ARCADIA   作:Sakuto.

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ぶつかり合う炎

二日目。

この日は第二ブロックのトーナメントが行われた。

そしてその日の選抜は終了。

そして今日、三日目の選抜戦が行われる。

第三ブロックには明が出場する。

先程明から「俺の実力みせてやんよ!」と右腕を持ち上げ力こぶを作って見せていた。

果たして明の実力は如何程か。

まあ上位10位には入る程の奴だ。ある程度の相手には苦戦はしないだろうが、あいつはバカだから相手の作戦にまんまと嵌りそうだ。

「さて…明は何番目だ…?」

トーナメント表を見ると先程、1組目の試合が終わったので、この試合の次、3組目だ。

すぐに明の番が来るだろうからこのまま観客席に待機することにした。

そして2組目の試合が終わって、いよいよ明の出番だ。

スタジアムの両端にある入場入口らか明と対戦相手が現れる。

二人はステージに向けてゆっくりと歩いていく。

明の顔を見るとその表情は至って冷静で緊張している様子はない。

そして対戦相手を見るとその表情には少し緊張しているように見える。

きっとこういうのには慣れていないのだろう。

この戦いは冷静な明が有利だろう。

そして始まった3組目の試合、審判が開始の合図をすると先に動いたのは明だった。

自慢の魔術で3本の槍を創り出す。

槍と言ってもしっかりと安全対策はしており、殺傷能力は低い。

空中に浮遊した槍は明の合図で相手に狙いを定め一気に放つ。

この一連の動作を瞬時に行い、相手に先手を打たれないようにする。

相手はいきなりの攻撃に反応が遅れ、シールドを張るが防げたのは1本だけ。

残りの2本はしっかりと相手選手の左肩と右脚に命中していた。

「ぐぅっ…!」

呻き声をあげるも反撃をしようと右腕を突き出し、短く詠唱を唱え魔弾を発射する。

「うわっ、やべっ!」

相手の行動に危険を察知して瞬時に盾を生成する。

そして発射された魔弾は盾で上手く防ぐことが出来たが、急いで創り出した盾は脆く、今の攻撃で消えてしまった。

しかし明はそんなことは気にも止めず、舌打ちをする。

「ちっ、あの野郎。魔弾に細工を…!」

放たれた魔弾には被弾した直後に煙を発生させる魔術が付与されていた。

たとえ相手に防がれても煙で相手の視界を阻害できる。

「だぁっ!うざってぇ!!」

鬱陶しそうに手で煙を払いながら前方に向かって走る。

どうにか煙の中から脱出するが、煙から出た瞬間に目の前にあったのは相手の魔弾だった。

明が出てくるタイミングに合わせて魔弾を放ったのだろう。

気づいてからでは遅かった。

(これはやべっ──)

とっさに腕を顔の前で交差させて魔弾が顔に当たることを回避したがそれでも威力は凄まじく後方に吹き飛ばされてしまう。

場外は避けるために明は剣を生成してそれを地面に突き刺して、なんとかその場に留まる。

「あっぶねぇ…!」

振り向いて、地面を見ると場外になるまであと数cmというところだった。

その状況にヒヤッとしながらもさっきの魔弾が何なのかを理解する。

(ノックバック…)

今の魔弾はノックバックの効果が付与されていた。

ノックバックの効果がある魔弾はダメージ量はさほど多くはない。しかし、被弾すれば対象に大きなノックバック効果を与えることが出来る。

相手の詠唱などを邪魔する時などに使われる<妨害魔術>の1つだ。

 

「厄介な魔術を使いやがって…」

そう言ってるそばから相手は再び魔弾を繰り出してきた。

再び盾を作り出し、ガードするも、被弾した瞬間に盾は弾かれ大きく後ろに飛ばされてしてしまう。

「うおっ!盾でも防げねぇのかよっ!」

盾でもノックバックの効果は抑えきれなかった。

「どうすりゃ……ん?……待てよ…。」

何か対策はないか、と考えていると、ふとある考えが浮かんだ。

明は顎に手を当て、少しの間、うーん…と唸ると何を納得したのか、よし!という言葉と共に盾を生成し再び構えに入った。

それと同時に相手も魔弾を発射した。

しかしその構えは先程と違い、盾を前に突き出して縦の表面をまっすぐ相手に向けるのではなく、少し傾けて構えている。

(明にしては考えたな。)

それによって放たれた魔弾は盾に接触しても、衝撃が抑えられて魔弾が爆発することもない。

そして受け流された魔弾は明の後方に流されていく。

「うっし!上手くいった!」

作戦が成功し、一気に相手との差を縮める。

相手は後方に逃げながら魔弾を打ち続ける。

しかしそのほとんどが明に受け流される。

「く、くそっ!」

後方に下がっていると突然片足にあるはずの地面がなくなる。

自分の足元を見るとそこはステージの一番端、そこから先は場外となっていた。

明が迫ってくることに気を取られてステージの端に近づいていることが完全に頭から抜けていた。

「はぁぁ!」

雄叫びが聞こえ、前方へ向くと、明が物凄い勢いで突進してくる。

「しまっ…!」

─ドォォン!─

相手はまともに明の突進を受け、体が後方に飛ばされる。

そのままステージの外に落ちてしまう。

それと同時に審判が勝者の名を叫ぶ。

「勝者!佐田 明!!」

瞬間、会場に歓声が沸き上がる。

明は審判の声を聞いて、ホッと胸をなで下ろす。

それから明は着々と勝ち上がり、遂に決勝まで登った。

が、しかし、明は惜しくも決勝で負けてしまった。

しかし圧倒的な差で負けた訳ではない。

むしろギリギリだった。

明はも相手も実力はほぼ同格。

だが一瞬の隙を突かれ、負けてしまった。

「たっはぁ…負けちまった〜。ちくしょー。」

自分の頭をわしゃわしゃとしながら観戦席にやってくる。

「惜しかったな、まあでも本戦には出れるんだからいいじゃないか。」

「まあそれもそうだけどよ〜。やっぱ負けるのは悔しいわ。」

「そうだな。ま、あとはゆっくり観戦でもしてようぜ。」

「おう、お前は5日目だしな。しばらくゆっくりできるわァ。」

観戦席に座りグタァと脱力する。

「観るのもしんどいわ。やっぱ寝る。」

「静かに寝てくれよ。」

「はいよ。んじゃ。」

それを最後に明から寝息が聞こえてきた。

(気持ち悪い程に早いな。)

明の眠りの良さに少々驚きながらも試合の観戦を再開する。

 

それからも予選は順調に進み、3日目が終了。

4日目も順調に進み終了。

そして遂に朔摩の出場するEブロック。

 

朔摩はステージ入場口の奥で待機していた。

今行われている試合が終われば朔摩の番だ。

朔摩は準備体操を軽く行っていた。

準備体操を終えると傍らに置いていた装備品を身につける。

刀の鞘や拳銃のホルスターが付いているダガーベルトを腰につけ、拳銃をホルスターに仕舞う。

胴体に小型ナイフを携帯できるベルトを装着する…もちろん安全のため、ナイフはゴムで出来ている。

そうしているうちに前の試合が終わったようだ。

グローブをはめ、ステージに出る。

「さてと、行くか。」

ステージに上がると対戦相手は既に定位置についていた。

審判は朔摩、対戦相手を交互に見ると声を大きく張った。

「それでは魔術競技大会予選Eブロック、3回戦を開始する!試合、始めっ!!」

ビーーと電子音を合図に試合が開始される。

最初に動いたのは朔摩だった。

開始とともに地面を蹴り、相手との距離を詰めた。

それに対戦相手は近づけさせないため複数の魔弾を作り、一斉射撃した。

朔摩はすぐに胸のベルトに携帯していたゴムナイフを手に取り魔弾に向けて投擲した。

魔弾はゴムナイフと当たった瞬間泡のように消滅した。

「なっ…!?」

朔摩は走りの勢いを緩めずに間を詰め、目の前まで来ると刀を抜刀し、相手の首にピト、と当てる。

対戦相手は両手を挙げ、降参の意を示した。

それを聞いて審判は試合終了の合図を出した。

朔摩は数歩後ろに下がり、刀を鞘に納めた。

「勝者!黒月 朔摩!!」

圧倒的な力の差で相手を負かした朔摩、あまりにも早すぎた決着に会場は驚きで満ちていた。

それからも朔摩の出る試合は1分もかからず終了し、決勝戦となった。

朔摩は待機室でのんびりしていると、待機室の扉がガチャっと開かれた。

「ん?」

扉の方に目を向けると扉の前に立っていたのは高坂だった。

(げ…なんでこいつが…)

一瞬、それが顔に出たのか高坂がキッとこちらを先程より強く睨む。

(元々目つき悪いから余計怖いな。)

高坂から目を離し、壁を見つめてボーッとしていると

「おい、黒月。」

高坂の低い声が俺を呼んだ。

「…なに?」

正直こいつとは関わりたくない。そう思いながらめんどくさそうに返事をする。

「せっかくのいい機会だ。ここでどっちが強いか証明しようや。」

「はぁ?」

何言ってんだこいつ、そう思いながら思わず高坂の顔に目を向ける。

「降参は無し、どちらかがやられるか場外するまで戦う。」

どうやらこいつは徹底的に力の差を見せつけたいらしい。

降参なしというのは逃げの道を塞ぐため。

あわよくば俺をボコボコにしようと…そういう魂胆か。

「はぁぁ…」

思わずため息が出る。

俺のため息が気に入らなかったのか、高坂の声に怒りが混じった。

「あ?」

「いや、なんでも…まあ断る理由もないから別にいいけど。」

俺が自分の申し出に乗ったのがそれほど嬉しかったのか、高坂の口がニヤリと歪む。

「言ったな。逃げんじゃねぇぞ。」

「誰が逃げるかって、そもそも逃がす気ないだろ。」

「当然、俺が勝ったら存分にこき使ってやるからな。もし万が一お前が勝てばなんでも聞いてやる。」

何を根拠にそこまでの自信があるのか、まあそれは置いておいて。

「いや、いい。お前にはこれっぽっちも期待してない。

あ…でも、そうだな…強いて言うなら面倒臭いから俺に突っかかってくるのやめてもらえると嬉しいかな。」

ふざけたつもりはなかった、割と真面目に言ったのだが高坂は舌打ちをして黙り込んでしまった。

それから俺と高坂は一言も喋らなかった。

(はぁ…めんどくさい奴に目をつけられたもんだ。)

心の中でため息をつく。

そしてやっと入場口前に待機せよ、との放送が流れたのでそこに向かった。

 

正直、本大会出場は決定してるので負けてもよかったのだが、負ければ高坂にこき使われるということなので負けるわけにはいかない。

(ったく…ホントめんどくさいやつだな…)

 

そうこうしているうちにステージに上がる合図が来たのでせっせと上がる。

ステージ上には既に高坂が立っていた。

暫く審判がいつものようにルール説明をする。

そして説明が終わると審判の試合開始の合図を叫ぶ。

「始め!!!」

審判が叫び終わるよりも早く高坂は手を朔摩の方に突き出し、高速魔弾を3発放つ。

「ぅおっ!?」

朔摩は横に飛び退いて魔弾を避ける。

すると避けた魔弾が壁に着弾して爆発する。

「んのやろう。」

開幕早々高威力な技を使ってきたことから高坂は短期で決着をつけるつもりだ。

「どうしたよ!早く攻撃してこいよ!」

そうは言うが高坂が休むことなく魔弾を放つせいでこちらに攻撃の隙を与えてくれない。

(切ろうにも小さすぎて切り辛い…)

マシンガンのように放たれる魔弾を避けつつ少しずつ高坂に近づく。

しかし少し近づくと高坂の攻撃の勢いが増し、近づく速度が徐々に落ちていく。

それを見て高坂は高らかに声を上げた。

「なんだよ!早く使えよお前の魔術!」

「チッ、うるせぇ…なぁ!」

やたらと煽ってくる上、細々した魔弾が鬱陶しくてこっちまで大声を出してしまう。

声を出すと同時に朔摩も魔術を使う。

掌から炎を出現させ、手で薙ぎ払うようにして高坂の魔弾を相殺する。

「なんだよ、お前も炎の魔術使いか…おもしれぇ!どっちの炎が強いか勝負といこうじゃねぇか!」

そう叫ぶと高坂は両手に大きな炎を出現させ、朔摩に向かって投げ飛ばす。

朔摩もそれに合わせて同じくらいの炎を作り出し、放つ。

両者の炎はぶつかり合うと共に爆発して消滅する。

爆発の影響で周囲にモクモクと煙が立ち籠める。

朔摩はその中でじっとしていた。

すると煙の向こうから何かがこちらに向かって来るのを察知した。

その方向を見るとすぐそこには強化プラスチックのパイプを振りかざした高坂がいた。

すぐさま朔摩は刀を抜き、頭上で構えた。

高坂はその刀にパイプを振り下ろした。

予想通り高坂は朔摩の頭を狙っていたようで刀に遮られ舌打ちをした。

「お前…そんなもんどっから持ってきやがった。」

「はっ、予めステージの端に置いてたんだよ。」

「へぇ、そりゃ準備がいいこっ…た!」

刀を持つ手に力を入れて高坂を弾き飛ばすように刀を振る。

高坂は後方に飛ばされ手を付いてスピードを緩める。

「チッ…んのやろ…っ!?」

高坂が顔を上げると既に目の前には朔摩が迫っていた。

朔摩は目に追いつかないスピードで手を突き出し高坂の顔を掴む。

「なにしやが─ッ!!」

「なにしやがる。」と言い終えるより先に高坂の後頭部に衝撃が走る。

朔摩は高坂の頭を掴むと思いっきり地面に叩きつけた。

「がっ…!」

高坂はそのまま意識を失った。

それを確認した朔摩はスクっと立ち上がる。

「悪いけど、お前のくだらない遊びに付き合うつもりはないよ。」

審判も高坂の気絶を確認すると朔摩の方に旗を上げた。

「勝者、黒月朔摩!!!」

「よって、Eブロック優勝は!黒月朔摩!!!」

 

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