三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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……ふっ。待たせたな。って、ごめんなさい。昨日帰国しました。
しばし、書いていなかったのでリハビリがてらに一話を投稿します。

天眼発動とVS風間の間に起った出来事の一つと思ってください。
そうじゃないと、小南と戦わせる事なんて不可能でしょうし。


外伝的ななにか
SE修【天眼】VS小南


 三雲修が師である烏丸に勝利した報せが耳に届いた時、玉狛にいた全員が目玉が飛出す勢いで驚愕したのだった。

 

 

「ちょっ。と、とりまる? あんた、修に負けたの!?」

 

 

 烏丸の実力をよく知る彼のチームメイト、小南が勢いよく詰め寄る。

 以前、烏丸と修の訓練を覗き見した事がある。最初に抱いた印象は「こんな弱そうな奴がなんでボーダーに入ろうとしたのだろうか」であった。それだけ三雲修はドがつくほど弱かった。仮に烏丸の教育がよく実力がついたとしても、こんな短期間で師である烏丸に勝利を収める事は出来ないはず。

 また、お得意の嘘だろうと思いつつ問い質すが烏丸は首を振って否定する。

 

 

「小南先輩、これは紛れもなく事実です」

 

「……とりまる先輩はウソを言っていないよ」

 

 

 小南の隣にいた空閑がフォローを入れる。嘘を見抜けるサイドエフェクトを持っている空閑が言うのだから疑う余地はない。しかし、それを事実として受け止めるにはあまりにも衝撃的であった。

 

 

「ま、マジ? お、修!? あんた、どんな魔法を使ったの!!」

 

「ちょっ。小南、少し落ち着きなよ」

 

「これが落ち着けるわけないでしょ! あの修がとりまるに勝ったのよ。栞だって「こんな子がボーダーに入ろうと思ったんだろう」って首を傾げたじゃないの」

 

「ちょっと。それを本人の目の前で口にしちゃうわけ!?」

 

 

 慌てて「違うの、修くん」と口にするが、修は「大丈夫です」と言って宥めたのであった。

 なぜか、二人に背中を向けたままであるが。

 

 

「……オサム。何でさっきから背中を向けたままなんだ?」

 

 

 当然、その事に空閑がツッコミを入れる。

 

 

「ちょっとお腹の調子が――」

 

「オサム。つまんないウソを付くね」

 

 

 空閑からダウト宣告がされる。

 修が二人に背中を向けたままなのは、修自身のサイドエフェクト【強化視覚】が原因である。彼の力には浄天眼と呼ばれる透視能力を有している。一見、便利な能力であるかも知れないが修はこの能力を扱い切れていなかった。メガネを掛ければ集中しない限り発動する事はないのだがメガネを外したいま、修の意識に反して色々と視えてしまうのだ。

 透視能力と聞いて真っ先に浮かぶモノは何か。思春期の男性諸君ならばおわかりいただけるだろう。つまり、そう言う事だ。

 

 

「アンタ、人と話す時は目を見て話しなさいって教わらなかった?」

 

「……すみません。その当時の記憶だけ抜け落ちているみたいです」

 

 

 小南の忠告に白を切る修。まさか、修から口応えされるなんて思わなかった小南は修に近寄りヘッドロックをかまそうとするのだが――小南が修の首を捉えるよりも早く避けられてしまう。

 背中を向けた状態でも修には複眼がある。その能力を使えば背中を向けたまま、小南のヘッドロッグから逃れる事など朝飯前である。

 まさか逃げられるなんて思ってもみなかったのだろう。小南の機嫌が一気に急降下する。

 

 

「とりまる。訓練はもういいわよね。……少しの間、修を借りるわよ」

 

「……後輩イジメは格好悪いですよ、小南先輩」

 

 

 と、口では諌めるのだが、言葉に反して烏丸は手を振って修に向けてエールを送るのみ。

 どうやら、彼は傍観を決める事にしたのだろう。

 

 

「こなみ先輩。次は俺ね」

 

 

 ちゃっかり空閑が修の次の対戦相手として名乗りである。そんな弟子の頼みに「修が死んでいなかったらいいわよ」と快く了承したのであった。ちなみに修の意見はこれぽっちも考慮されていない。

 

 

 

***

 

 

 

 小南自慢の戦斧が地面に突き刺さる。自信のあった一撃が避けられて、小南の表情がますます強張っていく。

 

 

「ちっ。なんなのよ、いったい!」

 

 

 修と小南の模擬戦は終始小南が有利な状態が続いていた。けれど、盾モードのレイガストを構えた修のトリオン体を未だに捉える事が出来ずにいた。縦横無尽に放たれた斬撃も不意打ちに近いメテオラも全て紙一重で避けられてしまったのだ。

 

 

「あんた、本当に修なわけ!?」

 

 

 小南が知っている修と目の前にいる修とでは明らかに回避能力に違いがありすぎている。外見がそっくりな双子の兄か弟と言われたら小南ならば信じてしまう所であろう。

 

 

「さっきからそう言っているじゃないですか」

 

「だって、あんた。私が知る限り、こんなに動けなかったじゃないの。まさか、今の今まで手を抜いていた訳じゃないわよね」

 

 

 小南がそう思っても仕方がない。修の動きはまるで自身の動きを先読みしているかの如く動き出している。そのおかげで避けられないと思われる一撃も紙一重で避けているのだ。こんな動きをB級成り立ての隊員が出来るはずがない。

 

 

「と、とんでもない」

 

 

 小南の疑念を慌てて否定する。

 そうでなければ睨み付けて来る小南に何をされるか分かったものではない。

 

 

『小南先輩。修は迅さんと同じ未来視の能力を持っているんですよ』

 

 

 ここで、まさかの烏丸のブラフが投げかけられる。

 

 

「「なっ!?」」

 

 

 二人の驚愕の声が重なる。

 小南は修が迅と同様の未来視のサイドエフェクトを持っている事に対して。

 修は烏丸がそんな出鱈目な嘘をつく事に対してであるが。

 

 

「か、烏丸先輩!!」

 

 

 師のふざけた発言に文句の一つも口にしたい所であったが、小南の戦斧によって言うに言えなかった。

 

 

「なるほどね。そんなサイドエフェクトを持っているならば、あたしの攻撃を全て避ける事も不可能ではないわね。面白くなってきたじゃないの」

 

「ちょっ。小南先輩」

 

 

 気のせいか小南の背中に燃え上がる金色の炎のエフェクトが視える。修の天眼にそんな機能は存在しないはずなのだが、バチバチと火花を散らすその姿は某戦闘民族のそれに視えてならなかった。

 

 

「……行くわよ、修。あたしの動きが捉えられるものならば捉えてみなさい」

 

 

 連結していた双月を解除して修に襲い掛かる。先の戦いから手数で攻める方が得策と考えたのだろう。いかに回避能力が高かろうが避けきれないだけの手数を放てばいずれか当たる。事実、小南の双月は徐々に修のトリオン体を捉えつつあった。修もレイガストでさばいていくのだが、相手は二刀流だ。それに加えて小南は歴戦の戦士である。普通に戦ったら確実に敗北する。

 

 

「(普通にやっても勝てない。なら――)」

 

 

 格下の修が各上の小南に勝つ手段など一つしかない。

 

 

 

 ――メテオラ

 

 

 

 交差する様に振り降ろされた双月の一撃の後に炸裂弾が解き放たれる。小南が得意としている追撃戦法だ。これを防いだ所で小南はコネクターで双月を再び連結して、戦斧による強烈な一撃を放つはずだ。

 

 

「スラスター・オンっ!!」

 

 

 スラスターを起動。シールドを突出して修は小南が放ったメテオラに向かって特攻をかける。

 

 

「……へ?」

 

 

 まさか、自身の炸裂弾にあえて向かって来るなど思ってもみなかったのだろう。コネクターを発動しようとしていた小南の動きが止まる。それが小南の最大の危機につながるとも知らずに。

 メテオラが着弾し、修の姿は白煙に包まれて視えなくなってしまう。普通ならば視覚補正が掛かるのだが、今回はただの模擬戦だ。当然だがオペレーターの支援は受けられない。

 けれど、修の眼はオペレーターの視覚支援を受けなくても小南の姿をはっきりと捉えている。多少削られたレイガストなど構う事なく真直ぐと小南へ突貫する。

 白煙から飛び出す修の姿を見て、小南は急いでコネクターを発動するが――修の方が一歩早かった。

 シールドチャージ。シールドモードのままスラスターを起動した事により、小南の身体はレイガストに押し付けられる形で後方に流される。

 壁際まで抑えつけられた小南はどうにかして脱出を図るのだが、修はレイガストを操作して完全に閉じ込めたのであった。こうなってしまったら流石の小南もなす術がないはずだ。しかし、それは修も同じはずだ。

 

 

「(この状態なら、修も手が出せないはず。こんなの――)」

 

 

 レイガストによって阻まれた状態では下手に手を出せないはず。そう思った矢先に、目の前に小さな穴が無数開けられる。それが何を意味するのか小南は直ぐに察する。

 

 

「っ!? シールドっ!!」

 

 

 双月を放棄して、フルガードを展開させる。直後、修のアステロイドが無数の穴から入り込んで小南の四肢を貫かんと襲い掛かる。

 

 

 

***

 

 

 

 予想だにしなかった展開に見学を決め込んでいた烏丸、空閑、宇佐美の三人は驚きを隠せずにいた。

 

 

「……なに、あれ? ちょっと修くんってあんなに出来る子だった訳!?」

 

 

 小南の実力を重々承知している宇佐美からしてみれば、目の前の展開は完全に予想外の出来事であった。いま自分が夢を見ているなんて言われたら、素直に信じ込んでしまう事だろう。

 

 

「残念ですが事実です。……空閑。修は実力を隠している素振りがあったか?」

 

「そんな様子はなかったかな。初めて会った時も一杯一杯って感じだったし。しかし……。オサムの闘い方はなんと言いますか、せこいな」

 

 

 空閑が修と出会ったその日に近界民と遭遇して、空閑は修の危機を救っている。幾ら訓練用のトリガーとはいえ、今の様な動きを見せたのならば勝利を掴む事も難しくなかったはずだ。

 

 

「しかし、あれならばいくら小南先輩でも手も足も出ないはずだ。仮想空間だからトリオンの消費もない。これで詰みだ」

 

「それはどうかな? 小南は負けず嫌いだから。……ほら、反撃するみたいだよ」

 

 

 宇佐美が言った直後、爆発音が鳴り響く。

 

 

「まさか!?」

 

「こなみ先輩も無茶をするな。これが肉を切って骨を断つってやつか?」

 

 

 レイガストの檻から抜け出す為にメテオラを使用して力任せに脱出した小南に烏丸は笑うしかなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「あー。もう、最悪。まさか、修にここまでダメージを受けるなんて」

 

 

 ダメージの大半の自身のメテオラであるが、それをさせた要因は修にある。故に格下と思っていた修にここまで苦戦を強いられた自分に苛立ちを隠せずにいた。

 そんな小南の悪態などお構いなく、脱出した直後の硬直を狙って大玉のアステロイドを形成したまま修は突撃していく。ここで勝負を付けるつもりだ。そうでなければ、今の様な好機は二度と訪れないだろうと知っているからだ。

 

 

 

 ――アステロイド

 

 

 

 ギリギリまで距離を詰めて高威力設定にした通常弾を放つのだが――早々に生成した双月による一撃の方が早かった。確実に修の腕を斬り飛ばし。

 

 

「メテオラっ!!」

 

 

 追撃の炸裂弾で修のトリオン体を爆散させたのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 小南VS修の戦いが終わると同時に、見学を決め込んでいた三人が室内に侵入する。そうでなければ、小南は第二戦を始めかねないからだ。

 

 

「オサム、ナイスファイト」

 

「……空閑」

 

「オサムも中々やりますな。まさかこなみ先輩にあそこまで善戦するなんて」

 

「はは。ありがとう。今回は作戦が上手くいっただけだよ。僕程度が小南先輩に勝てると思ってもみなかったしね」

 

 

 結局のところ、修は小南にまともなダメージを与える事が出来なかった。先のアステロイドだってフルガードで防がれてしまっている。上手く動きを封じても致命的なダメージを与えられなければ意味がない。……と、思っているのは修だけであった。

 

 

「いやでも凄いよ、修くん。あの小南にここまで善戦できるなら、A級だって夢じゃないよ。これに遊真くんと千佳ちゃんが合わさったら怖いもの知らずだね」

 

 

 ランク戦はチーム戦だ。例え修が致命的な一撃を与える事が出来なくても、今の様に相手の身動きを封じる事が出来たならば空閑と千佳が対処してくれるはずだ。修がいまの様な動きが可能ならば戦い様などいくらでもある。

 

 

「けど、未来視のサイドエフェクトを持っていても私に勝てないようならまだまだね。もっと精進しなさい」

 

 

 胸を張ってふんぞり返る小南の一言に宇佐美と空閑。そして修が烏丸に向かって「おい、どうするんだ」と意志を込めた視線を送る。そんな三人の睨み付ける様な視線などお構いなくしれっと。

 

 

「……小南先輩。そんな嘘も気付かないのは些かどうかと思いますよ」

 

「へ?」

 

「未来視なんてサイドエフェクトはこの世で迅さんただ一人です。知らなかったんですか?」

 

 

 やれやれ、と肩を竦める烏丸の姿を見て自分がまた騙された事を知る。

 

 

「あ、あんた! また騙したわねぇぇぇぇえええっ!!」

 

「だ、だからって僕に八つ当たりしないでください」

 

 

 あっと言う間に修の頭を掴んだ小南はそのまま自身へ引き寄せて、ヘッドロックを決めたのであった。




はい、VS斧姫さんです。

小南のコネクターって便利ですよね。あれを使わせたいと常々思っていたり。
あれぐらい正規トリガーとして採用してもいいと思うんですがね。

たとえば、弧月と弧月をコネクターで連結して偃月(えんげつ)と呼ばせても面白いと思うんですが。

けど、それぐらいしか連結させるトリガーがないかぁ。それなら二刀流の方が良いのかなぁ、やはり。

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