三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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一つだけ言わせてほしい。

……なんか、色々とすごいことになっていますよ!?


SE修【天眼】VS緑川&木虎④

 VS緑川&木虎の戦績は4戦中1勝2敗1分け。残りは1戦。この時点で修の勝利はなくなってしまったが、勝利以上の価値を見出せる事が出来たと確信する。

 サイドエフェクト強化視覚、愛称【天眼】と名付けられた力の使い方を少しずつであるが理解出来たはず。

 三雲修の天眼は【千里眼】【浄天眼】【複眼】が合わさった能力を有している。

 文字通り、五眼の一。全てを見通す事が可能な眼であった。

 けど、そんなチートな眼を所有しても、修は緑川の特攻を止める事が出来なかった。流石はA級と賛辞の言葉を送るべきなのだが、相手は自分よりも一つ年下。悔しくないと言えば嘘になる。

 

 

「やはり、グラスホッパーが厄介だな。使われる前に撃抜ければいいのだが……」

 

 

 天眼を使えば使った瞬間に狙いすましてアステロイドで撃抜く事は出来る。事実、既に実行した芸当だ。しかし、緑川はそれをさせまいとギリギリのタイミングまで使用するのを我慢して、発動してから使用する時間を限りなく狭めてきている。口で言うのは簡単だが、実行に移すのは難しい離れ業だ。少しでもタイミングがずれれば緑川の四肢は修の弾丸の餌食となっていた事であろう。

 

 

「今の僕では進行方向すべてにメテオラで妨害する以外、方法はないか」

 

 

 バイパーで追尾する事も考えたが、まだまだ自由自在に変化させるほど実力はなかった。リアルタイムで弾道をひく事は出来たが、発動時間に僅かながらタイムラグが生じている事を自覚していたからだ。相手に気付かれない様に変化弾は牽制と不意打ちにしか使っていない。もしも、変化弾を主力に戦う事が出来たらもっとうまく立ち回る事が出来たかも知れない。

 

 

『三雲先輩。いよいよ最終戦ですよ! 早く早く!! 俺、ワクワクが止まらないんですよ』

 

 

 通信機越しから緑川の催促の声が飛ぶ。

 

 

「あぁ。分かったよ」

 

 

 まだ五戦目の作戦が決まっていなかったが、相手を待たせるのも申し訳がない。何のプランも考え付かなかったが、それは戦っている間に考えようと戦いに赴くと――。

 

 

『メガネくん、聞こえてる?』

 

 

 聞き慣れない声が通信機から聞こえてくる。

 

 

「その声は……。A級の――」

 

『そう言えば、メガネくんと話すのは初めてか。初めまして、俺は出水公平。ちょっとした必殺技があるんだけど、良ければ聞く?』

 

「……必殺技?」

 

 

 突然の出水の申し出に戸惑う修であったが、必殺技の言葉に少なからず興味があった。

 修は「どんなのでしょうか」と出水に訊ねる。問われた彼は「それはな」と告げて一つの単語を修に伝える。その言葉の意味を知った修の目は大きく見開く事になる。

 

 

「それって……。む、無茶ですよ! まだ、僕が扱う事が出来る技術じゃありませんって!」

 

『大丈夫大丈夫! 最初だから発動させるまで時間がかかるかもしれないけど、そこはご自慢の眼力でどうにかなるって! 後は気合と根性! それだけあればメガネくんだって使えるはずさ。じゃ、最終戦を楽しみにしているぜ』

 

「ちょっ。出水先輩? 出水先輩! あの人、言いたい事だけ言って切っちゃったよ。……あの人、何で僕の眼の事を知っていたんだ?」

 

 

 言いたい事を言って通信を切った出水に頭を抱えたい所であったが、時間は待ってはくれない。修は出水から伝えられた“切札”をいったん頭の片隅に置く事にする。

 

 

 

***

 

 

 

「お、出て来たか」

 

 

 個人ブースから退出した出水を捕まえた米屋は「何をしていたんだ?」と尋ねる。

 4戦目後、出水は「あれじゃメガネくんがちょっとかわいそうだな」と呟くと「そうだ」と手を叩き、いそいそと個人ブースへ入っていったのであった。

 

 

「ちょっとメガネくんに俺様の必殺技を伝授してあげたんだ」

 

「お前の必殺技? ……おいおい、まさか」

 

 

 弾バカこと出水公平は天才シューターとして名を馳せている。彼をよく知る隊員たちは「彼の名を聞いて思い浮かぶモノは?」と問われると真っ先に口にする事があった。

 

 

「こんな所で期待のシューターが潰れるのはもったいないだろ」

 

 

 にやつく出水の姿はまるで悪戯を思いついた子供のようであった。

 きっと、5戦目に披露するはずの修の必殺技を見て見物人達がどよめく姿を想像したのだろう。

 

 

 

***

 

 

 

「遅かったわね」

 

「ごめん。待たせたかな」

 

 

 既に戦闘準備を終えた木虎の御咎めの御言葉を頂き、修は素直に謝罪する。

 

 

「別にそこまで待っていないからいいわ」

 

「そっか。それは良かった」

 

「一つ聞きたいのだけど、あなたが急に腕を上げた原因は何かしら? どんな魔法を使ったわけ?」

 

 

 木虎の知る三雲修は戦闘経験が浅い未熟なB級隊員であった。先の風間戦も隠密トリガーカメレオンに苦戦して24連敗している。けれど、最後の1戦は異質であった。メガネを投げ捨てた修の動きは同じ人間とは思えないぐらい俊敏に動き、まるで数秒後の未来が分かっているかのように立ち回っている。

 木虎はその正体を見破る為に今回の緑川の件を利用して、戦いに挑んだのであった。

 

 

「魔法と言うか……。僕は昔から視力だけは良かったんだ。今まで付けているメガネも伊達メガネだったりするんだよね」

 

「な、なんで!?」

 

「そうじゃないと、見え過ぎて直ぐに気持ち悪くなるんだよ。……けど、もっと早くこれについて相談すればよかったかな。まさか、僕の眼の原因はサイドエフェクトだったなんてね」

 

「サ、サイドエフェクト!? あ、ありえないわ。サイドエフェクトはトリオンが豊富な人間にしか起こりえない副作用のはず。あなたのトリオン量ではどんな奇跡が起こっても――」

 

「発現しない。その通りだ、木虎。……けど、僕のトリオンが元々サイドエフェクトを維持する為に使われ続けている、と言えばどうだ?」

 

「そ、そんな異質なサイドエフェクトなんて聞いた事がないわ!」

 

「だろうね。……そう言う事だ、緑川」

 

 

 トリオンキューブを生成。己の頭上に向けて変化弾を飛ばし、設置されていたグラスホッパーを撃抜く。密かに設置していたグラスホッパーが見破られたのと同時に身を潜めていた緑川が現れる。

 

 

「ちぇ、気付かれていたか。そのサイドエフェクト、チートすぎるよ三雲先輩」

 

「その天眼を掻い潜り、僕の首をもぎ取った人に言われたくないけどな」

 

「へへ、凄かったでしょ。次もその首、貰い受けるからね」

 

「だと、いいけどね」

 

 

 意味深な笑みを浮かべる修に警戒心を強める緑川。

 修はグラスホッパーを潰す為に密かに設置していたグラスホッパーを撃抜いていた。それに加えて修には天眼と呼ばれているサイドエフェクトがある。それを総合すると……。

 

 

「っ!? 緑川くん、避けなさい!!」

 

 

 結論、身を隠していた緑川の位置も正確に割り出していたと考えられる。それを見越して修が変化弾を撃っていたと考えるならば、時間差で緑川の頭上目掛けて弾道を描くはず。

 

 

「おっと、あぶなっ!?」

 

 

 身をひるがえして、頭上から襲い掛かる数発の変化弾を躱す。

 

 

 

 ――スラスター・オン

 

 

 

 その隙をついて修の追撃が繰り出される。レイガストを生み出し、スラスターによる高速斬撃が緑川の胴体を両断せんと弧を描く。

 しかし、修のレイガストは緑川の胴体を切り裂く直前で強制的に動きを止められる事になる。木虎のワイヤー銃が僅かに早く修のレイガストに着弾し、動きを妨げたのだ。

 

 

「木虎ちゃん、ナイス!」

 

「木虎さん、でしょ!!」

 

 

 修が攻めあぐねている隙に二人はスコーピオンを造り出して、修に接近戦を挑む。幾ら強化視覚のサイドエフェクトを持っていようが、二人の精鋭による剣戟を躱しきる事は出来ないだろうと踏んだのであった。この作戦は修が来る前に練られた作戦である。

 同タイミングでスコーピオンを振り上げ、緑川は左腕を。木虎は右足目掛けてスコーピオンを走らせる。

 

 

「(レイガストとシールドでは防ぎきれないな、これは)」

 

 

 天眼により二人の狙いを把握する。二人は必殺の一撃よりも自身の戦力を削減させるのが目的なのだろう。特に足を削られてしまったら、いくら攻撃を見切った所で避けきる事は難しい。

 スコーピオンは質量を持たない刃。攻撃速度は随一を誇る。一度目の攻撃を防いだ所で、二人は更なる一撃を放つ為の追撃を用意しているはず。この攻撃を普通に受けたら、待っているのは修の敗北のみ。

 

 

「なら」

 

 

 レイガストを手ばなし、二人が放つ刃の軌道上に両手を滑り込ませる。

 普通に防御しなければいい話だ。

 

 

 

 ――アステロイド

 ――バイパー

 

 

 

「「なっ!?」」

 

 

 二人の驚愕の声が重なる。修を襲ったそれぞれの凶刃は大玉のアステロイドとバイパーによって粉砕されてしまったのだ。

 弧月やレイガストならば修程度の弾丸トリガーでは壊す事は不可能だが、強度が低いスコーピオンなら話は別だ。天眼をフル活動して、スコーピオンの軌道を読み切ってそれぞれの弾丸を叩き込んだのだ。

 驚愕の防御方法に二人の動きが止まる。その一瞬の隙は出水が伝授した必殺技を生み出す絶好の機会を与えたのだ。

 

 

「バイパー + メテオラ」

 

 

 同時に弾丸トリガーを生み出す修の姿を確認し、二人は大きく後ろへ跳んで距離を開ける。修が行っている仕草は見覚えがあった。あれは出水公平が興味本位で生み出し、シューターの必殺技へと昇華させた変態技。

 

 

 

 ――トマホーク

 

 

 

 変化炸裂弾、トマホークはバイパーとメテオラを合成して初めて効力を発揮する合成弾の一種。二つの弾丸を合成するのに数秒のタイムロスがあるが、威力はデメリットを考慮してもおつりがくるほどの効力を発揮してくれる。

 無数の炸裂弾が二人を爆砕させんと襲い掛かる。しかし、二人に向けられた弾道は目前で枝分かれし、まるで二人を避ける様な弾道を描いて着弾したのであった。

 轟音と震動が二人に襲い掛かる即座にシールドを張って防御に徹するが、流星雨の如く降り注がれる爆撃によってひび割れが生じ始めたのであった。

 けど、二人のシールドが壊れる事はなかった。トマホークの脅威から護り切った二人であった。

 

 

「あっぶねぇ。まさか、そんな切札まで持っているなんて……。人が悪すぎだよ」

 

「出水先輩の合成弾まで……。けど、これであなたの手札は尽きたはず。今なら――」

 

 

 

 ――アステロイド

 

 

 

 シールドを解除した二人の心臓部をアステロイドが撃ち抜く。

 

 

「そ、そんな……」

 

「後ろから? いったい、どうやって!?」

 

 

 完全な不意打であった。二人の予想外の場所からアステロイドが飛んで来て、伝達系を破壊していったのだ。

 

 

「緑川にバイパーを放つと同時にアステロイドの置き弾を設置した」

 

「じゃ、じゃあ……。さっきのトマホークは」

 

「あの程度で二人を倒せないのは知っていたから、切札と勘違いしてもらうための布石だよ」

 

「三雲くん。覚えておきなさい!」

 

「くっそぉぉおおっ!」

 

 

 二人の捨て台詞の後、緊急脱出が起動。光の帯状となって宙を舞う二人を見上げつつ、小さくガッツポーズを作る修であった。

 VS緑川&木虎戦は5戦中2勝2敗1分けと大金星を飾る結果となる。




とりあえず、VS緑川&木虎は終了です。
また、案が思いついたら天眼修を書こうと思います。

……てか、気分転換に書いた魔改造のアクセスがすごいことになっている。
どうして、こうなった!?

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