我輩は魔神柱である   作:壬生谷

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【訃報】空想樹オロチ・フロストレルム、逝く【享年22時間】


第二部
我輩はカルデアスである


 ――ありえない。

 白紙化した地球、あるいはカルデアス。その地表の裏。銀河の奥底で胎動していたソレが呟いた。

 

「空間が漏れはじめている。あれは――異聞帯のサーヴァント?」

「いかにも。マスター・藤丸立香がカルデアス側だった私を信じ、喚んだように。

 彼らもまた、かつて敵だったカルデアを容認し、英霊としてその声に応じてくれた」

 

 まさに()()()殿()の再現だ。

 

 名探偵はかつての出来事(2016年12月22日)を思い返す。彼自身は当時の戦いに参戦していなかったが、その時の仔細をその明晰な頭脳に残らず記憶していた。……そして当時の実態(中身)も。

 けれども『解析』の理を持つ獣はその類似に気づくことはない。理解することはない。

 時間神殿に集った英霊たちと最後のマスターが立ち向かった理由も。

 そして異聞帯というそれぞれの世界を否定することに繋がっているにも関わらず、彼らの礎でもある獣と戦うことに応じた英霊たちの感情も。

 ……『彼ら』の欲望も。

 

「――ああ、宇宙の底から、呆れました。

 ここまで歩み寄っても同意しない頑なさに。

 ここまで尽くしても相互理解に至らない賢しさに。

 理解しました。結果の分かりきった戦いをはじめましょう。

 貴方たちの中身は要らないと言いましたが、その外見も要りません。

 

 原初証明宇宙 支柱七樹 解放。

 凍結していた天体運動を再開。

 侵入個体の速やかな抹消を許可します」

 

 彼らの前から姿を消したマリス・カルデアスは、知る由もなかった。22時間後、妙に興奮した彼らの異様な侵攻と、その胡乱な精神状態を。

 

「――時間神殿の再現と言ったな、ホームズ。その言葉だけは評価してやる」

 

 ノウム・カルデアと行動をともにしていた、かつての魔術王、ソロモンは皮肉交じりの表情で言った。

 彼はその目で見たのは 時間後の未来。そして三年前の過去。どうも既視感があるように感じたのは気の所為ではないだろう。

 けれども妙に覚悟の決まった差異を顧みて、一人呟いた。

 

「……全てが無くなるとはいえ、その妙な島国根性はズレているだろう」

 

 

 

***

 

 

 

 ロストベルトNo.1。オロチ・フロストレルム。ロシア異聞帯に屹立していた空想樹。そのオリジナル。

 カルデアを脱出した彼らが初めて降り立った異聞帯の礎の麓には、無数の英霊と()()()()()()()の姿があった。

 

『警告 警告

 敵性物体 が 発生 しています

 解析 内部機能 および 自立思考 あり

 空間構造 と 認められません

 

 空想樹オロチ:異聞作成方針 弱肉強食思想によるフリーズエンド

 

 その 残虐的な滅亡路線 に 従って

 敵性物体 を 排除―――……なんです?』

 

 不意に、カルデアスのナビゲート音声が困惑に途切れる。間違えてパンケーキでも目撃したかのように素っ頓狂な声であった。

 

 気の所為でなければ敵性物体にエラー発生していなかっただろうか。

 無数の英霊。異聞帯の英霊。汎人類史の英霊。異常なし。

 マスター・藤丸立香。異常なし。

 マスター・藤丸立香。異常なし。

 無数の藤丸立香。……異常あり。

 

『……? 藤丸立香。なぜ増殖しているのです?』

 

 思わず発された疑問に無数の藤丸立香は応えることはない。3300万の軍勢とも言うべき藤丸立香(男もしくは女)(イラスト担当:複数)の厳かな雰囲気はかつての特異点でカルデア家の殿を務めただけあるだろう。

 陣形の先頭に立つ藤丸立香はというとまるで一番槍を行かんと言わんばかりの武士の如き面で黄金の果実を齧っている。

 一発触発の空気のさなか、どこかで藤丸立香の声がした。

 

「ここがオレたちの死に場所だああああああ!!」

 

 雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 おおよそ同一人物とは思えない鬨の声が次々と上がる。

 

「FGOをサ終させるぞおおおおおおおおおお!!」

 

 雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 おおよそ同じ人類とは思えない三頭身の藤丸立香がその身の丈からは想像のつかない雄叫びを上げる。

 

「素材とQPよこせええええええええええええ!!」

「バルバトス――――――ッッ!!」

「▇▇▇▆▆▆▅▂▇▆▆▆▂▂▂▂――!!!!」

 

 2016年から何の成長も感じられない欲に満ちた叫びが無数の藤丸立香から発せられる。第五節での啖呵はどうした。

 一方時間神殿にかつて集結した英霊たちはというと「ああ、あれからその部分は変わってないものだな」などと微笑ましい目で彼らを見ている。そんな過去もつ異聞帯の英霊たちは「あいつあんな感じだったっけ……?」と困惑に満ちた顔を向けていた。というか引いていた。

 

 そして。

 

「皆あああああああ!!!! 斧を持てええええええええええええ!!」

 

 雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 もはや音響兵器とさえ聞き紛う雄叫びとともに彼らの簡易召喚が無数の光とともに発動する。

 

 数万騎のサーヴァントが戦場に攻め入り始めるのを皮切りに、この場に集った英霊たちも空想樹オロチに立ち向かうのであった。

 

『……まあいいでしょう。雑兵を増やしても、いずれ気力が尽きるほうが早いのですから』

 

 しかし、本当にそうだろうか。

 どう見ても異常な光景でありながら余裕さえ感じられるマリス・カルデアスの声は彼らの声にかき消されていくのであった。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 空想樹一樹2000万。これはかつての時間神殿の魔神柱たちの10倍の再生回数である。そしてその出力も当然2016年の比にならない。

 

『カルデアの勢力だけなら一樹で終了します。異聞帯の反逆を加えても二樹で終了です。

 これは戦力面での解析ではありません。人としての精神面での解析です』

 

 カルデアスの評価は変わらない。終わらない戦いというものは精神に異常をきたす。一樹につき2000万回切断を7度。途方もない数のように思えよう。

 けれどもマリス・カルデアスの評価は人の欲望という変数を入れていない。

 

 地球時間にして22時間で切除されたオロチ(5.7バルバトス)は秒速248回伐採されている。3300万人の藤丸立香が大量に簡易召喚を行った結果であろう。これはミツバチが一秒に行う羽ばたきと同速である。

 オロチが吐き出す素材とQPは藤丸立香一人一人の欲望と島国根性に火をつけた。それどころかおかわりが欲しいなどと嘯く者もいるだろう。狂骨すぐ無くなるもんね。

 

『――現存する支柱七樹より提案が届いていますが、確認しますか?』

『必要ありません。彼らは私まで辿り着いた優秀な人間です。

 三樹ほど切除すれば勢いは消え冷静になるでしょう。

 旧人類と私、どちらを優先するべきかを。』

 

 マリス・カルデアスは知る由もない。

 現実時間にして9年の月日はカルデアをあまりにも効率的にした。令和のカルデアは伐採効率を大幅に上げる戦力(スカスカコヤコヤWキャスオベロンetc)に富んでいる。

 効率が良いとは、素材をより早く回収できるということ。

 効率が良いとは、『解析』の獣の予想を遥かに超えて空想樹を伐採できるということ。

 

 支柱七樹より届いた提案を確認しなかった判断は、はたして正解であっただろうか。

 それは同じ経験をしているソロモン王のみぞ知ることだろう。

 

 








なんで今これ読んでるんですか? 早くしないと他の空想樹折れますよ
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