あの日はごく普通の一日になるはずだった。
「艦長‼駄目です敵に有効打を与えられません‼」
「消火も間に合いません‼」
「それでも引くわけには行かない‼消火を急がせて誘爆を防げ、せめて後五分は耐えるぞ‼」
だが、奴らは急に現れた。深海棲艦。後ろにある佐世保の町を守るために攻撃するも奴らは既存のミサイルなどの兵器を使っても仰け反る程度で傷つけることは出来ず開戦10分で俺達海上自衛隊の船はほぼ壊滅してしまっていた。今、残っているのは俺が指揮する船ともう一隻だけである。だがそれも時間の問題だろう。俺の船ももう一隻も火の手があちこちから上がり俺も船は一番砲搭と、三番砲搭が吹き飛んでしまっている。恐らくもう1隻も似たような被害状況だろう。
どうすれば耐えられるか考えながら回避行動を取らせるが敵の砲弾が数発当たって残っていた砲台を吹き飛ばしてしまった。
「ここまでか…総員退艦‼」
マイクで艦内に響かせた俺の声を聞いて急いであちこちに散って作業していた乗員が海に飛び込んでいく。艦橋の皆が脱出しに行ったことを確認してから俺も海に飛び込むために甲板を目指す。あちこち燃えているので火の粉や煙、敵の砲弾の直撃による揺れに苦しみながら甲板にたどり着いた俺は救命胴衣がちゃんと付けれていることを確認してから海に飛び込もうとした俺だったが…
(ここまで一緒に戦ってくれてありがとう…)
その前に沈み行くこれまで共に仕事をしていた船に敬礼をした。今思えばこれが失敗だったと思う。俺はその後エンジンの爆発や火薬の誘爆に吹き飛ばされ背中から海に落ち気を失ってしまった。
一時間後に目を覚ますと戦闘は終わっていたが、そこは地獄だった。船から上がる焔と、機銃掃射や、腕などを何かに引きちぎられそのせいで流れたら血によって海は紅く紅く染まっていて、俺は爆発で飛んできた破片で左目の光を失ってしまった。左目を失った痛みを耐えながら生存者を探して泳いで戦闘中に俺の船が沈む時にはまだ、戦っていたもう一隻の方に行くとゴムボートが浮かんでいた。ずっと海に浸かり続けるのは不味いと思いゴムボートに上がろうとして縁に捕まり登ろうとしたが頭に銃が向けられた。
「お前か…」
だが銃はすぐに下ろされた。
「時宗」
乗っていたのは物部 時宗。俺と同じ時に互いに別の船の艦長になった友人。時宗に差し出された手をつかんでゴムボートに上がり気絶していた俺は情報を知るために質問をした。
「そっちの被害は?」
「船は沈没。俺は船の残骸に隠れていたからやり過ごせたが部下はあの変な奴等の戦闘機の機銃掃射や奴等に素手で殺されたよ。お前は大丈夫そうに無いな…」
俺の左目から流れる血を見ながら時宗は呟く。
「あぁ、俺は詳しくは分からないが、爆発のせいで海に背中から落ちたから背中は痛いし左眼は完全に失明してしまったし…俺の部下も恐らく全滅だろう」
暫く沈黙が続いていたがふと俺は思っていた事を遠くで燃える町や海に浮かぶ仲間の屍を見ながらつい呟いてしまった。
「なぁ、俺達は長く攻撃に耐えていたけど民間人は町から逃げられたよな…部下達の死は…皆の死は犬死にでは無いよな…」
「大丈夫だろう…。そう思わないとあいつらが浮かばれない…」
そうだよなと力無く同意をしながら今度は深海棲艦が攻めてきた太平洋の方を向く。
「奴らは何だったんだ?」
「分からないが今までの常識が通じる相手ではないのは確かだな」
ミサイルなどを当てても死ななかった奴等の事を思い出していると…
「奴等の名前は深海棲艦ですよ。なぜ生まれて来たのかは分かりませんが」
振り替えるとピンクの髪をした女の子とポニーテールの女の子が水面に浮いていた。背中に着いている機械には大砲や対空砲が着いていた。
「君達は?」
「工作艦の明石と」
「軽巡 夕張です」
時宗の質問に二人はそう答えた。明石と夕張。何かで聞いたことがあると考えていると明石と名乗った女の子が俺に近づいてきた。
「眼からの出血が酷いですね…。動かないでくださいね。応急処置をしますから」
そう言いと何処からかガーゼやテープを取り出すと軽く手当てを始めてくれた。近くに女の子の顔が近いことに照れながらも何で、聞いたか思い出していると夕張と名乗った娘が口を開いた。
「私達は艦娘。第二次世界大戦を戦った船の生まれ変わりです」
そうだ。確かにミリオタな部下がこの船がかっこいいだ何だ言っていたんだ。とすれば深海棲艦はその時死んだ人が化けた存在なのだろうか?。一つ分かる事に一つ謎が増えていくが誰かが来てくれた…助かったその気持ちが湧いてきて戦闘中気を張っていたり血が減ったからだろうか…ひどく眠い。時宗と夕張の二人の会話と心配したような明石の声を聞きながら意識を失ったように眠ってしまった。
目を覚ますとコンクリート打ちっぱなしな天井が見えた。長く寝ていたのか体を起こすと酷くダルい。周囲を見渡すと薬品棚が見える。どうやら治療室の様だ。そんなことをぼんやりした頭で考えていると部屋のドアが開いて時宗と明石が入ってきた。
「起きたか、二日も寝ていたから心配したぞ」
「眼はやはり完全には治療できませんでしたか…」
俺は二人から寝ていた間にあったことをあれこれ聞いた。海上自衛隊は解体され代わりに日本海軍として再編成されて名前が変わった事。横須賀を守った艦娘達は日本を守るためにあちこちに散ったと言う事。そして…
「そうか…俺達は艦長職を解かれたか」
「あぁ、お前の眼の事を考えれば当たり前かもしれないが軍としては俺達だけ生き残っていると他の家族が反発しかね無いと考えてな」
あの戦場で生き残っていたのは自分達だけで猿島と言う無人島に送られる事になった事を。
「だが、何で猿島何だ?」
明石に渡された眼帯を左目に着けながら聞くと
「横須賀の近くに深海棲艦に対抗するための本部を置くから前哨基地を猿島に作りたいんですって」
夕張が部屋に入ってきながら答えてくれた。
「基地を作るって誰がいるんだ?」
「今はここにいる四人だけだ」
「そんな人数で基地が作れるか‼それなら戦えるのは?!」
「明石は工作艦だから実質夕張だけだ」
時宗の言葉に頭が痛む。キレたいがここにいる誰もが被害者の様なものなのでそう言うわけにはいかない。どうするか考えていると明石と夕張何か手を打っているらしいがそれは俺が完全に回復してから教えてくれるらしくその日はインスタントのかき揚げそばを食べて再び俺は休んだ。だがその翌日も明石達が造った物に頭を抱えることになるとはその日の俺、西原 祐也は思っていなかった…。