ARCADIA   作:Sakuto.

10 / 15
今回から話名(?)をいれました。
どうぞ見てください。


第二章 アザゼルの塔攻略編 Ⅵ

 

残った大量に魔獣を全滅させ、装置を新品のものに替え、怪我人を運びながら施設に戻ってその日の攻略は終了した。怪我人が大勢出たため予定よりも早く施設に帰ってきたが2日目の目標は達成しているため問題はなかった。ただ、明日、明後日の攻略をどうするか…ということになった。今回の件で全10班の内4班が作戦に参加出来なくなってしまった。これから残り2日間は残った6班で残りの階層を制圧しなくてはならない。不運なことにこの作戦に参加するはずだった他の学園は急遽予定を変更したらしく、ここには来れないらしい。つまりこの塔を制圧する学園は朔摩達のC学園しかいないというわけだ。

せめて他の学園のメンバーがいれば怪我人の分を補えるのだがそれが出来ない。

このままでは残りの階層の制圧は間に合わない。

そう判断した環は残りのメンバーを集め、これからの方針を伝えた。

「みんな聞いてくれ。昨日の作戦で怪我人が多数出てしまった。このままだとこの塔は完全に制圧できないまま終わってしまう。そうならないためにこれからの方針を今から伝える。まず、さっきも言った通りこのままだと全階層の制圧は間に合わないだろう。しかしそうなれば次にここに入ることが出来るのはいつになるか…1年か…4年か…あるいはそれよりもっと長いかもしれない。それまでの間に何百という事件がこの塔のせいで起きるだろう。そうならないためにどうやってペースを下げずに全制圧をするか。俺はこうしようと考えている、残りの6班で47階と48階と49階に2班ずつ制圧に当たってもらう。同時に3階層まとめて制圧する。それが俺の考えた作戦だ。

かといって簡単な事ではない、次の階層に行こうとすればそれを全力で阻止しようとする魔獣の群を無視して上の階に上がるのは難しいだろう。だから対策も考えた。最初は48階に上がるための螺旋階段まで魔獣にバレずに移動する。運が良ければそのまま上に上がれるだろう。だがもし、バレた場合はその47階の制圧を担当する2班に他の4班が48階に上がるまでシールドをはって魔獣の攻撃を阻止する。無事に48階に上がるのを確認できたら47階担当の2班は制圧してくれ。そして48階に到達したら先程と同じ方法で48階担当の2班は49階担当の2班を49階に上げてくれ。」

そこで一区切りして環はさらに大きな声で言った。

「いまからこの作戦のチーム分けを発表する。俺の班である1班と3班が49階を担当する。48階は5班と6班、47階は副隊長である成宮の2班と4班が担当してくれ。それではいまから10分後に出発する!」

環がそう言うとその場の全員が「了解!」と叫んだ。

 

タワーに入り47階の扉の前で待機していると環が更に作戦を魔獣に聞こえない程度の音量で伝えた。

「いいか、先頭は俺の班と3班だ。中央は5班と6班、後ろは2班と4班だ。作戦はさっきの通りだ。俺が合図するから一斉に走るぞ。」

それにメンバー全員が静かに首を縦に振った。

玉木が指を3本たて1本ずつ指を折り曲げていく。

「3…2…1…GO!」

それを合図にメンバー全員が一斉に走り出す。

魔獣の索敵範囲を上手く避け48階へと繋がる扉へと走る。

「よし…今のところはバレていない。このまま行くぞ。」

暫く足音を殺して走っているとこちらからは死角になって見えていなかった魔獣の感知範囲に入ってしまった。

魔獣はすぐに反応し全速力でこちらに向かってくる。

「グルォォォォォ!!」

「気づかれたか…走るぞ!!」

「「「了解!!」」」

メンバー全員が一斉に走り出し魔獣との距離を遠ざける。幸い相手は足が遅い部類に入る魔獣だった。

「よし、このまま全速力で扉に向かう!走れ!」

数分で48階に続く階段がある扉の前まで辿り着いた。

先頭に立っていた環は後ろを振り向き副隊長、成宮に声をかけた。

「成宮、ここは任せたぞ!」

「ああ、任せろ。」

成宮の2班と4班が足を止め後ろにいる魔獣を足止めするために戦闘を開始した。

「俺たち1、3、5、6班は上に行くぞ!」

2班と4班を残し他の班は次の階層へと階段を登った。

48階層に到達するや否や全速力で次の階層へと続く階段に向かった。幸い48階層には魔獣の数は少なく、見つかることもなく49階層に到達した。

1班と2班が49階層についたと同時に3階層制圧が行われた。

塔の上層なだけあって魔獣は思ったよりも強力なものもいた。なにより面倒なのは最下級のEランク魔獣でも"核"がある時よりは劣るが凄まじい数だった。

しかし今回のタワー攻略メンバーはかなり優秀だったためか、全員が冷静に対処し順調に魔獣を狩っていった。徐々に魔獣の数が減っていき残り数十匹となった。

そんな中、朔摩はホーミングやビームといった"飛ばす"系統である射出系魔術を持っていないため魔獣に近づくとどうしても射出系魔術を使う人の邪魔になってしまう。

そもそも魔術を使える身として射出系魔術を使えないというのは魔術師となる身としてはかなり蔑まれている。朔摩もその1人だった。

周りが射出系魔術を使うと飛び交う魔術弾に巻き込まれてしまう可能性があるため近接型は行動が制限される。

今回がまさにその状況である。こういった時は朔摩は他のメンバーの魔術攻撃の妨げにならないよう隅にいることしか出来ない。

 

この階層の制圧が完了するのに約5時間という時間を費やした。さすが最上階の一つ下ということもあり魔獣は少し強めで湧出量も多かった。

そして無事に全ての階層の制圧が終わり施設に戻ることになった。

帰りの道は戦闘でヘトヘトになっている ─目立った活躍をしていない朔摩以外─ メンバーにとってはさぞかし大変だろう。

拠点に着きメンバーの殆どが溜め息と共に地面に座り込んだ。

大の字になって倒れている者も数人いた。

朔摩は幸奈と隊長に捕まり会話を余儀なくされた。

「あぁ〜…疲れたぁ…」

「それでもあと1日あるんだぜ? 」

「逆だ逆、あと1日で終わるんだよ。」

「やっぱり班が少ないと忙しいなぁ。」

などとメンバーの会話がチラホラ聞こえてくる。

「ああ、そうだな。それにしても」

視線を隊長の環へと向けた。

「隊長はあれだけ戦ったのにばててもないぜ?凄いよな」

「ああ、どういう体してんだよ。それに比べ」

次に朔摩に視線が向く。

「あの新入生はただ突っ立ってるだけで何の役にも立って無かったな。入試1位ってのも怪しいよな。」

「ああ。なんであんなやつがこんな所にいるんだ。学園のミスか?」

などと今回役立たなかった朔摩に向かって聞こえるように陰口を叩く。

それを聞いた幸奈は頭に血が上った。

(なによ!彼の戦いを見たこともないくせに!)

幸奈は朔摩の戦いを2度も見ている。

その光景を見れば誰もが理解するだろう。

確かに今回は目立たなかったがそれは他のメンバーの邪魔にならないようにひっそりと戦っていたのだ。彼が戦えばあの数の敵なんてすぐに片付くはずだ。

幸奈は自分を助けてくれた恩人が中傷されるのが耐えられなかった。

文句を言ってやろうとそのメンバーの方へ行こうとすると横から手が出され遮られた。

幸奈は横を見るとそれは朔摩だった。反対側には腕を組んで目を瞑っている環がいた。

 

「黒月くん、止めないで。私ああいうの許せない!」

「落ち着け白村。」

環も幸奈を止めるが幸奈が止まる様子はない。

「別にいいですよ。あながち間違いでもないですし、それにこういうの慣れっこなんで。」

朔摩は依然と飄々とした表情をしている。

「なっ…」

何を言っているのだろうか、朔摩はメンバーに近づこうとする魔獣やメンバーが漏らした魔獣を片付けて皆のサポートをしていたではないか。

ああ言われてなんとも思わないのか、怒っていいはずなのに。

幸奈は俯き中傷をする人たちの方へ行くのを諦めた。

それを見て朔摩は安心したように微笑んだ。

「先輩って"いい人"なんですね。」

「うぇ!?」

いきなりいい人と言われ驚き恥ずかしさがこみ上げる。

「"いい人"って不思議ですよね。」

恥ずかしいと嬉しいに浸っているとまた突然に意味のわからない事を言い出した。

「へ?ど、どういうこと?」

「さあ、どういうことでしょうね。」

「…?」

何を言っているのかよくわかないがその言葉に何か深い意味を感じた。

その意味はなんだろうと考えていると朔摩が手を叩いた。

「さっ。先輩、隊長。そんな落ち込んだ顔しないで。そろそろ明日に備えましょう。」

その意味を考えていたがその事は頭の隅に置いて朔摩と隊長に続いていった。

 

─to be continued─

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。