三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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本来、公式戦以外ってチーム戦出来ない仕様らしいですね?

……まぁ、その設定を守ったらSEは破綻しちゃうんですがね(苦笑

そろそろ、修羅場回も決着させなければいけませんね。


SE修【天眼】しゅらばナウ④ Gear Forth

 早々と集結する事に成功した風間達は黒江を先頭にし、その後ろに風間と香取が並び、後方に木虎と隊列を組んで三雲達の捜索を始める。

 模擬戦に選ばれたステージは市街地Aだった。広い場所も狭い場所もあり、特に何の変哲もないノーマルな市街地だ。射線も通りやすく、機動力のある隊員にとっては隠れながら移動や奇襲をするのはもってこいな戦場だ。唯一の救いは互いに狙撃手(スナイパー)がいない事であろう。

 

 

「(いや。……三雲のトリガーに狙撃手(スナイパー)用のトリガーが入っていないと考えるのは危険だな)」

 

 

 風間は知っている。三雲の天眼があれば狙撃手(スナイパー)として立ち回る事も可能だと。現に三雲は界境防衛機関(ボーダー)が誇る狙撃手(スナイパー)達と戦い勝利を収めている。もしも三雲が以前に使用していたライトニングを設定しているならば、気を抜く事は出来ない。

 

 

「風間さん。このまま無暗に捜索するのは危険かと」

 

 

 木虎も同じ考えに至ったのだろう。思案する風間に具申する。チームメイトが慣れ親しむ者達であったのならば、互いに連携をして危険を防ぐことは訳がないだろう。しかし、今回は混成チームだ。戦いになれば連携する事だって問題はないかも知れないが、互いの信頼関係と練度は段違い。コンマ数秒の差で勝敗が大きく左右する事だって当然ある。

 

 

「あら、A級の嵐山隊ともあろう人が随分と弱気ね」

 

 

 風間が同意するよりも早く、両手に拳銃(ハンドガン)を装備した香取が反応する。

 ムッと表情を強張らせる木虎であるが、状況的に噛みついてくる香取に噛み返す訳にはいかない。怒りを押し殺して、自分が慎重に行くべきと言った理由を告げる。

 

 

「……三雲君は狙撃手(スナイパー)も経験しています。彼のトリガー構成を把握するまで、安易に飛び込むのは危険と言っているんです」

 

「はぁ!? あのメガネ。そんな事までしていたの! 黒の剣士の次は蕾姫なの!? 「私は一発の銃弾」とか言わないでしょうね! てか、チートにも程があるでしょ!!」

 

「黒? 蕾?」

 

 

 香取の発言に木虎は一言も理解出来なかった。仕事上、サブカルチャーを嗜む余裕(そもそも木虎がサブカルチャーに興味を示すか定かではない)はない。よって、木虎にその手の知識は皆無。ある意味、当然と言えば当然の反応である。

 

 

「香取先輩。三雲先輩は男です。この場合、デューク・東郷の方が適切です」

 

「……あんたから、そんなツッコミが返って来るとは思わなかったわ。てか、デューク・東郷って。メガネはどんだけ化物なのよ!」

 

 

 予想だにしなかった黒江のツッコミに香取はこれでもかと悪態つく。ただでさえ、こてんぱんに返り討ちにあった香取からしてみれば、見返してやりたい生意気な後輩があまりにも規格外である事に文句の一つや二つ言わざるを得なかった。

 

 

「殺し屋は兎も角、三雲はあの手この手と俺達を殺しにかかって来るぞ。香取、はやる気持ちは理解出来なくないが、少しは落ち着け。この中で、アイツの戦術を多く体験したのはお前だ。この状況でアイツがどう動くか、お前の意見を聞こう」

 

 

 年長者である風間から忠告され、挙句に意見を求められた香取は思考を巡らせる。風間の言うとおり、四人の中では香取が修と多く戦っている。過去の模擬戦を見ているとはいえ、百聞は一見にしかずと言った言葉がある。多くの修の戦術を体験している香取なら、自分達が知らない修の動きも予想できると風間は踏んでいた。

 

 

「……アイツの事ですから、待ち伏せから隙を突いてレイガストの投擲。あるいは変化弾(バイパー)で動きを誘導させて、スパイダーで動きを封じにかかるって所じゃないですかね」

 

「……ほぉ。意外と冷静に分析していた様だな。それで今の武装ということか」

 

 

 聞いた自分が思うのはおかしいが、香取が思った以上に今後の展開を予想していた事に感嘆する。実力があるのは知っていたがむらっけがあり、よく言えば自由奔放、悪く言えば自己中心的な行動が目立つ人物だったので、今回の返答は風間的には想像以上の返しであった。

 

 

「スパイダーか。厄介なトリガーを選択したな、三雲は」

 

 

 スパイダーは直接的な殺傷能力はないが、使い方一つで戦況を大きく左右させるトリガーだ。地味なトリガー故に使い手は少ないが、スパイダーは千変万化の顔を持つ。奇襲、騙し討ちを得意とする修にとって、これほど相性がいいトリガーはないだろう。

 

 

「それに加え、嵐山隊の二人と空閑の相手をしなくてはならない。これは想像以上に厳しい戦いになるだろうな」

 

 

 空閑の実力は未知数だが、嵐山隊二人の実力は重々承知している。

 

 

「そうですね。嵐山さんと時枝先輩のコンビネーションは厄介です。空閑君の実力は分かりませんが、トリガー構成次第では厄介極まりない相手になり得るかも知れません」

 

 

 嵐山隊の最大の特徴はどんな状況にも対応し得る安定さである。突出的な能力はないかも知れないが、持ち前のチームワークで長所を伸ばし、短所を補ってきた。何より嵐山と時枝のコンビネーションはA級の中でも一・二を争うタッグチーム。万能手(オールラウンダー)の二人はトリガー構成も全く同じ。テレポーターで裏をかいた奇襲戦法は修の得意戦術に通じるものがある。

 

 

「三雲先輩と一緒にいた空閑先輩でしたっけ? 駿が言っていた凄い先輩らしいですね」

 

 

 以前、緑川が興奮気味に言っていた。

 

 

『いいなぁ、玉狛支部は。迅さんをはじめ、三雲先輩や空閑先輩みたいな強い人がいっぱいいるんだから。どうにか俺も玉狛支部に転属できないかなぁ』

 

 

 本部所属のA級隊員が何をバカな事を言っているんだろう、と当時はまったく気にする事はなかった。まさか、緑川が言っていた強い空閑先輩と闘う事になるだろうと当時は露も思っていなかったのだから。

 

 

「ふん。あんな白髪なんて目ではないわよ」

 

「侮るな香取。アイツは三輪隊の二人を真正面に相手して勝った実績を持つ。油断しているとやられるぞ」

 

「……は?」

 

 

 衝撃の事実発覚。全く名も知れ渡っていない白頭こと空閑がA級三輪隊の二人に打ち勝ったという事実は無防備の頭に鈍器で殴られるぐらいの衝撃を与えられた。

 

 

「それは私も初耳です。本当なのですか、風間さん」

 

「本当だ、木虎。詳細は教えられないが、三輪と米屋が空閑と闘う事になった。結果、二人は負けた。戦闘能力と言う意味では、あの四人の中でも断トツだ」

 

 

 空閑がまだ界境防衛機関(ボーダー)に入る前、具体的には近界民(ネイバー)として排除対象にされていた頃の話しは聞かされている。見た目が子供であろうが、油断できない相手である事は重々承知している。

 

 

「これはしっかりと作戦を練らないといけませんね、風間さん」

 

「ああ。……だが、敵は待ってはくれなさそうだ」

 

 

 四人とも咄嗟に四散してその場から飛び離れる。

 直後、四人がいた地に無数の弾丸が叩き込まれたのであった。

 

 

「会敵! これより戦闘に入る」

 

 

 頭上から聞き慣れた声、嵐山の声が四人の耳に届く。嵐山は住宅の屋根伝いで移動して風間達がいる地まで移動したのだろう。互いに狙撃手(スナイパー)はいない。狙撃をされる心配はないとはいえ、大胆に移動した事によって先手を繰り出す事に成功したのだった。

 

 

「了解です、嵐山さん」

 

 

 続いて風間達を挟む様に位置を取る時枝が追撃を仕掛ける。彼も嵐山同様に屋根伝いに移動したのだろう。屋根越しから突撃銃を風間達に向け、容赦なく通常弾(アステロイド)をぶっ放した。

 

 

「時間を取り過ぎたか。三雲が俺達の位置を直ぐに把握できるのは分かっていたの――っ!?」

 

 

 先手を取られ、直ぐ様に反撃の一手を切り出さんと動く風間の目の前に空閑が出現する。空閑のトリガー構成の一つに嵐山達と同様にテレポーターが設定されている。二人と違い、住宅の中を移動して近くまで近づいていた空閑は、嵐山達の奇襲によって隊列が崩れたのを確認して奇襲を図ったのだった。

 

 

「コンニチハ、風間さん。あの時の約束を果たしに来たよ」

 

 

 挨拶代わりの一撃、スコーピオンによる斬撃は風間の首を刈り取るまではいかなかった。けれど、完全に避ける事は出来なかったのだろう。僅かながら風間の首筋から微細の粒子、トリオンが漏れだしている。空閑の一撃は僅かながら風間にダメージを与える事に成功したのだった。

 

 

「この程度、何の問題もない!」

 

 

 

 ――旋空弧月

 

 

 

 時枝の射撃を旋空弧月を用いて叩き落す黒江。しかし、全弾を叩き落す事はままならなかったようだ。旋空弧月を掻い潜って飛来する通常弾(アステロイド)が黒江に襲い掛かるが、その弾丸は木虎と香取の射撃によって迎撃される。

 

 

「まったく油断するんじゃないわよ。仮にもA級隊員でしょう!」

 

「双葉ちゃん。三雲君みたいな真似をしても意味がないわ。ここは的確に対処していきましょう」

 

 

 と、注意される黒江であったが二人もなんだかんだで修が得意としている技能の一つ、ビリヤードをしているじゃないかと心の内でツッコミを入れる。

 

 

 

 ***

 

 

 

 その頃、ランク戦室はお祭り騒ぎであった。

 理由は一目瞭然。界境防衛機関(ボーダー)の顔とも言える嵐山達が模擬戦をしているからであった。C級隊員の中には彼らに憧れて入隊した者も少なくない。そんな憧れの人達が戦っている。そんな情報が耳に入れば是が非でも見たいと思うのは無理もない事であろう。

 そして、そんな面白い話しを聞き逃すはずがない者が当然いる。

 

 

「そう! 私の耳から逃れる事は出来ない! みなさん、お待たせしました。戦いあるところ私あり。実況の鬼、武富桜子が今回も熱い実況をお送り致します。そして今回の解説者は戦場を駆け抜ける威風凛然の女子部隊(ガールズ・チーム)の隊長、那須先輩にお越しいただきました」

 

「こんにちは、那須玲です。って、桜子ちゃん。わたし、解説とか出来ないわよ」

 

「大丈夫ですよ、那須先輩。こう言うのは雰囲気作り。それっぽい事を話してくれれば無問題です。さて、今回の趣旨は……。また、三雲隊員ですか。もはやメガネある所に戦いあり! と言わんばかりのこの状況。いいぞ、もっとやれと言うべきでしょうか」

 

「桜子ちゃん、落ち着いて。今回の戦いに三雲君がどうかかわっているの?」

 

「はい。何でも三雲隊員と模擬戦をするのは誰だと香取隊長を始め、黒江隊員。そして風間隊長が口論したのが切欠の様です」

 

「あ、あはは。三雲君も人気者だね」

 

 

 そんな理由でこんな騒動を起こした一同に苦笑いせざるを得なかった那須であった。

 

 

「さーて。嵐山隊長はじめ、時枝隊員。そして空閑隊員が一斉にテレポーターを使って奇襲をかける! 風間隊長率いる混成部隊は分断を余儀なくさせられた!」

 

「頭上を抑えたのはでかいですね。嵐山隊のお二人が射撃で牽制し、空閑君が機動力を生かして陽動及び遊撃って言った所でしょうか」

 

「なるほど! けど、未だに三雲隊員の姿が見当たりませんね。那須隊長。これはどう言うプランでしょう」

 

 

 モニターには嵐山と時枝VS木虎と香取、そして黒江。風間VS空閑の構図が出来上がっているが、肝心の修の姿はモニターに映っていない。

 

 

「三雲君はどんな状況でも戦場を正確に把握する眼を持っています。恐らくですが――」

 

「――おっと! 各住居から無数の弾丸が出現したぞ!? これは変化弾(バイパー)だ!! フェンスを飛び越える様に軌道を描き、まるで追尾弾(ハウンド)の如く、風間隊長目掛けて飛来する!」

 

「恐らく空閑隊員が各住居の窓ガラス等を開けて回ったんでしょう。ガラスが割れる破砕音が聞こえませんでしたね。芸が細かいわ。効果は薄いですけど、それでも反応を僅かながら遅らせる効果が期待出来るわね。障害物を破壊して飛来すれば、どんな効果的な奇襲でも腕の立つ隊員の前では反応されてしまいます。それを見越しての戦法ですね」

 

「なるほど! そして、こんな出鱈目な騙し討ちを出来るのは当然メガネこと三雲隊員しかいません! てか、何時まで隠れているんだ! 今回は姿を現さないつもりなのでしょうか」

 

 

 武富が熱狂している間も試合は当然続く。修の奇襲と思われる攻撃によって、拮抗していた空閑と風間の戦いが僅かに動くのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ちぃっ!!」

 

 

 スコーピオンの応酬を続けていた風間は自分に襲い掛かる凶弾を確認して思わず舌打ちする。襲い掛かる弾丸は八発。対処するのは容易であるが、その間に僅かながら隙が生じてしまう。その隙を虎視眈々と狙っている空閑が見逃すはずがない。

 

 

「いいの、風間さん。俺ばっかり相手していたら修の攻撃は避けられないよ」

 

「心配するな。これぐらい何ともない!」

 

 

 二刀のうち一刀のスコーピオンを解除。空閑の鋭い一撃を後ろに跳躍する事で躱し、その勢いのまま後ろから襲い掛かる三発の変化弾(バイパー)を切り払う風間の目の前に空閑がテレポーターで移動するが、風間はそれを読んでいた。シールドを自分と空閑の間に出現させて動きを制限させる。その間に風間は残り五発の変化弾(バイパー)目掛けて跳躍し、スコーピオンを叩き付けた。

 これで修の奇襲作戦から潜り抜けたと思った。

 だが――。

 

 

「なにっ!?」

 

 

 流石に風間もこれは予想外であっただろう。

 嵐山と時枝は木虎達と交戦している最中だ。しかし、いまその二人は風間の前にテレポーターで移動し、自分目掛けて銃口を突きつけているじゃないが。

 二人の突撃銃の引金が同時に絞られる。銃口から発射された弾丸は炸裂弾(メテオラ)

 タイミング的に回避するのは難しい。風間はもう片方のスコーピオンを素早く解除し、二人の炸裂弾(メテオラ)から護る為にシールドを張った。

 嵐山と時枝の炸裂弾(メテオラ)が風間のシールドに着弾して爆散した。





……ゴブスレおもしれぇ。こう言う泥臭い戦いは参考になるなぁ。

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