ちゃんと理由はあるんです泣
許してください。
※後書き読んでもらえると嬉しいです。
─アザゼルの塔攻略作戦初日─
バスから降りてすぐの所に、巨大な宿泊施設が建てられていた。
といっても旅館のようなものではなく、保健施設のようなものだった。
「へえ…大きいな」
周りをキョロキョロと見渡すとすぐ近くに崖があり、崖から数km先に巨大な円柱型の塔が建っていた。
「あれが今回の目標か…」
環の方へ向き直り質問をした。
「作戦はいつからするんですか?」
「今から2時間後に出発する。」
「結構早めなんですね。」
「ああ。時間は限られている。一秒でも早くあの塔を攻略したい。」
真面目だなぁ…と心の中で呟いていると環は踵を返してメンバーの方へと向き直るとこれから塔に向かうこと、荷物などを自分のテントに放り込み、必要なものだけ持って集合することを伝えると解散となった。
そして時間が経ち、集合がかかり、メンバー全員が環の元に集まった。
全員が集まったのを環が確認すると声を張り上げる。
「これから塔に向かう。だが、道中にも危険は潜んでいる、十分に注意する事だ。」
─はい!─
と環の言葉に同じく声を張り上げて返事をするメンバー達。
そこで1人、朔摩は考え込んでいた。
(彼らは学年の上位のメンバーだ。簡単にやられることはないと思うが今回隆一さんからの電話にあったように何らかの組織がこの作戦に介入してくるかもしれない。メンバーに危害が加わる恐れもある…気をつけないとな。)
この作戦中は常に周りを警戒しなくてはならない、もちろん何も起こらないのが一番なのだが……
そう考えていると不意に声をかけられた。
「どうしたの黒月君。そんな怖い顔して…体調でも悪いの?」
どうやら考え込みすぎて顔が強ばっていたのだろう、それを不思議に思った幸奈が声をかけたようだ。
「あぁ…いや、何でもないです、大丈夫ですよ。」
「?…そう?無理しないでね。」
「はい。」
「なんだか君、隠してない?」
「は?」
「皆に黙って…何か危ないことしようとしてない?なんだかそんな感じがするの。」
朔摩は幸奈の鋭さに驚愕した。
知り合ってそこまで時間が経っていない人の表情を見るだけで人の心情を読み取る。
そんなことを出来るのは滅多にいない。
悟られ無いよう無表情のまま視線を外し、素っ気なく答えた。
「別に…入学して間もない一年が何かを知ってるとは思いませんけどね。」
言い方が少しキツすぎたかと思い幸奈の表情を伺おうと横目で見ると気にしたふうはなく、それどころか心配そうにこちらを見つめている。
「本当に何も無いのよね?」
「ええ。」
どうしてここまで浅い付き合いの人のことを心配出来るのか、理解が出来ずに朔摩は困惑していた。
それと同時に素っ気ない態度を取って心が少し痛んだ気もした。
(不思議な人だ。ここまでお人好しな人は久しぶりだな。)
誰にでも優しく、誰からにも好かれる。きっとそんな人なのだろう。
そんなことを思いながらじっと見つめていると幸奈が突然頬をほんのりと赤く染めた。
「そ、そんなにじっと見ないでよ…」
「あ、すみません。」
素早く目を離す。
「あ、別に大丈夫だよ…?ごめんね。」
「それって先輩が謝ることなんですか?」
「え?あ、いや、そんなことないけど。」
「なら謝らなくていいですよ。」
「うん…そうだね。」
そして2人はそれっきり何も話さなかった。
朔摩は環の説明が終えてもこの作戦に介入してくるであろう"組織"の事を考えていた。
この作戦メンバーには組織の事をつたえない方がいいだろう、そもそもたかが入学したての1年生がそんな事言ったって信じてもらえない。ここは誰にも知られずに隠密に行動する必要がある。そうこう考えている間にそろそろ塔に出発するようだ。
そして環の掛け声があがった。
「皆、気合入れて行くぞ!!!」
─おおおおおおおお!!!!!─
男達の暑苦しくあげられた声が周囲に広がった。
しばらく歩いていると塔の目の前まで来ていた。
タワーの入り口は攻略初期の頃粉々に破壊されていたようだ、環が先陣を切り中を覗いた。
「ここら辺にはいないようだ、入っても問題ない。」
1フロア直径400mもある巨大な建築物で中は迷路のように道がうねっている、だが制圧されたフロアは魔獣が湧かないように専用の装置を使ってるだとか…お陰で魔獣とは出くわさなかったのだが30階まで上がってきて扉を開けた瞬間、魔獣の大群が襲ってきた。
しかし流石、訓練していることだけはあってメンバーは不意打ちには驚いていたもののすぐに態勢を立て直し魔獣を次々と倒していった。
しかし何故制圧された階層で魔獣が湧いたのか。
湧出抑制装置が作動していればよっぽどのことがない限り、魔獣は湧かない。
「なんで湧いたんですかね…」
「わからん…調べておく必要がありそうだな。」
そうしてしばらくこの階を調べていると湧出抑制装置が壊れていた…いや壊されていた。
「どうみても人がやった跡ですね…」
「ああ…そうだな。」
(やっぱり何らかの組織がこの作戦を邪魔しようとしているのか…しかしなぜそんなことを…これは隆一さんに報告しておいた方がいいな…)
原因が見つかりすぐさま予備の装置を設置して次の階へと上がった。
それからも装置が破壊されている階がいくつかあったものの予備のストックが山ほどあったため直ぐに交換できた。
そうこうしているうちに現在未到達の41階に来ていた。
人の5倍の大きさはある扉、そこに近づくと重い音を立てながら開いた。
中に入るとそこは今までの階層とはまた違った構造になっていた。
「へぇ…さっきまでの階とは少し違って随分簡単な造りになってるんだな、さっきまでの迷路とはおさらばか。」
「かと言って油断するんじゃないぞ。どこに魔獣が隠れてるか分からんからな、もしかしたら今まで以上に強い魔獣が現れるかもしれん。」
それはそうだ、今までのように同じとは限らない…ここからはもっと慎重に進む必要がある。
「よし、進むぞ。」
通路はこの50人が通るにしても広い、これなら魔獣が攻撃を仕掛けてきても回避するくらいの余裕はある。
しばらく歩いていると、そういえば…と一番近くにいた幸奈に質問をした。
「そういえば先輩」
「どうしたの?」
「この塔の残り10階を4日間でどう攻略していくんですか?」
すると幸奈は人指し指を顎に当て首を捻って生徒会長から聞いた予定を思い出した。
「ん〜と…今日は43階までらしいよ、明日は44階から46階、明後日は47階から49階、最終日は丸一日費やして最上階の50階を制圧したいって言ってたよ。」
「へえ…。安定してますね。これなら無理も無いですしね。」
「うん!でも気を付けてね。この間は助けてもらったけど今回は役に立つからね!」
先輩はものすごく気合いが入っている様子だ。
しかしこんな時、どう返せばいいか分からず、素っ気なくなってしまう。
「まあ…無理のないよう頑張ってください。」
そしてそこからはほぼ作業のようなものだった。魔獣が現れればすぐに倒し、この階の全体図を把握したりなど特に変わったことはなく、その調子で他の2階も制圧して一日目の予定が終わった。
宿泊施設に戻って残りの時間は自由時間となった。
隊長、副隊長や少数だがこちらに来ていた生徒会のメンバーは各階の湧出抑制装置に付けた監視カメラの映像をモニターに映し、監視していた。
朔摩はこれから現れるかもしれない組織を警戒して周りを監視していた、付近に怪しい反応があれば直ぐに駆けつけて撃退しこれからの作戦を予定通りに終わらせる…だが物事は簡単に思い通りにはならない、それが現実だった。
自由時間もあっという間に終わり、一日目の作戦は終了した。
夜になりメンバーが眠りについた頃、朔摩は自分の布団から抜け出し、戦闘服のコートをはおり剣や銃、ベルトポーチもつけて宿泊施設を出る。
廊下を歩きながら携帯を取り出し隆一に電話する。
宿泊施設のドアを引き、外に出た。
「…もしもし、黒月です。」
『おお、黒月か どうした。』
「一日目の作戦を報告する、結構重要な事なんだ。」
『そうか…では話してくれ。』
「分かった……ん?ちょっと待て。」
後ろの方で小さい音だったが確かに朔摩の耳には届いた。
『どうし…』
隆一が言い終わる前に朔摩が腰に付けたホルスターから銃を抜き取り、音のした方向に銃口を向け、低い声で強く言った。
「誰だ…!」
すると女性用の棟の影からネズミが出てきた。
「…ネズミか…」
ホッと息を吐き、銃をホルスターにしまった。
携帯電話を再び顔に近づけ通話を再開する。
「すまない…話の続きをするぞ。」
『ああ』
「階層はバラバラだけど魔獣の湧出抑制装置が破壊されていた。どう見ても人がやった跡だったよ。」
『なに?それは本当か!』
「ああ、本当だ。幸い予備の装置が宿泊施設の倉庫に大量にあったからなんとか湧くのは阻止したけど…多分この間言ってた組織だろうな。
また奴らが破壊しにくるかもしれない。こちらでは隊長達が自律型迎撃ロボットを各階層に置いてるみたいだけど…それで奴らに対応できるかどうか…」
『うむ…そうだな。…黒月、真夜中で悪いが君は今から塔の入り口に向かってくれ、塔に入るにはあそこしかない。奴らが装置を破壊しに来るのならあそこを通るはずだ。多分奴らは君達作戦メンバーがいない時に塔に入り、装置を破壊するつもりだろう…いけるか?』
「もちろんだ。」
朔摩は走って目的地へ急いだ。
夜皆が寝静まった頃、幸奈は寝付けず気晴らしに施設の外を散策していた。
ぼーっとしていると男子用の棟からガチャッと扉の開く音が聞こえた。
(えっ。な、なに?幽霊とかじゃないよね…?)
ここの施設全体に魔獣が入り込まないよう魔術がかけられているので魔獣の可能性は低い、なら一体何なのか…幸奈は怖いと思いながらも気になり、恐る恐るその方向に息を殺して近づく。
(えっ…)
少し遠いがそこには朔摩が立っていた。どうやら誰かと電話をしているようだ。
内容は遠くて聴き取れない。
(黒月くん?なに話してるんだろう…)
もう少し近づけば聞こえると思い手を前に出したその時、前に出した手で枝を踏んでしまった。
(あっ!)
地面を見ていなかったせいでそこに枝があったことに気づいていなかった。まずいと思い瞬時に施設の影に隠れるが朔摩のほうから声が聞こえた。
「誰だ…!」
カチャという剣の柄を触る音がした。
幸奈は体をビクッと跳ねた。
(うう…気付かれる…!)
口を抑えてプルプル震えていると外でカサッと音がした。
壁の向こうで分からないがその方向へと目を向ける。
(な、なに?)
─ちゅう─
(ネズミ!?)
すると
「…ネズミか…」
朔摩がそう言うのが聞こえた。
その瞬間幸奈は脱力した。
(助かったぁ…黒月君鋭すぎだよぉ…)
そしてもう一度気をつけながら外に目線を向け朔摩を見る。
(それにしても何してるんだろう…)
すると朔摩は電話を切り走り出した。
(あ、どこかへ走っていった。あそこは塔の方向…何しに行くんだろう。追ってみよう)
もしもの時に持っていた武器を抱え、朔摩の後を追った。
しばらく走っていたが途中で朔摩を見失ってしまい1人で塔へと向かっていた。
「黒月君足速すぎるよ…うぅ…ここどこ?」
完全に迷子になってしまった、目印である塔を見ようと上を見ると、そこには大木から伸びた枝や葉っぱで覆われており辛うじて月明かりが差し込む程度で塔は見えない。帰ろうと思ったが道が分からなくなりそれも叶わなかった。
「帰り道どこなのよ…こんなことなら信号弾持ってくればよかった…っていってもみんな寝てるから無理か…」
はあ…と肩を落とし1人で呟いていると数m先に人影が見えた。
「黒月くん?」
周りが暗いせいでシルエットしか見えないがその人影は走っていた。
(ここら辺は一般人立ち入り禁止だし…やっぱり黒月君だよね。追いかけよう。)
今度こそ見失わないように全速力で走るがやはり女の幸奈では男の朔摩には敵わない、どんどん引き離されている。
すると人影が走るその先は平原だった。その人影が草むらを飛び越えて平原に出るとすぐに金属がぶつかり合う音が響いた。幸奈ももうすぐこの森を抜け平原に出れる。
とにかく森を抜けた所にはなにがあるのかを確認しようと歩を緩めゆっくりと覗いてみる。
(っ!)
そこは塔の入り口の目の前だった。いつの間にか塔の方に走って、たどり着いたのだろう。しかし驚いたのはそこではなく先程から鳴っていた金属がぶつかり合う音の正体だった。
そこにはものすごい数の人達が、30…いや50人はいるだろうその大群は怒声や悲鳴、叫び声を上げていた。よく見るとその大群の大半は血を流しながら地面に倒れている。立っているのは20人くらいだった。
しかし…
(誰がこれを…)
周りを見渡してみるとそこには先程自分が追いかけた人がいた。
「黒月くん…」
自然と口からその名前がこぼれ落ちた。
塔の目の前に着き、隆一に電話をする。
「もしもし、隆一さん。今タワー前に着いたよ。」
『そうか。ならしばらく待機していてくれ、奴らが来るとは限らないが万が一の事が起きるかもしれんからな。』
「ああ…分かった。終わったらまた連絡する。」
電話を切り、草陰に隠れて気配を消す。
誰か現れないか監視する。
(奴らの目的は一体なんなんだ…)
今はともかく奴らにこの作戦を邪魔させるわけにはいかない。
このまま装置を壊して設置しての繰り返しだと攻略はとまってしまう。
そうなると完全制圧が遅れ、また何年も待たなければならない。
瞼を閉じて集中し眼の能力を発動させ、周辺に生命反応があるか察知する。
(こちらに向かってきている反応が…50か…多いな。)
この量は隆一さんから聞いていた奴らに間違いないだろう。
とりあえず奴らがこちらに来るのを待って不意打ちを仕掛けて、一気に半数を潰す。
(生命反応通過まで…3…2…1…今だ。)
草陰から音もなく飛び出し大きく跳躍する。
集団はまだ朔摩の存在に気づいていないようだ。
愛用の剣を鞘から抜き中央の敵の肩に狙いを定め一気に振り下ろす。見事に命中し肩口から血を撒き散らして地面に倒れた。
そして剣を振り下ろした風圧で周りに砂煙が立ち込める。
「なっ、なんだこいつ!!おい!殺るぞ!!!」
そう言った瞬間、朔摩は姿勢を低くして剣を逆手に持ち回転しながら周りの敵を一掃した。
「どわっ!」
「この野郎!!!」
背後から走ってきた敵に向け剣を脇腹から思い切り突き出し相手の腹に命中させる。
「ぐぼぁ!!!」
剣を抜き敵の固まっている所に向かって走る。剣先を地面に当て火花を散らしながら剣を斬り上げる。
「なんだこいつ!めちゃくちゃ強ぇぞ!動きが見えねぇ!!!」
「おい!相手は一人だぞ!はやく片付けろ!」
「無理だよ!この人数でもどうにか出来る相手じゃない!!!」
朔摩の動きに誰一人として追いつくことが出来なかった。
右に居たと思ったら既に左側にいる。
朔摩は俊敏に動き、異常なまでの速さで相手を倒していく。
(人数は多いけど一人一人は大したことないな。)
剣先を突き出し朔摩は質問した。
「おい。お前らは何者だ。何しに来た。」
「言うわけねぇだろ!!そんなことしたらボスに殺されちまうよ!!!」
「へぇ…じゃあ無理矢理にでも吐いてもらおうか。」
「くっ…!やれ!!」
すると指揮官らしき人物の後ろから大量の炎のホーミング弾がこちらに向かって放たれた。
(ヤバッ)
後ろに飛び退きホーミング弾を避けようとするが追尾性が高くなかなか振り切れない。
「チッ…」
飛び退きながら迫るホーミング弾を次々と斬っていく。
最後のホーミング弾が迫った。
「そいやっ」
そう言い剣の腹で野球のように敵の方へ弾き飛ばす。
いきなりの出来事に驚きその場から逃げ遅れた敵は自分達の放ったホーミング弾をまともに喰らい空高く飛ばされた。
反対を向き、寄ってくる敵に向かって剣を投擲する。
見事肩に突き刺さり、その場に倒れ込む。
そのまま近くにいる敵の顔面に左拳を叩き込む。
風を切るような音を立てると顎に綺麗に入り、鈍い音と顎の骨が砕ける音が鳴る。
「ぐおえ…!」
顎を砕かれ倒れ込むとその後ろにいた敵が件を振りかぶったのでそのままの勢いでギュルッと回転し、脇腹に後ろ回し蹴りを喰らわせる。
その瞬間、敵は大量の血を吐き出す。
そして後ろに飛び退き、敵の方に刺さった剣を引き抜き、左右の敵を切りつける。
「うわぁぁぁ!!!」
それからは血にまみれていた。
朔摩は向かって来る敵を片っ端から斬り倒して行った。
数分後敵は全員地面に這いつくばっていた。
「ふぅ…」
剣をヒュッと振り、こびりついた血を払うと腰の鞘に戻しながら息を吐いた。
その時背後の草むらから何かが動いた気配がした。
草むらへと振り向くと同時に左手で腰のホルスターから銃を取り突き出すと低い声で言い放つ。
「誰だ。」
すると観念したのか草むらから人影が出てきた。
「黒月くん…」
そこにいたのは幸奈だった。
「先輩…?」
幸奈は呆然としながら問いを投げかけた。
「…なにを…しているの…?」
幸奈の掠れた声が静まり返った平原で静かに響いた。
──to be continued──
はい。今回の修正は←もう修正が当たり前に…
魔法師と書いていましたが魔術師というふうになりました。
申し訳ありません。