ARCADIA   作:Sakuto.

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連れ去られてしまった生徒とは?
そうなってしまった経緯は?
今回は幸奏目線でやって行きます!
毎回毎回、ありきたりな展開で、自分でもどうすればいいか…


第一章 学園騒乱編 Ⅲ

─四月九日─

 

午前6時

 

目覚ましが設定した時間になりその音が部屋中に響かせる。

モゾモゾと布団から手を伸ばしベッドの側にある棚の上を探る。

手をしばらく彷徨わせているとお目当ての目覚まし時計に触れ、ボタンを押す。

「んにゃぁ…」

目覚ましが鳴り止むのを確認するとうまく開かない目を寝着の袖で擦り、起きぬけで重い体を起こす。

まだ外は肌寒いせいか部屋の中もひんやりしている。

名残惜しいがベッドから出なければ登校の準備が出来ない…

「寒い…」

二の腕辺りを擦りながら部屋のカーテンを掴み勢いよく開く。

眩しい太陽の光が先程まで暗かった部屋中に広がる。

その眩しさに思わず手を掲げ、太陽を隠すようにする。

再び時計を見ると既に五分近く経っていた。

呑気に光を浴びている場合ではない。と急いで身支度をして登校する準備を整える。

登校する準備が終わり、朝食をとろうと1階に降りる。

「おはよう…お母さん。今日は早いんだね。」

リビングに入ると少し大きめのテーブルに母が着席していた。

幸奈は起きる時間は早いはずだがそれよりも早く起床している母はいつ起きたのだろうか?さらにはもう身支度も済ませていて寝巻きから私服に変わっていた。そう思いながら自分も母に習い椅子に着席して朝食をとる。

「あら、おはよう幸奈。そうね、昨日は早く帰ったから寝る時間もたっぷりあったしね。」

朝からニコニコしているのが幸奈の母、《白村 架夜(かや)》である。

大人しくてとても優しい、いい母だ。父は仕事でなかなか家に帰っていない。姉は泊まりがけで働いていてここ数ヶ月帰っていない。それでも私の家族はとてもいい人達だ。皆温かく、愛されているのがよく分かっている。この家に生まれてきて良かったと何度も思った。

「良かったね。最近お母さんがまともに寝てる所見たことないよ?体には気をつけてね?」

「大丈夫よ。心配してくれてありがとね。それに、母さんそこまで弱くないわよ。」

「お母さんは頑張り過ぎてるから無理しそうで怖いの。休む時はちゃんと休んでね!絶対だよ!」

「はいはい。分かってるわよ。」等と他愛もない話をしていた。

「わっ、もうこんな時間…じゃあ私行ってくるね!」

最後の一欠片のパンを咀嚼し嚥下するとそそくさと立ち上がりバッグを持ち玄関へと向かった。

「はい。行ってらっしゃい。」と手を振り母は見送ってくれた。

今日はやけに気分がよく、鼻歌を歌いながら学園への通学路を歩いた。

この日、今までに無かった恐怖を感じる酷い日になるとは知らずに───

 

「おはよう幸奈。」

「おはよう真理。」

席に座ると、前の席に座っている真理が恒例の挨拶をしてきた。こちらも元気よく挨拶をかえした。真理は幸奈がいつも以上に機嫌が良いことに気がついた。

「どうしたの?今日はやけに上機嫌じゃない。」

「あ、分かる?」

と苦笑しながら答える。そんなに分かりやすかったかな…と少し恥ずかしい気持ちになる。

「もう、バッチリと。なんかいい事でもあったの?」

「ううん。特にないよ。」

「何も無いのに上機嫌って、幸奈変わってるね〜。」

真理が呆れながらも笑っている。

「あはは…」

こうして朝は真理と会話するのが日課だった。1年生の時も席は離れていたが同じクラスだったため毎日のようにこうやって他愛もない会話をしていた。今年の席順は名前順ではなくランダムだったので真理と席が近くなれた。

こうして担任の教師が来るまでずっと会話をしていた。

 

一時限目は体育だった。

新学年になってしかも最初の授業が体育とはいささか変に思えるがそんなことを言っても仕方がないことだ。

男女は別の場所で体育をやることになっている。基本的に体育は近接武器を使う時に必要となる<体術>、<剣術>、<棒術>などの近接戦闘を想定した訓練が行われる。

人によって戦い方が変わるが基本的にはこの3つだ。

ナックルやクローを使う者は体術、剣を使う者は剣術、槍などを使う者は棒術を教えられる。

女子一行は教室に少し遠い場所にある女子更衣室に行き、さくさくと準備をしていた。

幸奈も体操着に着替えていると隣にいた真理が声をかけてくる。

「幸奈…あなた順調に育ってるわねぇ…こことか…」

「え?」

「うりゃっ!この体はどうなってんだ!」

すると真理が幸奈の体のあちこちを触り、揉み出した。

「ひゃあっ!ちょっ、なにするの!バ、バカッ!」

体を這い回る真理の手はいやらしく動き、胸肩、脚を撫で回す。幸奈は顔を真っ赤に染め奇妙な悲鳴を上げて体を捩る。

「いやぁ…いい体してるね〜…出るとこ出てるし!スタイルいいわ〜。」

「まっ、真理ぃーーーーーー!!!!!」

こうして休み時間ギリギリまで謎の行為が行われていた。

 

「ねえ幸奈。」

「な、なによ!」

「あなたまだ怒ってるの〜?ごめんってば!」

顔を赤く染め、両腕を胸の前でクロスさせ身を隠すようにしている幸奈は相当警戒しているのだろう。

先程涙目で「もうお嫁に行けない…」と呟いていた。流石に少し申し訳ないと思ったがその姿が少々面白く思い、笑いをこらえていた。

「って話したいことはこんな事じゃなくて」

「じゃあなに?」

「うーん…話そうと思ったけど時間なさそうだしいいかな。」

「そ?じゃあまた今度聞くね。」

「うん、よろしく。」

 

体育は予定通り幸奈は棒術の訓練に励んでいた。

クラスメイトと模擬戦を行い順調に勝率を上げていく。

「ふぅ…」

ちょうど今最後の試合が終わり担当教師の元へ行き、結果を聞きに行く。

「先生、どんな感じですか?」

「今回は10回戦中6回勝ってるわね…うん。クラスの中ではいい成績よ。今のところは学年で11位ってとこかしら。あなたは線もいいんだからこの調子だとどんどん強くなるわね。」

「そうですか。ありがとうございます。」

60%…正直あまり満足していない実はしばらく正直勝率70%からなかなか上がらないのだ。せめて80%はいきたいと考えている。贅沢と言われるかもしれないが勝率が高ければ目標に近づける。

幸奈の目標の一つはこの魔術で溢れかえった世界のバランスが崩れないように世界中の魔術を使った強盗やテロリストを捕まえ、魔獣とも戦う組織<セントラル・オーガン>、通称<C.O>に入ることだ。そのためには魔術理論や魔獣生態学、そして戦闘でも上位の成績を収めなければならない。

C.Oは世界的に有名な組織でそこには優秀な魔術師がいる。

確か、C.O内の魔術師は全員で71人と数はそこまで多くないがひとりひとりか強く魔術を使うテロリスト5人を1人で対処できる程の力は必ず持っているという。

そのためC.Oに入るのはとても難しく毎年500人以上入社を希望して受けに来るがその9割以上が落とされている。そもそもC.Oに入社すると希望すること自体が難しい。

C.O入社を希望するには魔術師育成学園で卒業前の座学考査と戦闘考査の両方でトップ10位以内に入らなければならない。そして能力検査である魔道具でエレメントの抗体検査をしなければならない。どんな悪いエレメントにも蝕まれにくい体でないとC.Oの魔術師として働くことが出来ない。という厳しい条件を掻い潜ってようやくC.O入社を希望出来るのだ。

幸奈はまだ10位以内という条件すら満たせていない。

目標にはまだ遠いがこれから努力し、最終目標に近づくために頑張ってC.Oを希望しようと固く決意した。

 

体育の時間が終わり次の授業は移動教室だった。学園内にある講義教室に移動し、他クラスと合同で授業を受けるということになっていた。今回は他クラスだが他学年と共に授業を受けることもある。

「講義教室に移動か…ということは魔獣生態学ってことね。」

「ええ。そうね。真理の苦手分野じゃない。」といたずらっぽく笑ってみせると真理は少し怒ったふうに声をトーンを上げる。

「そういうこと言うの性格悪いとおもうよー!」

なんて事を言っているが少し楽しそうな顔をしていた。

「それにしても体育のあと移動教室って辛い!着替えてすぐ移動じゃない!」

「文句言わないの。子供じゃないんだから。」

「相変わらず厳しいねぇ…幸奈は。」

「そんなことないわよ。ほら、早く移動しましょう。」

「はぁい。」

予め用意していた次の授業の用意を持ち更衣室を後にした。ふと窓の外が気になり目を向けてみると向かいの棟の屋上に人影が見えた。

あれはなんだろうと思っているうちにすぐに見えなくなってしまった…

この時はあまり気に止めていなかったが頭の何処かでなんだか嫌な予感がした。

 

「えー…魔獣は未知なる生物として恐れられていた。その魔獣が突如として出現したのは教科書にも書かれているとおり1938年…大体第二次世界大戦が起きる一年前だね。その頃に魔獣が現れて人類に多大なる被害をもたらした。それは第二次世界大戦中もそうだったと言われている。今はこんな風にビルや建物が沢山立っているがわずか10年でここまで回復できた。話が逸れたな。

まずは魔獣の弱点についてだ。

魔獣の体は損傷しても数分秒で再生してしまう早いもので数十秒。しかしそんな魔獣でも心臓を破壊ことで再生をすることが出来なくなりそのまま死にいたる。まぁ…魔獣の心臓の周りには頑丈な細胞が張り付いているため、普通の金属では傷一つつけることさえできない。だから───」

長々と続く授業を聞きながら教室から移動している時に見た謎の影のことを考えていた。

(あれは…何だったんだろう…)

あれを見てからというものの、嫌な予感がしてならない。

いつもなら特に気に留めることはないだろう。

でも、何故か今回だけは気になって仕方がない。

そんなモヤモヤを抱えながら授業を受けているとチラッと時計を見ると時間があっという間に過ぎていて、もう授業が終わる頃だ。

さっきまで考えてた事を頭から振り払いあと少しで終わる授業に専念した。

─キーンコーンカーンコーン─

チャイムがなり、号令係が授業の終わりの挨拶をし皆が教室に戻ろうとしていた。

(やっぱり気のせいだったのかな?)

と思った瞬間…

─ドォォォォォン!!!─

「な、なに?!」

近くから爆発音が聞こえた。

─なんだ?!─

─おいおい!どうなってんだよ!─

─何が起こっの?!─

と生徒達が口々に恐怖と不安が入り混じった声をあげる。

「幸奈!」と走って近づいてきた真理に気づき

「真理!ここは危険だわ。早く避難して!」

「あ、あなたはどうするのよ?!」

「逃げ遅れた人がいないか探してくる!

爆発のあった所の近くに一年生の教室の近くだもん!」

そう言い全速力で走った。

─うわぁぁ!逃げろ!─

─おい!押すなよ!─

─後がつっかえてんだよ!早く行け!─

自分とは反対方向に逃げる生徒達をかき分け、爆発のあった場所に向かう。

どんどん煙が濃くなり前が見ずらくなってくる。

─ケホッケホッ─

近くで女の子の声が聞こえその方向へ向かって行くとそこに地面に倒れている女子生徒がいた。

「あなた、大丈夫?!…っ!」

近づくと足が瓦礫に挟まれていることが分かった。

「少し待っててね。今出してあげるから…!」

瓦礫をどけようとするが少し大きくて女の幸奈の力ではどうにも出来ない。

(なにか…なにか近くに…!)

周りを見渡し瓦礫をどけれるような物がないか探す。

「あった!」

廊下の窓の近くに頑丈そうな鉄の棒があった。

恐らくコンクリート内に埋まっていたものが爆発によって外れたのだろう。

棒を取り直ぐ戻って瓦礫の隙間に棒を差し込んだ。

「ふ、んんん!」

少し重かったが先程より軽く持ち上げることができその勢いで瓦礫をひっくり返し残りの細かい瓦礫を手ではらう。

「大丈夫?」

「はい…」

かすり傷はあったものの、幸い瓦礫との間に小さな隙間があったお陰で骨折などの大きな怪我は無いようだ。

「他にも誰か逃げ遅れた人っている?」

「い、いえ。私だけだと思います。」

「そっか。もう大丈夫だよ。一緒に避難しよ?」

安心させるため笑顔で話す。

「はい。ありがとうございます。」

「さ、行こう?」

立ち上がり避難しようと歩き出そうとすると

「キシャァァァア!!」

「!!」

近くから奇妙な鳴き声が聞こえる。

それが何なのかはこの世界に住んでいればすぐに分かる。

幸奈はこれ以上ここにいたら見つかり、殺されてしまうとすぐに理解し女子生徒の手を取り全速力で走った。

「なに?!何ですか?!」

不安そうに幸奈を見上げてくる女子生徒を宥める。

「大丈夫だよ、私がついてるから。

とりあえず隠れましょう。」

そう言い女子生徒の手を引き、走って隠れる場所を探す。

「っ!!ここがいいわ!」

と資料室に飛び込むように入った。

「ここでやり過ごしましょう。」

ハァ、ハァと肩で息をして、呼吸を整える。

「…?」

部屋の外から足音が聞こえて、なんだろうと壁に耳を当てると足音とは別に獣の唸るような声が聞こえ直感的にこれはダメだわ!と感じ女子生徒の手を取りカウンターの下に隠れた。

足音が徐々に近づき、部屋の前まで来てしまった。

恐怖で震えながら女子生徒を守るように抱きしめる。

ガチャッと部屋のドアが開いた音がして更に恐怖心を煽られる。

コトッ、コトッと足音が遠くなったり近くなったりする。

(お願い!こっちに来ないで!!)

どんどんこちら側に来る。

するとその足音の主がいきなりカウンターを飛び越え幸奈達の前に立ったのだ。

(み、見つかった…でも、せめてこの子だけでも!)

幸奈は女子生徒を守ろうと庇うように前に出る。

その時─

「おぉーい!朔摩ぁ、大丈夫かー!!」

「!!」

遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえ侵入者と共に一瞬固まるが目の前の侵入者はすぐに我に返り幸奈を担ぎ窓へと走り出した。

それとほぼ同時にドアが─ダンッ─という音を立てて開いた。

謎の人物は窓から飛び降り地面に着地した。

「なっ!離して!このっ!」て暴れるが口元に布を押し付けられる。

(睡眠薬…!!)

瞬間的にこれがクロロホルムだと理解した。

実際にはクロロホルムを使って一瞬で意識を奪うことは無理とされている。もし量が多ければそれを吸ってしまった人は死んでしまうとされている。しかし今口元に押し付けられている布から匂うクロロホルムの量は明らかに少なかった。恐らく魔術の効果が付与されているのだろう。

(ダメ…何か抵抗しな…いと……)

徐々に意識が朦朧としてゆき、そして完全に意識を失くした。

──────────

 

(う…んん…。ここ…どこ?)

頭に鈍い痛みが走るがそんなことを気にしている余裕はない。

周りを見回してみるとどうやらここは学園内にある旧校舎近くにある倉庫だろう、1度1年生の時に学園内を見学する時に見たことがあった。

(早く…ここから脱出しないと…)

グッと体に力を入れてみるが動けない。

腕を頭上に上げられ柱にくくりつけられていて地べたに座らされていた。

足は何もされていないが腕が使えないとどうしょうもない。口もテープが貼られていて声を上げることもできない。

とりあえず状況を整理しようと頭を回転させる。

(ここは学校内の旧校舎近くの倉庫…あの子が誰かに話せば助けは来てくれるだろうけど…見つけるのにも時間がかかるし数時間はかかるでしょうね。それなら私1人でどうにかするしかないわ。)

幸い柱が古くザラザラしている。

(とりあえず腕の縄をどうにかしないと…!)

古びた柱に縄を擦りつけ摩擦で切ろうとする。

「んぐ…んん、ふぐ…ふっ…」

ジリジリと少しずつだが確かにロープが切れていく。

が──

コツッ、コツッと足音が聞こえてきた。

(気づかれる。)

と縄を切る作業を中断して足音のする方を見るとそこに現れたのは緑のフードを被った女性と思わしき人物がいた。

「こんにちは。目は覚めた?」

そう言うと幸奈の口からテープを取った。

ようやく喋れるようになり聞きたいことが山ほどあるが冷静になって怒りの感情を抑え込む。

「あなたは誰?」

相手を睨みつけながら問うと

「そんなことはどうでもいいじゃない。

そんなことよりも、この学園の最高機密情報を教えなさい。とても必要なの。」

「そんなこと、一生徒である私が知ってるわけないじゃない!」

相手はフッと笑い

「それもそうよね。意地悪してごめんなさい?」

「あなたの目的はこの学園の最高機密情報なのね。そんなの何に使うの?」

声を低くしてそう言うと

「あら、敵に目的を教えるほど私も馬鹿じゃないわ。」

「敵?…そんなことして許されると思っているの?すぐに警察が動くわ。」

「先ずは自分の心配をしたらどうかしら?殺されても仕方ない状況よ?まぁ、殺しはしないけどね。あなたは大切な人質なんだもの…」

フフッと不気味な笑いを浮かべまた奥へと戻って行った。

「……。」

すると力が抜けて何も出来なくなる。

今になって恐怖と不安が膨れ上がり、涙を零した。

「…誰か…助けて…」

嗚咽を漏らしながら静かに泣いた。

しかしすぐに泣くのをやめる。

誰かが助けに来ると信じて、それまで恐怖に押しつぶされないよう、頑張って耐えようとそう決意した。




今回も読んで頂きありがとうございます!
ご都合主義の小説ですがなにとぞ宜しくお願いします!
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