魔王の刀も異世界から来るそうですよ?   作: ラズ

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第6話

次の瞬間、全員の視界がめまぐるしく変化した。

いくつもの場面へと視界が移り変わり、そして投げ出されたのは雪原だった。

遠くには山脈がそびえ立ち、湖畔も見える。時間帯的には暁のようだったが、不思議なことに地平線が全ての方角において赤かった。

 

「私は『白き夜の魔王』太陽と白夜の星霊、白夜叉。今一度問うぞ。

おんしらが望むのは試練への挑戦か?それとも対等な決闘か?」

 

ずっと抑えていたであろう莫大な気が解き放たれ、彼らを襲う。

十六夜は尚も白夜叉を睨みつける気概をみせながら、自身の考えを口にした。

 

「水平に廻る太陽と星霊…なるほどな。あの水平に廻る太陽はとこの土地は白夜と夜叉、つまりオマエを表現してるってことだな。」

 

「分かるか、童。そうとも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の1つだ」

 

夜叉といえば精霊や鬼のこと…か?

薬研は自分の知識の無さを痛感した。もう少し自分に時間があれば、本を読んで知識を深めるなどしても面白かったかもしれない。

だがまぁ、細々と使っている残りの霊力も、明日には尽きてしまうだろう。

 

「これだけ莫大な土地がゲーム盤…」

 

「如何にも。して?おんしらの返答はいかに?挑戦であるならば手慰み程度に遊んでやろう。

だがしかし、決闘を望むのならば話は別だ。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」

 

威勢の良かった彼らはしかし、即答できなかった。

白夜叉がどのような戦い方をするのかは分からないが、勝てないということだけは理解したのだろう。

しかし、プライドが邪魔をしていた。

 

「確かにこれだけのモンができるんだからな…今回は黙って試されてやるよ」

 

尊大な態度で降参を示す十六夜を、白夜叉は愉快そうに笑い飛ばす。

自信家の彼にできる最大限の譲歩というわけだ。

 

「ハハハ、試されてやるか。いいだろう。そこな3人もそれでよいか?」

 

「えぇ、試されてやろうじゃない」

「うん、試されてやる」

 

こちらも同じく上から目線で応える。

薬研にはそれが微笑ましかった。しかし、魔王として戦ってやる、か…。

 

「なぁ、俺っちは決闘を選びたいんだが。」

「ぬ?おんし、勝てないことは最初から理解しておったのではないのか?」

「だからだよ、だからこれを見ても返答は変わらん」

「生憎、自殺志願者の手助けをする気はないのだが…それに今のおんしを散らすのはちと勿体ないのう」

 

含みのある言動に、薬研は眉をひそめた。この少女はどこまで分かっているというのだろうか。

 

「まぁ、さっさと懐に入っちまえば良いって話」

 

と、刀を抜こうとした時だった、抜けない、いや、抜くことは許されない。

白夜叉は中からひらりと紙を出現させると、ひらひらと振った。

 

「どうした、やらんのか。ギアスロールは用意してやったぞ」

 

「ああ、なるほどな。アンタ随分お偉いさんらしいな。…やっぱ俺も皆と同じってことで」

 

十六夜が興味深そうにこちらを見ているのを感じる。

さて、何と説明したものか。

 

「よかろう、さて、どんなものが良いかのぅ…」

 

白夜叉は薬研の返答に微笑むと、しばし考え込む。

その沈黙を何かの鳴き声が遮った。動物の鳴き声ということで耀が目をきらめかせる。

その声に、白夜叉は彼方を見て手招きした。

 

「…では、おんしらにはあれの相手をしてもらおう。力と知恵と勇気を試そうではないか」

 

どこからともなく、巨大な鷲が現れる。いや、鷲ではない。足が四つ足の獣と同じ形をしていた。

彼らの手元にギアスロールが現れる。

 

ゲーム名『鷲獅子の手綱』

 

内容としてはグリフォン…怪鳥に跨がり湖畔を一周するという単純なものだった。

ギアスロールを読むと、耀が立候補し彼女の命を対価としてゲームが始まる。

 

飛鳥たちが心配そうに見詰める中、耀はアクロバティックな動きにも対応し見事ゴールしてみせた。

グリフォンはゴールののち少し進んでから停止する。あれだけの速度で飛んでいたのだ、急には止まれなかったのだろう。

彼らが祝福の言葉をかけようと近寄ると、気のゆるみからか耀がふっと意識を飛ばした。

ゴールまではしっかり摑んでいた手を放し、落下していく。

慌てて受け止めに入ろうとする皆を十六夜は制した。

見れば、耀は空中で意識を取り戻し、空を踏みしめて歩き出すところだった。

 

「マイナス数十度の中、あのGで振り落とされずに意識も保ってた…オマエの能力、動物との会話だけじゃなくて力も手に入れる類いなんだな。」

 

十六夜が得意げに耀のギフトについて解説を入れるが、今日はずっと耀と行動を共にしていた薬研には至極当たり前なことだった。

だが他の皆は驚いた様子で耀を見る。今までの動きをしっかり目で追えていなければ驚くべきこと、か。

 

「違う、これは友達の証」

 

グリフォンを撫でながら、耀が告げる。

飛鳥は再び劣等感に苛まれたような表情をつくった。

薬研としては飛鳥の能力の方がよほど恐ろしいのだが…いや、恐ろしいからこそ嫌、なのか。

 

「さて、私の試練をクリアしたおんしら三人には主催者として褒美をやらねば…ところで、そのギフトは先天的なものかえ?」

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげ」

「木彫りとな?」

 

首をかしげる白夜叉に、耀はシャツの内側に入れていた丸い木彫り細工のペンダントを見せた。

そこには中心の空白へと向かう幾何学模様が彫られている。

 

「ほう。円形の系統図か。なんとも珍しいのう」

 

何やらすごいものらしいが、相変わらず薬研には何の話か分からなかった。

彼が知っているのは戦と医学の知識ばかりだ。

 

「あ、あの白夜叉様。そのことなのですが……此処には元々ギフトの鑑定を依頼しに来たのです」

 

黒ウサギがそう言うと白夜叉は困ったように唸る。

 

「よりにもよってギフト鑑定か?私は専門外もいいところだが……ああ、あれがあったか。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

白夜叉が柏手を打つと、4人の眼前にそれぞれ、光り輝くカードが現れた。

 

各々で色が異なり、薬研は深い紫色のカードだ。

 

そこには、

 

『 練度上昇(セイゲン) 極

 

  神降ろし(カミ堕トシ) 似姿 』

 

という2つの単語

 

…なるほど色々と納得ができるものだ。薬研はすぐに懐にカードをしまった。

 

「ま、まさかギフトカードですか!?」

 

興奮気味な様子の黒ウサギを見て、彼らは首を傾げる。

 

「え、お中元?」

「お歳暮?」

「お年玉?」

「あー油揚げ的な」 

 

「ち、違います!このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる上にギフトネームも分かるという超高価なカードですよ!水樹や、耀さんの生命の目録だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのです!」

 

3人は物珍しそうにそれぞれのカードを見つめる。

十六夜は試しに水樹を入れて、出して…と遊んでいた。

 

「もう、大切な水樹で遊ばないでください!」

「はいはい」

 

と、黒ウサギに投げ渡す。慌てて受け取ると、またガミガミと十六夜を怒り出した。

 

「そのギフトカードは正式名称をラプラスの紙片と言ってな。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった恩恵の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体を知ることができるという訳じゃ」

 

「ふぅん、じゃあ俺のはレアケースって訳だ。」

 

その言葉に興味を持ったようで、白夜叉がすっと横から十六夜のカードを覗き込む。

 

「全知であるラプラスの紙片がエラーを起こすなど…」

 

深く考え込む白夜叉に、やはりさっさとしまって正解だった、と薬研は思った。

 

「まあ俺的にはこの方がありがたいさ。人に値札を貼られるのは好きじゃないんでね」

 

「ふむ…まぁよい。ところでおんしらは自分たちのコミュニティの現状をどこまで理解しておる?」

 

「ああ、名とか旗の話か?それなら聞いたぜ」

 

十六夜の方も黒ウサギから聞いていたらしい。

 

「それを取り戻す為に魔王と戦わねばならんこともか?」

 

全員が頷く。白夜叉は最終確認といった様子で重々しく尋ねた。

 

「では、おんしらは…全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

白夜叉としても何もしらない異邦人をコミュニティに入れる訳にはいかないと思ったのだろう。

それこそガルドのような横取りしてやろうという思考ではなく純粋な善意で。

黒ウサギはドキリとした顔で視線をそらす。彼女の嘘を付けない性格が吉とでた訳か。

 

「そうよ。打倒魔王だなんてカッコいいじゃない」

 

「カッコいい、で済む話ではないのだがの……全く。若さ故というやつか。まぁ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればすぐに分かることじゃ。あれをみて、それでも魔王と戦う事を望むなら止めぬが……そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ。

…おんしも、今のままでは危ういやもしれん」

 

指差された二人はむっとした表情だが、あのような力を見せられた後では何とも言い返しづらかったのか押し黙る。

薬研は今のままでもも何も、その時まで自分は自立行動をしていないだろうな、とあっけらかんとしていた。

 

「で、では、ギフトカードもいただいたことですし、営業時間も終了しているということで…帰りましょうか!」

 

暗い空気を払拭するかのように、黒ウサギは努めて明るい声でそう言って、彼らは帰路についた。




はっきり言ってギフトカードに何を書くかだけは最初から決まってました。これを考えてるときが一番テンションあがってました(厨二乙)
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