ワンフィニット・モフラトス   作:我武者羅

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(9/9)
ネタ短編から連載に移行

(追記)
一話はネタ短編当時の姿となっております。御了承ください。


一夏:プロローグ──始まりのモフモフ──
ワンフィニット・モフラトス


 何なんだよ……これ……

 厳しい冬のある日、藍越学園受験生であった織斑一夏は、途方に暮れていた。

 

 ああ、神様、いったい何がいけなかったのでしょうか。

 入試会場の案内をよく確認しなかったせいで、迷子になったことでしょうか。

 迷子で焦ったあげく、立ち入り禁止の場所に入り込んだことでしょうか。

 それとも人は居ないのかと、適当に入った部屋にあったISに不用意に触れたことでしょうか。

 

「はい次の人、装着終わった?」

 

 傍らでさっきまで忙しく端末をいじっていた女性教師が声をかけてくる。

 なんで今更こっちを見るのだろうか。

 初めからこっちに向いてくれれば、こんなことにならなかったのに。

 

「あら、いいツヤしてるわね、あの()()()()()みたい。羨ましいわ」

 

 何を言っているのか、正直理解したくない。

 逃げたいが、このまま逃げ出してはだめだろう。

 ISを着けたままだ。

 だが、ISを脱いだり降りたりしようにも、降り方とか外し方がさっぱりわからない。

 それっぽい言葉を言ってみたりしたけどダメだった。

 

「じゃあそこの扉からから試験場に行けるわ。試験官が待ってるから、思いっきり闘ってきて。健闘を祈るわ」

 

 何か言っても聞いてくれない。

 項垂れて憂鬱な気分で扉を潜った先の部屋は、大きなパーティが開ける程に広かった。

 だが、そんな催し物には使われないだろう。金属がむき出しの壁や床は、重量物がぶつかったような傷や煤にまみれている。

 部屋の反対側に佇むものがいる。あれもISだ。四肢を機械に包み、体のあちこちににも厚みと重量を感じさせる鎧を纏いながらも、悠然としている。

 

「次の受験生ですね、ちゃんと装着してここに来れたようで安心です!」

 

 ISの威圧を忘れさせるような柔らかい声。

 こちらを緊張した受験生と見ているようで、緊張をほぐすように語りかけてくる。

 

「人によって感覚が違って、酷いと千鳥足になっちゃうんですよね」

 

 話をする間もなく、試験官は銃を構える。

 長めの銃身と大きな弾槽。たぶん、マシンガンだろう。

 

「では、試験を始めます。勝ち負けは問いません。あなたのありったけを私に見せてください」

 

 さっきの女性教師と違って、こっちと同じくISを着けていればあるいはと思ったがダメだったらしい。

 聞こえてないのか、聞き流したのか……通じていないだけとかは思いたくない。

 

(あぁ、可愛いなぁ……)

 

 突拍子もないことだが、そんなことでも考えなきゃどうにかなりそうだ。可愛いのは違いないし。

 

 

何せ―――

 

 

「―――準備はいいですね?」

 

 

向かい合う相手も、自分も――――

 

 

「さぁ―――」

 

 

機械の鎧に身を包む――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオォォン!」

<試験開始です!>

 

 

――――犬なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 インフィニット・ストラトス―通称IS―

 宇宙での運用を目的にとして篠之乃束博士によって開発され、()()()()ををきっかけに世界の注目を集めたパワードスーツである。

 注目すべき点は幾つかある。

 パワードスーツだけに留まらず、重機や義肢など、ロボット分野の技術の時を十数年は押し進めたと言われる、極めて優れた構造。

 そしてISの機能の中枢であるISコアと、ISコアから生成、供給され、バリアや推進材などに用いられるシールドエネルギー。

 

 

 だがこれらのことすら些細なことにしてしまう特徴が二つある。

 

 

 一つは、女性にしか起動、操作できないこと。

 

 そしてもう一つは、起動すると操縦者が―――犬になることである。

 

 

 これがまあ、衝撃だった。

 犬に変身するのである。それも、犬耳や尻尾がついたり、ファンタジーとか名探○○ームズとかみたいな獣人になるでは無い。

まんま、犬なのだ。それも、艶やかな毛並みの、無骨なパワードスーツを纏った犬である。

 

 

 その衝撃を受けとめようにも世界は、ある意味未熟であり、またある意味では成熟し過ぎていたのかもしれない。

 数多くの議論や論争の末、幾つもの派閥が生まれ、抗争にまで発展した。そんなことが世界中で起きたのだ。

 

 グローバル社会となったことも相まって、国や海を越えて世界中の同士が手を結び、幾つもの巨大派閥がうまれた。

 

 

 なぜ人を犬に変えるんだ、人間でいいじゃないかと篠ノ乃束に怒りを燃やす、人間愛の集い。

 

 

 なんで犬耳犬尻尾ではないのかと憤る、「コスプレ-夢-が現実に」がコピーの夢現党。

 

 

 何故獣人ではないんだ、力溢れる体、あの艶やかな毛並みの揃った姿をと叫ぶ、ケモナー党ハドソン派。

 

 

 何故人のまま使えないのか、僕らの夢がそこにある。特定業界と強い繋がりを持つ、ヒーローロボット党『ロマン』。

 

 

 何故女しか犬になれないんだと嘆き悲しむ、ビースト会 獣変派及び獣愛派。

 

 

 そもそもなんで犬なんだと嘆く猫派ネズミ派などの派閥の集合体。愛・動物連合『T&J』。

 

 犬ならそれでいいじゃないか。なぜそんなこともわからんのだ。犬に全てを捧ぐ謎の集団『犬耶識』。

 

 他にもゴツゴツしてうまく触れないとISと武器を嫌う、ほのぼの動物暮らし派、争いを避け平和を訴え、青春をぶつける中道派など数多くの派閥が雨後の筍のように現れては世界的な離合集散を繰り返した。

 

 何事かと慌てふためく開発者を置き去りに、IS本来の目的である宇宙開発が忘れ去られるほど醜く激しい、たがたしかな想いに満ちた論争が続いた。

 冷戦を思わせ、第三次大戦すら危惧させるほどの大きな波を静めたのは、とあるIS操縦者と触れあった少年の言葉であったという。

 

 

――わあぁ!モフモフだぁ!――

 

 

 そうか、モフモフか。

 柔らかくて、暖かくて。

 モフモフって、気持ちいいもんな。

 

 

――――モフモフしててかわいいんだ。まあ、どうでもいいか!

 

 この世界的和解は世界平和への道標になったと、後の世には伝えられている。

 モフモフ最強。モフモフに勝るもの無し。

 

 魚類派、両生類派、爬虫類派、あととある天災兎は泣いた。

 

 

 こうしてひとまずの決着を見せたモフモフ論争だったが、まだ問題があった。

 女性にしかISを使えない問題だ。

 この問題、モフモフ論争初期はともかく、末期には幾千もの議論に埋もれてしまい、ほぼ放置されていた。

 だが、小さな、確かな火種として今も燻っている。

 

 そんな中現れてしまったのが、男性IS操縦者、織斑一夏であった。

 男性IS操縦者の出現により、ビースト会の後継 超獣帰身会を中心に第二次モフモフ論争が起きようとしている。

 だが彼は、自身がそんな大きなうねりの渦中にあるとは、未だ気づいていない。

 

 

 ――時代が動き始める――

 

 

 

「決闘ですわ!イギリス代表候補生のわたくし、セシリア・オルコットの力を思い知らせて差し上げますわ!」

「いいぜ!受けてたつ!」

「ええ、試験官に勝ったというその力、見せて頂きますわ!」

(先生が壁に突っ込んで自爆しただけだ!)

 

「やっと来ました!これが織斑くんの専用IS『白式』です!」 

「これが……俺のIS!」

「グウォン!」

<『白式』かぁ!>

「勝ってこい……!一夏っ」

<ああ、勝ってみせるさ!箒!>

「頑張れ、一夏」

<行ってきます……千冬…姉……>

「織斑先生、篠ノ之さん? 時間が押していますから──」

「──撫でたり抱きついたりなんてことは──」

<お……おぉぅっ>

「──あっ、ああっなんて柔らかいんですか!? いつまでも撫でていたい……」

<あのー山田先生?……あっ,そ、そこは!?>

 

――手にした力――

 

 <これが……犬の感覚?ISの感覚……。不思議だ。浮かんでいるのに、立っている?>

「アオォォーーーン! 」

<いきなさい!ティアーズ!>

「グゥッ、グウォォン!」

<なっ、くっそ!負けてたまるかぁ!>

 

「あーあ、負けちまった、あんな大口叩いたのに」

「クウォォン!」

<初めてにしてはいい戦いでしたわ>

「色々と学ばなきゃいけないみたいだ。ありがとうな、セシリア」

「キャウン!?」

<きゃっ!?>

「ん、お、おぉ!すっごいやわらかい、モフモフだぁ……!」

「クゥッ!フォォン、ヒャァァン!」

<っあっ!アァッそんな、一夏さんっ……!>

―――力……?―――

 

 

「久しぶりね、一夏!」 

「り、鈴!?」

「あんたがIS動かすなんてねぇ。ねぇ、後でIS見せなさいよ触らせなさいよ……!」

「お、おう……」

 

――再会――

 

 

 

「男、……犬……雄。あっ、ああっ、いやっでも……」

「そんなこと、いけないのかもしれない」

「でも私達はもう、この欲望を、抑えきれない……っ!」

 

――淀み渦巻く野望――

 

 

 

<な、なんだ……この犬!>

<シールドを破った! 襲撃だっていうの!?>

《────!》<犬から人に……変形したぁ!?>

<立ち上がったくらいでぇ!>

『ヒィシャァァァッ!!』

 

――襲いかかる魔の手――

 

 

 

「これから皆と一緒に勉強していく、転校生を二人紹介しまーす!」

「フランスから来ました、シャルル・デュノアです」

「お、男がもう一人!?」

「あのツヤに金髪、どれ美しい毛並みなんでしょう……!」

「だけど……もう一人……いや一匹?」

「専用機持ちの中には、展開はせずに起動だけして変身しっぱなしの人もいるっていうけど……」

「ちぎれそうなくらい尻尾振ってる……」

「変身を解け、挨拶をしろ、ボーデヴィッヒ」

Ja(ヤー)!ドイツ代表候補生、IS部隊シュヴァルツァ・ヴォルフ隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒであります!」

「え……犬耳? 本物?」

「尻尾もある……! また小さくパタパタ振って……かわいいっ!」

 

「貴様があアアァァァッ!」

「ぬわぁぁぁ!?」

「一夏ぁぁぁっ!!」

「一夏さんっ!?」

 

――迫り来るサプライズ――

 

 

『グゴォァァァッ!」』

「ガウッ!ガウッ!ウオォォン!」

「落ち着け!一夏、暴れるな! ステイ!ステイ!」

「グルルゥゥ……!」

<軟体生物みたいにうごめいている、それにとても大きい。僕らの四、五倍はある。でもあの姿……織斑先生の現役時代?>

「グガウゥ!」

<違う!あんなのは千冬姉じゃない!>

「ワォォン!」

<確かに!何せ―――>

<あれは、モフモフしていない!>

 

――モフモフを信じて……――

 

 

「あのー……ラ、ラウラ? なんでキスを、それに嫁って……」

「日本では気に入った相手のことを『嫁』にする文化があると聞いた。それに倣ったまでだ」

「じゃ、じゃあ、今渡してきたこの首輪は……?」

「これまた日本では、主への誓いと忠誠を首輪によって契ると聞いた。だから、それに倣うだけだ。ほら!早くぅ!」「えぇっ!」

「またなのか? 一夏」

「一夏さん?」

「グルゥゥ……」  

<一夏ぁ……>

「ふふっ、人気者だねぇ、一夏はぁ。」

「あの……皆さん?」

 

 

「……アオォォーン!」

「「「ウォォーーン!」」」

<一夏ぁ!>

<一夏さんっ!>

「一夏ぁ!」

 

 

 

―――この物語は、モフモフな少年少女のモフモフと、そのモフモフを狙わんとする者たちとモフモフを描く物語である。

 

 

 

 

 

「………」

『もすもすひねもすー? 連絡してくれるのをず―――っと待ってたんだ!何の用かな、箒ちゃん? もちろん、ISが欲しいんだ―――』

「―――姉さん……なんでISを装着すると犬になるんですか?」

『え……え、えぇっと、その……か、可愛いんじゃない? 犬って……なんでこうなったんだろうねぇ? 束さんも……わかんないや。アハ、アハハ……モフモフ……モフモフかぁ』

「姉さん……!」

 

 

 

 

 

……かもしれない。

 




某所であるネタを見て、書きたい欲が膨れ上がったので、やってみた。
5000字の壁は大きい……
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