はこの辺りを案内できれば良かったのデスガ。」

 

 親潮は思わず唇を噛みたくなった。とっさに出た言い訳にしては、それなりに説得力こそあっただろうが、早口で説明じみすぎている。自分でも分かるくらいに不自然だった。しかし、今更取りつくろうこともできない。金剛の瞳から目を逸らさないようにして、ゆっくりと息を吐く。まずは、この場を当たり障りなく切り抜けることに集中しよう。隠すべきことこそあるが、彼女はそんなこと露も知らないのだ。何を焦る必要があるのかと、自分を納得させる。

 

「金剛さんこそ、どうしてここに?」

「本省の電探が、この辺りに反応しマシタ。深海棲艦の上陸は不可能だと思いマス。でも、Just in case.」

 

 電探、と呼ばれる装置がある。小さいものならスマートフォンの周辺機器程度のものから、大きなものだと建物の屋上に設置するような巨大なレーダー装置まで、それぞれ性能に違いはあれど、用途は単純だ。深海棲艦が発するとされる特有の電波を受信し、その位置を把握するために用いられる。本省や各海上自衛隊の基地に設置された電探がおおむね日本で最高の性能を誇るものであるが、確かに陸上で深海棲艦の電波をキャッチしたとあれば大事だ。金剛ほどの優秀な艦娘が動くことも頷ける。

 

「私も、何かお手伝いができますか?」

「大丈夫ネ。出張で疲れてる親潮をこき使ったら、赤城に怒られてしまいマス。きっと電探の調子が悪かっただけ。しっかりと調整してもらいマス。」

 

 金剛は供されたコーヒーを静かに一口飲んでから、優しげな声色で言葉を返した。話題の矛先が親潮に向くことは避けられたようだ。親潮の南鳥島での生活について、金剛の本省での忙しさについて、止めどなく続く他愛もない会話にも、親潮は注意を払う。金剛は普段の言動こそ明るく豪放磊落であるが、その実非常に怜悧な面を持っている。いらぬ疑いを抱かせるのは避けたかった。

 

「金剛さんは、この後本省に戻るのですか。」

 

 コーヒーとケーキを平らげた親潮は、金剛にちらりと視線を向けて訪ねる。結局、緊張でほとんど味わうことができなかったのが心残りだった。

 

「Yes. でも、ちょっとゆっくりしていきマス。このお店の雰囲気素晴らしいデス。親潮が言うように評判がいいのも納得ネ。」

「わかりました。もう少し金剛さんとご一緒していたいですが、帰りの飛行機の時間もあるので、そろそろ失礼しますね。」

「Oh...残念。またお茶しまショウ。そうだ、ここはワタシが払いマス。」

「いえ、そんな……。」

「遠慮しナイ。Be my guest!」

「わかりました。お言葉に甘えます。今日はありがとうございました。」

「いいえ、また会いまショウ。」

 

 深々と頭を下げた親潮は、静かな足取りで店を後にしようとする。しかし、その背中に金剛の言葉が投げかけられた。

 

「待って、親潮。その、あまり無理はしないでネ。繰り返すようだけど、必要ならいつでも迎えにいきマス。だから……。」

「はい、ありがとうございます。」

 

 視線を逸しながら、どこか所在なさげに金剛が告げる。彼女にしては珍しく歯切れが悪い物言いではあるが、南鳥島での生活に既に馴染んでいる親潮に遠慮しているのかもしれない。いずれにせよ、その気持自体はありがたいものだった。親潮は再度頭を深々と下げてから、店を後にした。

 12月の北風がやけに冷たいと思ったら、親潮のシャツの脇や背中には冷や汗が随分と滲んでいた。同じく赤城からの指示にあった、橘朔也と上城睦月の情報収集は、一度ホテルでシャワーを浴びてからでもいいだろう。何より、このまま適当に出歩いたなら、また金剛に出会ってしまいそうだと親潮の直感が告げていた。

 

----------

 

 金剛が店を出たのは、親潮が店を後にしたおよそ三十分後のこと。鞄から取り出した携帯電話を見つめて、金剛は眉間に皺を寄せる。その瞳には、隠しきれない懊悩の色が滲んでいた。親潮の姿を目にしたとき、恐怖と驚きで心臓が止まる思いがした。よりによって、なんでここにいたのだろうか。偶然であるのは間違いないにしても、一歩間違えれば戦いに巻き込んでいたかもしれない。もう二度と彼女に傷ついてほしくないと願っているのに、《自分の目の届く範囲で》、という妥協点を付け加えてしまう滑稽さに息を吐くような笑い声を漏らした。一度呼吸を整えてから、電話を耳に添える。

 

「金剛です。おっしゃるような人物は、存在が確認できませんでした。えぇ、ハカランダなる店は最初から存在しなかったようです。」

 

 金剛の少し癖のある口調は、そうでなければ発話ができないわけではない。親しみのある相手との、リラックスした会話であればこその癖だ。したがって、金剛は通話先の相手に親しみを感じているわけではないことになる。親しみを感じられるわけがないのだ。

 

「いいえ、気になる人物もおりませんでした。おそらく、ご推察の通りなのだと思います。」

 

 金剛は店の前で待たせていた車に乗り込む。バックミラー越しに運転主に目配せをすると、車は緩やかに走り出す。

 

「相川始、橘朔也、上城睦月……そして、剣崎一真。いずれも、存在を証明する正式な記録はないようです。万が一、この世界に潜んでいたとしても……私と彼女で速やかに始末します。どうかご安心を。」

 

 運転手は会話の剣呑さに驚く様子を見せない。慣れているのだろう。内心覚える不快感を金剛は努めて抑えながら、淡々と会話を続ける。

 

「いいえ。私たち自身の為ですから。彼女も、同じだと思います。」

 

 一つ、様々な感情を込めた呼気を吐いて、金剛は車のガラス越しに遠くを見つめる。

 

「Your Divinity, どうか私たちをお導きください。」

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