三雲修改造計画【SE】ver   作:alche777

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……ちょっと酷いかな。なんか違和感を覚えたら遠慮なくいってください。
色々と視点がごちゃごちゃで分かりにくいかもしれませんが。


SE修【天眼】A級狙撃小隊③

 戦場に転送された佐鳥は直ぐに周囲を確認する。転送されたフィールドは市街地Aだ。完全ノーマルの戦場のこの場所で射線を通すのは難しくないが、有利に出来る地点もほぼない。腕の見せ所だ、と気合を入れ直す。

 

 

「綾辻先輩。三雲くん達はどうしています?」

 

 

 先ずは情報の確認と収集が先決。狙撃手は常にクールでなければならない。例え口やかましい口上を垂れたとしても、頭の中は常に計算をし続けなければならないのだ。

 敵の隙を窺って必殺の一撃を叩きこむ。敵を撃ち抜いた時の快感はなにも勝るモノはない、と佐鳥は確信している。

 

 

『第1戦と同じね。東さんは直ぐにレーダーから消えたにも関わらず、三雲くんはそのままレーダーに残っているわ。……変ね。三雲くんがこちらの位置を特定できる能力を有しているなら、なんでバッグワームを使って奇襲しないのかしら?』

 

 

 綾辻の疑問はもっともな話だ。修には天眼と言う驚異的な能力を有している。バッグワームを使えばレーダーから逃れる事が出来る。そうなったら後は戦っている本人達で居場所を特定しないといけなくなってしまう。確実に佐鳥達が不利になるはずだ。

 

 

「(言われてみればそうだな。1戦目は釣りを目的としたからバッグワームを使わなかった、と思ったけど……。まさか、今回も同じ策? いやいや、あの東さんがそんな愚策を取るとは思えないな。と、なると考えられる事は――)」

 

『どうやら、三雲くんはバッグワームを入れていないようですね』

 

 

 結論を出すよりも早く古寺から通信が入る。

 

 

『やはりか。あの東さんが同じ策を二回もやらせるとは思えない。なにが目的だ?』

 

『あの東さんの事だから、きっと面白い事をして来るぜ』

 

 

 不吉な予想を楽しげに言う当真の言葉が現実となる。

 

 

『……え? なにこれ』

 

「どうしたんっすか、綾辻先輩」

 

『きゅ、急にレーダーが反応したと思ったら……。て、敵の数が増えている!?』

 

 

 一瞬、何を言っているか分からなかった。佐鳥は「どう言う意味っすか」と尋ね返そうとするが、当真によって遮られてしまう。

 

 

『ダミービーコンか。東さんは俺達にレーダーを使わせないつもりだな』

 

 

 ダミービーコン。任意の場所に設置する事が可能な探知機攪乱トリガー。東のトリガーには試作型のダミービーコンが装備されている。この結果に至るのは予想の範囲内と言えよう。

 

 

『これで、迂闊にきのこ派に手が出せなくなったな』

 

『ですね。これでは三雲くんの動きから東さんの位置を予測する事が難しくなりました。あの人、本気で僕等を撃ち殺すつもりですね』

 

 

 かつてA級1位の部隊を率いた男だ。トリオン器官の成長が終っているからと言って、培った技術や経験値が消える事はない。

 東春秋は後続を育てる戦技教官から一人の純粋なる兵士に戻って対抗し始めている。

 

 

『レーダーに反応!? 狙撃注意!!』

 

 

 オペレーターの綾辻から注意勧告が出される。身構える4人であったが、東の狙撃は誰にも命中せず。

 

 

 

 は?

 

 

 

 東春秋を知っている狙撃小隊は唖然とする。東の弾道は佐鳥を狙ったと思われるが、弾道は大きく上空へ吸い込まれていってしまったのだ。

 

 

「あの東さんが狙撃を大きく外した?」

 

『どうやら相当焦っている様子ですね。ここは一気に叩きましょう』

 

『……そうだな。東さんに全力で抵抗されるとどうなるか分からない。今のうちに叩くべきだ』

 

 

 古寺と奈良坂が先行する。弾道から逆算して東がいる地点を予測し、最適な狙撃地点を選んだのだろう。二人はイーグレットを構えて狙撃準備を行う――が、二条の閃光が二人のイーグレットを撃ち抜く。

 二人は何が起こったのか気づくまで数秒ほど要した。

 

 

「今のは東さんか?」

 

「いえ、東さんがいる方角と全く別の方角から撃ち抜かれました。恐らく三雲くんでしょ」

 

 

 弾道の軌道とレーダーから撃ち放ったのが三雲だと看破する古寺。なるほど、と納得した奈良坂は三雲がいるであろう方角に再び生み出したイーグレットの銃口を向けるが、スコープに三雲の姿を捉える事は出来なかった。

 

 

『あははは。三雲にしてやられたな、二人とも』

 

『ったく。気を付けてくださいよ。三雲くんは天性の狙撃の眼を持っているんですから。俺のツイン狙撃だって普通にやってのけるんですからね』

 

 

 自慢あり気に忠告する佐鳥の言葉に聞き捨てならないセリフがあった。

 

 

「「そんな話、聞いていない」」

 

 

 二人が抗議の声を上げる。三雲がツイン狙撃を出来るなんてそんな情報は一つも入って来ていない。普通ならば、佐鳥が前もって説明をするはずなのだが、打倒三雲で頭がいっぱいになって話すのを忘れていた。まだまだクールな狙撃手になるのは程遠いと言えよう。

 

 

『ちなみに、俺も見たぜその時。アイツ、早撃ちみたいにライトニングを撃っていたな。中々面白かったぜ』

 

 

 中々ユニークな撃ち方であったので、今でも鮮明に記憶している。その時の修の眼が大変印象的であったからだ。獲物を狙い澄ましたようなタカ目。東も鷹の眼とはよく言ったものである。

 

 

「佐鳥、作戦を変更しよう。東さんより三雲を狙うぞ」

 

「三雲くんを? どう言うわけですか」

 

「恐らく、役割を変えてきたのだろう。ダミービーコンを使う事で三雲に意識を向けさせない様にして、自分の居場所を知らしめる様な狙撃で俺達を誘い込む。狙撃の瞬間を見計らって、移動した三雲が狙い撃つ。中々やらしいやり方だな」

 

 

 当真の推測は大方当たっていた。ダミービーコンの目的は三雲を少しでも長く戦場へ留める為の隠れ蓑であった。長く生存すればするほど狙撃の軌道を天眼に記憶させることが出来る。

 

 

「……どうだ、三雲くん」

 

 

 一射目の狙撃後、合流した東は修の現状を確認する。

 ライトニングの銃弾を撃ち放った修は「はい」と強く答えて東に伝えた。

 

 

「やはり、自分が放つ銃弾の軌道は視えます。けど、佐鳥先輩たちの弾道までは――」

 

「――上手くいかないか」

 

「……はい」

 

 

 沈んだ表情で東が継いだ言葉に頷く。

 

 

「けど、続けるんだろ?」

 

「はい」

 

「なら、もう少し覇気のある返事をして欲しいものだな」

 

「すみません!」

 

「よし。なら――」

 

 

 自信を失いかけた修に喝が入った所で東はイーグレットを構え、引き金を絞る。何の工夫も欠片もない狙撃。奈良坂を狙ったと思われる弾丸は大きく右にそれてしまう。勿論、この狙撃もただの釣り弾だ。

 

 

「2時に奈良坂先輩と古寺先輩のイーグレット。9時の方角から当真先輩のイーグレットが来ます」

 

 

 修の告げた通り、奈良坂と古寺、当真達がイーグレットで反撃を行う。三条の光を凝視見て描かれるだろう軌道を読み取るのだが、やはりと言っていいか鷹の眼は期待通りに動作してくれなかった。

 

 

「なろっ!」

 

 

 続けて3発弾丸を撃ち放ち、己に襲ってくるイーグレットを撃ち落す。

 

 

「今度は7時から佐鳥先輩のツイン狙撃です」

 

 

 完全に自分達が潜伏している場所を特定されたのだろう。狙撃小隊の動きが完全に包囲を敷く様な動きを見せている。このまま1か所に留まっていたら弾丸の餌食になるのだが、今は下手に動く事はしない。

 

 

「こっからが本番だ。……やるぞ、三雲くん」

 

「はい」

 

 

 修は東の背中を背負う形で立ち、ライトニングを二挺生み出す。対する東もバッグワームを解除して二挺目のイーグレットを生み出して迎撃の態勢を取る。

 

 

「東さんから見て7時に当真先輩、5時に佐鳥先輩がいます」

 

「分かった。俺の相手は奈良坂と古寺だな。……とことん、相手にしてやるぞ」

 

「はい!」

 

 

 

***

 

 

 

 互いに背中を預けて狙撃を警戒している2人は4人から見て異様な光景であった。

 特に一番興奮したのは佐鳥だ。何せ、東の両手にはイーグレットが二挺握られている。憧れの狙撃手が自分と同じ二挺スタイルで対抗してくれる。そんな姿を視たら顔がにやついて仕方がなかった。

 

 

『おいおい。あの東さんが二挺スタイルって……。あの人、ツイン狙撃も出来るのかよ』

 

 

 当真が驚くのも無理はない。東がツインスナイプをしている姿など過去一度も見た事がなかった。

 

 

『ハッタリだ。堅実な東さんが佐鳥のような破天荒な狙撃をするものか』

 

「奈良坂先輩。それどう言う意味っすか!?」

 

『佐鳥には悪いが、僕も同意だ。あれは僕達に狙撃をさせない為のブラフ。けど、釈然としないな。幾ら不利だとはいえ、そんな事をしても何の意味もないのに』

 

 

 銃口を構えつつ、二人の動きの真意を読み取ろうとする。けど、頭を悩ませた所で二人は自分達の狙撃を警戒しているようにしか見えない。

 

 

「……ま、罠だと分かっていても撃つしかないんだけどね。俺がツイン狙撃で気を引きます。三人は時間差で撃ってくれ」

 

『奈良坂、了解』

 

『古寺、了解です』

 

『……パス』

 

 

 奈良坂、古寺と作戦に応じたと言うのに当真は今回の作戦に気乗りしなかった。

 まさか、当真が否定するなんて思わなかったのだろう。佐鳥は「なんでですか!?」と詰め寄ると当真は「分からないのか?」と逆に問い詰める。

 

 

『東さん達の目的は釣りや待ちじゃなかったんだよ。ハナッから一回戦と二回戦を捨てやがっていた。随分、手間の込んだ事をしやがって』

 

『なんでそんなまどろっこしい事を……。奈良坂先輩、分かりますか?』

 

『……天眼を慣らす為か?』

 

『さすが奈良坂。たぶん、そうだろう。奴らの目的は【鷹の眼】の本格稼働だ。確か、佐鳥の話だと弾道の軌道が視える様になったんだろう?』

 

 

 修が言っていた事を思い出しながら佐鳥は「そうです」と首肯する。

 

 

『自分の狙撃した弾道軌道が可視化出来るだけでも反則級の性能にも関わらず、俺達の弾道まで可視化されるんだぜ? 対狙撃手どころの騒ぎじゃねえ。一種の化け物だ。今でさえ、俺達の居場所を特定されているのに、これ以上敵を有利にさせる訳にはいかないだろ』

 

「その話と今回の作戦を否定する理由が分かりませんが」

 

『はぁ? 東さんと三雲のあれはどう考えても俺達の狙撃を撃ち落とす態勢だろうが。撃ち落として、撃ち落として俺達の狙撃の球筋を見極めるつもりだ。外すと分かっている狙撃を撃つなんて俺にはでき――っ!?』

 

 

 通信越しから銃声が鳴り響く。もたもたしている間に修が牽制を仕掛けてきた。それは奈良坂、古寺の方も同じであった。二人の弾丸は大きくそれるもの、その狙撃は「撃てるものなら撃って見せろ」と言っている様に聞こえたのだ。

 

 

『なろっ!』

 

 

 わざと外した狙撃に苛立ちを覚えた当真が舌の根が乾かぬ間にイーグレットを構えて狙撃態勢に入る。スコープを覗き、三雲の額に標準を合わせて――標準を合わせている最中に修と視線が合う。

 

 

「(この野郎。これでまだ発展途上なのかよ。参るぜ、まったく。……だが!)」

 

 

 ライトニングの銃口を向けるド素人の狙撃手に狙撃で負ける訳にはいかない。これで負けたらナンバー1狙撃手なんて名乗れる訳がない。

 

 

 

 ――スナイプ

 ――スナイプ

 

 

 

 二人の狙撃銃から弾丸が飛びだす。二人の狙いは偶然か一致してしまったようである。

 スナイプ必殺の一撃ヘッドショット。二人が狙撃で狙った場所は互いの眉間だ。

 互いの弾丸は途中でぶつかり合って消失……すると思いきや、当真の弾丸が修の弾丸をぶち抜いたのだ。

 

 

「っ!?」

 

 

 これには修も予想外であった。威力は弱い事は知っていたが、まさかイーグレットに力負けするなんて想像できようか。

 

 

 

 ――スナイプ

 

 

 

 慌てて二射目を放つ。寸分たがわず当真の弾丸に飛び込んだ修の弾丸は、今度は互いに威力を殺し合って消失していった。修が他の狙撃手の弾丸を無力化するには最低二発をぶつけないといけない事が発覚する。

 

 

「ちっ。まさか、ライトニングとイーグレットの威力にこれほどまで差があるなんて」

 

「いや違う。幾ら射撃速度重視のライトニングでもイーグレットの弾丸に押し負けるなんてあるはずがない。あるとしたら、込められたトリオン量の違いだ」

 

「……僕のトリオンが少ない故の問題ですか」

 

 

 東の言うとおりだ。性能は違うがライトニングとイーグレットの威力の差はごく僅か。先ほどみたいに押し負ける事などありえる訳がない。

 けど、実際に起こった。その原因は修のトリオン量に起因していると言えよう。

 

 

「俺も考え足らずだった。一度態勢を立て直すべきだろう」

 

「……難しいでしょう。ダミービーコンで狙撃を乱発させる作戦もあまり効果が薄かった。東さん、このまま続けましょう」

 

「三雲くんがアイツらの狙撃の餌食になるのは時間の問題だぞ。あれは最後の最後だ。まだ、奴らにお披露目する訳にはいかない」

 

「はい。なるべく粘って、みなさんの弾道を見定めます。……鷹の眼を必ず引き出して見せます」

 

「よし。なら、三雲くんは二段撃ちで当真と佐鳥を迎い撃て。やれるな?」

 

「はい!」

 

 

 これ以上、会話する必要はなかった。覚悟を決めた修と東はただ目の前の敵に集中する。

 

 

 

***

 

 

 

「さぁ。苦しい展開になって来た! 流石の東さんや三雲隊員もこの4人を相手に防ぎきるのは難しいでしょう」

 

 

 一人白熱している武富桜子の言う通りであった。東は誰にも見せた事がないツイン狙撃で対抗してはいるが、問題は修の方である。当真の狙撃、佐鳥のツイン狙撃を2段撃ちで無力化してはいるが、手数が圧倒的に違う。修が防ぐには一発の銃弾を防ぐのに二発撃たなければならない。佐鳥の場合は4発撃たなければならないのだから、不利な状況になるのは当たり前だ。

 

 

「二人の考えがまったく分からないな。ダミービーコンで撹乱していたのにも関わらず、狙撃で自分の居場所を教えたり、今は的にしてくれと言いたげに一か所で撃ち合う。東さんらしくないな。……それとも、これはメガネくんの作戦なのか?」

 

「分かりません。あっと! ついに佐鳥隊員の弾丸が三雲隊員に被弾! 被弾場所は両腕だ!? これでは狙撃が出来ない。絶体絶命だ、三雲隊員!! 三雲隊員を庇う為に東さんがイーグレットで佐鳥隊員達にも撃ちかえす。しかし、銃口の数は2対4! いくら東さんでも……あぁ!! 被弾! ついに被弾した!? 東さんの四肢に4人の銃弾が突き刺さる。東さん、三雲隊員を庇った為に先に緊急脱出だぁ」

 

 

 東の身体が光の粒子となって、上空へ吸い込まれていく。

 

 

「これで残ったのは三雲隊員だけ。しかし、三雲隊員も既に被弾して両手が使えない。もはや勝負は見えたか!?」

 

 

 武富の言うとおり。もはや勝負は決まった。第二戦もA級狙撃小隊の勝利に終わる……はずだった。しかし、この勝負はタダで転ぶ事はなかったのだ。

 

 

 

***

 

 

 

『すまない、三雲くん』

 

「いえ。東さんのせいじゃありません。僕が足を引っ張ったから、東さんは……」

 

『それは違う。俺が未知の力を当てにしたのが間違っていたんだ。三雲くんの【鷹の眼】を当てにした俺が愚かだった。もっとしっかり作戦を練っていれば……』

 

 

 ドン、と衝撃音が耳に伝わる。あの東が本気で悔しがっている。

 それを知ったら、申し訳なくて、情けなくて……。ここまで助力してくれた東の期待を裏切り続けた自分自身が許せなかった。

 

 

「(今度こそ視る)」

 

 

 どうせ、両手は使えないのだ。

 

 

「(見る、視る)」

 

 

 だったら、神経の全てを己の眼に集中させる。

 

 

「(みる、ミル。視る。……視てやる)」

 

 

 睨みを利かせた修の視界に4本の赤い筋が自分へ向けて走ってくる。「この赤い筋は?」と考えている間に天眼が4つの弾丸を捉える。

 

 

「(赤い筋に沿って弾丸が飛んで来た。すると、これは!?)」

 

 

 赤い筋に気を取られてしまった修は回避する事を忘れてしまった。4つの弾丸は修の身体を突き抜け、戦闘体は破壊される。

 

 第2戦、最後の最後で修の【鷹の眼】は本来の力を呼び覚ます。




鷹の眼の効力。性能の奴を見てピンと来た人もいますよね。

某オンラインゲームのあれと言えば分りますか?

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