三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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やはり、原作は最高だぜ。
弧月の刀身の色とか、エスクードの使い方とか勉強になるなぁ。

……おや? 何か忘れている気がするな?


SE修【天眼】しゅらばナウ③ Gear Third

 四面楚歌。

 起源は羽が漢の高祖に敗れて、垓下で包囲されたとき、夜更けに四面の漢軍が盛んに楚の歌をうたうのを聞き、楚の民がすでに漢に降伏したと思い絶望したという、「史記」項羽本紀の故事から生まれた言葉であり、意味は敵に囲まれて孤立し、助けがないこと。周囲の者が反対者ばかりであることを指す。

 修は不意に授業で習った言葉を思い出す。理由は言うまでもない。現状の自分がまさにそんな状態であるからだ。

 目の前で繰り広げられる熱戦。誰が自分と戦うかで口論しているお三方を見やり、修は「どうすればいいんだ」と冷や汗を掻きながら頭を悩ます。

 こんな時、自身のサイドエフェクトである強化視覚である天眼は全く以って役に立たない。援軍を要請したい所であるが、無二の親友であり唯一の味方である空閑は一向に助け船を出す様子は見受けられない。傍観を決め込んでいないで助けて欲しいと空閑に向けて視線を向けるが彼は彼で覚えたての携帯電話を自分達に向けて楽しげに見守るのみ。

 まさか現状の様子を録画されて、それを玉狛の先輩方に送られているとは露も知らずにだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

「はは、大人気だな。流石は三雲君だ」

 

 

 修達の様子を一部始終見守っていた嵐山は隣にいる木虎に言う。

 

 

「……そうですね」

 

 

 気のせいか木虎からプレッシャーなるものが膨れ上がった気がする。歴戦の雄姿の一人である嵐山は自身の部下である木虎の様子を察す。

 どうしたものかと思案して、直ぐに答えを見出す。

 

 

「よし、木虎。三雲君も困っている様子だし、助けに行こうか」

 

 

 このまま見守る事も考えたが、一向に話が進む様子も感じられない。その御蔭で周囲の連中が集まって野次馬と化し始めている。色々と理由を付ければいくらでもあるが、何より弟と妹の恩人である三雲が困っているならば助け船を出さない訳にはいかない。

 

 

「い、いえ。私は別にいいです。それに、私がなんで三雲君を助けに行かないといけないんですか」

 

「まあまあ。そんなこと言わないでさ。もしかしたら、これを機に再戦する機会が得られるかもしれないぞ」

 

 

 木虎が対三雲の為に過去の模擬戦を穴が開くほど閲覧している事は知っている。なぜ未だに話しを振らないのか不思議で仕方がなかったが、大事な部下のためだ。木虎の為に一肌脱ごうと考える嵐山であった。

 その選択肢がまさか更なる混沌を生む事になるとは、この時の嵐山は知る由もなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「修! いい加減に、アンタから言いなさいよね。今日はこの私と闘うって」

 

 

 痺れを切らした香取が現状を打破する為に思考を巡らせていた修に視線を向ける。それを合図に黒江と風間も修に言葉を投げかける。

 

 

「そうです、三雲先輩。あの時の再戦をするってこの人達に言ってください」

 

「模擬戦はいくらでも出来る。ここは更なる飛躍の為に確りと技術を磨くのがいいだろう。三雲もそう思うだろ?」

 

 

 香取と黒江、そして風間の三者の圧力に気圧される。修は脳内で何通りかの選択肢をシミュレートしてみるが、どの選択もあまり良い結果が得られなかった。故に取った行動は一つ。

 

 

「えっと、そうですね。……僕としては、今日は――」

 

「――あ、いたいた。おーい、三雲君」

 

 

 口を開こうとした時、まさかの援軍の到来であった。振り向き、声を掛けた人物を知った修は助け船を出してくれた人物の正体を知って破顔する。

 

 

「嵐山さん。こんにちは」

 

「こんにちは、三雲君」

 

 

 思わぬ援軍に修は普段では考えられない程の瞬発力を発揮して嵐山の傍に近寄る。そんな彼の反応に香取を初めとした三名は面白くない顔をするのは必然だった。

 

 

「……嵐山。いま、取り込み中だ。三雲に用があるなら後にしてもらいたい」

 

「そうは言いますが、風間さん。周りを見てください」

 

 

 嵐山に言われ周囲を見渡すと、好奇心の眼差しで見守る隊員達の姿があった。

 大半の隊員は年端もいかない子供達。目の前で色々とやらかしている三雲を中心に正隊員達が争っていれば嫌でも注目の的になるだろう。

 嵐山の指摘に風間は己の失態に今更ながら気づく。皆が憧れるA級隊員と言う事もあるが、この中では自分が一番の年長者だ。年長者たる節度と態度を取らなければいけない立場にありながら、自ら秩序を乱した事に反省しなくてはならない。

 

 

「すまん。少しばかり熱くなっていた様だ」

 

「謝る相手は俺ではないでしょ」

 

「そうだな。すまん、三雲。少々大人気なかった」

 

 

 潔く頭を下げる風間に「い、いえ。大丈夫ですよ」と修は返す。

 

 

「あなた達も少しは落ち着いたらどうかしら」

 

 

 嵐山の後ろに追従していた木虎も罰が悪そうに大人しくしている香取と黒江に注意を促す。

 

 

「な、なによ! 私が最初に約束したのは事実よ。あんたに注意される謂れはないわ」

 

「……そうです。嵐山さんが来るまで、物陰に隠れていた人に言われたくありません」

 

 

 しかし、女二人は強かった。木虎もまさか気付かれていたとは思ってもいなく、黒江の思わぬ反撃にたじろがずにいられなかった。

 

 

「おい、二人とも。俺も人の事は言えないが、正隊員の俺達が騒ぎを起したら周りに示しがつかん」

 

「まあまあ、風間さん。……三人とも三雲君と模擬戦を希望しているんですよね」

 

 

 なら、こんなのはどうでしょう? と、嵐山は提案する。

 

 

「三雲君。俺と木虎の二人と組んで、この三人と戦ってみるのはどうだい?」

 

「……はい?」

 

「嵐山さん。なんで、私達が三雲君の為にそんな骨を折るような事をしないといけないんですか!」

 

 

 最初に異議を唱えたのは木虎であった。

 木虎としては、修と再戦を望むところであったため共闘する気などさらさらない。そもそも、こんな状況に陥ったのは修の優柔不断が招いた結果である。そんな修の尻拭いをする義理はないはずだと反論する。

 

 

「木虎は不満か? なら、木虎は風間さん達のチームに入ればいいさ。俺と三雲君。後は……」

 

「でしたら、おれもお手伝いします。嵐山さん」

 

 

 いつの間にか嵐山の横に立っていた時枝充が名乗りを上げる。

 

 

「充! 良い所に来てくれた」

 

「戻って来るのが遅かったので、心配で様子を見に来たんです。見に来て正解でした。こんな事になっているとは」

 

 

 修が本部に来ている事は来る間に色々な隊員が噂をしていたので直ぐに分かっていた。とうぜん、こんな事になっているだろうなと予想はしていたが、まさか自身の隊長が関わっているのは少しばかり予想外であった時枝であった。

 しかし、これは逆に考えれば良い機会と言えよう。修にはチームメイトである佐鳥の件で大変迷惑をかけている。ある意味、貸しを返す絶好の機会と言えよう。もちろん、修は迷惑であったなど少しも感じてはいないが。

 

 

「どうだろう、三雲くん。オレと嵐山さんがサポートするから、この四人を懲らしめてみないかい?」

 

「と、時枝先輩?」

 

 

 トッキーのブラック発言に修は眼を丸くする。

 

 

「そ、その。僕としてはもう少し穏便に――」

 

「――いいじゃないか、オサム。面白そうだから、やろうぜ」

 

 

 ここで、今まで野次馬に混じって静観していた空閑も参戦だ。

 

 

「く、空閑。おまえ、何を勝手に」

 

「だって、そうでもしないとこの場は治まらないと思うぞ。周りのみんなも、それを望んでいるようだ」

 

 

 空閑の言う通りであった。嵐山の提案を一部始終聞いていた周囲の皆は、これから起こる戦いに心躍らせていた。また、高レベルの戦いを目の当たりに出来る。それは、正隊員を目指す彼ら彼女らにとっては、貴重な時間だ。中には修が繰り出す戦略を自分の糧にしようとメモを取り出す者達も現れる始末であった。

 

 

「ほぉ。お前も出るのか」

 

「いいでしょ、風間さん。俺もB級隊員になったしさ。戦う資格は得たと思うけど?」

 

 

 以前、風間は空閑に「C級隊員のお前とは戦えない」と言っていた。しかし、今の空閑はB級に昇格している。風間が言っていた条件は既に達しているのだ。

 

 

「いいだろう。香取、黒江。そして木虎。望む形ではないが、これで妥協してもらうぞ」

 

 

 年長者の風間にそう言われてはイエスとしか言えない黒江であった。香取も色々と不満を口にするが、風間の意見に賛成の意を示す。

 

 

「風間さん! 私は別にやるなんて言っていませんよ」

 

 

 だが、木虎は違った。そもそも、こんな事に巻き込まないで欲しいと反論する。

 

 

「いいのか、木虎。この機会を逃すと三雲と闘う機会はないかも知れないぞ」

 

 

 風間は知っていた。木虎が三雲と再戦を窺う機会を探っていた事を。対三雲会議に参加していた故に得た情報なので確かな筋からである。

 

 

「そ、それは……」

 

「それに、今の奴はお前が知る三雲と少しばかり違う。いや、違いすぎる。今の三雲を知る絶好の機会と思うがな」

 

「…………」

 

 

 木虎は考える。

 風間の言う言葉は正しい。修は自分が戦った時よりもかなり腕を上げている。過去の模擬戦を見ているとはいえ、百聞は一見にしかずと言う諺がある。実際に肌で感じないと分かんない事だって当然あるだろう。なら、気たるべき本当の再戦に備えてこの茶番に付き合うのも悪い話ではないはず……。と、自分に言い聞かせる木虎であった。

 

 

「分かりました。三雲くん。ここで私が勝ったらあの話しはなしですからね!」

 

「……あの話し? ごめん、木虎。何の事だっけ?」

 

 

 本気で覚えていないのか、修は首を傾げる。木虎としては良い様に解釈していると思っていた修に対して釘を刺したつもりであったが――緑川の発言を聞いて、同じ男である修もそうだろうと勝手に思っていた――自分の失言に赤面せざるを得なかった木虎であった。

 

 

「よし! 話しはまとまったな。こっちは俺と充。そして三雲くんと空閑君の四人」

 

「こっちは俺と木虎。香取と黒江の四人だ」

 

 

 ドリームマッチが決定される。

 この時、修は思った。

 

 

「……今後、本部に行く時は迅さんに視て貰ってから行った方がいいのかなぁ」

 

 

 それを聞いて空閑は思う。

 

 

「たぶん、迅さんの事だから、こんな未来を視ても教えてくれないと思うぜ」

 




……あ。

おれ、ワートリのSS書いていたんだっけ?

ワスレテイタ。ハハハ。

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