継続高校、クリスマス実習です!   作:卯月

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大洗女子学園

「角谷さんが干しイモセット、河嶋さんが角谷さんプロマイド、小山さんは河嶋さんプロマイド」

 

「よ、はい、あらよっと」

 

「西住さんがボコ(内出血バージョン)、秋山さんが超合金Mk-1雌型。五十鈴さんが……純銀針山、武部さんがコスメセット」

 

「ほい、ほい、よっと、はっ!」

 

 大洗は各人が学園艦中に散らばって暮らしているため、プレゼント配送は少しだけ困難を極めた。

 

「で、ここが最後、冷泉さん。プレゼントは」

 

 アキは気配を感じとり黙った。

 

「……まだ起きているみたい」

 

 時刻は午前3時過ぎにもかかわらず、冷泉家には灯がともっていた。

 

「どうする? 催眠カンテレ? それとも陣狂ベル?」

 

「……彼女はどうも、活発に活動しているみたいだね。どちらも効果が薄いかもしれない」

 

「じゃあ」

 

「誰かいるのか?」

 

 ドアが開いた。三人はとっさに物陰に身を隠す。

 

「ふん、こんな時間に起きている人間は私ぐらいだろう。夜は私の時間、夜は私のもの。ふふふ、はーはっは」

 

 冷泉麻子は笑い声を上げながら再び部屋に戻る。

 

「……彼女、なんかキャラ変わってない!?」

 

「あんな感じじゃなかったよね?」

 

「人間の本性を他人が推し量ることに意味があるとは思えないね。私達が知っていたのは彼女の一部分にすぎないっていうことさ」

 

「でもどうするの? ミカ。このままじゃプレゼント配れないよ?」

 

「アキ、ミッコ。ちょっといいかい?」

 

***

 

 麻子は先ほどから何者かの気配を感じていた。

 

「……三人、か」

 

 れっきとした人間の気配であることもすでに察知している。

 

「物取りか。この家に押し入ろうなんていい度胸だな」

 

 麻子が手にしたのは以前プラウダを訪問した際にノンナからもらったトカレフ型麻酔銃。麻子は息を殺し、廊下に身をひそめた。しばらくして、家中の照明が落ちた。

 

「停電か。手の込んだことをする」

 

 麻子は慌てず以前優花里から借りた軍用暗視スコープをかける。赤外線で蛍光色に浮かび上がる玄関では、占めていたはずの鍵がゆっくりと回っていた。やがてドアの隙間から特殊なハサミが伸び、チェーンが切断される。

 

 ドアが開いたと同時に、麻子は発砲した。しかし、弾丸(麻酔)は空を切る。代わりに投げ込まれたのは、

 

「フラッシュバン!?」

 

 サンタ界隈で『赤い鼻』と呼ばれる閃光手榴弾だ。暗い夜道を照らすのに便利なのだが、こうして対人戦闘に使用することもある。

 

 暗転と同時に鈴の音が鳴り響く。

 

 使用不能になった暗視スコープを脱ぎ捨て麻子は再び発砲。弾丸は鈴にあたったらしく、ガン、という金属音と女性の小さな悲鳴が聞こえた。

 

 その瞬間、小さな影が高速で近づく。

 

 影は一瞬で麻子の間合いに入ると何かを振り下ろした。麻子はそれを腕で受け止める。影が持っていたのは布に包まれた鈍器。

 

「ブラックジャック……?」

 

 麻子は知る由もないが、これは聖ニコラウスが靴下に金貨を投げ入れたサンタクロースの原点にちなんだ、『ニコラウスの靴下』というサンタ用の武器である。要は靴下に金貨を詰め込んだブラックジャックだ。

 

 麻子はそのまま影の首を鷲掴みにした。

 

「甘い、ケーキのように甘いぞ。甘々だ」

 

 麻子は余裕の表情だ。元々夜目が聞く彼女は影の動きを完全に見切っているのだ。

 

 こっそりと背後から近付いてきていたもう一人の陰に銃口を向ける。

 

「動くな。誰の家だと思ってる」

 

 影は動きを止めた。

 

「貴様ら、三人組だろう。後一人はどこだ」

 

「家、それを所有することに意味はあるのかな?」

 

「何っ!?」

 

 声が真上からした。麻子が身をひるがえした瞬間に天井に張り付いていた三人目の影が舞い降りる。

 

「自分の居場所が固定されてしまう、それはとってももったいないことじゃないかい?」

 

「その喋り方、聞き覚えがあるぞ」

 

 麻子が正体に感づくが、それより先に他の二人の影が麻子を羽交い絞めにする。さすがに3対1では分が悪い。

 

「私たちをここまで追い詰めるなんてね」

 

「普通に出会ってるんだったら操縦手同士話したかったんだけどなぁ」

 

「貴様らの正体見破ってるぞ。継続高校の」

 

「それに意味はあることかな?」

 

 麻子の目の前に火花が舞った。

 

「トゥータ」

 

 サンタ道究極奥義『手刀延髄切り』が麻子にさく裂した。これは相手を強制的に眠らせるのみならず一晩の記憶を飛ばすことができる。姿を見られたサンタクロースが使う、最後の必殺技だ。

 

 サンタクロースのイメージからかけ離れているため、習得しているものは少ない。

 

 かくんと力の抜けた麻子を、布団に戻す。

 

「冷泉さん、プレゼントはバーゲンダッツのクーポン券」

 

「さっきから思ってたけどプレゼントロマンないよね」

 

「ロマン、それが普遍的に必要だとは思えないね」

 

 こうして、すべてのミッションが終わった。

 

***

 

 夜が明けようとしていた。

 

「全部終わってよかったね」

 

「ああ、帰ったら早く寝よう」

 

「あ、そうだ! ミッコ、ミカ、はい、クリスマスプレゼント」

 

 アキがきれいにラッピングされたプレゼントを二人に渡す。

 

「あ! すごい!! ありがとう、アキ」

 

「普段の感謝の気持ちにね」

 

「感謝の気持ちは、形にして表せるものじゃないんじゃないかな?」

 

「じゃあミカはなし!」

 

「形にしないとわからないこともあるかもしれないね」

 

「どっちよ、もう」

 

「私からは、この歌を送ろう」

 

 12月25日、クリスマス。一両のBT-42が海の上を飛んでいる。

 

 カンテレの音が、朝日の中に響いていた。

 

 




あと一話だけ続きます。
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