……まぁ、外伝で色々と閑話を挟んでつなげていくしかないですかね。
ってことで、VS小南戦後の話を書いてみました。
だって、本編で空閑は烏丸と戦った後にって書いているのに、外伝で書かないのはおかしいですよね?
どうやら、今日は厄日のようである。朝食時の時にテレビで視た星座占いの時はそこそこ良かったはずなのだが、どうやらその占いは全く持って信用できるものではなかったらしい。
何故かと言うと――。
「さてと……。オサム、やろうか?」
いつの間にか黒トリガーを起動させた空閑と戦わないといけないのだから。
「く、空閑。流石にそれは……」
空閑は
「安心しろ、オサム。
「問題大有りだ!」
空閑の腕から分離――傍から見るとそんな風に見える――したレプリカが修を宥めるのだが、それは全く持って宥めになっていなかった。
幼い頃から空閑は戦場に立ち、死線を潜り抜けながら己の牙を磨いてきた猛者だ。ただでさえ勝てる気がしないのに、相手は黒トリガーまで使ってきているのだ。そんな空閑と対峙してどうやって勝てと言うのだろうか。
レプリカが言うにはトリオン体の働きや印の性能を強化する
***
「えっと……。いいの、あれ?」
流石の宇佐美もこれから起こるであろう事態に関して不安を抱かずにいられなかったのだろう。己の両隣にいる小南と烏丸に聞いてみるが二人は同時に「大丈夫」と口にしたのであった。
「私も驚いたけど、修は私の動きを読んでいるかと問いただしたいぐらい動き出しがよかったのよ。あの動きが出来るなら、少しぐらいの実力差でも問題ないと思うわ」
「同感です。メガネを取った事で何かが視える様になったらしく、俺達の動きを見てから動き出すまでの反応速度が桁違いです。小南先輩の攻撃を悉くかわす事が出来たのは、それが大きいと思います」
戦って一番印象的であったのは、修の反応速度であった。普通ならば相手を見てから動き出すまで必ずと言っていいほどタイムラグが生じる。どんな優れた人間でも見てから体を動かすまで必ずと言っていいほど遅れが出るはずなのだ。
しかし、修の反応速度はほとんどタイムラグがないと言っていいほど機敏であった。まるで歴戦の戦士と戦っていたような錯覚を感じさせた修ならばあるいは、と思った二人は「俺も修と戦いたい」と駄々をこねる空閑の願いを叶えさせたのである。
「私は遊真に賭けるわ」
「それじゃあ、俺は修に賭けます」
「こらこら。弟子で賭け事をしないの。……って、言った傍から始まっちゃったじゃない!?」
二人が話している内に空閑と修の話は戦う方になってしまったみたいだ。
***
「っ!!」
しかし、
「……やるな、オサム」
まさか、受け止められると何て思っても見なかったのだろう。C級の訓練用トリガーとはいえ、空閑が知る修はモールモッドに手こずっていた弱者のはずであった。その修に
『だが、オサム。それは悪手だ』
二人の戦いを特等席で見守っていたレプリカが呟く。確かに空閑の攻撃を受け止めたことは賞賛に値する事であるが、
「……っ!?」
レイガストに亀裂が走る。トリガーの中でも最硬を誇るレイガストが空閑の一撃に耐え切れなかったみたいだ。
「(このままでは拙い)」
レイガストは修の生命線と言っていいほど防御の要だ。それが壊されてしまったら、次のレイガストを生成する前に倒されてしまうであろう。ならば、このまま
考えた末に――。
「スラスター・オンっ!!」
――スラスターを起動させて、力づくで空閑を引き離そうと試みたのであった。
踏ん張りが利かない体勢故に空閑の体は推進力を得たレイガストによって突き飛ばされてしまう。それでレイガストは限界に達してしまったのだろう。鈍い破砕音が鳴ったと思いきや、木端微塵に砕け散ったのだった。
防御の要が欠落した。それを飛ばされながらも確認した空閑は
展開された
――
修は直ぐに
「ちっ!」
舌打ちをすると同時に修は再び生み出したレイガストを真横に突出しスラスターを起動させる。推進力を得た事で空閑の
――
回避した方角を読んだ空閑が
スラスターを使っての回避行動中の修はこれをレイガストで受け止める事が出来ない。
これは間違いなく命中する。二人の戦いを見守っていた四者は次に修が負ける瞬間を予測したが――。
「なっ!?」
自身を護る様に修と空閑の間に
――
空閑は防御を選択。修が展開した
「がはっ!」
空閑の攻撃力が低下したとはいえ
先の戦いで小南にしたように壁際まで突飛ばされた修は反撃を試みるが、レイガスト握る腕を空閑によって掴まれてしまう。
「悪いな、オサム。俺の勝ちだっ!」
一本背負いの要領で修を投げ飛ばし、俄然に射の印が浮かび上がる。空中で身動きが出来ないところを
――
――スラスター
スラスターを起動させて、身体を捻らせて空閑の
「おぉっ!? マジか」
これには流石の空閑も驚嘆するしかなかった。まさかあんな方法で自身の
「(とりまる先輩やこなみ先輩が驚くのも無理がない。俺が最初に見たオサムと段違いだ。……これが本当のオサムの姿なのか)」
三雲修。口は達者であるが実力が伴っていない面倒見の鬼。それが空閑が抱く修であった。けれど、いまレイガストを突き出して起き上がる修は自信が抱いていた修像と全く以って異なる。
そんな友人の姿を見て自然と口角が上がってしまった。
「(……ダメだ。勝てる気がしない)」
一方、修は戦意を喪失しかけていた。相手は
「(諦めるか。そうだな、諦めるべきだよな)」
降参する、と言い掛けた時、鋭い痛みが駆け巡る。この不可思議な眼を使い続けた反動がいまになって襲い掛かってきたようだ。
「(……眼。……そうだったな。まだ、僕にはこの眼があった)」
本人も分からず仕舞いの不思議な力。いま、歴戦の戦士と対抗できるとすれば、この名前も知らない謎の力に頼るしかない。
「(この眼があったから、烏丸先輩を……小南先輩と戦う事が出来た。なら、今度も――)」
一度大きく深呼吸をして、瞼を閉じる。目の前に空閑がいるにも関わらず視線を外すのは自殺行為にも等しい。
「(何をしているオサム。そんな事をすれば――)」
初めは何かの作戦か、と疑ってしまった。敵を前にして瞼を閉じるなんて愚行を真面な人間がするはずもない。けれど、様子を窺っても目の前の修は隙だらけであった。いま
「(何を考えているか知らないが、悪く思うなよオサム)」
――
修が何をしたいのか分からなかったが、空閑は容赦なく
集中しきった修の視界から彩が失われる。同時に全ての動きがスローモーションの如くゆっくりと動くように見えた。空閑が放った
***
「「「はぁっ!?」」」
自分達は夢を見ているのではないのか、と疑ってしまうほど修は見事な体捌きで空閑の
「ちょっとちょっと! なによあれ。なによあれ!? アレが本当に修な訳!! 誰よ、修が弱いって言った奴は」
「お、落ち着きなよ小南。……けど、小南の気持ちも分からなくないかな。動きのキレが更に増している」
「えぇ。それに雰囲気が少し変わりましたね。見てください。修の姿を見た空閑が警戒心を強めました」
さっきまでどことなく余裕が見受けられた空閑であったが、修の異変を感じ取ったのか、戦いに集中し始めたのであった。
***
「(修の雰囲気が変わった。肌に突き刺す様なこの感覚……)はは」
自然と笑みがこぼれてしまったようだ。まさか、修がこんな面白い人間であったと思ってもみなかった。
そんな空閑の思いなど露知らず、修はレイガストを掲げて向かって来る。
――スラスター・オン
スラスターの起動し、真直ぐ空閑に向かって斬りかかってきた。
「甘いぞ、オサム」
しかし、そんな安直な攻撃など空閑に通用するはずがない。
――
「それはどうかな、空閑」
まるで目の前に
「はぁぁああっ!!」
力強くブレードモードへ再変化させたレイガストを振り降ろす。流石の空閑も素手で受け止められるはずもなく、自身の右腕を修によって切り落とされてしまう。
それが空閑の本気を引き出す撃鉄となってしまった。
「っ!?」
――
使わないと明言していた
当然、
「……あっ」
撃ち放った直後、自分から封印していた
修に損傷を受けて無意識に全力で殴り掛かった事に後悔しだす空閑であった。
えっと……。黒トリ空閑は流石にやりすぎたかなぁ。
だって、この時ってまだ正式なトリガーってなかったじゃんn。
あっ。けど、小南と訓練している時って正式のトリガーだったのか?
……まぁ、いいか。そのうち、本編でボーダー制トリガーの空閑とも戦わせたいですね。
ほんと、戦いばっかだな。このお話は。
そろそろ飽きません?