継続高校、クリスマス実習です! 作:卯月
「次は黒森峰だね。ここはひっそりとパーティーをして8時には解散して部屋に戻ってるよ。念のため睡眠薬を仕込んどいたからみんな寝てるはず」
アキのナビゲートにより、三人は黒森峰女学園に降り立った。特にクリスマスらしい雰囲気もない、落ち着いた学校だ。
「プレゼントは何なの?」
「西住まほさんは海上自衛隊護衛艦カレーのレトルト詰め合わせ、逸見さんは世界のハンバーグ写真集、赤星さんは『出番を作る20のメゾット』っていう本だよ」
「鍵は開けたよ。早く終わらせてしまおう」
特殊な形状の器具を手にしたミカが促し、三人は寮内に侵入した。幸い逸見エリカと赤星小梅、その他の戦車道メンバーには簡単にプレゼントを配り終える。
そして最後、まほの部屋の前に来た時、ミカは無言で二人を制した。
『どうしたの?』
アキが継続高校ハンドサインで事情を尋ねる。
『困ったね。隊長さん、まだ起きてるみたいだ』
『え? 電気は消えてるみたいだけど……』
『正確に言えば、眠れないんだろう。ここはまかせてくれないかな?』
ミカは持ち込んでいたカンテレを奏で始めた。
サンタクロース道における最大のタブーは子供に姿を見られることだ。継続高校サンタクロース道でこの禁忌を犯してしまった場合、良くて落第。最悪の場合、退学の上サンタ道の秘密を守るため存在が消されることもあるのだ。
そのため、サンタ道奥義「睡眠誘導術」の習得が求められる。
ミカのカンテレは特殊な音程とコードによって人体に作用し、深い睡眠へといざなうのだ。もちろん、三人は訓練によってこの催眠カンテレを克服している。
数分の後、ミカは演奏を終えた。
「もう大丈夫だ」
ドアを開くと、ベットですうすうと寝息を立てるまほの姿があった。
「さすが黒森峰の隊長だねー。私の睡眠薬でも眠らないなんて」
「人間、楽しみなことがあるとなかなか寝付けないだろう?」
「え? あっ!」
アキは机の上に置かれたものを見て声を上げた。
「手紙と、ココア……?」
そこには魔法瓶に入ったココアとサンタさんへの感謝の言葉がつづられたメッセージカードが置かれていた。
「彼女はどうも、サンタクロースを心から信じてるみたいだね」
枕元にプレゼントを置いたミカがほほ笑む。
「人は見た目によらないねぇ。いかにも堅物って感じなのに」
ミッコが意外そうに声を上げた。
「でも、彼女は本当のことを見逃さなかった。だからこそ、西住流の後継者なのかもしれないよ?」
「本当のこと?」
「サンタクロースは私たち。そして、私たちは彼女にプレゼントを渡すためにここにいる。サンタクロースは実在しただろう?」
ミカはココアをマグカップに注ぐ。
「さあ、せっかくのプレゼント、冷めないうちにいただこう」
クリスマスはまだ続く。
赤星さんはみほが水没した戦車から助けた人です。