ARCADIA   作:Sakuto.

6 / 15
はい。大分間が空いてしまいました。
お久しぶりです。
今回も戦闘なしです。
しかし朔摩の正体が少し、明らかに…
是非呼んでください!
※主人公名に変更が入りました!


第二章 アザゼルの塔攻略編 Ⅱ

─四月十一日─

会議室

 

生徒会メンバーに3年生と2年生の推薦で選ばれた20人と1年生の成績上位10名が出席している。

全員が揃ったところで生徒会長である秋波 琴音が説明を始めた。

「まず、今回攻略する階層は41から最上階の50までです。順調に行けば今回の攻略で全階層を制圧できるはずです。これまでの階層のデータから考えて45階は除く、41階から49階までは今まで通りだと思われます。ですが今までと同じだと思って油断してはいけません。イレギュラーな事が起きないとは限りません。それと最上階は(マイナス)魔粒子(エレメント)の濃度が異常なまでに濃く、今までとの階層とは桁違いとされています。

この塔が完全制圧されたらこれまで起きた魔獣による事件も減少するでしょう。今回は中部地方のD学園と合同で行う予定です。

つづいてはこの攻略メンバーの隊長、副隊長を発表します。

隊長は3年A組の環 大志(たまき たいし)君。

副隊長は3年C組の成宮 健仁(なるみや けんじ)君です。

私からは以上です。次は隊長の環君からのお話です。」

会長は軽くお辞儀をして着席した。すると次は大柄な男が立ち上がった。

「今紹介された、隊長を担当する環だ。

俺から説明することは武器、装備について、それから今回の攻略で出現すると推測されている魔獣にについてだ。」

すると環はリモコンを取りテーブル上の機械を操作した。

シュンッと音を鳴らしテーブルの中心にウィンドウが出現した。

「まず、魔獣の事から説明しよう。さっき会長が言ったが45階と50階を除いての階層は今まで通りの魔獣が出てくるだろう。しかしこれまでの階層と違って魔獣は以前より強化されていると思われる。なにせ階層が上がる度に空気中の-魔粒子(エレメント)の濃度は濃くなっているからな。だがこちらにも利点がある。空気中の-魔粒子を+へと変換し、うまく取り入れることで自分のエレメントとして使用できるからな。まあ、魔獣については分からないことだらけだからこの程度でいいだろう。次は武器、防具についてだが特に制限はない。しかし身の丈を超えた武装はかえって危険だ。知ってると思うが武器や防具もエレメントを宿している。自分の許容出来ない程のエレメントを纏うことでそのエレメントに飲まれてしまう。そこは頭に入れておけ。俺からは以上だ。」

すると明がなるほどといったように頷いた。

「へぇ…装備が合ってないと危険なんだな。知らなかったわ。」

朔摩は呆れたようにため息をついた。

「いや、結構基礎的な事だからな。そんなんで大丈夫かよ…」

「大丈夫大丈夫!」

朔摩は再度ため息をついた。

「ていうかそれだと魔術のこともいまいち理解してないだろ。」

「まぁな。俺、魔術とか感覚でやってるから、」

「一応知っといた方が戦闘が楽になるぞ。ていうかあんまり知らなさ過ぎたら死ぬぞ。」

「そうなのか!魔術使うと死ぬんか!?」

「声が大きい…注意されるぞ。後で説明してやるから静かにしろ。」

「そこ!うるさいぞ!」

俺が注意した瞬間に上級生から指を指され注意を受ける。

「す、すみません。」

「ほら、言わんこっちゃない。それより…」

そう言いチラッと前に視線を向ける。

「まだ会議は続くぞ。」

「えぇ…まだやんのかよ。これ以上何を説明するってんだ。」

と嫌そうな顔で項垂れる。

その後会議が終わる頃には明は屍のようにテーブルに突っ伏していた。

「うわぁ…会議辛いわ。」

「この程度で音をあげるなよ。作戦の時それで大丈夫なのかよ。」

「おまえ、よくあんなの平気だよな。」

「普通だよ。」

そこでふと環の話を思い出した。

(そういえば、武器はともかく防具はどうしようか…。)

今までも魔獣と戦うことは数え切れない程あった。しかしその時着ていた防具は今使うことが出来ないでいる。

そんなことも忘れ、防具の事を考えていなかった。

明の方へ向き

「悪い、俺ちょっと用があるからもう帰る。」

「ん?急ぎか?」

「ああ、そこそこな。」

そう言い明と別れ、学園を出た。

ある程度学園から離れ、ポケットから携帯を取り出し、ある所に電話を掛ける。

「もしもし、|黒月です。明々後日に必要になる装備を整えたいんですが…。はい…分かりました。すぐに向かいます。」

携帯をポケットにしまいタクシーに乗った。

「フェルーム本社までお願いします。」

運転手にそう伝えるとたちまち、「了解しました。」と返ってくる。

 

 

数十分後、フェルーム社に無事到着。

入り口前の停車スペースに止まりタクシーを降りた。

エントランスの受付に証明書を見せる。

「黒月です。今日は健二さんに用事が…」

そこまで言うと受付が持ち前の営業スマイルで接客をする。

「分かりました。今、お呼びしますね。奥の待機室でお待ちください。」

「分かりました。お疲れ様です。」

軽く会釈し待機室へと向かった。

しばらくすると待機室のドアが開き、大柄な人物が入ってきた。

「やぁ、久しぶりだね黒月くん。」

椅子から立ち上がり、お辞儀をする。

「お久しぶりです。健二さん

今日はお忙しい中、申し訳ありません。」

この健二という人物はこの対魔獣用武器を製造する企業<フェルーム社>の代表取締役社長をしている。数々の最新型を開発し魔術師(ウィザード)達に多大な貢献をした。今ではこの会社は世界最大の大企業メーカーだ。俺は昔からこの会社で開発される試作品などのテストをしている。

そんなことから健二とは仲が良い。

実際、健二は朔摩の事を我が子のように接してくれた。

「なに気にする事はない。私も君が来てくれて嬉しいよ。

それで?さっそくだが今日はどういった用件だったかな?」

「はい。今日は3日後にある、アザゼルの塔の攻略作戦で使う装備についての相談なんですが…」

「ほう、そういえば今年だったか。予定では今年で最上階まで制圧するとか…。それで?装備を用意して欲しいと?」

「そうです。学園の物はどうも使いづらくて。」

「なるほどな。君くらいになると学校のではスペックが足らんからな…かといって君自身の物を使うわけにもいかんしな。」

「やはり自分に合ってないとどうしても調子が狂ってしまうので…」

と微笑して言う。

「君の場合、使えるものが限られているからなぁ。まずどういう形でいくのかね?」

顎に手を当て、うーん…と頭を悩ませる。

「いつも通りで軽装で動きやすいのがいいですね。

重いものも極力省いて…かといって布ばかりだと守るところも守れないので胸に軽い金属のプレートと左手だけに鎧を付けてください。

右手にも付けると剣が持ちにくくなるので、後は膝と踵ですね。

剣が使えない時のために体術用の武装もしておいた方がいいですし。装備の方はこれで大丈夫です。武器の方は今ある<サーヴァント・ソード>と<SIG SAUER P226 E2 >で充分に戦えます。」

「あの時作った武器をまだ使ってるのか。」

「はい。あれは扱いやすいですし。」

「私の会社のスタッフは優秀な人材ばかりだからな。」

「そうですね。皆さんに随分助けてもらってます。」

「お互い様だよ。…さて、話がそれ過ぎたな。続きを…」

「あ、はい。とりあえず今回は13日までには仕上げてほしいんです。

なんでも学園の方で装備品のチェックがあるらしくて。」

「かなり厳しいんだな。」

「そうなんですよね。過去に自分に合わない装備を使った生徒が居てエレメントに飲まれて死んでしまったっていう事があったらしくて。」

「そんな事があったのか…そうだ、もう他に注文はないかね?」

「はい。大丈夫です。」

「了解だ。これくらいならすぐにできそうだな。」

「そうですか。本当にありがとうございます。」

「そうだ。せっかくだから少し話でもしないか?」

「?それは構いませんが…」

そう言うと健二は嬉しそうに笑う。

「そうか、良かった。

いやなに、君が学校に通うなんて思ってもいなかったからな。」

「まあそうでしょうね。俺も学園に通うなんて思ってもなかったですし。

それに"あれ"が本当なのかも確かめないといけないので」

「まあそれもそうなんだが…どうだ?学園は楽しめてるのか?」

親のいない朔摩を昔から我が子の様に接していたから朔摩の事が心配なんだろう。

少し笑って見せる。

「大丈夫ですよ。友達も出来ましたし、このまま普通に暮らせたらいいんですがそうもいかないんですよね…」

「魔術師育成学園に通う時点で普通ではないだろうに。」

健二は、ははっと陽気に笑う。しかしすぐに真剣な顔に切り替わり話を続けた。

「実はな、私の娘もあの学園に通っていてな。」

「へぇ、そうだったんですか。それは1度ご挨拶したいものですね。」

「そうか。また機会があったら会わせてやりたいものだ。あの娘もきっと喜ぶ。」

「それにしても子供がいたなんて聞いてなかったですよ?」

「いや、なに。別に理由は無いんだ。ただ話す機会が無かっただけだからな。」

すると健二は少し気落ちな顔をした。

「…あの娘はとても優秀なんだ。しかし、嫌々あの学園を通っているのではないかと心配なんだ。元々、私があの娘に学園を通うように言ったんだ…昔は魔術師になれるほどの魔力があったわけじゃないんだ。

だが6年前、突然膨大な魔力が現れたんだ。

それから私は娘に新しい世界を知って欲しいと学園に入れたのだが、今思えばただの押しつけだった。

あの娘はきっと無理をして学園に通っているのだろう。辞めたいとも言い出せずにずっと…」

健二は手をグッと握りしめた。

健二の娘の事は朔摩には何も分からない。

こういう時は何を言えばいいか分からず考え込んでしまう。

しかし、何故か自然と口が開いた。

「多分…無理には通ってないとは思いますよ。

確かに最初は嫌だったかも知れませんが今はそんなことはないんじゃないですか?

娘さんも娘さんなりに楽しんでいると思いますよ。」

すると健二は固かった表情を緩めた。

「そうか…そうだといいんだが。

いや、すまん。こんな話がしたかったわけでは無いんだ。」

少々焦り気味の健二を宥めるように返事をする。

「大丈夫ですよ。それに…娘さんも辛かったら自分から相談するでしょうし。」

そこでハッとして謝罪する。

「すみません。生意気言って。」

「いや、いいんだ。少し楽になったよ。」

「そ、そうですか。」

「おっとそうしている間にもうこんな時間か…すまんな、余計な話をした。またいつでも来てくれて。」

「はい。ありがとうございました。それでは後日またお伺いします。」

椅子から立ち上がり会釈してエントランスへと向かった。

 

 

フェルーム社のエントランスを通り過ぎ、外へと出た。

数歩進んでから足を止めた。

(家族…か…)

朔摩は7歳より前の記憶が無くそこから2年間孤児院で育ったため、家族というものを知らなかった。

しかし、ここまで育ててくれた孤児院の人には感謝している。

それに孤児院には自分と同じように親のいない子供が沢山いた。

しかし全員がいい人という訳でもなかった。酷い人間だって何人もいた。

虐待なんて日常茶飯事、少しでも揉め事を起こすと2週間も食事を与えてくれなかった。そんな人達のなかにもただ1人を除いては皆に…俺に優しくしてくれた。

でもその人は…。

本当は孤児院ではなく普通の家庭で生まれたかったと何度も思った。

しかしそれは叶わぬ夢だった。

そんな事を考えている内に停車スペースにタクシーが来ていた。

慌ててタクシーに乗り、目的地を伝えた。

(今日はもうゆっくり休もう…)

そう頭の中で考えているといつからか睡魔が襲ってきてあっさりと眠りについてしまった。

気が付けば家の近くまで来ていたらしい。

運転手にここでいいです。と伝え車を降りた。

家に入り荷物を投げて風呂場へ向かった。

服を脱ぎ洗濯カゴに放り込み、ガララッと音を立て風呂場のドアを開ける。

「はぁぁ〜…」

(今日は会議あったからなぁ…疲れた。)

グッと腕を天井に上げ伸びる。

ふぅっと息をつき少し長めの前髪をかきあげる。

浴槽に浸かり体から力を抜いた─────

 

風呂から上がり髪をタオルで拭きながらリビングへ戻るとケータイに電話がかかっていた。

テーブルからケータイを取り相手を確認する。

浅井 隆一(あさい たかいち)

(…隆一さん?)

とりあえず通話ボタンを押し、電話に出た。

「もしもし、黒月です。」

「おお!でたか。さっきも1度電話をかけたのだが出なくてな。」

ケータイから聞こえた声は中年位の男の声だった。

「ごめん。ちょっと健二さんの所に寄ってた。それで隆一さん…どうしたんだ?いきなり電話かけてくるなんて…何か用でも?」

すると、さっきとは打って変わって真剣な声がした。

「そうなんだ。少し用があってな。今大丈夫か?」

「はぁ、大丈夫だけど。」

「実はな。こちら側でアザゼルの塔に関する事を調べたんだが、どうも怪しい影があってな…」

それを聞き、朔摩も真面目な声をして質問をした。

「それは魔獣なのか?それとも…」

そこで言葉を切ると隆一が続けた。

「そう…人間なんだ。ココ最近、人間が魔獣を操っての事件が多発している。最近起きた事件で拘束した犯人達を詳しく調べたところそのうちの殆どに、ある"共通点"があった。」

「共通点って?」

「犯人の殆どに腕に何かしらの紋章が刻み込まれていた。

どの紋章も似たような形で比べてみてもほぼ一致している。

そこから考えるに、そいつらは何らかの組織で行動してるとみられている。」

「そうか…以前にも魔獣を使った組織があったな…あれの生き残りとは違うのか?」

「いや、それはないだろう…それと、今度の攻略作戦で奴らが現れるかもしれん。十分に注意してくれ。いずれ情報が揃い次第、我々の全勢力を上げて、組織を壊滅させるつもりだ。」

「ああ、任せる。そういう組織は早めに潰しておいた方がいい。こっちでも情報は集めておくよ。じゃあな。」

「わかった。頼むよ朔摩」

「分かってるって。任せてくれ。」

電話を切りテーブルへと戻すとおもわず欠伸が出た。

時計を見るともう既に日付が変わる頃だった。

眠気が強くなりうまく回らない頭で寝ることを決めた。

 

時は遡り、会議室の頃。

幸奈は朔摩と同じく今回のアザゼルの塔攻略作戦に参加することになっていた。当然会議にも出席した。

会議が始まるのを待っているとふと斜め正面の2席空いているのに気づいた。

(この前の人…今回の作戦に参加するのかな…)

幸奈は名前も知らない生徒のことを考えていた。

(あんなに強かったんだもん。きっと参加するに違いない。)

と1人でそう結論づけ、2つの空席を見つめていた。

あと数分もすれば会議が始まる。

するとドアがガチャと音を立て開いた。

そこには1年生と思われる男子生徒が2人いた。

そのうちの1人は一目で誰か分かった。ガタッと音を立て椅子から立ち上がってしまう。

(あ、あの人!やっぱり参加するんだね。)

当たり前か。そう思いながら椅子に座り直した。

 

 

会議が終わり先日のお礼をしようと思ったのだが、彼の名前を知らないという大事な事に気がついた。

(会長なら知ってるかも…とりあえず聞いてみよう。)

「あの…会長。」

そう控えめに呼びかけると会長が気がついたようで。

「あら、どうしたの白村さん?」

「あの。彼…最後に会議室に来た、落ち着いた感じの生徒の名前が知りたいんです。」

「彼?…ああ黒月君の事ね。前に生徒会室に呼び出した時に名前を言ったと思うんだけど…」

「あ、あはは…名前をちゃんと聞いてなかったんです。」

冷や汗をかきながら苦笑する。

そんな事言ってたっけ?と記憶を辿るとあの時不思議な感覚に襲われて会長の言葉が頭に入っていなかったことを思い出す。

「まあ、そうだったの。ちゃんと聞いておいた方がいいわよ。」

「は、はい。以後気をつけます。」

すると会長はニコッと笑い許してくれた。

「よろしい。じゃあ私はまだ用事があるので。」

「はい。お忙しいところすみません。」

そう言い会長にお辞儀すると会長はニヤリとからかうような笑みを浮かべる。

「いいのよ。男の子に興味を持つのは自然な事なんだから。」

そんな言葉が聞こえ、耳の中で響いた。

幸奈は首の付け根まで真っ赤に染まった。

「ちっ、違います!!そんなんじゃありません!!」

「あらあら、真っ赤になっちゃって、可愛い〜。いいわね〜青春青春。」

どうやら会長は照れ隠しと思っているようだ。

「ほっ、本当にちち、違うんですよ!!」

「はいはい。分かりましたよ。頑張ってね〜。」

そう言い残し最後まで意地悪な生徒会長は颯爽と部屋を出ていった。

「もうっ本当に意地悪なんですから。」

熱が冷めてきてまともな思考が出来てきた頃、本来の目的を思い出しさっきまで彼がいた場所を見る。

しかしそこにはもう彼の姿は無かった。

しまったとばかりに慌てて会議室を出て周囲を見渡したが、彼の姿は見当たらなかった。

しょんぼりと落ち込みながら、その日は大人しく帰路についた。

はぁ…とため息をつき自分の部屋に入ってベッドに倒れ込んだ。

(結局、お礼できなかったなぁ…)

ベッドに手を付きグッと力を入れ起き上がった。

(今日はお風呂に入ってもう寝よう!)

部屋を出て行き、風呂場に向かった

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。