ナザリックで聖なる夜を。

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Madeじゃないよ?
Maidだよ?

この話は、Sentimental Halloweenの続きな感じです。


Maid in Christmas

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレゼント? 私たちに?」

 

 好物のカリカリベーコンの歯ごたえを堪能したシクススは、食事の合間に交わされた会話の中に、奇妙な単語が発生したことを認識して問い質した。

 

「その、プレゼントって、褒章のこと?」

 

 守護者の方々や、外などでアインズ様からの勅命や任務をこなしてみせたシモベたちに贈られる品々を思い浮かべる錬金生命体(ホムンクルス)の少女――メイドは、食事の席でとある噂を聞きつけてきたという仲良し二人の話に疑問符を浮かべる。

 

「違うよ、シクスス」

「“くりすます”というイベントで配られる予定の、言うならば、そう、恩賜(おんし)というべきかしら?」

 

 フォアイルが笑みを浮かべて否定し、リュミエールが口の端に人差し指を当てて修正を試みる。

 だが、その修正された内容は、驚愕しても余りある衝撃を一般メイドの全身に叩き込んだ。

 

「お、恩賜だなんて、とんでもない!」

 

 シクススは受けた衝撃に大きく口を開いた。

 盛大にテーブルを叩いてしまって、ひときわ大きな食器の音が食堂中に響き渡り、そこにいる全員の視線を集めてしまった。一瞬以上の静寂。軽く会釈と謝罪をしつつ椅子に座り直すと、食堂はいつもの喧噪に包まれてくれる。誰もシクススたちのおしゃべりに気づいていない。

 あたりを見渡しつつ、シクススは大量の食事越しに二人へ顔を寄せた。

 

「その……恩賜? まさか、とは、思うけど、その」

「勿論……アインズ様からのに決まってるでしょ!」

 

 同じように顔を寄せ、潜めた声音ではっきりと頷く二人は、星が瞬くようにキラキラの瞳を差し向けてくる。小さい声でキャーと嬌声を掛け合う。信じられないようなイベントの告知に、シクススたちは興奮を抑えきれないのだ。

 恩賜とは、平たく言い表せば、上位者が下位者に、主人が臣下に対して、忠節や功績を認め“感謝する”ために贈与される品物や行為のことをいう。

 そういった意味では褒美とそんなに違いなどないはずなのだが、メイドたちの認識として、褒美とは特別な働きや務めを果たしたシモベにのみ賜ることを許されたもの。自分たち一般メイドのように、特に重大かつ危険な任務に励んでいるわけでもないはずのシモベに恩賞が下ることなど、あるはずのない出来事。

 アインズがシモベに“感謝する”――それ自体は特段おかしな話ではない。

 至高の御身であり、ナザリック地下大墳墓を支配される最上位者として君臨する御方は、常日頃からシモベたち一人一人の忠勤を理解し、かつての御方々に創造された者たちすべてを我が子も同然に愛情を注ぎ、慰労することをまったく躊躇しない。その慈しみの深さは量り知れない。その優しさに打たれない存在など絶無と言ってよい。

 それでも、シクススには疑問がひとつ。

 

「どうして、このタイミングで? 私たち、何かアインズ様や、ナザリックにしたかしら?」

 

 無論、ナザリック第九および第十階層の清掃保全という最重要な役目を毎日のようにこなしているが、それに対する賞与ということではないという。

 この問いには、フォアイルとリュミエールも肩を竦めるしかない。

 二人とも、噂で聞いた以上の話は知らなかった。

 

 数日前、その日のアインズ当番だった一般メイドが、アインズが先日開催したイベント――人間の都市(エ・ランテル)で行われたハロウィン仮装パレードでの経済的収支が黒字である旨を聞かされた際に、次なるイベントを企画していることを守護者統括にもらしていたのを聞いた……らしい。

 

 らしいというのは、こういった風説や噂話というのは、たびたび一般メイド間で頻出するものであり、同時に、至高の御身にお仕えする者として御身の日常やお考えをすべて知り尽くし、少しでも御身のために働く一助ができればという欲求が、彼女たちに情報交換としてのネットワーク……少女らしいおしゃべりによる噂の伝播を確立させているのだ。それこそ、アインズがほんの気まぐれに呟いた何気ない一言だけでも、ナザリックが総出となって活躍する事態に発展することもままある。この間のハロウィンイベントなど、まさにそれだ。

 そんな時に、何の準備も猶予もない状態では、いかに至高の御身に創造されたメイドであろうとも、万全な奉仕を捧げることができなければ問題となる。

 勿論、ナザリックにおいて最高位に位置する至高の御身に対して、いかに万全を期そうとしても、ただのメイド風情では、ご不快にさせない程度ができれば御の字――御身の計略や雄図に何かしらの貢献ができるとは、これっぽっちも思っていない。メイドたちにできることは限りがある。拠点を保全するという機能だけを行い続けることにのみ特化(というより限定)しているLv.1のNPCには、単純作業としての御下命しか与えられていない。自分たちで料理を作ることも、食材を生むことも、ましてやナザリックを守護するために戦うことすら出来ない。それでも、それが一般メイドたちの絶対認識であり、また「かくあれ」と創造してくれた四十一人中、三人からメイドたちに与えられた役割なのだ。それがメイドたちの誇りでもある。

 あの智謀の王の行動や企図には、万略の備えがある。

 であるならば、今回の件についても、きっとアインズの空前絶後な計画の一環に相違ない。

 

「プレゼント、かぁ……」

 

 シクススは食事の手が止まっていることも忘れて、アインズから直接何かを賜る栄誉を、夢想する。

 同様に、フォアイルとリュミエールも大好きな食事の手を止めて、シクススと同じ光景を夢に見る。

 数日後、メイドたちの噂話は、アインズから正式な布達という形で真実と化した。

 ナザリック地下大墳墓に、クリスマスイベントが到来したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリックのほとんど全てのシモベ、種々様々なモンスターが集う場所と言えば、第十階層の玉座の間を想起されるものであるが、今日のイベントで招集の場に選ばれたのは意外な場所であった。

 そこは、深い森の香りが息吹く生命の楽園、第六階層“熱帯雨林(ジャングル)”。

 ただの招集であれば、まず間違いなく訪問集合を命じられるはずのない、強壮な魔獣たちの居住地は、ナザリック内でも最大の敷地面積を誇る土地で、通常ではPOPしない、アウラの支配する魔獣たちの群れによって守られる領域なため、普段、特に用のないシモベたちはその全容すら把握できないほどの広大さを誇っている。闘技場や湖、蟲毒の大穴や底無し沼地帯、森に呑まれた村跡や塩の樹林など、実に多様な形状を至高の御方々によって創造された場所。

 そんなナザリック有数の夜の樹林は、今、普段の装いとはかけ離れたものとなっていた。

 

「なんて、美しい」

 

 誰が最初にそう言ったのか判然としない。

 自分の声のような気もするが、あるいは全員一斉に呟いた感動の為せる業だったのかもしれない。

 そんなことすら判然としないほど、彼女たちはその光景に圧倒されていたのだ。

 シクススをはじめとした今回の招集で無論下命を下された一般メイドたちは、そろって口を開いてしまう。傍らに立つインクリメントまで、普段の落ち着き払った様子が信じられないほど感動に身を震わせていたが、シクススの横目の視線に気づいて居住まいを正した。彼女につかず離れずな距離にいるデクリメントが苦笑を漏らしている。

 

 熱帯雨林の樹海の一角、この階層を守護する最上位のNPC二人が居留し、寝食を共にする場所。

 巨大樹の根元の空きスペースは、シモベたち全員を収められる玉座の間と比較しても恥ずかしくない広さがあるので、今回の招集の場に選定されたことは当然の事実。

 その中にあって、異様だと理解せざるを得ない光景があった。

 ジャングルには似つかわしくない、凍てつく風と氷雪の気配。

 

 大樹の周辺は、そこだけが一面まぶしいほどの銀世界に、変わり果てていたのだ。

 

「皆、よく集まった」

 

 声をかけられるまでもなく、シモベたちはその大樹の中でシモベたちが集まる時を心待ちしていたナザリックの最高支配者、アインズ・ウール・ゴウンその人、そして彼と共に居並ぶのは守護者各位、アルベドやセバス、シャルティアなど合計七名――総計八名の気配を感じ取っていた。さらに、戦闘メイドの六名が背後から追随してくる。

 誰からともなく臣下の礼を捧げる。

 普段のローブ姿ではないアインズは、そこに平伏したものたちに頷き、高らかに宣言する。

 

「時間もいい頃だな……では、これより、クリスマスイベントを始める」

 

 頬を叩く冷気のそよ風が心地よい。誰の顔にも、これから訪れるであろう興奮を思うだけで、身体の底が熱を持つのを感じているからちょうどいいいのだ。

 普段は陽射しのぬくもりで、月明かりの冷たさで、青々と輝く草木は、この周囲一帯だけが亜寒帯の気候になり変わったかのように雪に覆われ、葉の落ちた梢からは氷柱(つらら)まで降りる始末。誰がセッティングしたのか、人の身長ほどの大きさの雪だるまや、こたつや火鉢を持ち寄ったかまくらまであるが……まさか、古き良き日本人としての冬の過ごし方に興じたいと、アインズが童心に帰って守護者たちと共に創り上げたものだとは思うまい。

 ちなみに、ジャングルの階層に施されているエフェクトに手を加えずに、これだけの限定的な気候変動を可能としたのは、森司祭(ドルイド)であるマーレの魔法と、コキュートスが放つ冷気のオーラの組み合わせのおかげだ。超位魔法〈天地改変(ザ・クリエイション)〉で銀世界を創ろうとすると、ここまでの融通は利かないのである。

 

「すでに布達していた通り、これから巨大樹の一階に入り、立食パーティーがてら、プレゼントを私が直接、贈呈する」

 

 シモベたちの感動が、凍てついた大気を熱狂で弾いた。

 御身は高らかに宣言を続ける。

 

「プレゼントの内容は、おおむね個人の意見を尊重するが、私ができる可能な範囲で留めてほしい。現状において私がそれを送ることができない場合は、誠に遺憾なことだが、守護者たちと相談し、事前に用意されたプレゼントを受け取ってもらう」

 

 内容は、マジックアイテムや雑貨、衣服、武装、オヤツ(?)、オモチャ(?)……これが、アインズが今回用意できたプレゼントの主な総覧である。

 アインズは実に愉快気に、白い豪奢なファーで縁どられた、全身血のように濡れた赤尽くめな衣装の人物に扮して、シモベたちにクリスマスという今回のイベント企画を説明し尽くした。

 前回のイベントは、都市経済的な企図として、ナザリックのシモベたちを大々的に動員したが、今回はその逆として、シモベたちの功績や労務に応えるために主催したものだ。前回の催事で経済的に黒字だったのだから、その結果に貢献してくれたNPCたちに報酬を、つまるところボーナスを、という感じで、アインズは今回のイベントを思いついた。

 

 もともとクリスマスという祭事は、キリストの生誕祭のことを言い、その日は家族でひっそりと、しめやかに、ささやかな時を過ごすというものに過ぎない。それがどういうわけだか、リア充たちの――つまりはカップルたちの行事にすり替わってしまったもの。

 

 アインズは今回のイベントについては、身内だけですませるものと規定していた。唯一の例外は、カルネ村の少年と少女と妹だけ招いたくらいだろう。あの三人は大樹の最上階で、アウラとマーレ専属になった森妖精(エルフ)のメイドたちによる歓待を受けている。

 

 ……思い出すなぁ。

 アイテムボックスの肥やしになっているイベントアイテムのひとつを思い出す。

 

 クリスマスイブの19時から22時までの三時間の間に、二時間以上もユグドラシルにINしていないと手に入らない――というか、いたら強制的に入手できてしまう“嫉妬する者たちのマスク”、略した名は“嫉妬マスク”。

 聖なる夜、ならぬ“せい”なる夜に一人寂しくゲームしているユーザーたちから、呪詛とも祝福ともつかぬ感想を集めたアイテムで、当時の専用スレッドは「【悲報】運営、狂う」「むしろ【朗報】じゃね?」「戦争だ、これで戦争ができるぞ!」「ぶっちぎりで超越したのだぁ!」などの書き込みでいっぱいになったのも懐かしい。

 

 だが、それも今や昔。

 

 アインズはモミの木――じゃなくて、第六階層守護者・アウラとマーレの住居になっている大樹を囲むシモベたちを眺める。

 

「では、ツリーを点火するとしよう……解放!」

 

 号令に従って、封じられていた魔法の力が大樹を取り巻く。

 瞬間、一般メイドたちをはじめ、シモベたちの視界が光に包まれた。

 二人の住居になっている第六階層随一の大樹は、クリスマスのデコレーションやイルミネーションで飾られており、さらにそこへアインズの魔法が解放されたことにより、まるで七色に輝くオーロラのよう――間違っても〈火球(ファイヤーボール)〉や〈流星雨(メテオ・スウォーム)〉などではない。ザイトルクワエに施した苦しみますツリーではなく、本当のクリスマスツリー用の魔法を発動させたのだ。大樹は本当に〈極光(オーロラ)〉の魔法を纏い、巨大な綺羅星が樹のてっぺんでひときわ大きくに輝いている。他の飾りつけを見れば、靴下やプレゼント箱の代わりに、赤い足甲や黄金の宝箱が吊り下げられており、その中には表層にある墳墓以上の財宝が詰め込まれている。紅い服に白い髭のマスコットキャラがいれば完璧というところだが……マスコットはどうやら、アインズの骨の顔にモデルチェンジを果たしたようである。赤と白と肌色ではなく、赤と白と白黒という具合。

 

「ふわぁ、すっごーい! きれーい!」

「す、すごいよ! お、お姉ちゃん!」

 

 普段とはまるで違う自分たちの住居に、闇妖精の双子はオッドアイの瞳を輝かせるしかない。

 二人が着ている服は、いつもの軽装鎧などではなく、ユグドラシル時代に自分の創造主(ぶくぶく茶釜)から与えられていた衣服――クリスマス限定の赤い服とトナカイのキグルミ――にコーディネートしている。

 

「さすがは、アインズ様でありんすえ!」

「コレホドニ壮麗ナ造形ヲ、イトモ容易ク!」

 

 アウラたち同様、自分の創造主(ペロロンチーノ)から与えられた季節限定コス――煽情的なほど真っ赤なバニーガールにしか見えないが――を着込んだシャルティアと、やはり全……然、変わり映えしないコキュートスが感嘆を連ね、

 

「やはり、アインズ様の魔法の力は、我々の認識を遥かに凌駕しておいでだ」

「まったくでございますな」

 

 どこから調達してきたのか、トナカイの角を生やした悪魔と、赤っ鼻が妙に似合う竜人が、変貌を遂げたナザリック随一の大樹を、肩を並べて見上げている。

 

「ところで、アインズ様」

「どうした、アルベド?」

 

 赤い生地の衣装に白いファーが眩しい、主人とおそろいになるのをイメージしてわざわざ自作した守護者統括の甘い声が、アインズにひとつ確認する。

 

「恩賜を……プレゼントをここにいる全員が受け取るのは確かな事実として、一番最初にその栄誉を授かるものは、誰がよろしいと判断いたしますか?」

「ふむ……そういえば、順番は決めていなかったな」

 

 順当に考えるのであれば、ここは守護者各位、その中でも統括の地位に就くアルベドが受け取るべきだと、シモベたちの誰もが考えた……だが、アインズの智謀は、彼らの予測を遥かに上回っていた。

 

「守護者たちは、あらかじめ一番最後あたりと決めていたからな……トップバッターはそうすると……」

 

 今回のイベントは、ナザリックのシモベである全存在に、感謝としての物品や行為を贈与するもの。であるならば、普段、そういった褒美などを受け取ることがないような者たちをこそ優先させるのが、アインズの平等精神――かつての仲間たちが残してくれた者たちを等しく愛している心――の抱いた結論だった。

 

「では、そう……シクスス!」

 

 いきなり名を呼ばれたメイドは大いに肩を動揺させる。

 

「は、はい!?」

「おまえは今日、私の身辺を世話してくれた。その労を労うために、クリスマスイベントの呼び水となる栄誉を授けよう」

 

 身に余る決定に、アインズ当番だったシクススは膝が崩れそうになる。

 だが、ナザリック地下大墳墓のメイドたるもの、主人の前で昏倒するなど、あってはならない失態だ。

 同輩たちの視線が、一人のメイドに集約される。

 それは羨望でも嫉妬でもない。仲間の栄光を純粋に歓喜する暖かさがこもっているだけ。

 そんな同輩たちの視線が、シクススの背中を、肩を、支えてくれた。それを振り返ることなく理解し尽くす。

 メイドは一歩、雪原の銀色に己の足跡を刻んだ。

 さらに一歩、一歩を踏み締め、御身の前にまで至る。

 まるで拝謁をする時のごとく、当然な感覚として、シクススは膝を折った。魔法のメイド服は、この程度では雪に濡れて汚れる心配はない。

 それでも、シクススは凍気にさらされたかのように身を震わせてしまう。御方々から賜ったメイド服(アイテム)のおかげで、あるいはアインズか守護者たちの唱えた魔法の力で、最弱な存在のメイドでも、この場で冷気ダメージを負うことはない。

 恐怖など何処にもない。純真無垢な喜びが、この場にあることすべてへの感謝を紡がせようとする。

 しかし、メイドはただ粛然と、御身への忠節の姿勢を示すことにのみ専心する。

 

「一般メイド、シクスス……御身の前に」

「ふむ。まぁ、堅苦しい挨拶は抜きだ」

 

 望むものは、と聞かれ、シクススはここ数日夢想していたことを思い出す。

 けれど、一瞬。

 それは主人を不快にさせないだろうか、という懸念が湧き起こってしまう。

 アインズは首を傾げそうになる。

 いけない。主人を待たせるなど、メイドの風上にも置けない不忠ぶりだ。

 シクススは命じられてから刹那の時を、深く頭の中で実感する。

 そうして、たったひとつの望みを、呟いてしまった。

 

「あ、頭をなでていただけたらなぁ……なんて」

 

 変な空気が流れた、気がした。

 上目遣いに見た御方の表情は、かすかに唖然としているとわかる。

 以前、マーレ様にやっていた姿を拝見した時から、自分も、その、なでていただけたらなぁと思っていた。けれど、私はただの一般メイド。ナザリック内のいかなるシモベたちの中では最弱なレベルしかない存在。守護者様はおろか、そこらの木っ端な召喚モンスターにすら劣るほどに脆弱なモノ。

 そんなものが、至高の御身たる御方から感謝され、あまつさえ頭を撫でていただけるなんてこと……そんなことあるわけないと、思って発言を撤回しようとしたとき、

 

 ポン――と、

 

 骨の掌が、少女の髪と頭頂を優しく包み込み、撫でていた。

 

「はは、遠慮しているのか? こんなことでよければ――?」

 

 アインズは掌の下にある表情が見る見る変容していくのを、最も至近で見つめることになった。

 だから、何も言えなかった。

 シクススは、以前アインズの前で流した時と、まったく同じ色の感情を、両の目から止めどなく流してしまう。

 

「ありがとうございます……アインズ様」

 

 確たる尊崇と敬慕のまま、メイドは至高の御身からの恩賜を受け取ることができた。

 代わりに――というのは礼を失するかもしれない。

 だが、あえて。

 

 私どもの忠義を、どうか、どうかお受け取り下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 雪のひとひらのような、シクススの儚い笑みと落涙に混乱しつつも、アインズは大樹の下に集ったシモベたち全員に、プレゼントを渡すことがかなった。

 だが、問題がひとつ。

 シクススの望むまま、気安く頭を撫でてしまったアインズは、まさかの事態に直面した。

 至高の御身から、頭を撫でてもらえるというのは、アインズ本人が思っている以上に、シモベたちの欲求を鷲掴みにしたらしく、その後もアインズの掌によって頭など(構造上、頭がないモンスターもいる)をなでなでしてもらいたいというシモベが噴出してしまったのだ。

 その結果、

 

「……どうしよう、これ」

 

 せっかく用意したプレゼントが、煙突どころか、家屋の中にも収まり切らないほど大量のアイテムや物品を封入した白い包み――サンタクロースの袋のようなもの――が、大量に残る羽目になってしまった。

 しかし、在庫を抱えるわけにもいかず、また、シュレッダーにブチ込むのは躊躇される品も多いため、アインズはやむを得ず、プレゼント贈与二週目を敢行するしかなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

【Merry Christmas!!】

 

 

 

 

 

 

 

 


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