ARCADIA   作:Sakuto.

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今回は早めに投稿できたと思います!
是非読んでください。


第二章 アザゼルの塔攻略編 Ⅴ

「先輩…?」

朔摩は幸奈の方へ振り向いた。

「なにを…してるの?」

朔摩に近づこうと歩み寄ると朔摩は突然、私の方へナイフを投げてきた。

「えっ!」

幸奈は咄嗟に顔を背け目を閉じる。しかしナイフは自分に当たることはなく顔のすぐ横を過ぎて行った。するとすぐに後ろから「うっ…!」と呻き声が聞こえ思わず振り向くとそこには刀を振りかぶっている男がいた。その男の肩には朔摩が投げたナイフが刺さっている。

「くっ…うぅ。」

「さて…どうするかなぁ…」

横からいきなり朔摩の声が聞こえ振り向くといつの間にか隣に朔摩がいる。

「こ、この人達は誰なの?」

そう聞くと朔摩は少し下を向き、ため息をついた。

「見られたからには説明しない訳にはいかないか…」

すると彼はこちらに向き直り、私の目を合わせた。

「先輩。今から言うことは絶対に他言しないでください。いいですか?」

「う、うん。」

あまりにも真剣な表情の彼、思わず生唾を飲み込む。

「まず、こいつらの事ですが簡単に言うとテロリストですよ。まあ詳しい話は本人達に聞きましょう。」

つかつかとさっきの男に歩み寄りしゃがんだ。

「おい。」

「くっ…!殺るなら早く殺れ!」

「今そんな面倒なことするかよ。それより、お前達は何しにここに来たんだ?」

「そんなの…言えるわけねぇ…だろ!」

「そっか。とりあえず拘束だけでもしておこう。」

そういうとせっせとテロリスト達の拘束を始めた朔摩を私ははただ見守ることしか出来なかった──

 

「よし、これで完了。」

テロリスト全員の拘束が終わり腰に両手を当て息を吐く。

「ねえ…黒月くん」

「なんですか?」

「この人達…死んで…ないよね?」

「それはもちろん。こんな所で殺したら処理が面倒ですから。」

それを聞くと安堵したようにホッとするのと同時に朔摩の人の命に対する価値観に違和感とも言える何かを感じた。

人の命を簡単に奪ってはいけない、ということに全く関心が無いように思えた。それどころか後処理が面倒と、人の命をまるで物のように扱っているように見えた。

何かの気のせい…そう自分に言い聞かせた。気持ちを切り替える為に彼に質問をした。

「君は…なんでテロリストと戦ってたの?」

「あー……まあ、知り合いの手伝い…?」

疑問形になっているのが怪しいが今はそれで納得しておこう。

「…そうなんだ。」

朔摩はポーチから携帯を取り出した。

「とりあえず俺、警察に電話します。先輩は先帰ってて下さい。」

「できないの。」

「は?」

「道に迷ったの…」

「えっと…そ、そうですか…なら少し待っててください。警察に電話してから一緒に帰りましょう。」

「う…うん…」

「それじゃ…」

朔摩はすこし離れた場所へ行き電話をかけた。

「もしもし隆一さん…例のテロリスト集団を捕まえたよ。場所は塔の目の前だ。」

「そうか。ご苦労だった。」

「それと……」

「?…なんだ?」

「それが、学園の生徒に現場を見られた。」

「なに?」

「幸い、今回は人を殺してない。殺していたら大変なことになってたな。」

「うむ…君が人の気配を見逃すなんて珍しいな。」

「ああ…でもおかしいんだ。俺、彼女に声をかけるまでそこに彼女がいるって気づかなかったんだ。」

「なんだと?君の索敵に全く引っかからないとは」

「偶然なのかそれとも…とにかく彼女には気をつけた方がいいな。」

「そうだな。」

「俺はその生徒と施設に戻るからそっちの人をよこしてくれ。奴らに拘束をしているから逃げることはないと思う。一応彼女には警察が捕まえに来るって言ってる。」

「分かった。気をつけて帰ってくれよ。」

「ああ。」

電話を切りポーチへしまうと幸奈の傍に行った。

「先輩」

「あ、黒月くん。通報できた?」

「はい。それじゃ帰りましょうか。」

「うん。」

時刻は午前2時10分、早く帰って寝ないと明日の作戦に異常をきたす。

のだが

─ホーホー─

「ひっ…!」

キャンプに帰ろうと出発してから3分、梟の鳴き声を聞いた幸奈は驚きのあまりその場にしゃがみこんでしまった。

どうやら暗いところやオバケが苦手のようだ。

(まあ女子だから…当たり前なのかな?)

「先輩…早くしないと夜が明けちゃいますよ。ていうかこのペースだと確実にそうなんですが…」

「うぅ…」

「はぁ…」

─かさかさ─

「いやー!!」

そう叫ぶと耳を塞ぎガタガタと震え始めた。

それをただ見ていることしか出来ない。

不用意に何かを喋れば余計怖がらせることになるかもしれないからだ。

(どうしたものか…)

うーんと顎に手を当て唸っているといい案が思い浮かぶ。

(少し強引になるかもだけど、抱えて帰るしか。)

考えていると草陰からいきなり何かが飛び出した。

(…!)

目を向けるとそれは小型の下級魔獣・ストレイだった。

(速い!)

「シシシシシシシ!」

耳を塞いでしゃがみこんでしまった幸奈は当然気づく様子はない。

朔摩は直ぐに走り出し叫んだ。

「先輩避けろ!」

「えっ?」

顔を上げるが動く様子はない。

(マジかよ。)

幸奈が動かないことに驚きながらもこうなったら自分が仕留めるしかないと思い、右の拳を強く握り魔獣にパンチを叩き込んだ。

「ふっ!」

見事にパンチは魔獣の側面にヒットし拳がめり込み、血を撒き散らして吹っ飛んだ。魔獣は直ぐに地面に叩きつけられ動かなくなったが死んではいないだろう。

朔摩は魔獣には目も向けず幸奈に声をかけた。

「大丈夫ですか?」

「え?え?何が…あったの?」

状況をいまいち呑み込めていないようだ。

「魔獣ですよ。魔獣が先輩に襲いかかったんですよ。」

「えっ!ホント?その魔獣は?」

「殴り倒しました。再生するまで当分動けないでしょうね。」

「え?殴…る…嘘でしょ、魔獣って余程の力がないとそんなの効かないはずよ?」

「火事場の馬鹿力ってやつです。それより、先輩は怪我してませんか?」

「あ、うん大丈夫だよ。守ってくれてありがとう。」

こうして面と向かって感謝されるのは慣れていないせいかむず痒い気持ちになる。

「いえ、それよりも早く帰った方が良さそうですよ。」

「え?」

「さっきみたいに魔獣が出てきたら面倒ですから。とりあえず先輩は立ってください!ほら!」

「わ、分かったから急かさないでぇ…」

少し涙声になりながら訴えてくるが、時間が無い。

仕方ないと強硬手段に出る。

「先輩、ちょっと失礼します。」

そう言うと幸奈を横向きに抱き上げる。

「へっ?きゃ!」

グワンと自分が持ち上がり驚くが今自分がどんな状況かを理解し、赤面する。

そう、今幸奈はお姫様抱っこされている。

「ちょ、黒月くん!降ろして!自分で歩けるから!」

恥ずかしさのあまりジタバタと暴れる。

「暴れないでください。落っこちますよ。それに、先輩歩けるって言ったってさっきしゃがみ込んだまま動かなかったじゃないですか。」

朔摩は至極冷静で、幸奈の気持ちを知る由もない。

「だ、大丈夫だから!」

「却下。さ、走りますんでしっかり掴まっててください。」

「へ?きゃああああああああ!!!!」

返事をするよりも早く朔摩は猛スピードで走り出した。

突然凄い速さで走ったので朔摩の首に腕を回し、ギュッと抱き着く。

辛うじて薄らと片目を開くと既に崖の上にある宿泊施設が見えていた。

(えっ、もう!?)

「先輩。もうすぐ付きますよ。」

「う、うん…ってそこ崖だよ!ぶつかっちゃうよ!」

「大丈夫です。」

「なにが大丈夫なのよぅ!」

そう叫ぶも朔摩の勢いは止まらず壁に直撃する瞬間、幸奈はギュッと目を瞑る。

「ふっ!」

朔摩の息を吐くような声が聞こえると同時に体がグンッと重くなるような感覚に襲われる。

恐る恐る目を開くと朔摩は今、物凄い高さで跳躍していた。

20mはあった崖を軽々と飛び越えて、宿泊施設の目の前に着地する。

「先輩、大丈夫ですか?」

「だ…大丈夫な訳ないでしょ!!死ぬかと思ったわよ!」

「それはすみません。」

苦笑しながらも謝罪をする。

「でもほら、こんなに早く戻ってこれましたよ。」

「それはそうだけど…」

ごにょごにょと文句を言っているがこれ以上起きていると本当に明日の作戦に響く。

早く寝るために幸奈の文句を無視して施設に入るよう催促する。

「ほら先輩。早く寝ないと明日の作戦に響きますよ。」

「そ、それもそうね。今日はもう寝ましょう。」

やっとか…と思いながら施設に入ろうとすると幸奈に呼び止められる。

「その代わり!今日のことは、明日きっちり話してもらうからね!」

「…はい。」

やはりもっと詳しく説明しないとダメか…と半ば諦めながら幸奈と共に施設に入っていった。

 

──────────

 

幸奈は布団に入り眠りにつこうとした時、朔摩がテロリストを捕獲した時に言っていた言葉を思い出した。

─知り合いからの依頼で─

(その知り合いって誰なんだろう…テロリストの捕獲を依頼する人なんて余程の人だわ…そもそも黒月くんは何者なのかしら、今度詳しく聞いてみよう。教えてくれるかな…)

と考えていると徐々に眠気が強くなりそのまま眠りについた。

 

4月15日 作戦2日目─午前7:00─

 

今日も隊長が指揮をとり攻略を進めていった。

「今日はどこの階層の装置も壊されていなかったな。」

「そうですね。」

「うむ…結局装置を壊した奴らも分からずか…」

隊長の話を聞いていると隣から服の裾をクイッと引かれた。

その方向に顔を向けると裾を掴んでいたのは幸奈だった。幸奈は朔摩にしか聞こえない小さな声で喋った。

「ねぇ…装置を壊してたのってやっぱりあのテロリスト達だったのかな?」

「そうでしょうね…でも油断は出来ませんよ。奴らがこのまま簡単に引き下がるとは思えませんから」

「よく知ってるね?」

そう言うと朔摩は苦笑した。

その表情は何かを隠しているよう見えた。

「そうでもありませんよ。」

そう言うとすぐに顔を前に戻した。

(黒月くん…危険な事に関わってるのかな…塔攻略なんかよりももっと危険な事…君は何者なの?)

朔摩の横顔をチラッと目線を向ける。そこには知り合った頃から変わらない何を考えているかわからなくて学園(ここ)の生徒達とは全く別もののオーラを持ったこの人物は一体何者なのだろう…考えれば考えるほど分からなくなる、しかし幸奈は朔摩が気になって仕方なかった。ちょっとでも彼を知ろうとある提案をした。

「ねぇ黒月くん。」

再び小声で朔摩を呼びかける。すると朔摩は再び幸奈に顔を向ける。

「なんですか?」

「君が言ってたその依頼…私に手伝わせて?」

「ダメです。」

「えっ…」

(即答ッ!?)

返事が思ったより早く返ってきて数秒呆気にとられるがすぐに元に戻す。

「な、なんで」

朔摩はいつもと変わらず平然とした表情で答えた。

「なんでって…危険だからに決まってるじゃないですか。そんな危険なことに先輩を巻き込む訳にはいきません。」

「そういう君こそ危ないじゃない」

「俺はいいんですよ。別に初めてでもないですし。」

「で、でも2人でやった方がいいでしょ?」

「人質にでも取られたらたまりません。」

「人質になんかにならないわよ!」

「…前回捕まってたじゃないですか。」

「うっ…」

そう言われると何も言い返せない。確かに学園にテロリストが侵入してきた時に人質に取られたため説得力がない。

「そ、それでも…」

どうしても朔摩を放っておけなかった。何故そこまで朔摩に食いつくのか自分でも分からなかったがとにかく放っておけなかったのだ。

「とにかく、ダメなものはダメです。ただでさえ秘密にされてた依頼なんですから…先輩に見られただけでも結構やばいんですよ。それなのにその依頼に協力するだなんて…困りますよ。」

そう言われ幸奈は落胆し俯いた。

「…分かった…」

朔摩はそれを聞くと安堵したかのようにため息をついた。

「ご理解いただけて良かったです。」

「でも、危険な時は逃げてね?」

「え?あ、はい。」

(なんでこの人はそんなに俺に構うんだ…)

朔摩は幸奈の事が理解出来なかった。何故、出会って間もないのにここまで自分に気に掛けるのか…。

そうしているうちに今日の目的の46階まで来たようだ。すると朔摩は周りに居た他の班が消えていたことに気がついた。

「あれ?…他の班は?」

「ああ…他の班はそれぞれ別の階層に行って装置を確認しに行った。」

「ああ、なるほど…それにしても怪しいですね。」

「ん?何がだ?」

「あ、いや。ここの階層に来てから一体も魔獣に遭遇してないじゃないですか。上に行けば行くほど魔獣の量は増えると思うんですが…」

「それもそうだな…ならどういう事だ。」

─ドォォォォォォン─

突然何かが爆発する音が響いた。

「な、なに!?」

幸奈は突然のことに驚いた。

「…下からだ。」

しかし朔摩はいつものように冷静だった。

「隊長、下の階で恐らく装置の爆発か爆発系の魔術の音です。今回のメンバーに爆発系の魔術を使う人はいましたか?」

それに隊長の環は少し考える。

「…いや、いなかったはずだ。」

「…なら装置の爆発でしょう。」

「急ぐぞ!」

隊長率いる第1班は爆発のあった階へと向かった。

「黒月、爆発のあった階は分かるか?」

隊長が階段を駆け下りながら問いかけてきた。

さっき爆発のあった瞬間に目の能力を使い多少の位置を把握していた。

それに爆発音の大きさからしてそこまで下の階では無かった。

頭の中を整理して階層を割り出した。

「…42階です。」

「分かった、急ぐぞ!」

(すごい…たったあれだけの事で階層が分かるなんて……というか足速い…!)

階段を物凄い速さで駆け下りていた朔摩はどんどん第1班のメンバー達を引き離して行く。

 

「おい!どうしたんだ!」

そう言って中を覗いてみるとそこは異常な光景が広がっていた。地面には他のメンバーが散り散りに倒れている。何よりも驚くべき事は上を見た時、天井が見えなかった。そこには異常なまでに湧出した魔獣がうじゃうじゃと雲のように集まっていた。

「どうしたの!…ッ!」

遅れてきた先輩達もどうやら気づいたようだ。

「なに…これ…」

震えた声を出し後ずさる幸奈。

慌てて装置がある所へ目を向けるがそれはもはや形すら残さず粉々にされ周囲に散らばっていた。

「そ、装置が…壊れてる…一体誰が!」

「クソッ!一体何があったんだ!」

「とりあえず倒れてる人達を!」

メンバーが口々に喋り出し混乱状態に陥った。

ただ2人、隊長の環と朔摩は取り乱す様子は無くただひたすらに上を睨み続けている。

「この量は異常だな…隊長、簡単なもので良いんでこの距離から撃てる魔術ってありますか?」

「ああ、持ってるが…どうしろと?」

「俺は遠距離系の魔術持ってないんで代わりにあそこの敵に一発撃ち込んでくれませんか。」

「分かった。」

環は天井に向けて手をかざすと掌に魔粒子(エレメント)が集まり球体のエネルギー弾を作り出す。

玉木は手を突き出すと射出されたエネルギー弾は天井の敵に向かって飛んでいく。

そのエネルギー弾は魔獣の大群に直撃して爆発した。

爆発した所にいた魔獣は消し飛びそこには大穴が空いたがすぐに別の魔獣がその穴を塞いだ。

「嘘っ…なんであんなすぐ…!」

あまりの量と出現数にメンバーは驚愕した。

すると玉木が口を開いた。

「このままだとここがあの量に耐えきれなくなって潰れそうだな…」

「それは避けないと…」

何とかできないかと考えるがどうにかしてあそこの魔獣を全滅させるしか方法がない。しかしあの様子だと倒しても倒してもきりがない。

(いや待てよ…)

ここまでの湧き量は普通では有り得ない。可能だとすると魔獣を生み出す"核"がある場合だ。もしかしたらその卵があの魔獣の向こうにあるとしたら…

能力を使い魔獣群の向こう側を見てみる。

(やっぱりあるぞ。)

目の能力を解き環に核の存在を教える。

「隊長。魔獣群の向こうに核があります。」

「なに!本当か!」

「はい。それを破壊すればこの湧きもどうにかなるかと。」

「よし分かった。」

しかしどうやってこの魔獣群を突破して核の場所まで行くか…

普通ならば遠距離系魔術を使ってあの魔獣群を倒していくのだが俺には遠距離から撃てる魔術は持っていない。

ハンドガンにしてもこの距離では到底届かない。

(どうする…このままだと確実に役立たずだぞ。)

ふと、壁に目をやると自分の魔術でも出来ることを思いついた。

(あ、そうだ。手を引っ掛ける所もあるし…幸い、上に行けば行くほど狭くなってるから飛距離も足りている。行ける。)

「隊長。俺が上まで行って核を破壊しに行きます。」

「…出来るのか?」

「はい。滑らなければ多分大丈夫です。」

「分かった…頼んだぞ。」

「了解。」

そういうと壁に向かって猛スピードで走り出す。

走りながら自分の身体に魔術を掛ける。

体内のエレメントを高速で循環させ自身の身体能力を上げると共に自身の身体を補強する魔術。

流れが強くなり、高速で動いているエレメントが常に放出される。

その影響で空気が振動し、その摩擦により朔摩の周りにはバチバチと音を立てながら静電気が発生している。

そのまま壁に足を着き、すぐに力強く壁を蹴る。

そしてまた壁に足を着き、また壁を蹴る。

タンッタンッと壁を蹴り、壁から壁に飛んで天井を目指す。

このスピードであればすぐに天井に着くだろう。

徐々に魔獣群に近づいていくと1匹1匹がうじゃうじゃと蠢いている。

(うわっ…近くで見ると気味悪いな……さてこっからだが…)

右手でハンドガンを取り出し威嚇射撃をする。すると案の定魔獣群はそれに驚き魔獣と魔獣の間に隙間ができた。その隙間目掛けて壁を蹴る。ハンドガンをホルスターにしまい、魔獣群の向こうへ飛び込む。

魔獣の雲を抜け、足場を探す。

(いい所あった。)

「よっと。」

安全そうな足場に着地すると先程まで見えなかった天井を見上げる。

そこには直径2m程の巨大な核があった。今でも次々に魔獣を生み出してその数を増やしている。

「さて、どうやって破壊したものか…」

ぐにゃぐにゃと蠢き所々泡のように膨らんでは弾けてヌルっとした液体を撒き散らしている。

「一箇所破壊してもすぐに再生するだろうな…だとすると一瞬で丸ごと破壊しなきゃいけないのか…」

そう言っている間にも次々と魔獣が増え、朔摩も魔獣群に呑み込まれそうだった。

(考えてる暇はないな…)

シャランと剣を抜きその剣に炎を纏わせる。

轟々と音を立てながら萌える炎が剣を包み込みその勢いを増す。

朔摩は核目掛けてジャンプし剣を突き刺した。

すると剣が纏っていた炎は核に移り一瞬にして燃やしていく。するとあっという間に核全体に炎が回り燃え尽きていく。

数秒して核は完全に燃え尽き、その姿を消した。

「よし、終わったな。さて降りるか。」

そう言うと地面から高さ50mはある場所から勢い良く飛び降りた。魔獣群を抜け朔摩の姿を見たメンバーはギョッとして慌てて受け止めようとした。しかし間に合わず朔摩は地面に激突する。

衝撃で周りに煙が舞い、朔摩の姿は見えない。

「お、思いっきりぶつかったぞ!」

「だ、大丈夫なのか…」

やがて視界が良くなり、煙が晴れてきた。

「よっと。」

朔摩は落ちた場所に何事も無かったかのように立っていた。

目立った外傷はなく、それどころか傷一つ無かった。

その様子にメンバーは安堵したようにため息をついた。

ただ1人を除いては。

幸奈は鬼の形相で朔摩に詰め寄った。

「黒月くん!!危ないじゃない!!」

その勢いに朔摩はキョトンとしている。

「大丈夫ですよ。このくらい。」

飛び降りる時点で大丈夫とは言い難いがそこは放っておく。

「このくらいじゃない!危ないでしょ!もうダメだからね!!」

幸奈のお説教をはいはい、大丈夫ですよ〜と受け流して環に卵を破壊したことを報告した。

「それにしても黒月、身体強化とは珍しい魔術じゃないか。」

「ああ、あれですか。」

「流石は強化魔術、身体能力は底上げされてるな。」

「いえ、今回は身体能力強化より補強の方を優先しました。なので身体強化はほとんどしてません。」

「なに?」

それを聞き、メンバー全員が驚愕した。

そこに驚いた表情のままの幸奈が質問をした。

「じゃ、じゃあ黒月くんの身体能力ってあれが素…なの?」

それは誰もが疑問に思ったことだ。それに対し朔摩はいつも通りの表情で返した。

「はい。そうですけど。」

─ええええええええええ!!!!─

一斉に全員が叫び声を上げた。

無理もない、人間離れした朔摩の身体能力に全員が驚きを隠せなかった。

そしてその後、天井に残る魔獣群を掃除するだけなのだがこれも大変だった。

量が量だけに、それなりに時間がかかってしまった。

朔摩を除いたメンバーは遠距離系魔術を休む暇なく打ち込み続け30分掛けてようやく魔獣を全滅させた。

こうして2日目の作戦が終了した。

 

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