継続高校、クリスマス実習です!   作:卯月

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プラウダ高校

 黒森峰を去った継続三人は、聖グロリアーナ、知波単学園、アンツィオ高校をつつがなく回る。

 

「……次は」

 

「プラウダだね」

 

 アキとミッコの顔に緊張が走った。

 

 プラウダ高校。サンタ道において鬼門とされる、最強最悪の学校だ。

 

「今年も『カチューシャ指令1224』が発令されてるって。プラウダ戦車道は臨戦態勢にあるらしいよ」

 

「ちびっ子隊長もあきらめが悪いねー」

 

「これもサンタ道の醍醐味じゃないかな?」

 

 ミカが邪悪に笑う。

 

 カチューシャ指令1224。またの名を「サンタクロース捕獲命令」。カチューシャが毎年発する命令で、その号令下、ノンナ、クラーラを筆頭にプラウダ戦車道メンバーがサンタを捕獲すべく今か今かと待ち構えているのだ。

 

「こっちも『白い死神』を発動する。準備はいいかい?」

 

「おう!」

 

「まかせて!」

 

 対カチューシャ作戦『白い死神』の発動。それは第三次クリスマス戦争の勃発を意味する。プレゼントを渡したい継続高校。サンタをとらえたいプラウダ。一歩も引かない両者の戦いが幕を開けた。

 

***

 

 プラウダ高校中央作戦司令室。

 

 『カチューシャ指令1224』最高指揮官のノンナが事態に気付いた時、すでに手の施しようがないほど被害が広がっていた。

 

「くっ、プラウダ防衛システムがウイルスにやられるなんて……。監視カメラもすべてダウン」

 

「の、ノンナ様~。どうやら食事に睡眠薬が混じってたみたいだ~。監視要員はほぼ寝てしまっ、て……」

 

 自身もフラフラになりながらニーナが報告する。

 

「ちっ! あれほどクリスマス前は物を口にするなと言ったでしょう!」

 

 ノンナの声は、すっかり寝落ちてしまったニーナの耳にはもう入らない。代わりにクラーラが口を開く。

 

『水道に混入されたようですね』

 

『どうやらそのようですね。プラウダ水道局に侵入するとは……』

 

 予想されていた手ではあったが、これでプラウダの戦力は大幅にダウンしてしまった。ちなみにノンナとクラーラはKGBで編み出された毒物に対する対処術を身に着けているため問題ない。

 

『カチューシャは?』

 

『自室でおやすみになっています』

 

『敵の狙いはカチューシャの自室です。赤色作戦を発動します』

 

『カチューシャの部屋でこっそり待機、ですね』

 

『ええ。敵はカチューシャにその姿を見られてはいけないという制約があります。捕らえればいい我々の方が有利です。急ぎましょう』

 

 中央司令室はカチューシャの部屋と直結している。二人はカチューシャの部屋に入ると、ノンナがベットの下。クラーラがクローゼットの中にそれぞれ忍び込む。

 

 二人はサンタクロースが侵入してくるのを今か今かと待っていた。しかし五分が経ち十分が経っても侵入してくる気配はない。

 

(どういうことでしょう……。一体連中は、)

 

 そこまで考えた時ノンナは己が犯した最大の失敗に気付いた。普段なら絶対にしないようなミスであるが、サンタに注意を払うがあまりわからなかったのだ、そう、

 

「カチューシャがいないっ!!」

 

 ノンナは起き上がると布団をひっぺはがした。そこには『ノンナちゃんへ、サンタクロースより』というメッセージが添えられた等身大カチューシャぬいぐるみが置いてあるだけだった。

 

「クラーラ!!」

 

「ノンナ様、ほら! これカチューシャ様の生着替えですよ! カチューシャ様いいにおい」

 

「くっ、こんなところに『ヒャブリーズ~カチューシャの香り~』! クラーラっ! しっかりしなさい! ち、重度カチューシャ中毒の症状が……」

 

 クラーラはノンナの幾度にわたる声かけにも答えず、カチューシャのタンクジャケットに顔をうずめるばかり。

 

 ノンナは説得をあきらめると、カチューシャの行方を捜すため部屋を出た。その瞬間、鈴の音が聞こえた。

 

「なっ!? これはいったい!」

 

 鈴はノンナの平衡感覚と位置間隔を狂わせる。一瞬のうちに、ノンナは自分がどこにいるのか、なぜいるのか、そして自分が何者なのかを忘れてしまった。

 

「一つだけ教えてあげるよ。これは陣狂(ジングル)ベル。なかなか眠らない悪い子のために使う道具さ」

 

「わるい……こ?」

 

「こんな時間まで起きているなんて悪い子だよ。君はどうかな?」

 

「わたし、わるいこじゃ、ない……」

 

「そうだね。なら、お部屋に帰って暖かいベットでゆっくり眠るんだ。大丈夫、トナカイたちが君を案内してくれるよ」

 

「おねえさん、だぁれ?」

 

「私はサンタクロースさ。愛しのちびっ子隊長はこっそり君の部屋に運んでおいたよ」

 

 ノンナ陥落により、第三次クリスマス戦争も継続高校側の勝利となった。

 

「トナカイってひどくない?」

 

「自分だけいいかっこしちゃってさ」

 

「トナカイにはトナカイの。サンタにはサンタの役割がある。それにこだわる必要はないんじゃないかな?」

 

「じゃあ次はミカがトナカイやってね」

 

 BT-42は空を飛ぶ。一路茨城県沖を目指して。

 

「次は大洗女子学園だね。プラウダに比べたら楽勝だよ」

 

 能天気に言ったミッコはまだ知らない。この大洗こそクリスマス最大の難関となることを。




第一次はカチューシャ一年生の時。第二次は二年生の時です。すべて継続側の勝利。
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