少し長めですが最後までお付き合いください。
それではどうぞ
一階にある自販機につくとまず野菜生活とアイスティーを購入した。
俺はMAXコーヒーを購入!我慢できずに缶のプルタブを開けた。すると甘い香りが漂ってきた。その香りを十分に楽しんだ後、ついに缶に口をつける。口に入った瞬間暴力的なまでの甘さが広がる。
「この甘さがくせになる!!」
そんなことを一人で行っていることに虚しくなった。周りに人がいないことを確認して安堵しているとポケットに入れていた携帯が震えた。俺の携帯の番号を知っているのは姉ちゃんと雪乃それに両親くらいだ。まあタイミングからしてかけてきたのは雪乃だろうが。
「もしもし八幡?」
「どうした?」
「いまから由比ヶ浜さんの依頼でクッキーを作ることになったの。手作りクッキーを渡したい人がいるらしくって」
大方、好きな男子にでもプレゼントしたいのだろう。
「そうか。で、俺はどうしたらいい?」
「そうね、まず図書室でお菓子作りの本とか料理本とかを借りてきてちょうだい。」
「わかった。借りたら俺は家庭科室にいけばいいのか?」
「とりあえずはそれでいいわ」
「了解。じゃあ図書室行ってくるわ」
「ええ。お願いね」
それだけ言うと俺は図書室へ向かった。
Side雪乃&由比ヶ浜 家庭科室
「雪ノ下さんって料理するの?」
「まあ人並みには、それに家は両親が忙しくて家事は姉さんと私、それに八幡で分担してやっているから」
「へぇーならユッキーも料理できるんだ・・・」
「ええ。と言っても彼はもはや料理人の域だからあまり気にしないほうがいいわ」
「料理人!?」
「ええ。」
「ユッキーってすごいんだなー。」
「彼は基本的に何でもできるわ。なにせ私の兄だもの」
雪ノ下さんは嬉しそうに微笑みながら言った。
その微笑みからあたしは雪ノ下兄妹の誰にも壊せないような絆というかそんなようなものを感じた。
総武高校の家庭科室は特別等にあるためそんなに時間はかからずに移動ができた。
「八幡が来る前に準備をしちゃいましょうか」
「そうだね!」
由比ヶ浜さんの様子からすごく張り切っているのがわかるのだけれどそれが裏目にでないといいわね。
「できた!」
そういって由比ヶ浜さんがてとてととこちらに向かってくる。どうやらエプロンをつけたらしい。
「由比ヶ浜さんエプロン、曲がっているわよ」
「えー?どこどこー?」
「動かないで」
「うん」
「はい。これでいいわ。」
そういって顔を上げると由比ヶ浜さんはじけるような笑顔で
「うん!ありがとう」
とうなずいた。
「あとは必要な調理器具を準備しましょう」
「よーし。がんばろう!雪ノ下さん」
「頑張るのはあなたなのだけれど・・・」
私はこめかみを抑えながら言った。
Side八幡
図書室から料理本やらなんやらを適当に見繕って家庭科室に向かうと、そこにはすでに一通りの準備を終えたような雰囲気だった。
「遅い」
わが妹雪乃はご立腹の様子だった。なんてふざけた脳内遊びをやっていると雪乃に怒られてしまうため早めに釈明しておく。
「いやいや、図書室からここまで結構距離があるだろ」
「言い訳はいいわ。どうせあのコーヒーでも飲んでサボっていたのでしょう?」
ば、ばれていやがる。さすが伊達に17年近く俺の妹をやっているだけはある。
八幡検定一級レベルだな。
「まあいいわ。あなたには由比ヶ浜さんの作ったクッキーの味見役をしてもらおうかしら」
「俺は作らなくていいのか?手本みたいな感じで」
「あなたがつくるのはレベルが違いすぎて参考にならないでしょう」
「それもそうか。ならできたら呼んでくれ」
「ええ」
こうして由比ヶ浜と雪乃のクッキー作りが始まった。
クッキー作りが始まって数分が経過した。まずは由比ヶ浜が自由に作るようだ。
由比ヶ浜はまずコーヒーを入れるようだ。
「コーヒーか。まぁ飲み物があるほうが食は進むもんな」
「何言ってんの?これ隠し味だから。ほら男子って甘いもの嫌いな人多いじゃん?」
それを言うために俺のほうへ向き直ったことでボウルから目が逸れて大量のコーヒーが投入されてしまった。
「全然隠れてねぇ!」
「あー。まあ、砂糖入れて調整すれば大丈夫でしょ」
そういうとコーヒーでできた黒い山の横に大量の砂糖でできた白い山ができた。
結論を言おう。由比ヶ浜は料理スキルの熟練度がマイナスだった。由比ヶ浜は不器用なうえ、大雑把で無駄に独創的という料理に向かない性格をしていた。
例の物が出来上がったので見てみると、真っ黒いホットケーキみたいな見た目をしていた。
「な、なんで」
由比ヶ浜は愕然とした顔でダークマターとなったそれを見つめていた。
「理解できないわ・・・。どうやったらあれほどのミスを重ねることができるのかしら」
雪乃が小声で言った。
「見た目はあれだけど、食べてみないとわからないよね!」
「そうね。味見してくれる人もいるし」
「まて、それは味見じゃない。・・・毒見だ」
「ひどっ!どこが毒だし!?・・・毒・・・やっぱ毒かなあ」
由比ヶ浜は視線で「どう思う?」とといかけているようだった。
「ていうかこれほんとに食えるのか?ホームセンターで売ってる木炭みたいになってるぞ」
「食べられないものは使ってないから大丈夫よ・・・たぶん。」
「それに私も食べるから大丈夫よ」
「マジで言ってんの?」
「ええ。私はあなたに味見を頼んだだけだもの。処理までは頼んでいないわ」
「いや、だめだ。俺が全部食う。これを食べて雪乃が腹でも壊したら俺が姉ちゃんに殺される」
「へー。ゆっきー達お姉さんいるんだ」
「ああいるぞ。魔王みたいに恐ろしい姉が」
「今の姉さんに報告しておくわ」
「まって、やめて!それだけは勘弁して!」
「そんなに怖いんだ。ゆっきーのお姉さん・・・」
由比ヶ浜が俺の必死さに軽く引きながら言った。
「まぁ報告とやかくは置いといて、そういうことなら味見は任せるわ」
「さいですか」
そういって俺は由比ヶ浜の作ったクッキーと向き合う。
「死なないよな?」
「どうかしら・・・」
そのことばを皮切りに俺はクッキーを一気に放り込んだ。
由比ヶ浜の作ったクッキーは絶妙なまずさだった。口に入れた瞬間ゲロを吐いて倒れるようなこともなく、むしろ倒れられるだけ幸せだな。そう感じさせるくらいのリアルなまずさだった。
「八幡のおかげで味も分かったことだし、どうすればよりよくなるか考えましょう」
「由比ヶ浜が二度と料理をしないのが一番だが…」
「全否定された!?」
「八幡、それは最後の手段よ」
「それで解決しちゃうんだ!?」
驚愕の後に落胆する由比ヶ浜。
「やっぱりあたし、こういうの向いてないのかな。才能とかそういうのないし・・・」
「・・・なるほどな。解決方法がわかったぞ」
俺がこう言うと
「どうするつもりなの?」
と雪乃が訪ねてきた。
「努力あるのみ。だな」
「へぇ。私もまったく同じことを思ったわ」
雪乃の言葉を聞いてはさすが双子だな。なんて他人事みたいな感想を抱いた。
「由比ヶ浜さん。あなたはさっき才能がないって言ったわね」
「う、うん」
「まずその認識を改めるべきね。最低限の努力もしない人間に、才能のある人を羨む資格はないわ。成功しない人間は、成功者のしてきた努力の量を想像できないから成功しないのよ」
雪乃の言葉は辛辣だったが俺もまったくその通りだと思う。そしてどこまでも正しい。
由比ヶ浜の顔には戸惑いが浮かんでいた。
「でもさ、最近みんなこういうのやらないっていうし向いてないんだよ。きっと」
そこまで由比ヶ浜が口にしたところで俺は口を開いた。
「お前本当にそれでいいのか?いつまでたってもそうやって周りに合わせて。そんなんじゃいつまでたっても変わらないぞ。お前は少しでも今の自分から変わろうと思って、周りの奴らがやらないようなことに挑戦して、自分の気持ちを伝えようと思たんじゃないのか。だったらその決意を曲げるなよ。それを最後まで突き通せてはじめてそれは本物の気持ちだって言えるんだろ」
由比ヶ浜は気圧されて黙り込む。うつむいていて表情は見えないがきっとさぞつらい思いをしているのだろう。まそこまで追い込んだのは
ほかでもない俺たちなのだが。
「か・・・・」
きっと帰る、とでも言うのだろう。今にも泣きだしてしまいそうな声が漏れた。
「かっこいい・・・」
「「は?」」
俺と雪乃の声が重なった。何言ってんだこいつ。話聞いてた?
「二人とも建前とか全然言わないんだ。なんていうかそういうのかっこいい」
由比ヶ浜が尊敬やらなんやらそういった感情を俺たちに向ける。
「何を言っているのかしらこの子。私たちけっこうきついことを言ったわよね?」
と小声で俺に耳打ちしてきた。だが由比ヶ浜にもそれは聞こえていたようで、
「そんなことない!まあ確かに言葉はひどかったけど・・・」
まあ確かに言葉はひどかったかもな。
「でも本音って感じがするの。二人ともひどいこと言いあったりもしてるけど、ちゃんと言いたいことをいえてるし・・・あたしは周りに合わせてばっかでそういうのできなかったから・・・。」
「ごめん。次はちゃんとやる」
予想外の反応に俺と雪乃が言葉を失った。
こんな反応をされたことは今までなかったし正論をぶつけてちゃんと謝れる人は少ない。
雪乃はなにか言うべき言葉を探しているような様子だった。
「雪乃、正しいやり方を教えてやろう。由比ヶ浜もまずは一度お手本を見せてやるからその通りにやってみろ」
「お手本は私がやるわ。八幡は由比ヶ浜さんがミスしそうになったらフォローしてあげて。」
「わかった。」
そういうと俺はエプロンを取りに隣の準備室へと足を向けた。
ここまでお読みいただきありがとうございました
誤字、脱字等ありましたらほうこくおねがいします。
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